ベトナムにおける鉄道インフラの投資額は過去数十年間頭打ちとなっており、経済の潤滑油となる輸送手段として十分活用されていないのが現状となっております。
今回は、そんなベトナムの鉄道・バス業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2021年 ベトナムの鉄道・バス(運輸・物流)業界
ベトナムのイアリー水力発電所プロジェクトに向けて〜鉄道・バス業界動向〜
2021年4月27日、ベトナムのザライ省のイアリー水力発電所プロジェクトの建設及び設置パッケージの契約調印式が開催された。国有電力会社であるVietnam Electricity(EVN)を含む数社が参加した。
当プロジェクトは投資政策のために首相によって承認されたものであり、2つのユニットから構成され、総設備容量は360MW、総投資額は約6兆3980億ドンである。
プロジェクトの完成により、年間の余剰排出量を抑えて流量を最大限に活用することで年間平均発電量の増加、年間燃料費の削減、デフレの削減に貢献する。また稼働時に既存のユニットの作業強度を効果的に低減することで機器の寿命を延ばし、メンテナンス・修理コストの節約ができる。
出典:https://en.evn.com.vn/d6/news/Contract-signing-ceremony-of-construction-and-installation-package-of-Ialy-Hydropower-Plant-Project-66-142-2298.aspx
ベトナムのSOGECの食品工場における燃料切り替え事業〜鉄道・バス業界動向〜
株式会社双日(双日)と大阪ガス株式会社の合弁会社である双日大阪ガスエネルギー株式会社(SOGEC)は、2021年3月4日、株式会社アセクックの子会社であるアセクックベトナム合弁会社(ACV)と、ACVの食品に天然ガスを供給する供給契約を締結した。
SOGECは石炭から天然ガスへの燃料転換に力を注いでいる。同社が個々の事業に天然ガスを供給するのは初めてのことである。当プロジェクトはベトナム政府と日本政府が協力して実施され、10年間で約76,300トンのCO2排出量の削減を見込んでいる。
双日、Daigasグループ(大阪ガスグループブランド)、SOGECは環境に配慮した天然ガスの販売を通じて顧客の多様なビジネスニーズに応え、ベトナムの持続可能な発展と低炭素の実現を目指す。
出典:https://www.sojitz.com/en/news/2021/03/20210311-01.php
ベトナムのVinacomin、原炭生産を順調に進める〜鉄道・バス業界動向〜
国営電力会社のVinacominは2021年4月29日、2021年度の最初の4カ月の業績についての中間報告及び5月の目標について公表した。
4月はコロナウィルスの感染予防を行いながら、グループの生産率を安定させ維持できた。4か月間にグループ全体で1362万トンの原炭を生産し、年間計画の35%に達した。石炭消費量は1389万トンに達し、グループの総収入は38兆6100億ドンと推定されている。
5月は330万トンの原炭を生産、430万トンを消費した。また、117,000トンのアルミナ生産、8,800トンの銅精鉱、650トンの銅板、1,000トンの亜鉛インゴット、9700億Kwhの発電を計画している。
出典:http://www.vinacomin.vn/tin-tuc/4-thang-dau-nam-2021-doanh-thu-toan-tap-doan-uoc-dat-hon-38610-ty-202104291734278248.htm
ベトナムのPetro Vietnam Powerの業績と事業計画〜鉄道・バス業界動向〜
ベトナム石油ガスグループの100%資本で設立されたEVN社に次ぐ国内第2位の発電会社であるPetro Vietnam Power(PVPower)は、2021年度の4月の業績と5月の事業計画の発表を行い、各発電所の操業状況、新しいプロジェクトの進捗状況、株式取引の報告を行った。
5月の事業計画としては引き続き発電所を安全かつ効率的に操業していく。推定発電量は20億1030万kWhで、推定収益は3兆1580億ベトナムドンである。
また、引き続きEVN/EPTCと共にPPAsの交渉や、ニョンチャック1、ブンアン1、ニョンチャック3&4の発電所のPPA契約改定を継続していく。PV Gas、TKV、石油供給企業と共にガス、石炭、石油などの燃料の十分な供給を確保していく。
出典:https://www.pvpower.vn/wp-content/uploads/2021/05/thong-cao-thang-04-ta.pdf
ベトナムのAESがモンドン2火力発電所の売却に合意〜鉄道・バス業界動向〜
アメリカの大手エネルギー会社のAES Corporation (AES)は、ベトナムの1242MWのモンドン2石炭火力発電所の全持分を、米国を拠点とする投資家が主導するコンソーシアムに売却する契約を締結した。この取引は2021年後半又は2022年初頭に完了する予定である。
AESはモンドン2の51%の株式持ち分を所有し、Posco Energy Company Limitedが30%、China Investment Corporationの子会社であるStableInvestment Corporationが残りの19%を所有している。モンドン2の建設は国営電力会社であるベトナム電力(EVN)との25年間の電力購入契約(PPA)により、Build-Own-Transfer(BOT)契約に基づいて2015年に完了した。
AESは再生可能エネルギーとLNGインフラストラクチャへの投資というグローバル戦略に沿い、引き続きペトロベトナムと共に450TBTUソンミ―LNGターミナルの開発も進めていく予定だ。
出典:https://aesmongduong.vn/aes-agrees-to-sell-mong-duong-2-coal-fired-plant-in-vietnam/
2020年 ベトナムの鉄道・バス(運輸・物流)業界
ベトナムでバス運賃の支払いにQRコード決済を導入 〜鉄道・バス業界動向〜
2020年6月15日、Transerco (Tổng công ty Vận tải Hà Nội)は、同社が運営する路線バス68号線(ハドン-ノイバイ空港)において、VNPay QRによるチケット販売の支払いを正式に開始した。
VNPAY QRはスマートフォンによるQRコード読み込みを活用した決済アプリケーション。提携する各銀行のモバイルアプリでQRコードを読み込むことで、顧客の口座から直接代金が引き落とされる。
今回のQR決済の導入は、利用者の多い空港と市内を結ぶルートにおいて、支払いの近代化と多様化により、ユーザーの利便性向上を狙ったものだ。
出典:https://transerco.com.vn/vi/tin-tuc—su-kien/xe-buyt-68-ha-dong—san-bay-noi-bai-chinh-thuc-trien-khai-thanh-toan-ban-ve-luot-bang-vnpay-qr.html
ベトナム運輸省、全高速道路にスマート交通システム導入へ〜鉄道・バス業界動向〜
ベトナム運輸省は2025年までに、全国全ての高速道路においてスマート交通管理および運営システムを導入することを目指す。
運輸業界の管理と運用について情報技術を活用する方針が首相に承認される中、運輸業界は国家デジタル化戦略に合わせ、管理、運営活動において、ITアプリケーションの近代化に投資していく。
2020年から2025年の期間に積極的な投資によりデジタル化を進め、安全性、効率性、環境保護といった様々な観点での改善を目指す。また、 情報がタイムリーに得られることで、ビジネス上の意思決定においても役立つことが期待されている。
出典:http://cucqlxd.gov.vn/nam-2025-dieu-hanh-duong-cao-toc-bang-giao-thong-thong-minh-3224.html
WILLERの子会社、ベトナムで都市間バスの運行開始〜鉄道・バス業界動向〜
WILLER株式会社は、日本を含むアジア・ASEANのMaaSに取り組んでいる。同社の在ベトナムの子会社である、MAI LINH – WILLER CO.,LTDは、ハノイからタンホアを結ぶ都市間バス『MAi LiNH WiLLER EXPRESS』を2019年10月14日より運行開始した。
同社はベトナム最大級の交通事業を提供するMai Linh Groupとの合弁会社だ。
ベトナムにおける都市間移動は、バスが主な交通手段となっている。近年、バスの信頼性へのニーズが高まっていることを受け、日本で運行しているWILLER EXPRESSと同じサービスや運行管理を導入した。
出典:https://www.willer.co.jp/press/2019_1015_3790.html
ベトナムの南北高速道路、土地確保に遅れ〜鉄道・バス業界動向〜
運輸省交通工事品質管理局によると、南北高速道路の建設工事の進捗に遅れが出ているとのこと。11の南北高速プロジェクトにおいて土地接収を完了するには、13地域にまたがる1,245か所において土地上の構造物の移転を行う必要がある。
移転が必要な構造物として、送電用の鉄塔1000か所以上に加え、25,436mの給水管と46,529mの通信ケーブルを再配置する必要がある。
現在コンサルタントがこれらのインフラを再配置するための承認を得て次のステップに進む準備をしている最中だ。所有者や関係者と協力し、土地の整備作業を2020年第2四半期には完了したい考えだ。
出典:http://cucqlxd.gov.vn/cham-di-doi-cong-trinh-ha-tang-ky-thuat-lam-cao-toc-bac-nam-3172.html
ベトナム・べカメックス東急のバスプロジェクトとは?〜鉄道・バス業界動向〜
ベカメックス東急バスプロジェクトは、ビンズン新都市の住民に多くの利便性をもたらし、住民がトゥヤウモット市や他の周辺地域と簡単につながれることを目的として、2014年2月に設立された。
Kazeバス- Becamex東急バスは、ベトナムにおける日本初の輸送プロジェクトだ。これはビンズン省でCNGガスを使用したバスを走らせるプロジェクトでもある。
Becamex東急バスは、時刻表通りの運行をコミットし、バスの装丁、無料wifiの提供や日本の基準に従って訓練された運転手による丁寧な接客、CNGガス技術による生活環境の保護といった配慮がされている。
出典:https://becamex.com.vn/ja/du-an/%E3%83%99%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E6%9D%B1%E6%80%A5%E3%83%90%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88/
2019年 ベトナムの鉄道・バス(運輸・物流)業界
ベトナムの鉄道業界、海外投資に期待〜鉄道・バス業界動向〜
ベトナムの鉄道産業は、海外の投資家に対して、より魅力的な投資先になるよう努力している。
ベトナムの鉄道業界は現在運行効率の向上に努めており、このための民間投資をさらに呼び込みたいと考えている。同業界では、計画を実現するために、コンサルティングサービス、スペアパーツの供給、金融およびインフラ開発に携わる国際グループとの協力を促進したいと考えている。
近年、多くの外国の鉄道会社がVNRとビジネスをすることに興味を示している。その中には、世界最大の鉄道生産国であるロシアのEVRAZ、ロシア輸出センター(REC)グループなどが含まれている。ベトナムの鉄道業界はこうした海外からの投資を活用して事業の改善につなげていきたい考えだ。
ラオスの鉄道業界、ベトナムの経験に学ぶ〜鉄道・バス業界動向〜
lBounthong Chitmany副首相率いるラオス代表団は、2018年7月27日に国営のベトナム鉄道(VNR)を訪問し、将来のプロジェクトに備えて鉄道システムの管理と開発について学んだ。
議論は、ベトナム鉄道の管理と運営を管理する法的文書と、その開発戦略、運営体制、検査、雇用政策、民間投資誘致、用地整備、補償に焦点を当てた。
現在ラオスでは、タナレン駅のコンテナ倉庫、ビエンチャンロジスティクスパーク、ビエンチャン-タクヘク-ムー駅、ラオス-中国鉄道ルートなど、など多数の鉄道プロジェクトが開発されており、同訪問は非常に有意義なものとなった。
ベトナムのVNR、鉄道の安全検査実施〜鉄道・バス業界動向〜
2019年7月16日、 ドアン・ズイ・ホアック(Đoàn Duy Hoạch)副局長が率いるベトナム鉄道公社の検査団がベトナム北西部のラオカイ省で、交通安全確認作業を実施した。
検査チームは、ラオスカイ省交通安全委員会とのワーキングセッションを開き、同会議には省交通安全委員会の会長や運輸省建設局職員等が参加した。
2017年鉄道法と2018年5月12日付けの鉄道法のいくつかの条項の実施について定めた政令No. 65/2018 / ND-CPが公布されており、現在多くの鉄道管理者が安全委配慮していることが確認された。同社は今後も関係機関と協力し鉄道の安全運行に尽力していく構えだ。
ベトナム交通省、5兆VND以上の予算を受領〜鉄道・バス業界動向〜
首相は、運輸省に2019年の計画予算のうち5兆 VND以上を割り当てた。同予算のうち、政府資金は4,393,147百万 VND、債権による調達が771,249百万 VNDとなる。
予算配布にあたっては、プロジェクトのリストや政府予算の総額などを基に総合的に検討して決定される。なお、政府予算投資計画の実施を調査および監督する責任を引き受けるのは計画投資省となり、予算計画の実施に関する政府への四半期報告などが義務付けられている。
予算の執行にあたり、投資計画省がプロジェクトの情報、データ、および資金利用の正確性について、首相と検査および監査機関に対して完全に責任を負うことになる。
2018年 ベトナムの鉄道・バス(運輸・物流)業界
ベトナムのVietnam Railway 2018年上半期は業績好調〜鉄道・バス業界動向〜
2018年7月6日、Vietnam Railway の同年上半期業績の評価が行われた。収入、輸送量共に好調な結果であったが、その要因として大きかったのは、輸送価格の見直しや運営コスト削減をといった、柔軟な経営改善策だ。
同社は上半期において、効率性と安全性に重点を置いた運営を行ってきた。また、高品質な車両の導入や、旅行客向けの列車で食事を無償提供するといったサービスで客数の増加へ努めてきた。
好調な業績の一方、過去2年間に累積した損失を埋め合わせるために、残された2018年下半期についても、予算達成の向け尽力していく構えだ。
ベトナム初の山間部モノレールが鉄道開業〜鉄道・バス業界動向〜
ベトナム北部のラオカイ省で、ベトナム初となる登山鉄道 (モノレール) が開業した。同鉄道は、観光地としても有名なサパから Fansipan山までを結ぶ。
始点から終点までの距離は全長約2km。2つのトンネルと陸橋を渡る列車の速度は最高10km/hで、1時間あたり2,000人の乗客を運ぶことができる。この鉄道が開通することで、観光客は従来車で20分掛かっていたところを4分で移動することが可能になる。
サパはハノイの北西350kmに位置する、自然が豊かで風光明媚な観光地。滝、吊り橋、竹林や洞窟などを楽しむことができる。 Fansipan山は標高3,142mとインドシナ半島で最大の標高を持ち、「インドシナの天井」と称されている。
ベトナム政府、鉄道インフラの管理向上のため政令発行〜鉄道・バス業界動向〜
ベトナム政府は、鉄道インフラの管理と保護に関する政令 (Decree) 56/2018 / ND-CPを発行した。同政令は、駅や路線の名称決定や廃止、鉄道用地の管理・使用や取得などの運用について定めている。
主な内容としては、鉄道運行時の安全性を確保するために路線の両側に一定のスペースを設けること (高速鉄道、市内で運行する鉄道、その他鉄道の3カテゴリーそれぞれに規定) 、路線上で地面から架線まで一定の高さを確保すること (線路のサイズごとに規定) などが定められている。
現状この規定を満たしていない路線については、設備を改装する際に事業者が対策を取ることが求められている。
2018年にベトナムで完成予定の5大交通プロジェクト〜鉄道・バス業界動向〜
下記は、2018年中に完成予定の主要交通プロジェクトである
1. Da
Nang – Quang Ngai 高速道路
34兆ベトナムドンの予算を投入。全長139kmで、一部の路線には日本の有償資金協力が利用されている。2018年7月開通予定。
2. Phap Van – Cau Gie高速道路フェーズ2(ハノイ)
ハノイの南部に位置する高速道路の拡張工事。現状4車線を6車線に拡張する。2018年12月完成予定。
3. Ha
Long高速道路 –
Bach Dang橋
ハノイからのアクセスを50km(27.8%)短縮。本年第3四半期完成予定。
4. Hoa Lac
– Hoa Binh高速道路
工事の進捗状況は80%。銀行融資に問題が発生して一時中断したが、2018 年第4四半期に完成予定。
5. Cat Linh – Ha Dong都市鉄道
進行は順調、鉄道インフラの建設は95%完了。
2018年8月試験運行予定。
まとめ:ベトナムの鉄道・バス業界
政府は、ベトナム国有鉄道(VNE)と協働で、2020年までの鉄道事業における開発目標を掲げ、国際機関からの援助要請や投資推進政策などを積極的に進めています。政府の動きに注目することで、鉄道・バス業界は今後もビジネスチャンスを見つけられるのではないでしょうか。
ハノイ在住のベトナム人。名古屋大学で文部科学省奨学金の日研生として留学経験有り。日越の翻訳、通訳などが得意で、日本語教師の経験有り。ハノイで日系IT企業に入社後、主に総務・人事、日本親会社との取引業務を約3年経験し、その後長野県で日本企業で勤務。