シンガポールキャッシュレス市場2025年版|主要企業と成長動向を徹底解説

シンガポールのキャッシュレス決済市場は2025年に245億ドル規模となり、年率8.74%で成長中です。DBS PayLah、GrabPay、PayPalなどの主要企業が競争を繰り広げる中、日本企業の進出機会も拡大しています。

最新の市場動向と主要プレーヤーの戦略を詳しく解説します。

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目次

シンガポールのキャッシュレス事情

キャッシュレスが普及した理由と背景

1985年、政府は、シンガポール人が取引の支払いをキャッシュレスにすることを奨励し、現金取引を最小限に抑えるための全国キャンペーンを開始。政府は最大2450万シンガポールドルの人件費を節約できると予測した。

1985年3月から5月にかけて実施された3か月のキャンペーンには、3つの目標があった。①シンガポール人が銀行口座への直接クレジットを介して給与を受け取ることを奨励するため②General Interbank Recurring Order(GIRO)を通じて電子的に請求書を支払うことを奨励するため③POSでの電子送金(EFTPOS)を使用した支払いを促進するため。

同年、NETSは電子決済サービスプロバイダーとして設立されEFTPOSの全国的な実装を主導する任務を負った。 NETSは、DBS銀行、OCBC、OUB、UOB、POSBの5つの銀行のコンソーシアムとして設立された。2017年8月9日の独立記念大会でのリー・シェンロン首相のスピーチだった。首相は、キャッシュレス化が浸透している中国を引き合いに出し、シンガポールが遅れていることを指摘。国内におけるデジタル決済システムの統合の必要性を訴えた。

2007年以降、キャッシュレスは急激に普及し、2016年になるとキャッシュレス普及率は58.8%までに増えた。 2017年8月9日の独立記念大会でのリー・シェンロン首相のスピーチで、キャッシュレス化が浸透している中国を引き合いに出し、シンガポールが遅れていることを指摘。国内におけるデジタル決済システムの統合の必要性を訴えた。それ以来キャッシュレスの普及はさらに加速した。

キャッシュレスでの決済額の推移や主流の支払い方法

シンガポールの電子決済市場は驚異的な成長を遂げている。2023年のデジタル決済取引額は180億米ドルに達し、2022年から2026年にかけて年平均成長率(CAGR)21.53%で成長し、2026年には215.3億米ドルに達すると予測されている。

決済額の推移を詳しく見ると、リアルタイム決済の取引量は2019年の9,324万件から2020年には1億3,838万件に48%急増し、取引額も2019年の1,100億米ドルから2020年には1,540億米ドルへと40%増加した。2025年までにリアルタイム決済の取引量は3億9,294万件に達し、全取引に占める割合も2020年の4.9%から2025年には11.3%に拡大すると予測されている。

現在の主流決済方法については、カード決済(97%)が現金(82%)を上回り、最も使用される決済手段となっている。具体的には:

クレジット・デビットカード:76%の消費者が使用
PayNow:55%の消費者が利用、特にZ世代では68%が利用
銀行振込:55%の消費者が使用
GrabPay:22%の消費者が利用
後払いサービス(BNPL):21%の消費者が利用

モバイルコンタクトレス決済の利用率は53%に達し、継続的な上昇傾向を示している。また、30%の消費者は買い物時にスマートフォンのみを携帯しており、これは世界平均の21%を大幅に上回っている。

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シンガポールのキャッシュレス決済:カード決済

クレジットカード

Finderの「 Credit card statistics Singapore」の記事によると、2020年度のシンガポール人クレジットカード普及率は73%であり、10%が6枚以上のクレジットカードを持っている。

四半期あたりの総支出は、2019年の3,289ドルから2020年の第2四半期には1,902ドルに減少した。現在eコマーストランザクションの68%はカードを介して行われている、

クレジットカードはVISA、MasterCard、JCB、アメリカン・エキスプレス、Diners Clubなどすべての主要な国際ブランドがシンガポールの至る場所で使用できる。とりわけ加盟店の多い国際ブランドは、VISAとMasterCard。

シンガポールには、加盟店が追加料金を介して加盟店のクレジットカード手数料を顧客に渡すことを禁止する法律がない。それを受け、2021年11月1日から、AmazonはシンガポールのサイトAmazon.sgでVisaクレジットカードを使用して行われた購入に0.5% の追加料金を課した。

デビットカード

シンガポールでは2018年の時点ですでにデビットカード普及率が90%を超えている。これは15歳以上の人口に占める銀行口座保有者割合が98%に達しており、銀行が発行するATMカードには、通常、VISAやMasterCardのデビット機能がデフォルトとして付与されているからである。

デビットカードの手数料は店舗側にも負担がなく基本無料。例えばチャンギ国際空港では支払いにクレジットカードは手数料がかかるがデビットカードでは無料であるとしている。

クレジットカードと同様、コンビニやホテルのデポジットなど様々な場所で使える。これまではホーカーズのような屋台では使えなかったが、近年屋台でも使える場所が増えてきている。

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シンガポールのキャッシュレス決済:QRコード決済

Nets

NETSは1986年に正式にサービスを開始したシンガポールの電子決済システムで、DBS銀行、OCBC銀行、UOB銀行の3つの地場銀行コンソーシアムによって設立された。同システムは当初、ATMカード保有者130万人を対象とした195の端末を通じて全国規模の電子送金サービスを提供し、1993年には消費者支出が11億4千万シンガポールドルに達している。

NETSは現在、デビットカード決済、クレジットカード決済、NETS FlashPayカード、QRコード決済など様々な決済手段に対応している。特にNETS FlashPayは2009年に導入された非接触型決済システムで、現在約450万枚が発行されており、公共交通機関やコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで広く利用されている。このカードは事前にチャージが必要なプリペイド式で、日本のSuicaやPASMOに相当する機能を持っている。

2025年現在、NETSはシンガポールで最も普及している決済システムとして位置づけられており、クレジットカードに対応していない小規模店舗でも広く受け入れられている。eNETSサービスでは政府機関との直接契約により年間60億ドル規模の取引を処理しており、スポーツ施設の予約からオンライン決済まで幅広いサービスを提供している。また、NETS Groupは決済・金融処理サービスの包括的なスイートを提供し、FAST、PayNow、GIROなどの電子資金移動システムも運営している。

DBS Pay lah!

DBS PayLah!は2014年にサービスを開始したDBS銀行のモバイル決済・電子ウォレットサービスで、現在シンガポールで最も人気の高いデジタルウォレットの一つである。2025年現在、180万人を超えるユーザーを抱え、シンガポール人の約70%がデジタルウォレットを利用する中で、その4割がDBS PayLah!ユーザーとなっている。

DBS PayLah!は単なる決済アプリを超えた包括的なライフスタイルアプリとして機能している。ユーザーは食事の注文(foodpanda、WhyQ)、配車サービス(CDG Zig、Gojek)、エンターテインメントチケット購入(Golden Village、SISTIC)、ショッピング(CapitaStar、FavePay、Shopee)、公共料金支払い(AXS)、旅行保険購入など、日常生活のあらゆる場面でアプリを活用できる。

決済機能では、NETS QR、PayNow QR、FavePay QR、SGQR、DuitNow QR、PromptPay QR、QRIS、UnionPay QRなど複数のQRコード決済に対応し、シンガポール国内の7万7千万店舗で利用可能である。特にSGQRとの統合により、単一のQRコードで複数の決済手段を選択できる利便性を提供している。

2019年時点で160万人だったユーザー数を2023年までに350万人に倍増させる目標を掲げ、KFC、SISTIC、AXSなどの主要ブランドとの戦略的パートナーシップを10社以上締結している。年間取引額は15億シンガポールドルに達し、P2P(個人間送金)とP2B(個人対企業決済)の取引件数が同等レベルまで成長している。

GrabPay

GrabPayは、東南アジア最大級のスーパーアプリであるGrabが提供するデジタルウォレットサービスで、2025年現在、1億人を超えるユーザーを抱える地域最大規模の電子決済プラットフォームである。同サービスは、ASEAN主要6カ国で電子マネーライセンスを取得した初のフィンテックプラットフォームとして、60万店舗を超える加盟店ネットワークを構築している。

GrabPayは従来のデジタルウォレット機能に加え、2025年現在では「PayLater Instalments」と「PayLater Postpaid」という新たな後払いサービスを提供している。PayLater Instalmentsは4回の分割払いが可能で、期日内に支払えば利息や隠れた手数料が発生しない買い物後払いサービスである。PayLater Postpaidは翌月一括払いのサービスで、現在はEコマース限定で提供されている。

決済方法としては、店舗でのQRコードスキャン決済とオンライン決済の両方に対応しており、オンライン決済では携帯電話番号のみで決済が完了する「GrabPay Online」機能を提供している。ユーザーは利用金額に対して最大0.5%のGrabRewardsポイントを獲得でき、これらのポイントは無料乗車、食事、または加盟店での支払いに利用できる。

2025年第1四半期の業績では、Grabは前年同期比18%増の7億7,300万シンガポールドルの収益を記録し、1,000万シンガポールドルの純利益を達成している。これは前年同期の1億1,500万シンガポールドルの損失から大幅な改善を示している。調整後EBITDAは1億600万シンガポールドルに達し、13四半期連続の成長を記録している。

SGQR

SGQR(Singapore Quick Response Code)はシンガポールの統一QRコード決済システムで、2018年9月に世界初の統一QRコード決済システムとして導入された。政府機関であるシンガポール金融管理局(MAS)とシンガポール情報通信メディア開発庁(IMDA)が共同で管理しており、27の決済サービスを単一のQRコードに統合することで、店舗側と消費者側双方の利便性を大幅に向上させている。

現在、SGQRは20万3,000を超える加盟店で導入されており、シンガポール国内における主要な電子決済手段として定着している。2021年1月には月間120万件の取引を記録し、サービス開始時と比較して4倍の成長を達成している。シンガポール政府は「キャッシュレス化の推進」を掲げており、2025年までに現金利用を大幅に削減する目標を設定しており、SGQRはその中核的な役割を担っている。

2025年5月現在、シンガポールではデジタル決済の取引総額が483億1千万米ドルに達すると予測されており、2027年までに現金利用は全決済の7%まで減少し、デジタルウォレットが44%を占める見通しとなっている。特に若年層においてはPayNowが68%、GrabPayが29%の利用率を記録しており、QRコード決済の普及が急速に進展している。

従来のSGQRの改良版であるSGQR+が2024年11月にNETSにより本格展開され、2万4,000の受付ポイントから3万5,000以上のホーカーセンターを含む店舗での利用が可能となっている。SGQR+では加盟店が単一の金融機関との契約で18の決済スキームを受け入れることができ、より効率的な決済環境を実現している。

国際展開においては、シンガポールとマレーシア間でのQRコード決済連携が2023年4月に開始され、インドネシアやタイなどのASEAN諸国との相互運用も進展している。Liquid Groupが開発するroamQRプラットフォームにより、2025年第1四半期には日本、中国、香港、韓国、ブラジル、フィリピン、ベトナム、カンボジア、マレーシア、オーストラリア、インドを含む11の国際市場でのサービス展開が予定されており、シンガポール国内5万店舗と世界5,000万店舗を接続する大規模なQR決済ネットワークの構築を目指している。

また、2025年2月にはMASとシンガポール銀行協会(ABS)が国内決済スキームの管理を統合する新組織の設立を発表し、SGQR、PayNow、FAST、GIRO等の各種決済システムの運営体制をより効率化することで、シンガポールの決済インフラの更なる発展を図っている。

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シンガポールのキャッシュレスの現状課題

高齢者への配慮

シンガポールのキャッシュレス化には依然として解決すべき課題がある。最も深刻なのは高齢者の採用率の低さである。Visaの調査によると、50歳から80歳のシニア層の多くがデジタル決済に不安を感じており、主な理由として詐欺への恐れ、視力の問題、操作の複雑さが挙げられている。彼らの多くは「歳を取りすぎて新しい技術を学べない」と感じており、間違った金額やパスワードを入力してしまうことへの懸念もある。

ホーカーセンターや市場での普及の遅れも大きな課題である。現在でも「現金のみ」の表示を掲げる屋台が存在し、店主たちはデジタルリテラシーの不足、視力の問題、顧客に迷惑をかけることへの恐れを理由に現金決済を好んでいる。特に高齢の店主の中には、「今日覚えても明日忘れてしまう」として学習を諦める人もいる。

システム障害のリスク

システム障害のリスクも無視できない。大手銀行DBSでは2021年11月と2023年3月に大規模なオンラインサービス障害が発生し、PayLahなどのモバイル決済アプリが約10時間使用不能になった。このような障害は消費者の信頼を損ない、キャッシュレス化への疑念を生じさせる要因となっている。

中小企業(SME)のコスト負担も課題の一つである。クレジットカード会社が課す約3%の取引手数料は特に小規模事業者にとって大きな負担となっており、これがキャッシュレス決済導入を躊躇させる要因となっている。

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シンガポールのキャッシュレスの今後の展望

政府の今後の方針

シンガポール政府は2025年までに小切手の使用を完全に廃止することを目標に掲げており、「キャッシュレス社会」ではなく「より現金の少ない社会」の実現を目指している。

MAS(シンガポール金融管理庁)の戦略は以下の3つの柱に基づいている:

・規制フレームワークの合理化と強化:活動ベースの単一モジュラー制度の創設
・決済ガバナンスモデルの確立:イノベーション、競争、協力を促進する国家決済評議会の設立
・電子決済の普及促進:消費者とビジネス双方の利便性向上

政府はProductivity Solution Grantを通じてPOS端末設置に最大80%の補助金を提供し(現在は70%に調整)、中小企業の電子決済導入を支援している。また、「Hawkers Go Digital Programme」により、ホーカーでのSGQR普及を積極的に推進している。

今後のキャッシュレスの動向

SEAN地域における国境を越えた決済連携が重要な動向として挙げられる。シンガポールは既にマレーシアとのQRコード決済連携を2023年3月に開始し、インドネシア、タイ、フィリピンとの連携も2023年末までに予定されている。この地域連携により、ASEAN諸国間の貿易決済や送金がより効率的になり、米ドルや人民元への依存を減らすことが可能になる。

エンベデッドファイナンス(組み込み金融)の主流化も重要なトレンドである。非金融プラットフォーム内に決済処理、融資、保険などの金融サービスを直接組み込むことで、よりシームレスな顧客体験が実現される。

オープンバンキングの推進も続いており、柔軟なAPIとパートナーシップを通じて、決済プロバイダーは競争優位性を獲得できるようになる。

「見えない決済技術の発展も注目されている。IoTデバイスや自動化技術により、消費者が意識することなく自動的に決済が完了するシステムの実現が期待されている。

デジタルウォレット市場の成長も継続しており、シンガポールのデジタルウォレット市場は2025年から2033年にかけて年率8.93%で成長すると予測されている。2027年までにはオンライン決済の50%以上をデジタルウォレットが占める見込みで、支出額も2023年の410億シンガポールドルから2027年には890億シンガポールドルに倍増すると予測されている。

まとめ

これらの動向により、シンガポールは引き続きアジア太平洋地域におけるキャッシュレス決済のリーダーとしての地位を維持し、さらなる革新を牽引していくと期待される。

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