【タイの大麻合法化】大麻ビジネスや今後の展望を解説

タイでは2018年に医療大麻の使用が合法化され、2020年には許可を得れば家庭での大麻栽培も可能となりました。タイでは伝統医療として大麻が使われてきた歴史がある中、世界中から医療大麻への期待が高まっています。また、食品や化粧品への利用も進んでおり、大麻ビジネスも発展しています。今回は、タイの大麻合法化を詳しく解説します。

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タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと
目次

タイの大麻合法化に関する概要

タイの大麻事情について

タイは2019年に東南アジアで初めて医療用大麻の使用を合法化した国となった。大麻の規制緩和は段階的に進められた。THC含有量(大麻草などに含まれる大麻成分量)が0.2%を超える場合は、医師の処方箋を用いて政府の施設で購入する場合のみ使用可能。尚、嗜好の為の大麻の使用は認められてない。

大麻は、化学療法を受けている患者やエイズ患者の食欲不振、末期症状の患者の生活の質の向上などに対して有効とされている。

当初は政府機関や医療従事者など、特定された機関においてのみ大麻栽培が認められていた。しかし、2022年2月8日に承認された保健省令案により、条件を満たせば一般人でも大麻栽培ができるようになった。

タイの麻薬法の変遷

タイは1922年から麻薬法を制定しており、大麻はカテゴリー5の麻薬に分類される。麻薬管理委員会が承認し、大臣に許可された場合を除き、製造・販売・輸出入・所持は禁止されていた。1934年に制定された大麻法では、栽培・輸入・購入販売・所持が禁止されたが、当時は大麻が、タイ伝統医学の治療や様々な料理の味付け、娯楽目的等に幅広く使用されていた。1979年に公布された麻薬法でも、大麻はカテゴリー5の麻薬に分類され、使用者・所持者に刑事罰が科せられ、医療用の使用許可も一切認められなくなった。

2016年に省令(生産・販売・所持に関する許可の申請/カテゴリー5の麻薬:ヘンプのみ)が発令された後、大麻オイルを医療に使用する傾向が強まった。2019年、カテゴリー5の麻薬を医療で使用可能とする麻薬法(No.7)が公布された。2020年には茎・繊維・枝・根等の大麻の一部やTHC含有量が0.2%以下の大麻の抽出物等について、カテゴリー5の麻薬として扱わない事が決定された。

2022年2月8日に、大麻自体をカテゴリー5の麻薬から除外する保健省令案が承認された。

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タイの大麻による経済効果

タイの大麻市場

2021年のタイの医療用大麻市場は約36〜72億バーツで、国内総生産のわずか0.02〜0.04%を占める程度であったが、法改正により市場が拡大している。2024年までに市場規模は210億バーツ以上に成長すると予想されており、大麻抽出物を使用した飲料・栄養補助食品・化粧品の開発・生産を行う企業も増えている。

タイ政府は、医療用大麻を奨励している。2019年にカテゴリー5の麻薬を医療目的で利用可能とする麻薬法(No.7)を公布して以来、保健省傘下の医療施設の為に大麻を栽培する農民グループは350以上になった。保健省は、商品作物として大麻を推進することに自信を持っている。

2021年3月現在、大麻を使用する、現代医薬・伝統医薬・ハーブ・栄養補助食品の工場や事業者による大麻原料の需要は30トンを超えている。農民グループのコミュニティ事業体代表者との原料価格交渉は、1億5000万バーツ以上の価値があると推定された。

大麻ビジネスの現状~食品・飲料~

2021年の法改正により、食材として大麻の使用が可能となった。大麻入りの食品や飲料を摂取するかについての世論調査によると、50.8%が摂取すると回答した。摂取すると回答した人の理由は、薬効があるハーブのため(52.5%)、試したい(21.1%)、以前に試した事があり美味しかった(18.0%)という順で多かった。

食べないと回答した人の理由は、麻薬と見做している(54.9%)、新しい物/珍しい物を試すのが好きではない(30.1%)、先天性疾患がある(10.0%)という順で多かった。

大麻を使用した食品は、バター・ゼリー・クッキー・グミ・ブラウニー・お茶・ポップコーン等があり、国内全体で販売されている。Osotspa・Ichitan・Carabao等の飲料業界の大手ブランドも大麻を使用した飲料製品の開発に取り組んでいる。また、多くのレストランやコーヒーショップが大麻入り食品の販売を始めている。

大麻ビジネスの現状~医療ツーリズム~

タイでは、2019年からパーキンソン病・てんかん・末期癌などの患者に医療用大麻を使用しており、大麻を使用した治療が増えている。2021年には、全国の700を超えるタイ保健省傘下の病院で医療用大麻サービスが受けれるようになった。65,000人以上がサービスを受け、サービス回数の合計は100,000回以上となった。全地域の保健省傘下の病院において、大麻クリニックを開設することが目標とされている。

2021年には、タイ保健省、タイ観光・スポーツ省が協力し、医療用大麻ヘルスツーリズムプロジェクトを立ち上げた。メコン川沿いの東北部の7県において、大麻の栽培地やクリニック、スパなどの訪問活動を行う。

大麻ビジネスの現状~化粧品~

2021年の法改正により、食品・化粧品・ハーブ製品などに大麻を使用できるようになった。Karmart、Beauty Community、Do Day Dream等のタイの化粧品企業が、大麻・ヘンプを使用した製品を研究している。

タイ保健省食品医薬品局(FDA)には、大麻・ヘンプを成分に含む化粧品の登録申請が多数きている。2021年10月29日時点で、218件の大麻入り化粧品の認可が降りている。公的機関HRDIの原料を使用したヘンプシードオイル化粧品、認可されたコミュニティ事業体の原料を使用した石鹸・シャンプーなどの製品が含まれる。

FDAと地方保健局は国の経済推進を支援するため、化粧品の製造業者と輸出業者に便宜を図っている。大麻・ヘンプを成分に含む化粧品の登録申請・支払いは電子システムを通して可能となっており、3営業日内に認可される。また、FDAは化粧品登録申請・ラベリングに関するアドバイス、輸出業者向けの電子システムによる輸出証明書の発行サービスも提供している。

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タイ政府の大麻に関する展望

医療大麻によるヘルスツーリズムの発展

タイ政府は、農民が農産物の付加価値を高め、所得を得る事を奨励している。経済戦略「タイハーブ開発国家マスタープラン」においては、タイを世界有数のハーブ製品の生産国・輸出国にする事を目標としている。これは、コロナ前後における農民と国家の所得増加も目的としている。政府はハーブの研究・技術開発を支援すると共に、大麻についても経済効果のある重要品とみなしている。

政府は次の3分野における大麻開発と経済効果を目指している。➀治療・健康管理の為のタイ伝統薬品➁国内外を対象とした健康食品➂直接体験を通じて大麻について学ぶ機会を提供するヘルスツーリズム。

タイ政府は、全てのレベルで品質基準を満たす医療施設を開発しつつ、タイが世界の医療・健康ハブとなる為にヘルスツーリズムを推進している。医薬品・健康製品等を生み出す商品作物となった大麻が、ヘルスツーリズムをはじめとした医療・公衆衛生関連の産業を促進・発展させ、世界のヘルスケア市場と繋がる機会を増やすと見込んでいる。

大麻に関する教育機会の提供

タイ政府は、大麻に関する、法律・栽培・医療・ビジネス等の各面について、国民に教育する方針を固めている。タイ保健省は、政府で定めている12の各健康エリア毎に大麻の知識を提供するためのイベントを開催する。

2022年3月4日にスリン県から開始し、最終開催地のウタイターニー県では2022年5月29日に終了する予定。大麻の栽培から加工までの流れにおいて、疑問点を解消できる。

イベントの形式は次の通り。➀大麻・ヘンプに関するフォーラムの開催:タイ伝統医学・現代医学・一般人部門における、医療用・新しい商品作物としての大麻・ヘンプ利用の更なる発展についての認識・理解➁展示会・ブース:大麻・ヘンプの利用における健康・収入を得る方法に関しての進捗状況の認識/治療薬・医療大麻クリニック・付加価値をもたらす物(食品・菓子・飲料・化粧品・旅行ルート等)について。

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タイの大麻に関する課題

大麻ビジネスによる詐欺の横行

大麻生産に関連する詐欺も発生している。生産エリア拡大を希望する際は、タイ保健省食品医薬品局(FDA)へ申請し、食品法で定められた手数料を支払えば良い。しかし、生産地記載も必要であるなどと偽り、最大20万バーツを騙し取るなどといった手数料詐欺も起きている。

大麻の依存症リスク

大麻は薬効もあるが、依存症のリスクもある。そのため、麻薬リストから除外するのではなく、麻薬として扱うべきだという意見もある。また、抽出物に関する条件だけではコントロールが難しいため、麻薬扱いにならない抽出物の条件も示すべきとの意見がある。

さらに、大麻は脳への影響も及ぼす。大麻を使用する事が将来の社会にどれだけ悪影響を及ぼすかについて懸念する声が上がっている。

基準値超えの大麻製品の流通

THC含有量が0.2%を超える大麻抽出物は麻薬扱いとなるが、レストランで提供される料理をはじめとして、薬品・食品・各種製品のTHC含有量を確認することは困難である。THC測定はラボのみで行われ、検査費用はかなり高い。製品ごとに検査行う事は難しいため、政府は基準等を明確にする必要があるとの指摘がある。

Bangkok Biz Newsの発表によると、市場で入手した大麻を使用した食品・菓子・乾燥食品・飲料のサンプルについてTHC含有量を調査したところ、飲料・粉末茶0.214〜0.231%、クッキー0.498%など、THC含有量0.2%未満という基準を満たしてないケースが多く確認された。

販売者が売れ行きを良くするために、密かに多めの大麻を混ぜる可能性があるとの懸念もある。大麻を含む全ての食品は、販売前に検査が必要であり、食品成分として使用される大麻についても検査すべきとの意見が上がっている。

まとめ

タイでは大麻の規制緩和により、医療用だけでなく食品や化粧品への大麻利用も増えています。医療ツーリズムを始めとする経済効果への期待とは裏腹に、依存症への懸念も起きています。今後も政府や企業の動向に目が離せません。

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