【インドネシアの仮想通貨】国民の関心やイスラム法での規制を解説

今回は、インドネシアの仮想通貨に関して解説します。世界的にも仮想通貨への関心が高いインドネシア。一方で、イスラム法の観点で利用が禁止されているケースもあります。今回は、インドネシアの仮想通貨事情に関して詳しく解説します。

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目次

インドネシアの仮想通貨事情

インドネシア国民の仮想通貨への関心

仮想通貨の交換を行う米国に本拠を置くGeminiが2021年11月から2022年2月の間に20か国の約30,000人を対象に実施した調査によると2021年は仮想通貨が大きく取り上げられた年であり、特にインフレで通貨切り下げを経験した国での採用が目立ったとのこと。

とりわけ、インドネシアが仮想通貨の採用で世界をリードしており、Geminiはインドネシアで調査した人々の41%が仮想通貨を所有しているのに対し、米国では20%、英国では18%であったと報告している。Geminiによると2021年に仮想通貨を保有していると回答した人の79%が長期的な投資のために仮想通貨を購入しているとのこと。

また、現在仮想通貨を保有していないがインフレに対するヘッジとして仮想通貨を購入することを計画していると答えた人の比率は、米国の16%、欧州の20%に対しインドネシアでは64%に達しており、インドネシアのルピアが2011年から2020年の間にドルに対して50%下落したことを反映しているとのこと。

インドネシアにおける仮想通貨の利用用途

インドネシアの大手メディアの一つTEMPO.COの2022年3月29日の「Wamendag Jelaskan Pertumbuhan Transaksi dan Jumlah Pedagang Aset Kripto:商務副大臣が仮想通貨資産取扱業者数と取引の拡大を明らかにした」という記事の中で、商務省がインドネシアの仮想通貨の取引金額が2020年:64.9兆ルピアから2021年:859.4兆ルピアと大幅に拡大し、2022年1月から2月の期間では、83.8兆ルピアを記録し、前年同期比14.5%増加したことと2022年2月末の仮想通貨の登録顧客数が1,240万人に達したことを明らかにした。

インドネシアでは仮想通貨は取引売買の決済通貨として使用することは禁止されているため、資産として保有されている。

インドネシアでは自国通貨のルピアが2011年から2020年の間にドルに対して50%下落したことから、仮想通貨保有者の多くは通貨切り下げのヘッジのために保有していると言われている。今後も顧客数、取引金額とも増加すると見込まれている。

インドネシアにおける主要な仮想通貨取引所

インドネシアの大手メディアの一つTEMPO.COの2022年3月29日の「Wamendag Jelaskan Pertumbuhan Transaksi dan Jumlah Pedagang Aset Kripto:商務副大臣が仮想通貨資産取扱業者数と取引の拡大を明らかにした」という記事の中で、コモディティ先物取引規制庁(Bappebti)からの登録証明書をすでに持っているインドネシアの仮想通貨資産トレーダー数が18社であることが報じられた。今後さらに増えると予想されている。

18社は以下の通り。

PT Tumbuh Bersama Nano、PT Aset Digital Berkat、PT Aset Digital Indonesia、PT Cipta Koin Digital、PT Garad Koin Indonesia、PT Indodax Nasional Indonesia、PT Indonesia Digital Exchange、PT Kripto Maksima Koin、PT Luno Indonesia Ltd、PT Mitra Kripto Sukses、PT Pantheras Teknologi Internasional、PT Pedagang Aset Kripto、PT Pintu Kemana Saja、PT Rekeningku Dotcom Indonesia、PT Tiga Inti Utama、PT Triniti Investama Berkat、PT Upbit Eechange IndonesiaとPT Zipmex Eechange Indonesiaである。

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インドネシア政府の仮想通貨への見解

インドネシアにおける仮想通貨の法的な扱い

インドネシアでは、「通貨」に関する2011年法律第7号で法的な支払い手段がルピアであることが規定されている。また、「輸出収入の受領および外国為替債務の引き出しに関するインドネシア銀行規則番号16/10/pbi/2014の改正」に関する2015年インドネシア銀行規則第17号でインドネシア共和国(NKRI)の領土内でのルピアの強制使用が規定されている。

そのため、インドネシア共和国の領土内で法定通貨として有効なインドネシア共和国の単一国家(NKRI)通貨としてルピアを使用することになっており、仮想通貨は取引の決済通貨として使用することは禁止されている。言い換えれば、現在、為替レートとして仮想通貨を使用して売買活動を行うことはできない。

しかし、資産としての仮想通貨の取引は「先物取引所での現物商品市場の実施」に関する2019年Bappebti規制第2号によって商務省の商品先物取引監督機関(Bappebti)の監督の下で許可されている。

インドネシアにおける仮想通貨の税制的な扱い

ロイター通信ジャカルタ支局は2022年4月1日に「インドネシアは5月から仮想通貨にVAT、所得税を課す」というタイトルの記事を掲載した。

コモディティ先物市場における2021年の仮想通貨取引の合計は859.4兆ルピア(598億ドル)に達し、2020年の取引額の10倍以上に増加した。デジタル資産取引がブームとなっているインドネシアでは、2022年5月1日から仮想通貨取引に付加価値税(VAT)を課し、仮想通貨への投資からのキャピタルゲインに所得税を課すことが発表された。

仮想通貨は商務省によって先物取引所での現物商品の一つとして定義されておりVATの対象となる。また、仮想通貨の売買により得られたキャピタルゲインは所得税の対象となる。

通常、商品やサービスに掛けられるVAT率は11%であるが仮想通貨に対するVATは0.1%である。一方、仮想通貨によるキャピタルゲインに適用される所得税率は株式の所得税と同じ総取引額の0.1%である。

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イスラム教組織の仮想通貨への見解

イスラム法化における仮想通貨の扱い

2021年11月12日のKompasの記事「Kripto Halal sebagai Aset, Haram Jika Dipakai untuk Alat Pembayaran:仮想通貨は資産としては合法、支払いの手段として使用される場合は違法」によると、インドネシア・ウラマー評議会(MUI)は仮想通貨を資産として保有することについてはイスラム法上合法であるが、取引売買の決済通貨として使用することはイスラム法上違法であるため禁止するという見解を明確に示したと報じた。

これは、2021年11月12日に開催された第7回全国ウラマ・イジティマ・フォーラムで取引売買の決済通貨として仮想通貨を使うことがイスラム法上違法であるという解釈を発表したことによる。

MUIによると、商品または資産としての仮想通貨の使用は人間の必要性を満たすために使われ有用性があるためイスラム法上の解釈が「sil’ah:良い」と見なされるとのこと。そのため仮想通貨が所有および取引売買されることについてはイスラム法上合法だということ。

したがって、インドネシアのイスラム教徒は依然として仮想通貨を資産または投資として保管し、それを取引することは許可されているが、支払い・売買取引の手段として仮想通貨を使用することは禁じられているということ。

イスラム法化における仮想通貨の規制

2021年11月12日のKompasの記事「Kripto Halal sebagai Aset, Haram Jika Dipakai untuk Alat Pembayaran:仮想通貨は資産としては合法、支払いの手段として使用される場合は違法」によると、インドネシア・ウラマー評議会(MUI)が「bitcoin」、「ethereum」、「dogecoin」などのような仮想通貨を取引売買の決済通貨として使用することを禁止する理由が2つあるということ。

仮想通貨には「gharar」と「dharar」が含まれているためである。

「gharar」は不確実性、危険、偶然またはリスクを意味し、高利貸しやギャンブルのようなイスラム法の下での取引では否定的な要素を表し、仮想通貨による決済は取引におけるシャリーア条項の不履行による取引の不確実性があるとみなされているためである。

「dharar」は一般的に個人が他人にあるいは自分自身に与える損害、危害または損失のすべての原因を指すもので、仮想通貨での決済は損害を引き起こす可能性のある取引であるためである。

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インドネシアの仮想通貨の今後の展望

仮想通貨市場の更なる加熱

Geminiの最新の調査結果によると、インドネシアで今後仮想通貨を購入しようとしている人々の64%がインフレや為替下落に対する資産の実質的な目減りに対するヘッジとして検討しており、米国の16%、欧州の20%に対して極めてその率が高いという顕著な特徴がある。

Geminiの分析によるとインドネシアルピアは2011年から2020年の間にドルに対して50%下落しており、継続的なルピアの下落がインドネシアの人々にルピアが弱い通貨であるという認識を植え付けているということのようである。

現在、米国はインフレからの脱却のために金利を引き上げている。金利が上がると世界中がドル買いに向かいドル高がさらに進むことになる。そのため、相対的にルピアの価値は下落することになり、インドネシアの人々の仮想通貨への関心はさらに高まることになる。

既保有者は買い増し、新規参入者が増えると、仮想通貨の買い圧力が価格上昇につながり、さらに市場を加熱する状況になることが予想される。

セキュリティー対策の重要度

インドネシアでは2021年の仮想通貨取引額が859.4兆ルピア(598億ドル)と前年の64.9兆ルピアから10倍以上の急激な伸びを示している。また、コモディティ先物取引規制庁(CoFTRA)からの登録証明書をすでに持っているインドネシアの仮想通貨資産トレーダー数も18社と急速に増えている。さらに今後も仮想通貨の取引額、トレーダー数とも増加すると予想されている。

日本でも2014年に「マウントゴックス事件」、2018年に「Coincheck事件」が起こったが、インドネシアも仮想通貨の市場規模が拡大し、セキュリティーに脆弱性を持つ新規トレーダーが急速に増えると、国際的なハッカー集団に狙われる可能性も高くなる。

とりわけ最近、北朝鮮政府と関連があるオンライン犯罪組織「ラザルス」が仮想通貨の盗難事件にかかわり被害額が拡大しているとも言われており、取引所のハッカー対策を含むセキュリティー強化と仮想通貨はコールドウォレットに移しておくことや取引所を複数登録してリスク分散をするなどといったユーザーへのセキュリティー啓蒙が重要になってくると考えられる。

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