【台湾の半導体】世界の半導体需要と台湾での生産事情を解説

5GやIoT、クラウドサービスの台頭により、今後も世界的に半導体需要が供給量を上回ることが予想されます。今回は、世界でもトップクラスの生産量を誇る、台湾での半導体事情について解説します。

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目次

世界と台湾での半導体事情

世界的な半導体需要

2020年における世界の半導体の生産額は5,559億米ドルに上った。これは前年比26.2%の増加である。また、2021年の生産量も11,469億枚に達し,2020年比20.2%の増加となっている。中国が世界一の半導体市場となっており、2021年、全世界の34.6%が中国市場で販売された。

半導体の生産量は不足している。Covid-19感染症により世界的にリモートライフへの移行が進み、チップの需要が急増したこと、またその後の経済回復により自動車や家電製品などの耐久消費財の需要が増加した。これらの需要が急増するに伴い、半導体の需要も急激に増加した。

これからもしばらく半導体の生産量不足は続きそうだ。理由としては、5Gや高性能計算(HPC)、クラウドサービスの増加、IoTのさらなる利用拡大、車載用電子機器の増加など半導体が必要とされる分野がますます増大するからだ。

台湾における半導体の生産状況

台湾半導体産業協会(TSIA)によると、2021年の台湾の半導体の生産額は
40,820億新台湾ドル(1,458億米ドル)に達し、2020年から26.7%増加した。
2022年には4.8兆を超え、前年比17.7%増になると予想されている。
 
内訳はIC設計業が12,147億台湾ドル(434億米ドル),であり2020年42.4%増、IC製造業が22,289億台湾ドル(796億米ドル),前年比22.4%増,ファウンドリ生産が19,410億台湾ドル(693億米ドル),前年比19.1%増などとなっている。

一方で台湾は半導体装置においては輸入に頼っている部分が多い。2020年の輸入額は230億米ドルであり、日本からの輸入は55億米ドル、23.7%を占め、米国からの輸入は22.2%、次いでオランダからの輸入が21.7%となっている。

台湾での半導体生産の課題

台湾は半導体の生産においては世界でもトップクラスであるが、ことに上流の生産設備や材料については多くを輸入に頼っている。台湾中央政府は米中対立による設備や材料に対する輸出制限を踏まえこの分野の強化を図っている。

台湾において半導体生産設備の企業は126社あるがその内の約90%が中小企業である。そのため研究開発費などにおいては限界があり、他の国の大企業に比べると競争力がとても弱いのが問題となっている。

台湾は日本の九州ほどの小さな島であり、その中に半導体工場が立地している。そのため、台風や地震などの影響を受けやすい。また、台湾は慢性的な電力不足 や水不足に悩まされており、エネルギー政策を見直すことを求める声も多い。

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台湾の半導体生産強化の政策~Å世代半導体計画~

Å世代半導体計画とは?

「Å世代半導体計画」と言われる台湾中央政府の経済部、科技部(日本の省に相当する)を主体として実施されている、半導体の技術強化を目指すための施策である。2021年~2025年を対象に予算が計上され、実施されている。

経済部における「Å世代半導体-先端技術と産業チェーン自主発展計画」には37億新台湾ドルが計上され、科技部の「Å世代半導体-未来の半導体と量子技術開発計画」には19億新台湾ドルの予算が計上されている。

この計画においてはおもに四つの分野において重点が置かれている。1、生産設備。2、基幹材料。3、Å世代半導体の開発。4、人材育成についてである。目標とともに、実施可能な技術的な要件を含めて計画がなされている。

補助金の側面からみた半導体生産計画

台湾の半導体設備メーカーは規模が小さい為、競争力が劣る。そのためTSMC、UMCなど売上高1,000億台湾元以上、世界市場シェア5%以上の国際的なファウンドリーの生産設備内で台湾の設備メーカーが行うβサイトテストに補助金を支給する。

国内半導体設備メーカーへの助成により、品質検証に合格することを目指す。2026年までに国内半導体設備売上高の増加を目指し、年間売り上げ高60億新台湾ドル以上の増加を目指す。

科技部においては、Åスケールの半導体キー検出技術研究、主要な半導体部品材料研究、次世代ナノ半導体コンポーネントおよびウェーハの主要技術研究において、年最高2500万台湾ドルの補助を行っている。

また、上記科技部の施策においては、プロジェクトマネージャーおよびサブプロジェクトマネージャーに月々5万新台湾ドル、3万新台湾ドルの研究補助費を支給している。次世代化合物半導体の研究においても年最高2200万台湾ドルを限度に補助が行われている。プロジェクトマネージャーおよびサブプロジェクトマネージャーに月々3万新台湾ドルの研究補助費を支給している。

外資誘致の側面からみた半導体生産計画

台湾は半導体生産能力で圧倒的な強さを持つが、半導体材料は米国など海外からの輸入に頼る割合が多い。米国などの輸出管理規則により、半導体材料の輸入が規制されるリスクは高く、台湾当局は材料の自主開発・生産を重点に掲げ、国内に外資の誘致を進めている。

大規模設備メーカーの研究開発やテスト拠点を誘致する。すでに、アプライドマテリアルズ、ASML、東京エレクトロン、ラムリサーチ、KLAテンコールの上位五社は既に台湾に一部の開発研究や生産拠点を設置している。

行政院においては、南部、高雄にある半導体材料専区の建設を推進し、2030年までに南部に外資系企業も含めた半導体材料関連企業を集積させることを表明している。高雄市も積極的に誘致活動を行っている。

上記計画においては、日系の半導体薬液貯蔵タンクのバルカー、ドイツの化学大手のメルクは生産設備を増強する。また、半導体特殊材料大手の米国インテグリスも2021年に高雄市に工場を建設している。

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台湾の主要な半導体メーカーの概要と特徴

TSMC 台灣積體電路製造股份有限公司

TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.)は1987年に設立され、台湾新竹サイエンスパークに本拠を置く。製品を受託製造する、専業ファンドリービジネスモデルを展開している。全世界のファウンドリー市場のシェア5割強を占める。TSMCブランドでの設計、製造、販売は行っていない。時価総額はおよそ63兆円で世界で9番目に価値ある企業に列挙されている。

2020年のTSMC全体のウエハー製造能力は、子会社を合わせて、年間1,200万枚 (12インチ換算) である。台湾に、12インチギガファブ 4拠点、8インチ工場4拠点、6インチ工場1拠点を有し、その他に完全子会社であるTSMC Nanjing Company Limitedの12インチウエハーファブ1拠点、米国に8インチ工場2拠点がある。

主な顧客は、アップル、インテル、クアルコム、AMD、Nvidia、キャノン などであり、世界中の約500社を超える顧客に約12,300以上の製品を製造提供してる。

2022年の第1四半期の事業割合はスマートフォンが40%、ハイパフォーマンスコンピューティングが41%、IoTが8%、自動車用電子機器が5%、家電製品が3%、その他が3%となっている。

MediaTek 聯發科技股份有限公司

MediaTek Inc.は1997年に設立された。台湾新竹サイエンスパークに本拠を置 
く。ファブレスIC設計企業である。年間15億台以上のデバイスを提供する、世
界で第4位のグローバルファブレス半導体メーカーとなっている。

スマートテレビや音声アシスタントデバイス(VAD)、Androidタブレット、フィーチャーフォン、光学プレーヤー、ブルーレイ プレーヤー、DVDプレーヤー向けのチップセット技術で市場をリードし、携帯電話の分野では業界第2位のシェアを持つ。

積極的なM&Aでも知られ、2007年3月にはデジタルカメラ向け画像処理LSIを手がけていた米NuCore Technologyを買収。同年9月には米アナログ・デバイセズから携帯電話用チップセット「Othllo」とベースバンドチップ「SoftFone」の製品ラインを買収している。

ASE 日月光投資控股股份有限公司

Advanced Semiconductor Engineering Inc は、台湾の高雄の楠梓加工輸出区に本社を置く。日月光半導體製造股份有限公司(ASE)と矽品精密工業股份有限公司(SPIL)が株式転換により設立した投資持株会社である。2018年に設立された。

組立・試験における独立した半導体製造サービス(OSAT)の世界最大のプロバイダーである。2020年の営業収益は、パッケージングおよびテスト事業が約57%、電子ファウンドリサービスが約43%、その他の事業が約0.5%となっている。

2020年売上高は前年比20.9%増の161億8,200万米ドルで、OSATを手掛ける施世界20社の合計売上高の45%を占めている。半導体需要の伸びを背景に主力の封止・検査(ATM)事業の売上げが大きく伸びていることに起因する。

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台湾の半導体に関する今後の展望

次世代半導体の開発

10年後を見据え、官民一体となった開発が進められている。台湾中央政府のすすめる「Å世代半導体計画」などに基づいて以下に上げるような次世代半道体の研究開発が進められている。

半導体装置に関して、Åスケールの半導体検査技術のさらなる開発を目指す。構造と化学組成のÅスケール分解能を検出するための確立されたイメージングと
分光技術、確立された半導体および多層構造のインターフェースと表面Å分解能
の欠陥検出分析が含まれる。

挑戦半導体コンポーネント材料に関しては、大面積で高品質な低次元半導体材料成長技術を開発すること、低次元半導体デバイスを開発するための重要な技術の開発、新しい機能性低エネルギー部品材料の制御技術と産業用途の潜在的技術を開。

サブナノ半導体デバイスおよびチップの主要技術のさらなる探求を目指す高密度3次元集積回路技術を開発し,チップ密度とコストに挑戦し、2030年に2020年比1ナノメートルあたり32倍の効率を持つ技術を開発。

低電力のスイッチングコンポーネントと超高効率の演算フォーマットを確立する。エネルギー消費とチップのエネルギー効率に挑戦して、2030年に2020年比1ナノメートルあたり50倍から1000倍の効率の技術を目指す。

半導体人材の育成と流出防止策

これから5GおよびAIがますます重要度を増す国際社会において、半導体人材の確保は喫緊の課題となっている。台湾の優秀な人材の中国を初めとした海外への流出、また、少子化の問題は顕著となっており、対策が急務となっている。

国際的に後れをとっている半導体設備分野における人材の育成に力を入れている。経済部における「Å世代半導体-先端技術と産業チェーン自主発展計画」において、五年間で180人以上の優秀な人材を育てること、3880人以上の高レベルの国際的で高度な才能を育てることが明記されている。

台湾中央政府労働部は中国への人材流出を防ぐため、人材派遣業者に、中国企業の募集広告を載せない事や、仲介して中国企業に人材が流れないよう要請した
  これに違反すると最高500万新台湾ドルが課される。

半導体人材の確保のために条例を改正し、今後一,二か所の大学を選定し、国家重点領域(半導体、AI、機械、材料)の研究を行う大学院を設立し、企業とともに人材を育てる。また、国家重点分野を扱う学士クラスの定員を10%増やし、修士および博士クラス定員を15%拡大する。

企業と大学が協力し、半導体研究開発への大学の投資を強化し、優秀な学生の参加を奨励するために、3~5か所の半導体研究開発センターを共同で設立することを進める。これらにより毎年10,000人の新しい半導体人材が追加されると推定される。

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