【インドネシアのEV(電気自動車)】主要メーカー5選と2022年の最新動向を解説

インドネシア 電気自動車

日本の自動車メーカーの牙城と言われてきたインドネシアの自動車業界。しかし近年、脱炭素化に向けてEV(電気自動車)が注目され始めており、特にEV(電気自動車)の分野では中国企業の勢いが強まってきています。

今回はそんなインドネシアのEV(電気自動車)業界について、主要メーカーや政府の動向を解説します。

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インドネシアでビジネスをするなら知っておきたい10のこと
目次

インドネシアのEV(電気自動車)市場

インドネシアのev(電気自動車)政策

EVの世界的な需要増で車載用リチウムイオン電池(LIB)の需要が高まり、LIBの正極材に利用されるニッケルの需要増が見込まれている。

インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵量・生産量を誇る。インドネシア政府はニッケルを含む鉱物資源について、国内での高付加価値化に取り組んできた。そのため、現在、インドネシア政府はEV車両・電池のサプライチェーン拠点化を目指している。

「脱炭素」という観点からインドネシアはEV普及を目指す姿勢で、政府が発表した「2050年に向けた低炭素と気候強靭(きょうじん)化長期戦略」によると、2060年までにカーボンニュートラルを達成することを目論んでいる。

一方、EVサプライチェーンの構築を図るため、2021年3月に国営インドネシアバッテリー公社(IBC)が設立された。同社は国営企業のMIND ID、アネカ・タンバン、プルタミナ、PLNが共同出資する持ち株会社。

外国企業の投資と技術力を活用しながら上流の鉱物資源採掘・加工から中流のEVバッテリー製造、下流の電気自動車生産、リサイクルに至るまでのインドネシアのEVサプライチェーンの確立を狙っている。

インドネシアの四輪EV市場

2019年8月、バッテリー電気自動車(BEV)の開発促進に関する大統領令2019年第55号が公布された。同令では、2025年までに四輪車の生産台数の20%をBEVにする方針を示した。そのほか、EV関連産業の促進、インセンティブの付与、充電インフラの整備などを規定している。

さらに、BEVの原材料・部品の現地調達率(TKDN)についても、段階的に高めることとされた。特に2030年以降は、TKDNが80%以上と規定されている。その上で、工業大臣規定2020年第27号により、バッテリーやドライブトレインなど複数の部品に関してもTKDNが定められた。

インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)の公表資料によると足元のEV普及率はまだ0.3%という状況であるが、EVの生産台数目標に関しては、工業省が2019年1月「自動車産業ロードマップ」を発表し、2020年9月には同大臣令として交付された。2035年の四輪車全体の生産台数目標400万台に対し、低炭素排出車(LCEV)の生産台数目標を30%(120万台)に設定し、BEVだけで国内生産100万台を目指している。

EVの充電設備については、エネルギー鉱物資源省が2030年までにEV用の一般充電ステーション(SPKLU)を3万1,859台整備する計画である。目標通りに進むと、2030年にEVが約200万台普及したとしても対応できる。

インドネシアの二輪EV市場

2019年8月、バッテリー電気自動車(BEV)の開発促進に関する大統領令2019年第55号が公布された。同令では4輪車だけでなく2輪車についても規定されている。

EV関連産業の促進、インセンティブの付与、充電インフラの整備などが規定されているだけでなく、原材料・部品の現地調達率(TKDN)についても、段階的に高めることとされており、2輪車の場合は4輪車より前倒しされている。4輪車が2030年以降に対して2輪車は2026年以降、TKDNを80%以上とするよう規定されている。

電動モーターサイクルの生産台数目標に関しては、工業省が2019年1月「自動車産業ロードマップ」を発表。2020年9月には同大臣令として交付した。2035年の二輪車全体の生産台数目標1,500万台に対し、電動モーターサイクルの生産台数目標を30%(450万台)に設定した。

電動モーターサイクルの充電設備については、エネルギー鉱物資源省が2030年までに電動モーターサイクル用の一般バッテリー交換ステーション(SPBKLU)を6万7,000台に増やす計画である。同省は、目標通りに進むと、2030年に電動モーターサイクルが約1,300万台普及したとしても対応できるとのこと。

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インドネシアのEV(電気自動車)の主要メーカー

Toyota Indonesia

2019年8月、バッテリー電気自動車(BEV)の開発促進に関する大統領令2019年第55号が公布された。同令では4輪車だけでなく2輪車についても規定されている。

EV関連産業の促進、インセンティブの付与、充電インフラの整備などが規定されているだけでなく、原材料・部品の現地調達率(TKDN)についても、段階的に高めることとされており、2輪車の場合は4輪車より前倒しされている。4輪車が2030年以降に対して2輪車は2026年以降、TKDNを80%以上とするよう規定されている。

電動モーターサイクルの生産台数目標に関しては、工業省が2019年1月「自動車産業ロードマップ」を発表。2020年9月には同大臣令として交付した。2035年の二輪車全体の生産台数目標1,500万台に対し、電動モーターサイクルの生産台数目標を30%(450万台)に設定した。

電動モーターサイクルの充電設備については、エネルギー鉱物資源省が2030年までに電動モーターサイクル用の一般バッテリー交換ステーション(SPBKLU)を6万7,000台に増やす計画である。同省は、目標通りに進むと、2030年に電動モーターサイクルが約1,300万台普及したとしても対応できるとのこと。

Mitsubishi Indonesia

2022年7月26日付けTEMPO紙によると、アイルランガー経済担当調整大臣は三菱自動車株式会社がインドネシアへ10兆ルピア追加投資することと、同社がまもなく新しい電気自動車、ミニキャブ MiEV を発売する予定であることを発表した。

三菱自動車では2021 年末までにインドネシアの工場にすでに11.3 兆ルピアを投資している。

三菱自動車では2023年以降、xEVタイプの車であるエクスパンダーとパジェロスポーツの生産に注力する。また、2024 年から電気自動車 (EV)の新しい2モデルを生産する予定である。

三菱自動車は、2060年までにカーボンニュートラルを達成するというインドネシア政府のプログラムを支援するために、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、およびバッテリー電気自動車(BEV)のカテゴリーの自動車を製造することで製品を多様化していく計画である。

Hyundai Indonesia

2022年3月17日付けロイター通信によると、韓国に本社を置く現代自動車グループはインドネシア初の電気自動車の現地組立を行う新しい自動車工場を立ち上げた。

開所式で挨拶したジョコウィ大統領は、インドネシアが電気自動車のグローバルサプライチェーンにおいて重要なプレーヤーとなること。インドネシアには電気自動車の開発に必要な鉱物資源が豊富にあること。とりわけ、EVバッテリーの重要な原料であるニッケルの主要産出国であり、バッテリーにも使用されるコバルトを生産するなどインドネシアのポテンシャルの高さを述べた。

現代自動車は2019年に2030年までに総額15 億 5000 万ドルをインドネシアに投資すると発表した。

当初年間15万台の生産能力からスタートし、最終的に年間25万台に引き上げる予定。また、新工場は、2024 年に開設予定のHyundai-LG合弁のバッテリー工場とも連携する。総工費11億ドルで9月にHyundai-LG合弁のバッテリー工場の建設が開始された。最大生産能力は10GWHである。

PT SGMW Motor Indonesia

2022年8月8日付けKOMPAS紙によると、PT SGMW Motor Indonesia (Wuling Motors)が「Air ev」のインドネシア現地生産を開始したことを報じた。

「Air ev」はバリで開催される G20 サミットでも使用される電気自動車の一つである。今回発売した「Air ev」はWuling Motorsが世界向けに開発した最新のバッテリーベースの電気自動車であり、インドネシアで最初に発売される。来たるG20 サミットにはWuling Motorsから300台の「Air ev」が提供される。

中国に本社を置くWulingグループの総従業員数は1万名、その内インドネシアには1,000名が従事している。「Air ev」の発売の前にインドネシア市場に導入されているWuling Motorsのモデルは6車種で、創業以来の7年間で、すでに9万人のお客様を持つ。Wuling Motorsが今までにインドネシアに投資してきた総額は10億米ドルを超えている。

今回の「Air ev」の発売でPT SGMWがインドネシアの主要な電気自動車生産者になることが期待されている。

Foxconn

2022年2月10日付けでロイター通信が伝えるところによると、台湾を拠点とするFoxconnが第3四半期にインドネシアで電気自動車とバッテリーを製造するための投資を開始するとバリル・ラハダリア投資相が発表した。

中部ジャワ州のバタンにある工業地帯の200ヘクタール(494.21エーカー)に工場を建設し、車両に加えてバッテリーセル、カソード前駆体、電気通信スペアパーツを製造するというもので、総投資額は 80 億ドルに達する。なお、この投資額はFoxconnだけでなく、EV パートナーシップの 5つの会社によって行われる投資総額とのこと。

Foxconnは先月、インドネシアの投資省と国営のIBC(インドネシア・バッテリー・コーポレーション)、エネルギー企業のPT Indika Energy、台湾の電動スクーター・ベンダーのGogoroと提携し、バッテリー製造を含むEVへの幅広い投資を行うことを発表した。

また、Foxconnは近年EV事業を拡大しており、米国の新興企業Fisker IncやタイのエネルギーグループPTTとの取引も発表している。

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インドネシアのev(電気自動車)サプライチェーンの構築状況

インドネシアのEV(電気自動車)生産の優位性

インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵量・生産量を誇る。2022年1月時点の埋蔵量は2,100万トンで、世界の約22%を占める。インドネシア政府はニッケルを含む鉱物資源について、国内での高付加価値化に取り組んでおり、2020年からニッケル鉱石の輸出を全面的に禁止している。

EVサプライチェーン構築により新たな高付加価値成長産業として取り組もうという国家としての意思の表れである。

一方、自国に豊富な資金と技術を持たないインドネシアはインセンティブを活用して海外の資本や技術を取り込みながらサプライチェーンを拡大することに余念がない。上流のニッケル採掘から加工、中流のEV電池生産、下流のEV自動車生産やリサイクルをインドネシアに集約して行こうという取り組みである。

国営インドネシアバッテリー公社(IBC)の役割

2021年3月に国有会社4社が25%ずつ出資してIBC(国営インドネシアバッテリー公社)が設立された。4社は、鉱物資源会社のantamとMIND ID、石油ガス会社のPERTAMINAと電力会社のPLNである。

IBCのビジョンは「グローバルな電気自動車 (EV) およびバッテリー エコシステム企業になる」こと。

ミッションは、①上流から下流までのバッテリー、EVの統合エコシステムの確立により、インドネシアの資源の可能性を最大化する。②インドネシアにおけるバッテリーおよび EV エコシステム市場の発展を積極的に奨励する。③会社の競争力を高め、EVおよびバッテリーエコシステムのキープレーヤーになるための能力を構築する。④国産電気自動車の開発を支援し、ASEAN およびグローバルの生産拠点となるようにする。⑤EVおよびバッテリー開発におけるグローバルパートナーと協力する。ことである。

EV(電気自動車)サプライチェーンへの投資状況

サプライチェーンの上流では、合弁によりQMB New Energy Materialsが設立された。出資したのは世界最大のステンレス鋼メーカー青山鋼鉄や、世界最大の車載用LIBメーカーCATLの関係会社などいずれも中国系企業で、二次電池の製造に欠かせない高純度ニッケル・コバルト化合物を鉱石から一貫して製造する。資本金は2億1,000万ドルで日本の阪和興業も8%出資している。

サプライチェーンの中流では、韓国の現代自動車がLGエナジーソリューションと共同で、LIBセル生産工場を首都ジャカルタ近郊に建設すると発表した。両社の合計投資金額は11億ドル。生産されるLIBセルはEV向けで、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム酸リチウム正極を採用する。台湾企業もサプライチェーンへの参画を目指しており、Foxconnと電動スクーターのGogoroがIBCやインドネシア投資省、同国のエネルギー大手インディカ・エナジーと覚書に調印している。

また、サプライチェーンの下流では、インドネシアのタクシー大手のブルーバードが中国のBYD、米国のテスラと連携し、EVタクシーの導入を進めている。また、バス高速輸送システムのトランス・ジャカルタもBYDなどと連携し、ジャカルタで電動バスを試験的に運行している。

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