【ベトナムキャッシュレス市場2025】主要QR決済6選とキャッシュレス浸透状況を解説

ベトナムのキャッシュレス決済市場は驚異的な成長を続け、日本企業のビジネス拡大に不可欠な戦略的機会を提供します。

本記事では、政府の強力な推進、VNPAYなど主要電子ウォレット企業の最新動向、市場シェア、そして今後の展望まで、2025年時点の全体像を徹底解説します。

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目次

ベトナムのキャッシュレス事情

ベトナム政府のキャッシュレス推進状況

ベトナム政府は国家戦略としてキャッシュレス決済の普及に積極的に取り組んでおり、デジタル経済の発展を促進するための包括的な規制枠組みと政策を展開している。2021年10月には首相決定No.1813/QD-TTgとして「2021~2025年のベトナムのキャッシュレス決済の発展枠組みに関する合意」が発表され、明確な数値目標が設定された。

この政府計画では、2025年までにeコマースにおけるキャッシュレス決済比率を50%以上に引き上げることを目指している。また、15歳以上の成人の銀行口座保有率を80%以上にし、キャッシュレス決済の件数・金額の伸び率を年平均20~25%とすることが掲げられている。さらに野心的な目標として、モバイル決済の取引件数の伸び率を年平均50~80%、金額の伸び率を同80~100%とし、キャッシュレス決済を行う個人や企業の比率を40%以上にすることが定められている。最終的には、キャッシュレス決済の価値をGDPの25倍に相当するレベルまで倍増させることが目標とされている。

ベトナム国家銀行(SBV)は関連省庁と緊密に協力し、規制枠組みの改善と決済システムのイノベーション促進を指示されている。同時に、関連するリスクの効果的な管理も求められており、銀行、決済サービスプロバイダー、テクノロジー企業に対してはサービスの改善と消費者情報の保護を優先するよう指導されている。

政府の具体的な取り組みとしては、毎年6月16日を「キャッシュレスデー」と定め、消費者にキャッシュレス決済の利用を促進するイベントを実施している。また「キャッシュレスタウンフェスティバル」を開催し、ミニチュアのキャッシュレス社会モデルに基づいて訪問者が現金を使わずに買い物や食事、エンターテイメント活動を楽しめる環境を提供している。国際協力の面では、タイ、ラオス、カンボジアなどの近隣諸国とのQRコードによる国境を越えた小売決済の推進に取り組んでおり、銀行口座を持たない人々でも電子決済を利用できる「モバイルマネー」サービスの導入も進められている。

ベトナムの決済事情

ベトナムの決済環境は近年劇的な変化を遂げており、特に都市部を中心にキャッシュレス決済が急速に普及している。伝統的に現金取引が主流であった同国だが、デジタル化の波により決済手段の多様化が進んでいる。

銀行口座保有率は著しい成長を見せており、2023年時点で成人の74.63%が銀行口座を保有している。この数値は2017年の3割台から急速に上昇したものであり、政府が2025年までに設定した80%以上という目標に対して、すでに87%に達したという報告もある。

現在主要な決済手段として、QRコード決済が最も急速に成長している分野となっている。2023年の最初の5ヶ月間で取引量が151.14%、取引額が30.41%増加するという驚異的な成長を記録している。モバイルウォレット市場では、MoMo、ZaloPay、ViettelPay、ShopeePay(AirPay)、VNPay、Moca(Grabpay)などが主要プレイヤーとして競合している。インターネットバンキングも成長を続けており、2023年の最初の5ヶ月間で取引量が75.54%、取引額が1.77%増加した。

一方でクレジットカードの普及率は依然として低く、ベトナムの人口のわずか4%強しかクレジットカードを所有していない。対照的に、モバイルマネーは着実に浸透しており、2024年5月末時点で880万人以上のユーザーを抱え、そのうち72%(630万人以上)が農村部や山岳地帯、遠隔地のユーザーである。

ベトナムのe-ウォレット市場規模は2024年に416億米ドルと評価されており、2025年から2033年にかけて年平均成長率13.90%で成長し、2033年には1,523億米ドルに達すると予測されている。モバイル決済市場については、2025年に475.6億米ドル、2030年には760.4億米ドルに達するとの予測が立てられている。

市場シェアの観点では、MoMoがベトナムのe-ウォレット市場で68%のシェアを持つリーダーとなっており、ZaloPay(53%)、Viettelpay(27%)、ShopeePay(25%)、VNPay(16%)、Moca(7%)が続いている。決済代行サービス(IPS)提供者は2024年時点で50社のみであり、金融業界が政府によって厳しく規制されていることが背景にある。

ベトナムのキャッシュレスの利用状況

ベトナムにおけるキャッシュレス決済の利用状況は、スマートフォンの普及やEコマースの成長、そして新型コロナウイルスの流行を契機として急速な拡大を見せており、現在では人々の日常生活において欠かせない支払い手段となっている。

利用統計を見ると、2023年のモバイル決済取引数は70億件を超え、総額は1.98兆米ドル以上となり、前年比でそれぞれ61%、12%の大幅な増加を記録した。2023年の第1四半期には、銀行間電子決済取引が前年同期比で8.6%増加し、2022年には銀行間電子決済システムが約1億5,520万件の取引を処理し、その価値は前年比29.90%増加した。

e-ウォレット取引の成長は特に顕著であり、2018年から2023年の期間において取引量と価値が一貫して二桁成長を達成し、年平均成長率はそれぞれ80.4%と83.5%を記録している。Visaが実施した調査によると、ベトナム人消費者の約77%が現金を全く使わずに3日間連続で過ごせると回答しており、キャッシュレス決済の浸透度の高さを示している。

利用者層と地域差については、都市部では若年層を中心にApple PayやMoMo、ZaloPay、Mocaなどのキャッシュレス決済やタッチ決済の利用が増加している。興味深いことに、農村部や山岳地帯、遠隔地でもモバイルマネーの利用が拡大しており、モバイルマネーユーザーの72%がこれらの地域に居住している。2023年末時点で活発なe-ウォレットユーザー数は3,600万人であり、2024年末までに5,000万人(39%増)に達すると予測されている。

利用シーンは多岐にわたっており、QRコード決済は映画や飛行機のチケット購入、通信費、光熱費や水道料金の支払い、衣類、化粧品、家電製品の購入など、あらゆるサービスで利用可能である。カフェやスーパーマーケットだけでなく、デリバリーサービス、タクシー、仕立て屋まで、多くの事業者がQRコードでの決済サービスを提供している。特筆すべきは、地元の市場において床に野菜を並べているような小規模な商人でもQR支払いが可能なケースが多いことである。Zalo(ベトナム版LINE)などのメッセージアプリでQRコードを送信すると、本人でなくても代わりに支払うことができる機能も普及している。

しかしながら、急速な普及に伴い課題も存在している。サイバーセキュリティリスク、オンライン決済詐欺、地域間のデジタルインフラの格差などが主要な懸念事項となっている。長期的な競争においては、プロモーション戦略から技術的進歩、包括的なエコシステムの構築、顧客体験の向上、追加の金融サービスによる収益源の多様化へと重点が移行すると予想されている。

出典:https://www.div.gov.vn/implementation-of-scheme-on-cashless-payment-promotion-in-vietnam-for-2021-2025-period-en

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ベトナムのキャッシュレス決済~カード決済事情~

クレジットカード

ベトナムにおけるクレジットカードの普及率は依然として非常に低い水準にある。2023年7月のベトナム国家銀行決済部のデータによると、ベトナム国内に流通している国内クレジットカード数はわずか8.7%に留まっている。ベトナムの人口のわずか4%強しかクレジットカードを所有しておらず、これは日本の68%、台湾の54%、シンガポールの49%と比較すると著しく低い数値である。

2023年7月時点で国内で流通しているクレジットカードの枚数は81万1,400枚以上に達し、2022年の同時期と比べて42.5%増加した。ベトナムには国内クレジットカードを発行するカード発行会社が15社あり、それらの平均成長率は29.6%/年で、国際クレジットカード会社の平均成長率17.72%/年よりも高くなっている。

ベトナムの消費者金融会社ベトクレジット(VietCredit Finance)は現在、国内クレジットカード市場でシェア50%余りを握っている。国内クレジットカードは国際クレジットカードに比べて利便性に優れたものが多く、国内クレジットカード発行会社が負担する手数料が国際クレジットカードと比較して非常に少ないため、利用者が恩恵を受けている。

ベトナムで利用できるクレジットカードブランドは、VISAやMastercard、JCBなどである。ベトナムは基本的にVISAカードの普及率が高く、次に利用しやすいのがMastercardとなっている。限定的ではあるが、店舗やサービスによってはJCBやアメックスが利用できる場合もある。

VISAとMastercardの加盟店数は1,000万店舗を超えており、ベトナムでもっとも使いやすいカードブランドとなっている。

デビットカード

ベトナムにおけるデビットカードの普及状況は、クレジットカードと比較してより広範囲に浸透している。ベトナム国家銀行決済局の統計によると、ベトナム人は現在、有効な銀行カードを約1億5,700万枚保有しており、2025年第1四半期で100万枚増加した。

国際決済カードの発行は引き続き急増しており、金融機関は2025年第1四半期に約180万枚の国際カードを発行し、合計5,020万枚に達した。この数字は2021年初頭の3倍に相当する。一方、国内カードの発行は減速の兆しを見せている。国内決済カードの発行枚数は約1億700万枚にとどまり、前年末比70万枚減少し、過去1年間で最低水準となっている。

市場シェアに関しては、Vietcombankが国内首位で23%の市場シェアを獲得しており、続いてAgribank(19%)、BIDV(13%)、Vietinbank(12%)、DongA(6%)である。また、近年ベトナム国内のデビットカード市場でシェアの増加率が大きい上位5行は、VietinBank(18%)、Agribank(17%)、BIDV(16%)、Vietcombank(15%)、東亜銀行(7%)である。

国内デビットカードの取引額は年平均8%で増加しており、2021年6月30日時点の国内デビットカード市場の総取引額は1兆184兆6,830億VNDに達し、2018年と比較して4%増加した。

OpenGov Asiaによると、2025年までに、ベトナムはモバイル決済トランザクションの量が50〜80%増加し、トランザクション金額が毎年80%から100%増加すると予想されている。また、15歳以上の人口の少なくとも80%が銀行口座を持ち、インターネット決済が毎年35%から40%拡大し、消費者と企業が40%の割合でキャッシュレス決済を使用することを意図している。

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ベトナムのキャッシュレス決済~QRコード決済事情~

VNPAY

2007年3月に設立されたVietnam Payment Solutions Joint Stock Company(VNPAY)は、ベトナム電子決済市場をけん引するリーディング企業である。同社は現在、40以上の銀行、5つの通信会社、さらに200以上のEC企業を含む20万店舗規模のネットワークにサービスを提供し、QRコード決済や電子決済インフラの拡大に大きく貢献している。

VNPAYは、バンキングアプリや電子財布にQRコード決済機能を組み込む先進的な取り組みを進めており、その代表的なサービスであるVNPAY-QRは、ユーザーがモバイルバンキングや電子財布アプリからQRコードをスキャンするだけで簡単・安全・迅速に決済できる。VNPAY-QRは30以上の銀行アプリ、8つの電子財布と連携し、全国の小売店、レストラン、自動販売機、ECサイトなど多様なシーンで利用可能だ。

2025年現在、ベトナムの非現金決済市場は急速に拡大しており、政府機関の統計によると、2023年初頭から半年間でQRコード決済の利用件数は前年同期比151%増、モバイル決済も64%増と大幅な成長を記録している。VNPAYはVisaやBIDVなど国内外大手と連携し、決済インフラの強化や新たなデジタルサービス展開を推進。特にVNPAY-POSは、小規模・中規模事業者向けの「オールインワン」決済・販売管理ソリューションとして、Mai LinhやVietnam Airlinesなど大手企業にも導入されている。

MoMo

MoMo(Momo E-Wallet)は、ベトナム最大のスーパーアプリ兼決済アプリであり、M-Service社が運営する電子決済サービスである。2009年にベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam)から営業ライセンスを取得し、正式にサービスを開始した。MoMoはベトナム初のスマートフォン向け電子ウォレットとして、送金や金融、旅行、娯楽、寄付など多様な分野で幅広いサービスを展開し、一般ユーザーの日常生活に不可欠な存在となっている。

2025年現在、MoMoのアクティブユーザー数は2,300万人以上、最新のデータでは3,000万人規模に迫るともいわれている。ベトナム国内の飲食店の80%以上、スーパーマーケットの70%以上でMoMo決済が利用可能であり、全国に14万箇所以上の決済対応ポイントが存在する。さらに、5万以上のアフィリエイトパートナーと連携し、コンビニやスーパーマーケット、飲食店、映画館、ECサイトなど多様なシーンで簡単かつ安全な決済が可能だ。

MoMoは単なる決済アプリにとどまらず、公共料金や携帯電話のチャージ、P2P送金、保険、マイクロローンの申し込み、投資、株式取引、映画や飛行機・ホテルの予約、寄付など、生活のあらゆるニーズに対応する「スーパーアプリ」として進化している。また、AIやブロックチェーン技術を活用した高度なセキュリティと、キャッシュバックやデジタルクーポンなどのリワードプログラムがユーザーを惹きつけている。

MoMoはベトナムのキャッシュレス化を牽引しており、2025年の電子ウォレット取引額は500兆VND(約20億ドル)を突破し、国内の非現金決済市場の中心的存在である。さらに、2025年にはVisaやVNPAY、ZaloPayと連携し、VisaカードのQRコード決済も実現している。また、2025年1月以降は生体認証やVNeID(ベトナム公安省の電子認証アプリ)との連携による本人確認が強化され、安全性と利便性がさらに高まっている。

ZaloPay

ZaloPayは、ベトナム初の大手SNS「Zalo」やオンラインゲームなどを手がけるVNG Corporationが運営する電子ウォレットサービスである。2016年にサービスを開始し、現在は約1,500万人の登録ユーザーと月間450万人のアクティブユーザーを抱え、ベトナム国内でMoMoに次ぐ第2位の電子ウォレットとして確固たる地位を築いている。

ZaloPayは20以上の銀行と提携し、生活やビジネスのあらゆる支払いニーズに対応できるように設計されている。送金、電話やインターネット通信料の決済、電気・水道・インターネットなどの各種代金の支払い、ECサイトや店舗での決済など多様な用途で利用できる。また、ZaloPayはベトナム国内の銀行間QRコード規格「VietQR」にいち早く対応し、マルチQR決済を導入したことで、他行アプリや他ウォレットからもZaloPayのQRコードを介して決済が可能となっている。

静的QRコードと動的QRコードの両方に対応しており、顧客は専用アプリで店舗カウンターのQRコードをスキャンして支払う静的な方法と、POSマシンのZaloPayアプリで支払い方法を選択し、POSに表示されるQRコードをスキャンして決済する動的な方法が利用できる。この柔軟なQR決済システムにより、ZaloPayはベトナム国内の小売店や飲食店、サービス業など幅広い業態で導入が進み、提携店舗チェーン数は12,000超、マルチQR決済導入から半年で全取引の19%を占めるまでに成長している。

2025年には、ZaloPayはベトナム公安省と連携し、電子ID認証(VNeID)による本人確認や、医療・教育・航空券予約などの公共サービス決済への対応も強化している。さらに、VPBankのデジタルバンク「Cake」と提携し、オンラインカード発行やローン、貯蓄サービスなどもアプリ内で利用できるようになり、フィンテックとデジタルバンキングの融合を推進している。

Moca

Moca(Moca E-Wallet)は、東南アジア最大手のマルチサービススーパーアプリ企業Grabが展開する電子決済サービスであり、2012年にマレーシアで創業したGrabが2018年10月からGrabアプリに電子決済機能として実装した。Moca E-Walletは、ベトナム市場においてGrabのライドシェア、フードデリバリー、送金、電話やインターネット通信料の決済、店頭での支払いなど、幅広い用途で利用できるキャッシュレス決済プラットフォームとして普及していた。

MocaはATMカードや国際デビットカード(VISA、Mastercard、JCB等)と安心して連携でき、ベトナム国内の25社以上の金融機関と提携し、現地の銀行口座やクレジットカード、デビットカードとの決済にも対応していた。また、全ての取引情報は最高レベルの不正検出機能とセキュリティ技術で保護されており、ユーザーは高い安全性のもとでキャッシュレス決済を享受できた。

しかし、2025年5月31日、GrabはベトナムにおけるMoca E-Walletのサービスを2025年7月1日をもって終了することを発表した。これはGrabの事業再編戦略に基づくものであり、ユーザーは7月1日までに残高の引き出しや銀行口座への返金が可能であり、それ以降も残高がある場合はMoca側から返金が行われる。今後はZaloPayやMoMo、銀行カードなどの他の決済手段への切り替えが推奨されている。

ShopeePay

ShopeePayは、シンガポールのSeaグループ傘下でASEANや台湾などで展開する大手ECプラットフォームShopeeが提供する電子決済サービス(ShopeePay Wallet)であり、もともとはAirpaye Walletとしてサービスを開始した後、2021年6月に現行の名称に変更された。ShopeePayはShopee本体のECサイトでのオンライン決済や、携帯電話へのチャージ、オンライン送金、店舗でのQRコード決済など多様な用途に対応している。

ベトナムではShopeePayがNo.1のECサイトShopee内で広く利用されており、オンラインショッピングの決済や店舗でのQRコード決済を迅速かつ安全に実現できる。2025年5月現在、ShopeePayは金融機関や通信会社など24社以上のビジネスパートナーと連携し、サービス基盤を拡大している。たとえば、ベトナムの大手銀行VPBankとの提携により、ShopeePayアプリから銀行口座と連携した決済や「Buy Now, Pay Later(後払い)」、キャッシュバック特典なども利用できる。

ShopeePayのScan&Pay機能では、ユーザーがQRコードをスキャンするだけで店舗やパートナーサイトで支払いが可能だ。決済や入出金の際には、生体認証(指紋や顔認証)や6桁の認証コードを使用した安全な認証システムが導入されており、PCIDSS基準にも準拠した高いセキュリティが確保されている。さらに、2025年4月からは「Tap Secure」機能が追加され、すべての取引がユーザー本人の承認を必要とする仕組みとなり、不正利用のリスクをさらに低減している。

Payoo

Payooは、2008年に設立されたVietUnion(ベトユニオン・オンラインサービス合資会社)が2009年にベトナム中央銀行(State Bank of Vietnam)から決済仲介サービスの事業許可を取得し、開始した決済サービスである。運営母体であるVietUnionは、地場大手のSaigon Construction Corporation(SCC)と日本のNTTデータが共同で出資した企業で、ベトナム市場における信頼性の高い決済インフラを構築している。

Payooアプリでは、電気・水道・電話・テレビ・インターネットといった公共料金や、金融関連の各種請求、保険料、学費、医療費など350種類以上のサービス代金を簡単かつ迅速に支払うことができる。請求書が届くと「お支払いのリマインダー」機能で通知が届き、タッチ一つで決済が完了する仕組みが特徴だ。また、モバイルアプリやウェブサイト(www.payoo.vn)を活用すれば、インターネットバンキングや銀行窓口、全国15,000カ所以上の決済対応ポイント(コンビニ、スーパー、ショッピングモールなど)でも支払いが可能である。

PayooはQRコード決済機能も搭載しており、Payooアプリや連携する銀行アプリ、電子ウォレットからQRコードをスキャンして店舗やパートナーサイトで支払いができる。このQR決済はFamilyMartや大手小売店などでも導入され、ベトナム国内でキャッシュレス決済の普及を牽引している。

Payooのサービスは国際的なセキュリティ基準であるPCIDSSやISO27001にも準拠しており、ユーザーの情報保護や安全性が高いことも強みだ。2025年現在でも、年間取引額は1億ドル規模を維持し、ベトナム最大級の決済プラットフォームとして、日常生活の決済インフラを支えている

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ベトナムのキャッシュレスの現状課題

法制度の課題

ベトナムでは電子決済の分野における法制度は近年改善されているが、依然として不完全で不十分である。特に近年は電子決済市場の急速な発展・普及に法制度が追いついておらず、数多くの新しいサービスが生まれている反面、デジタル通貨や電子マネーに関する具体的な法制度の整備が追い付いていない状況である。

現金主義の課題

一般のベトナム人はキャッシュレス決済の使用に不安を感じている人が多い。特に農村地域ではキャッシュレス決済の利用が初めての経験になる事が多く、電子決済利用への心理的障壁が大きい状況である。

ベトナム国家銀行のデータでは、ベトナム国内には約8,850万の銀行口座があるが、総人口(約9,762万人/2020年)より少なく、銀行口座を持つベトナム人は全人口の上位35%で、依然として銀行口座を保有していない人が多い。

また、International Data Group (IDG)の調査では、銀行口座を保有するベトナム人(全人口の40%程度)に関しても日常的な支出の80%は現金を使用している状況である。

セキュリティ対策の課題

ベトナム国内での電子決済の利用にあたり、アカウントのセキュリティや決済における安全性が問題になっている。情報漏えいや盗難、ハッカーによる脅迫や詐欺に遭う事例が発生しているからだ。そのため、決済手続きに必要な個人情報の提供を心配したり、情報が盗まれてハッキングされ、お金を盗まれる事を恐れているベトナム人が多い。

決済仲介業者ではセキュリティ対策や安全性向上に取り組んでいるが、アプリの決済照会システムがより複雑になり、特に中高年の顧客層には電子決済の利用を躊躇する消費者が増えている。

また、ベトナム国内の電子決済で利用される決済照会システム自体のインフラも脆弱な状況である。具体的には電子決済サービス事業者と電子決済サービスを導入した事業者の拠点が物理的に離れている場合、決済処理の同期や手続きに時間がかかる等の問題がある。上記のような問題を解決する事で、地方を含めたより広いエリアに電子決済が普及していくと思われる。

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