【タイのドローン】タイのドローンの主要メーカー5選と利用シーンを解説

タイでは写真愛好家だけでなくスマート農業に関心のある農家も多いことから、ドローンの製造業者・販売業者にとって、大きな潜在市場となっています。今回は、中国の大手ドローンメーカーからも注目を集めているタイのドローン市場について詳しく解説します。

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タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと
目次

タイのドローン市場

タイのドローンの市場規模

中国の大手のドローンメーカーのSZ・DJIテクノロジーは、ドローン技術に対する消費者の強い関心度という観点において、タイをトップ5の市場の1つと見なしている。

写真撮影愛好家のテクノロジーに精通した消費者や、ドローンによる肥料・殺虫剤の散布が可能な多くの小規模農家がいるタイは、ドローンの製造業者・販売業者にとって、大きな潜在市場である。タイのドローン市場は約3億8,000万米ドル、または約120億バーツの市場価値があるとされている。

タイのドローンの登録台数は、2016年の109台から急増している。タイ民間航空局(CAAT)のデータでは、2021年7月31日時点のタイで承認されたドローンの登録台数は、約34,942台(約3,000台は、農業用)で、操縦者数は、約44,000人となっており、市場は大きく成長している。

タイ政府は、技術・イノベーションによる農業の開発、スマート農業を推進しており、米・ドリアン・ヒマワリ・パーム油等の栽培で効果的に使用されている。タイのスマート農業における重要なツールとなっている農業用ドローンの利用は、現在農地全体の20%しかカバーしてないが、年々需要が高まり、年間平均成長率30~40%で市場が拡大しており、今後3~5年以内に少なくとも30,000機に増加すると見込まれている。

タイのドローン利用者の特徴

タイにおいてドローンの登録が必要な所有者は、以下の4種類に区分される。
➀一般的なドローンの使用をする人
➁映画撮影、ショー イベント等の一時的な任務にドローンを使用する人
➂国家保安機関を除く、全ての政府機関および民間機関
④ドローンをタイに持ち込む外国人観光客

省令によりタイでのドローンの使用は、『➀娯楽やスポーツの為の趣味としての使用、➁➀以外の目的であり、報道・テレビ番組・映画・航空機の研究・開発・その他』の目的に応じた2種類のカテゴリーに区分されている。

カテゴリー➀で重量が2kg以下のドローンの使用については、操縦者が18歳以上であるか法定代理人の監督が必要である。カテゴリー➀で重量が2kg~25 kgのドローンとカテゴリー➁のドローン(カテゴリー➁の全ドローンの重量条件は25 kg以下)の使用については、操縦者は20歳以上であり、国家安全に対して脅威となる行為をせず、麻薬や税関に係る法律で懲役刑を受けた事がない等の条件が規定されている。

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タイのドローンの規制

ドローン利用の際の届け出

タイでドローンを使用する際、以下の機関への登録が必要である。
➀タイ国家放送通信委員会(NBTC) :無線周波数利用の許可申請(車両登録の様な扱い)
➁タイ民間航空局(CAAT):ドローン操縦者の登録(運転免許証のような扱い)

タイ国家放送通信委員会(NBTC)の登録については、全てのタイプのドローンについて所有者の登録が必要。

タイ民間航空局(CAAT)の登録については次の通り。
➀カメラ付きドローンは、全ての場合に登録が必要
➁重量が2kg~25 kgのドローンは、全ての場合に登録が必要。(重量が、2kg未満のドローンは登録不要)
➂重量が25 kg を超えるドローンは、全ての場合に登録が必要。また、運輸大臣からの許可書の取得が必要。また、登録の有効期間は、発行日から2年間で、未登録の場合、航空法(1954年)第 24 条、第 78 条により、1 年以下の懲役、または 40,000 バーツ以下の罰金、またはその両方が科せられる。

タイ民間航空局(CAAT)に登録するドローンは、第三者に対する責任(他人の財産に損害を与えたり、他人を負傷させた場合)を負う為に、事故毎の補償額が最低100万バーツの保険加入が義務付けられている。また、保険証券は、操縦者登録証に添付し、有効期限の少なくとも 30 日前に更新する必要がある。

航空法による規定

航空法(1954年)により、ドローン飛行中の条件として、以下が規定されている。

➀他人の生命・身体・財産を危険にさらし、平和を妨害する様な飛行は禁止
➁航空路誌(AIP-Thailand)で告知されている禁止区域・制限区域・危険区域、許可されてない政府施設・政府機関・病院への飛行は禁止
➂航空機の離着陸線を妨害してはならない
④操縦者は、常に飛行中のドローンの目視が可能でなければならず、ドローンのカメラや他の類似した機器に頼って操縦してはならない
➄ドローンの操縦は、はっきりと目視が可能な日の出から日没の間で行う必要がある
⑥雲の近くや雲の中の飛行は禁止
⑦許可がない場合、空港または航空機の一時的な離着陸エリアから 9 km(5海里)以内での飛行は禁止
⑧地上90m(300フィート) 以上の飛行は禁止
⑨都市・村・コミュニティ・人々が集まっている地域の上空の飛行は禁止
⑩パイロットがいる航空機の近くでのドローンの操縦は禁止
⑪他人のプライバシーを侵害する飛行は禁止
⑫他人の迷惑となる飛行は禁止
⑬省令で規定されている危険物やレーザー照射装置の輸送・搭載は禁止
⑭ドローンの運航に関係しない人、建築物、ビルとの水平距離に対して、重量2kg以下のドローンの場合、30m(100フィート)以内での飛行は禁止、重量が2kg~25kgのドローンの場合は、50m(150フィート)以内での飛行は禁止
⑮事故が発生した際、操縦者は、直ちに係官に届け出なければならない

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タイのドローンの主要メーカー

DGI production Co., LTD.

DGI production Co., LTD.は、“BugAway Thailand” ブランドの農業用ドローンの生産と、DJI社のドローン販売事業を行っている。タイ国内の工場で生産を行っている “BugAway Thailand” ブランドの農業用ドローンは、積載量が3~5L・10L・15~17L・20L・30Lの機種を生産・販売している。また、販売後の修理・部品交換にも迅速に対応しており、国内に複数ヶ所のサービスセンターがある。

同社は2022年5月に、タイ国内の化学肥料・植物保護製品の市場シェアの約15%を占めるICPグループと“Mah Bin” ブランドの農業用ドローンの生産・販売の合弁事業を立ち上げた。

投資予算は1億バーツ以上で、出資比率は、ICPグループ70%・DGI production 30%となっており、2023年迄に農業用ドローンの利用エリアにおいて、農地全体の60%のカバーと農業用ドローン利用者数を1万人以上に増やし、サービスセンターを全国40ヶ所に拡大する事を目指している。

ATI Technologies Co., Ltd.

ATI Technologies Co., Ltd.は、Thaicom社の子会社であるThai Advance Innovation社(Thai AI)とPTT Exploration and Production社(PTTEP)の子会社であるAI and Robotics Ventures社(ARV)との合弁企業で2020年に設立され、登録資本金は2,000万バーツ、出資比率は、 Thai AI 50%・ARV 50%となっている。

ドローンの開発・生産・販売・包括的なサービス提供を目的としており、初期段階では、タイの農業部門の生産性向上を支援する為にスマート農業技術の使用による農業用ドローンの開発からスタートしている。

AiANG・XAGの2種類のブランドの農業用ドローンを扱っており、タイでの実際の使用に適したエンジニアリングを基にした設計プロセスから始まるタイの農業向けに開発しているドローンは、タイ語に対応している。また、ユーザーデータ・飛行経路・データ使用量などのデータは、タイ国内のクラウド上に保存される為、外国への情報流出を防ぎ、外国企業が設計したドローンソフトウェア利用の代替に役立つとしている。

HG Robotics Co.,Ltd

HG Robotics Co.,Ltdは、ロボット愛好家のチュラロンコン大学出身の5人のエンジニアにより、2016年に設立されたスタートアップ企業。現地の農業環境に適応したドローンと管制ソフトウェアで構成される包括的な農業ソリューション、パイプライン検査用の水中車両・水上車両などの様々な産業用途向けの無人ソリューションなどを提供している。

また、合弁事業のObodroidを通じた住宅用・セキュリティ用ロボット開発、様々な顧客のニーズに対応する特注ロボットの構築、他社製ロボットのメンテナンスサービスの提供、ロボットの管理・制御用ソフトウェア開発など、幅広いロボット・自動化サービスを提供している。

扱っている農業用ドローンは、高効率の農業用散布作業用マルチローターの” Tiger Drone ”、最適なルート計画と作物の健康状態のモニタリングに適した機能を装備した固定翼調査用ドローンの” VTOL ”、マッピングアプリケーション用のマルチローター” Vespa Hex ”の3種類がある。

EASY (2018) Co.,Ltd

EASY (2018) Co.,Ltdは、農業用ドローン「NAcDrone」の製造・開発を行っている。購入後の家族的なケアを行うアフターサービスチームを持ち、修理期間中に無料で使用できる予備機・2年間の修理費無料・操作法教授・システムの問題による落下における無料修理などの様々なサービス、国内最安値のスペアパーツを提供している。

現在、国内に35ヶ所のカスタマーセンターがあるが、将来的にはタイ国内の全地域にカスタマーセンターを設置する予定。また、近隣諸国への事業拡大も図っている。同社のCEOであるアサウィン氏は、2019年のSMEsキャリア構築大賞で、The Best Of Service Innovation Career賞を受賞している。

同社とタイ防衛技術研究所は、2021年10月に農業生産性向上責務の為のドローンシステム研究開発プロジェクト・ドローンカリキュラムに関するMOAに署名した。

農業用として開発されたドローン「NAcDrone」は、山火事消火用に調整され、50kgの重量を支える事が可能な機体は、サラブリー県の山火事消火に使用された事がある。

SETHAMONGKOL 2007 (THAILAND) Co.,Ltd

SETHAMONGKOL 2007 (THAILAND) Co.,Ltdは、”SEGUMO”ブランドの農業用ドローンの生産・販売をしており、製品は、全てタイ国内で組み立てられている。

日本基準・タイ生産ドローン・手頃な価格が売りで、特徴としては、国際的な生産基準に焦点を当てており、 国際規格ISO9001-2015・IATF 16949-2016、トヨタ生産方式に沿った生産を行っている。

”SEGUMO”農業用ドローンは、積載量が5L・10L・16Lとなっており、機種としては、5Pro Lite(99,000バーツ)・10 Pro Lite(239,000バーツ) ・16 Pro Lite(299,000バーツ) ・10 Pro Plus+ Lite(329,000バーツ) ・16 Pro Plus+ Lite(379,000バーツ)の5種類を生産・販売している。

また、自動または計画に応じて調整可能な前後センサーシステムがあり、バッテリー1セット毎に平均15~20分間の飛行と2タンクの散布が可能で、バッテリーの寿命は使用方法とメンテナンスによるが、300回以上となっている。

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タイにおけるドローンの利用シーン

警察の調査時の利用

プーケット県では、コロナ禍で夜間外出禁止令が発令されていた期間中の2020年4月11日22時~4月12日4時において、地元警察は災害対応協会と協力して捜査にドローンを使用し、発見した発令に対する違反者21人を逮捕した。

また、コロナ禍の同時期にプーケット県のパトン地区では、プーケット県知事に任命された災害対応協会の係員チームが、ドローンを使用し、住民に対してタイ語と英語によるコロナ禍における行動指針についての広報活動を行った。

タイ王立警察天然資源環境犯罪課は、チェンマイ県の森林において、2022年3月に不審な火災発生地点が多く確認された後、ドローンを使用して調査したところ、広大な範囲が煙に覆われて焼失されている事を発見した為、現地に調査に出向いた。そこでは、伐採された広大なエリアが不法なゴミ捨て場と化している事が確認された。該当事例の様に警察の調査にドローンが活用されている。

国防のための利用

2022年7月1日にタイ王国海軍の広報担当者は、沿岸基地に配備するドローンの落札者について、 Hermesブランドのドローン、Hermes 900・Hermes 450のメーカーであるイスラエルのElbit Systems-AEROSPACE社となり、合計入札額は、4,060,551,936.11バーツであった事を発表した。

中国のChengdu Aircraft Industry Group社のWing Loongブランドのドローンも候補であったが、Hermes 900に決定した。尚、タイ王国陸軍は、既にロッブリー県の陸軍航空センター航空局の第21航空大隊にHermes 450 4機を配備している。

2020年5月にタイ防衛技術研究所は、中国人民解放軍が使用しているドローンを開発した中国のBeihang UAS Technology社とタイ国内のドローン製造工場設立に関する覚書を締結した。また、タイの軍隊は様々なメーカーのドローンを使用しており、空軍・陸軍・海軍で連携・協力しておらず、空軍はイスラエルのDominator、陸軍はBeihang UAS Technology社のBZK-005E等を使用している。

点検・保守時の利用

ドローン技術を使用して、高圧送電塔の構造の点検・保守が行われている。ここでは、タブレットを介して情報確認が出来る。ドローンに搭載した高解像度カメラで撮影した内容から、サビや様々な構造上の損傷、使用されているボルト・ナットの状態などの高圧送電鉄塔の構造状態が明確・迅速に把握可能となっている為、コストの節約・検査時間の短縮にもなっている。

タイ北部ランパーン県にある、メーモ石炭火力発電所に石炭を供給しているメーモ炭鉱では、石炭採掘事業で不可欠な航空写真について、以前はGoogle Mapを利用していたが、情報更新が遅いためメーモ炭鉱のマッピングに最新のドローン技術を使用して作業効率を高めている。使用されているドローンは、スイスのWingtra社製のWingtraOneである。

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