ベトナム国内では現在100以上のスマートシティ開発プロジェクトが計画されており、2020年末から現在までに少なくとも28のスマートシティ開発プロジェクトが開始されています。今回はそんなベトナムのスマートシティの現状について詳しく解説します。
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ベトナムのスマートシティの現状
ベトナムのスマートシティの市場規模
ベトナム政府の統計では過去20年間のベトナム国内の平均都市化率は、2000年(24%)から2020年(37%)までの20年間で13%増加した。ベトナム国内の人口の36.8%が都心部に集中しており、1999年(19.6%)から大きく増加しており、2040年には全人口の50%が都市部に集中すると予想されている。
ベトナム国内では現在100以上のスマートシティ開発プロジェクトが計画されており、2020年末から現在までに少なくとも28のスマートシティ開発プロジェクトが開始された。スマートシティ開発プロジェクトは主にハノイ(全プr歩ジェクトの20%)、ホーチミン市(30%)、ダナン(24%)の3都市に集中している。残りのプロジェクトはクアンニン省、バクニン省、ビンズオン省、カントー市などの都市(26%を占める)で計画されている。
ベトナム政府がスマートシティ開発に関する法律(No. 950/Decision-TTg )公布前に既にスマートシティ開発プロジェクトを承認した省及び市が14あった。同法律公布後に、20の省及び市がスマートシティ開発プロジェクトを承認した。現時点で16省・市でスマートシティ開発プロジェクトが着工している。
ベトナム国内でのスマートシティユーティリティやスマートサービスの展開及び開発に関して、全国の約57の地域(2020年比17地域増加)で行われており、主に交通分野(交通秩序及び交通安全の監督)、スマートヘルス、スマート教育等の開発に焦点を当てている。
ベトナムのスマートシティの数
ベトナム国内ではホーチミン市やハノイ市、ダナン市が2018年からASEANスマートシティネットワークに参加している。現在までに、全国の41の省・市でスマートシティ開発プロジェクトが計画又は開発が予定されている。
スマートシティサービスの展開に関しては、多くのスマートシティサービスが全国の約40省・市で開発が進められている。具体的には、①17省がスマートシティの建設中又はスマートシティ運営センターを建設する方針に合意している。②17省でスマートツーリズムサービスアプリケーションの展開が進められている。③約10省でスマートトラフィック(交通)や都市の治安や安全管理に必要なアプリケーションを導入している。④更にスマート教育、スマートヘルスなどの他の分野でも多くのアプリケーションのう導入が進められている。
ベトナム全土で計画されているスマートシティ開発に関係する投資プロジェクトに関してはあまり大きな進捗がない状況である。現在ベトナム国内で計画されているほとんどのスマートシティ開発プロジェクトは初期段階であり、投資方針の承認やプロジェクト詳細計画の作成過程やスマートシティ開発プロジェクトに関する提案の検討過程、スマートシティ建設の初期段階にある。
ベトナム政府のスマートシティの開発目標
ベトナム政府は、2018年から2025年まで期間及び2030年に向けたベトナムにおける持続可能なスマートシティ開発のプロジェクトの承認に関する方向性に関する決定(No.950/QD-TTg)にベトナム国内でのスマートシティ開発に関する具体的な目標が記載されている。
同法律では①グリーン成長や持続可能な都市開発、②スマートシティに関する可能性やメリットの活用及び促進、③資源利用効率向上に向けたベトナム国内での持続可能なスマートシティ開発などに関して記載されている。また、リソースや人材を活用して生活の質を向上させると同時に、企業や個人が都市の研究及び建設に必要な投資、スマートシティ開発に参加するための条件等も記載されている。
ベトナム国内でのスマートシティ開発目標には3つの段階がある。第一段階では、2020年までの期間でスマートシティ開発のためのベトナム国内での法制度など整備し、スマートシティに関する投資準備を行い、都市部でのパイロットプロジェクトの計画を進める。第二段階では、2025 年までの期間で第一段階のパイロットスマート シティ開発を進める。第三段階では、2030年に向けた全国及び地域レベルで国際社会に繋がるスマートシティのネットワークの構築及び国内外で認知されたブランドを備えた3~5のスマートシティ開発を計画している。
ベトナムのスマートシティの政策
地方自治体での施策
現在、ベトナム国内でのスマートシティ建設及び開発に特化した政策は発行されていない。また、地方自治体では土地及び都市村に関する法律・規制に基づいて規制を適用している状況である。ただし、スマートシティの計画や管理、開発に関する政策はベトナム政府の都市管理及び開発に関する法律に基づいて進められている。また、スマートシティ開発に必要な資金は中央政府の予算を利用している。
また、2018年から2025年まで期間及び2030年に向けたベトナムにおける持続可能なスマートシティ開発のプロジェクトの承認に関する方向性に関する決定(No.950/QD-TTg)ではスマートシティに関する以下のような一般的な政策が定められている。
ベトナム政府が法規制や法規制に関わる政策全般を整備するために地方政府が積極的な役割を果たしており、スマートシティプロジェクトへの投資、厳密な計算に基づくスマートシティ開発、コスト及びリスクの厳密な計算、スマートシティ開発に関わる関係者の利益調整、 国産の製品/サービスの利用が奨励などに地方政府が積極的に関わっている。
また、スマートシティに関する認定及び優遇政策に関する法律や規制の策定について記載されている。具体的にはプロジェクトの管理能力を向上させ、建設管理及び都市開発に関する共産党及び国の法律のガイドラインや政策を遵守し、要件を満足するスマートシティを開発するための教育及び再教育プログラムを開発・実行する。
スマートシティ開発に関する優先事項
「2018年から2025年でベトナム国内での持続可能なスマートシティ開発に関するプロジェクト及び2030年へのビジョン」(No.950/QD-TTg)にはスマートシティ開発に関する優先課題がいくつか記載されている。
同法律では、スマートシティ計画やスマートシティの建設及び管理、都市の組織及び個人向けのスマートシティ関連のインフラを含む基本的なコンテンツの構築を優先すると定められている。また、スマートシティに導入される基本的な都市インフラシステムと ICTインフラを相互に接続したスマートな都市空間データベースの構築と上記2つのシステムの統合システムの導入に関して記載されている。
優遇政策としてはスマートシティ開発プロジェクトに関わる様々な関係者へ政策や税金、土地、その他のインセンティブを提供しており、ベトナム国内のスマートシティ開発を支援している。ベトナム政府はスマートシティ開発で発生する課題を積極的に解決し、円滑な開発を支援するために政策や関係者との対話を積極的に行っている。
また、ホーチミン市とハノイ市の2つの中央政府直轄市では、国家予算と民間資本を組み合わせた制度(官民パートナーシップ、Public-private partnership:PPP)を利用し、スマートシティへの投資を促進する政策を取っている。
ベトナムのスマートシティの事例
ハノイ市
現在ハノイ市は急速に都市化しており、ハノイ市市はスマートシティ開発に関してより良い都市開発及び管理や人々の生活の質の向上という目標に向けた都市開発の有効は方法と考えている。
2019年にベトナム最大のコングロマリット(Vingroup)傘下でベトナム最大の不動産ディベロッパー(Vinhomes)が開発したVinhome Smart Cityプロジェクトが建設され、ベトナム初の世界レベルのスマートシティが完成した。同プロジェクトでは、①スマートセキュリティ、②スマートオペレーション、③スマートコミュニティ、④スマートアパートメントの4つを軸に包括的なスマートエコシステムが導入されてる。
また、2019年10月にベトナムの大手コングロマリット(BRG Group)と日本の住友商事(日本)がハノイ市でのスマートシティ開発に向けた合弁会社を設立した。同社はハノイ市内郊外の 272haの土地に約41億3,800万USDを投資し、スマートシティの開発を進めており、2028年に完成予定。本プロジェクトでは、住友商事を含めた日本の大手企業(三菱重工エンジニアリング、NTTコミュニケーションズ、東京電力、NEC等)がコンソーシアムを作り、同スマートシティ内で①スマートエネルギーや②スマートロジスティクス、③スマートガバメント、④スマートラーニング、⑤スマートライフ、⑥スマートエコノミーの6つの軸を中心に包括的なスマートエコシステムが導入される予定。
現在ハノイ市は急速に都市化しており、ハノイ市市はスマートシティ開発に関してより良い都市開発及び管理や人々の生活の質の向上という目標に向けた都市開発の有効は方法と考えている。
2019年にベトナム最大のコングロマリット(Vingroup)傘下でベトナム最大の不動産ディベロッパー(Vinhomes)が開発したVinhome Smart Cityプロジェクトが建設され、ベトナム初の世界レベルのスマートシティが完成した。同プロジェクトでは、①スマートセキュリティ、②スマートオペレーション、③スマートコミュニティ、④スマートアパートメントの4つを軸に包括的なスマートエコシステムが導入されてる。
また、2019年10月にベトナムの大手コングロマリット(BRG Group)と日本の住友商事(日本)がハノイ市でのスマートシティ開発に向けた合弁会社を設立した。同社はハノイ市内郊外の 272haの土地に約41億3,800万USDを投資し、スマートシティの開発を進めており、2028年に完成予定。本プロジェクトでは、住友商事を含めた日本の大手企業(三菱重工エンジニアリング、NTTコミュニケーションズ、東京電力、NEC等)がコンソーシアムを作り、同スマートシティ内で①スマートエネルギーや②スマートロジスティクス、③スマートガバメント、④スマートラーニング、⑤スマートライフ、⑥スマートエコノミーの6つの軸を中心に包括的なスマートエコシステムが導入される予定。
ホーチミン市
ホーチミン市内で計画されているスマートシティプロジェクトの数は、ベトナム全土で計画されているスマートシティプロジェクトの30%を占めている。現在、ホーチミン市内でスマートシティプロジェクトの開発が進められており、2022 年はその流れを更に加速させることに重点が置かれている。
ホーチミン市内では、総投資額約1億1,800万USDを投資した4つのスマートシティ開発プロジェクトが進められている。それらのプロジェクトでは、共有データウェアハウスやオープンデータエコシステムの開発、スマートシティオペレーションセンター、社会経済シミュレーション/予測センター、都市情報セキュリティセンター等を設置する準備が進められている。これらのプロジェクトではベトナム政府(交通運輸省、保健省、教育訓練省、ホーチミン市警察)から提供されたホーチミン市内にある1,500 台以上のカメラが撮影した動画データを利用・活用している。
また、2022年にローカルの大手不動産ディベロッパー(Novaland Group)が 1,000haの土地にスマートシティ(Aqua City)を建設するプロジェクトを発表した。同プロジェクトは、ベトナム南部の代表的なスマートシティプロジェクトである。同プロジェクトでは、①セキュリティ技術や②エネルギーの節約及び管理、③環境、④エコロジカルな学校、コミュニティ、住民向けのユーティリティを軸としたスマートシティの開発を進めている。
ダナン市
ダナン市は交通やセキュリティ、秩序と防災、救急、電力供給、水道、環境、教育、医療などの分野でスマートシティに関連する多くのパイロットプロジェクトを行っている。
ダナン市では政府機関の全てがネットワークでつながった都市ネットワークをl構築しており、データ センターや公共サービス情報センターの建設や電子政府化への準備を進めながらスマートシティの開発を目指している。
ダナン市は2018年に世界スマート持続可能都市機構(WeGO)に加盟し、 Korea International Cooperation Agency (KOICA:韓国国際協力団)及び韓国の大邱市とスマートシティの展開に向けた協定を締結した。また、2020年及び2021年に2年連続でアジア・オセアニア・コンピューティング産業機構(ASOCIO)から ASOCIO・スマート シティ・アワードを受賞しており、同市はスマートシティ開発に関して国内外から高く評価されている。
現在、ダナン市ではローカルの民間最大手IT/通信企業(FPT Group)が投資するスマートシティプロジェクト(FPT City DaNang)が進められている。同プロジェクトは、総面積181haの土地にベトナム中部で最初のスマートシティかつ最大のスマートシティを目指して開発が進めらている。
フンイエン省
現在、ハノイ市以外の北部エリアでは、ハノイ市に隣接していてGDPも高いフンイエン省でスマートシティ開発でスマートシティ開発が進めらている。フンイエン省には、ベトナムの大手コングロマリット(CEO GROUP)傘下の大手不動産ディベロッパー(ECO Park)が日本の野村不動産等を協力しながらECO Park(エコパーク)プロジェクトを展開している。
ECO Park社は、2019年にEcotek Technology Services社及びFundacion Metropoli社(スペインのMetropoli社の関係会社)とスマートシティ開発プロジェクトに向けた戦略的提携に署名した。 ECO Park社が開発を進めているECO Park(エコパーク)プロジェクト内の70haの面積の商業エリアにスマートシティの最新トレンドを導入した。 同プロジェクトは「2018年から2025年でベトナム国内での持続可能なスマートシティ開発に関するプロジェクト及び2030年へのビジョン」に関する首相決定に従い、同プロジェクトはスマートシティ開発プロジェクトの開発に関する目標の設定やベトナム国内のスマートシティ開発プロジェクトの先駆者になる事を目指している。
また、2021 年にフンイエン省は韓国不動産公社 (korea land and housing corporation financial report :LH)とスマートシティ開発に関する協定書を締結した。本協力協定を通じて韓国とベトナム両国間でのスマートシティ開発に関する協力体制の強化が期待されている。また、世界的な競争力があるスマートシティの開発を目指している。
ベトナムのスマートシティの今後の動向
インダストリー4.0の応用
ベトナムではインダストリー 4.0 の成果を応用し、スマートシティ開発を目指すことを国家デジタル変革プロセスにおける3つの主要なタスクの1つと考えている。 「2018年から2025年でベトナム国内での持続可能なスマートシティ開発に関するプロジェクト及び2030年へのビジョン」でスマートシティの管理に関連するスマートシティ開発計画に基づいて開発を進め、スマートなユーティリティの提供及び都市に有利な環境作りに取り組んでいる。
従ってベトナム政府は強力なITインフラストラクチャと密接に関連するスマートシティの開発や電子政府の構築、インダストリー4.0の成果を応用した都市開発プロセスを進めながらデジタル政府への移行を目指している。
また、ベトナム国内の地方自治体ではスマートな意思決定やスマートシティ開発計画及びスマートな都市管理ソリューションの導入を促進するスマートデータベースプラットフォームの構築に注力している。
上記に加えてベトナム国内での科学的戦略プログラムを推進し、スマートシティに必要な質の高い人材を育成し、イノベーションやデジタル変革(DX)、持続可能なスマートシティ開発へのビジョンの達成を目指している。
住民の幸福度や環境保護への取り組み
スマートシティの開発ビジョンに関しては「持続可能なスマートシティ開発及び全国展開に向けた決議(第05/NQ-TW)」で言及されている。
具体的には、スマートシティは単独では機能せず、 ITインフラストラクチャの核として政府や都市などと繋がり、共有する必要がある。また、スマートシティは各エリアの都市開発・発展により良い影響を与えると考えられているため、スマートシティはデジタル都市空間データシステムや国家都市データベースの構築や接続、維持、運用と並行して進めていく必要があると考えられている。
また、ベトナム国内のスマートシティの計画及び開発は、スマートシティとスマートシティに関係する様々な要素を統合・計画し、最適な方法で都市開発を進めていく必要があると考えられている。経済発展だけではなく、都市に住む人の幸福や環境保護にも同時に取り組み、かつ持続可能である必要があり、すべての人や組織、団体などの参加を促すなどの必要な要件を明確化し、生活の質を向上させる必要があると考えられている。
ハノイ在住のベトナム人。名古屋大学で文部科学省奨学金の日研生として留学経験有り。日越の翻訳、通訳などが得意で、日本語教師の経験有り。ハノイで日系IT企業に入社後、主に総務・人事、日本親会社との取引業務を約3年経験し、その後長野県で日本企業で勤務。