2021年に4億米ドルだったアメリカの自動運転車市場は、53.2%の年平均成長率で2030年までに186.4億米ドルに成長すると予測されています。今回はアメリカの自動運転車市場について、主要企業5選を取り上げながら実際の普及状況なども解説します。
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アメリカの自動運転の現状
自動運転レベルとは?
SAEインターナショナルでは、自動車の運転自動化レベルをレベル0からレベル5までの5つのレベルに定義されている。今現在利用可能な最新自動運転車はレベル2で既に機能しており、多くの企業が近い将来より高いレベルを約束している。
アメリカの自動運転車の市場規模
アメリカの自動運転車市場は、2021年に4億米ドルだったが、53.2%の年平均成長率で2030年までには186.4億米ドルに成長すると予測されている。好意的な政府の取り組みと財政支援が、アメリカの自動運転車産業の成長に貢献している重要な要因である
運転しやすさへの需要と、セキュリティ及び安全性の関心への高まりから高性能な技術が必要となり、結果として準自動運転車と全自動運転車への需要が高まり、アメリカの自動運転車業界は全自動運転車に占められると考えられている。
アメリカ自動運転車市場はハードウェア及びソフトウェアコンポーネントによる市場で、市場関係者は新商品発売、合併及び買収、政府との連携や先進技術などの様々な戦略を通して市場成長に大きく貢献している
テキサス州、アリゾナ州、ワシントン州、ミシガン州、カリフォルニア州などで試運転または利用されている自動運転車の移動は特定試験区域や運転条件に制限されている
ミシガン州、ワシントン州、アリゾナ州、テキサス州、フロリダ州やペンシルバニア州などで約170の自動運転技術プログラムが運用されている
連邦規制の枠組みと、多くの自動運転車が道路を走行できるようにするには、より早くより多くの商業展開に対する試験に対応するための監督や努力と共に、連邦規制の枠組みが今必要とされている。
アメリカの自動運転の普及状況
アメリカの自動運転テストの状況
2022年6月、カリフォルニア州陸運局がLiDARセンサー(障害物の感知と車の追跡を行い、距離間を測り安全速度で走行できるようにするセンサー)一つのみを使う自動運転車試験許可をVueron Technologyに承認した。インターステイト5号と580号を使ってロサンゼルスからサンフランシスコまでの383マイルの走行で、最高速度の時速70マイルで6時間走行し、乗車していたセーフティドライバーはハンドルを一切触らず運転に成功した。
2022年3月、グーグルの親会社アルファベットの傘下であるWaymoは、サンフランシスコの従業員に無人自動運転車のSUVモデルであるジャガーIーペースで試乗提供を始めると公表した。
2022年4月、自動運転技術企業であるSTEER Techが、北中部テキサス政府評議会から資金を与えられ、ダラスフォートワース国際空港において自動バレー駐車、自動運転車の監視駐車管理、積極的な電子的カーブマネジメントを含む包括的自動駐車エコシステムを実験する最先端のテストベッドを開発する自動運転車プログラムを発表した。このプログラムの導入で車両乗降場の混雑解消を図る。
自動運転車の普及状況:自動運転タクシー
自動運転タクシー業界は、まだテスト段階にあるが、レベル4自動運転車の大量生産より、州と現地の許可取得、長期における収益性がある区域での事業立ち上げなど、より困難なハードルに直面している。
2022年12月、タクシー配車企業Uberが、ラスベガスの乗客にアプリで自動運転タクシーを呼べるオプションの提供を発表。乗車確認前に、乗車をリクエストした利用者に利用可能な自動運転車が提供され乗客が自動運転車を選択すれば、無人運転技術企業Motionalが製造したロボカーであるヒョンデの中型サイズハッチバック自動運転車アイオニック5が、技術監視をしながら乗客への追加支援をする二人の「車両運転者」と共に乗客の乗車場所に送られる。
2022年6月、カリフォルニア州公益事業委員会は、ゼネラルモーターズとクルーズによるサンフランシスコ市内での配車業務を開始する為の最終申請を承認した。クルーズは、安全運転手無しの電気自動運転車であるシボレー・ボルト30台を使用して市の一部周辺で乗客を運ぶ。
2022年11月、アルファベット株式会社の傘下である自動運転技術企業Waymoが、アリゾナ州のフェニックス大都市圏のWaymo Oneロボタクシー事業をフェニックススカイハーバー空港に拡大すると発表した。
自動運転車の普及状況:自動運転バス
アメリカではレベル4相当の自動運転バスの運転試験がされているが、公共交通機関における公道を走るレベル4の自動運転バスに対する連邦規制が導入されていないため、非常に限定された運行可能なドメインアプリケーション内でのみ展開される。
2020年4月、フロリダ州のマヨクリニックで医療物資とCOVID-19検査キットを運ぶためにアメリカ国内で初めて自動運転車が使用された。医療資源と人材が危機的状況になった時、ジャクソンビル交通局(JTA)は、Beep及びNavyaと協力して安全にCOVID-19検査を運べるように自動運転車を利用した。
2020年2月、アメリカスマート都市チャレンジグラントの一部として、オハイオ州コロンバス市がノースリンデン周辺の地域で、必要に応じてオペレーターが車両を操作できる機能付きのレベル4自動運転シャトルを無料で体験できるサービスを提供した。
2021年1月、電動路線バスメーカーであるニューフライヤーが メリーランド州の非公開研究技術企業であるロボティックリサーチと開発した「北アメリカ初の大型路線自動運転バス」と言われている電動自動路線バスXcelsior AVが、連邦交通管理局(FTA)の資金を受けたプロジェクト内でパイロットテストをすると公表した。
2022年6月、ニューフライヤーが、北アメリカで初となる大型自動運転輸送バスをコネチカット州運輸局と展開する。
自動運転車の普及状況:自動運転トラック
現在アメリカ国内で自動運転トラックの試験走行は実施されているが、セーフティドライバーつきで行われている。目の前の事故の場合などのまれな状況に安全に対応できるようにはまだ時間がかかるため、多くの企業は2024年後半までセーフティドライバーを自動運転トラックから取り除かない予定でいる。
2021年12月、自動輸送スタートアップ企業のTuSimpleが、人間の運転手無しで一般公道での初の自動トラック試験を完了させた。TuSimpleの自動運転システム(ADS)がアリゾナ州ツーソンの車両工場とフェニックスにある流通センター間の80マイルの一般道と高速道路を人間の介入なしでナビゲートした。2024年までに使用目的に特化されたトラックにADS技術を拡張する事を目標にしているTuSimpleにとって重要な節目となる。
2022年5月、輸送業界向け自動運転技術の大手開発ディベロッパーであるEmbark Trucksは、モンタナ州で雪道での路上試験に成功したと公表した。Embarkが特許出願中のビジョンマップフュージョン(VMF)技術(事前にマッピングされた環境ではなくリアルタイムで走行している道路状況に対応できる機能)の性能と安全性を実証するために厳しい冬になる地域で行われ、研究中の雪道での試験を行い、約90%の確率で許容される配送納期内でVMFが正常に機能し、走行を一時停止、再開するという結果が出た。
アメリカの自動運転技術の主要企業5選
Waymo
Waymoは、人々や物が安全に簡単に目的地にたどり着けるようにというミッションを掲げ、 2016年にAlphabetによって設立された自動運転技術の独立企業である。
2020年、物品輸送専用の事業部としてWaymo Viaを導入し、ニューメキシコ州とテキサス州で輸送及び配送パイロットプログラムを実施してWaymo Driver(Waymoの自動運転技術)で物流パートナーがどのようにより安全に効率的に物品を輸送できるか調査を行った。
2022年、カリフォルニア州公共事業委員会(CPUC)は州の交通システムを改革するために、一般への「無人」自動運転車旅客サービスを提供するCPUCの無人運転試験プログラムにWaymoの参加許可をしたことにより、より多くのカリフォルニア住民に無人自動運転車の乗車の潜在的可能性を広げ一般市民が参加する機会を増やすことができる無人旅客サービスへの節目を意味する。
2022年12月、Waymoは、フェニックススカイハーバー国際空港とフェニックスダウンタウン間の配車サービスを一般市民に開始。世界で唯一の24時間利用できる無人自動運転空港サービスである。
Cruise
Cruiseは、自動運転車を現実にする夢を叶えるために2013年に設立された企業である。
2020年に、乗客のためだけにデザインされた全く新しい乗り物の体験となるオリジンを発表。また、COVID-19大流行時に感染リスクが高いサンフランシスコの住民に食事を配達するために自動運転シャトルを再利用したり、Walmartと提携して、アリゾナ州内で電気自動運転車のシボレーボルトを利用して自動運転配送を限定的に実施し、サンフランシスコの路上で初の無人自動車の乗車体験を実施した。
2020年10月、カリフォルニア州陸運局がサンフランシスコの公道で無人自動運転車の試験をクルーズに承認した。サンフランシスコ内の指定された通りで5台の無人自動運転車の試験が可能になる。
2022年2月、アリゾナ州にあるWalmartと提携して、安全運転手が乗った自動配送パイロットテストを拡大すると発表。スコッツデール近くのソルトリバーピママリコパインディアンコミュニティーにあるWalmartのみで実施するが、同計画を8店舗にまで拡大予定である。
Pony.ai
Pony.aiは、世界中に安全で持続可能でなおかつアクセスしやすいモビリティを提供することを目標にし、2016年に設立された自動運転モビリティ技術とサービスを急速に世界中で展開して拡大しているパイオニアである。カリフォルニア州と中国で一般向けロボタクシーサービスを初めて提案・投入し、自動運転トラックの開発にも取り組んでいる。
2022年9月、上海の自動運転車産業企業であるSAICモーターのSAIC AIラボと共同で無人運転技術の探求と推進をすると発表。SAIC AIラボと共にPony.aiはSAIC マーベルRを基準にしたコンセプト車を発表し、 Pony.ai のレベル4無人運転ソリューションが装備された自動運転車シャトルを構築する。
2022年9月、アリゾナ州ツーソンで訓練されたセーフティドライバー付きの自動運転車の試験を開始する計画を発表した。 ピーマコミュニティカレッジが協力し、 Pony.aiにとってアリゾナで最初で唯一の場所であるダウンタウンキャンパスにあるニューオートモーティブテクノロジーアンドイノベーションセンターを主要拠点にする。Pony.aiは、南アリゾナで初めて自動運転乗用車の試験を開始した企業である。
Nuro
Nuroは、2016年に設立され、AIと機械学習を利用して食事、食料品、荷物を配達して収益を上げる自動運転車製造企業である。Nuroは、車幅が狭い小型の自動運転車を開発。車の幅を狭くすることで歩行者の死亡事故を防ぎ、小型でありながらも500パウンドの食料品を運べるようにデザインされている。
2020年12月、カリフォルニア州カリフォルニア州陸運局(DMV) が州内で初めて有料の無人配達サービスで報酬を受け取れる自動運転車の配備許可を発行し、自動運転技術が試験プログラム外で商業的に利用可能なものになった。
2021年8月、ネバダ州南部で125000平方フィートの広さに、何万台もの配送車を組み立てられるようになる新しい自動運転ロボット車製造工場とテストトラックを設置すると発表した。
2022年9月、Uber TechnologiesとNuroは、アメリカ国内での食料品配達向けにNuroの自動運転電気自動車を利用するという複数年の提携を発表した。Uber Eatsの利用者が食事を注文すると、開発されたNuroの無人自動運転配達車が、公道を走行して食事や商品を運んで配達してくれる。
Tesla
有名な物理学者二コラ・テスラにちなんで名づけられたTeslaは、2003年に設立された電気自動車企業である。
先進的な安全機能と利便性機能であるTeslaのオートパイロットは、運転で最も負担の重い部分をアシストできるようデザインされており、新機能を導入し現在の機能性を改善して長期的により安全で高性能なものにする。オートパイロットによって、レーン内でのステアリング、加速及びブレーキが可能になるが、現在のオートパイロット機能は常に運転手による監視が必要で、自動運転車にすることはできない。
2022年7月、カリフォルニア州陸運局が、Teslaのオートパイロット技術について自社のウェブサイトで誤解を招く説明をしていると主張をしTeslaに異議を申し立て、司法省が犯罪捜査中である。
高度運転手支援ソフトウェアである完全自動運転(FDS)のベータ版ソフトウェアが北アメリカ中の人が利用可能になり、車の画面から15000米ドルで購入でき、FDSによって自動で車線変更と駐車が可能になるが、FDSの購入率は2019年第2四半期から減少傾向にある。
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。