【アメリカのドローン配達】主要企業5選と実用化の現状を解説

2020年にドローン配達の市場規模は87億米ドルといわれ、2021年から2030年までのCAGRは21.2%もの成長率を見込まれています。既にAIを用いた効率的な配達ルート作成ツールが実用化されており、さらなる配達の効率化が期待されています。

今回はそんなアメリカのドローン配達事情について詳しく解説します。

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アメリカでビジネスをするなら知っておきたい10のこと
目次

アメリカのドローン配達市場

アメリカのラストワンマイル市場

インターネットの発展などによって、より多くの小売業者がEC(電子商取引)を行うようになった。配送量はより多くなり、2018年の世界の小包量が870億個だったのに対して、2020年には1260億個にまで増加した。アメリカでは、2019年にUPS・FedEx・Amazonの3社だけで112億個の配送をしている。

消費者のもとに届けられる最後の輸送手段は、現在、トラックなどの車両での配達が一般的である。車両である場合、人件費高騰の問題点と環境への配慮の問題点がある。前者に関しては、長く続くアメリカ全体のインフレのため、配達員の年間賃金が8万ドルを超えることも既にみられている。

後者に関して、アメリカの道路を走る車両のうちで、約4%がトラックといわれる。化石燃料トラックは、窒素酸化物排出量のうちの50%、温室効果ガスの7%を作り出しているという。アメリカ全体の傾向として地球環境保全は重要視されているので、Amazon・Walmartなどの小売業者やUPSなどの運輸会社はドローン技術を持続可能な輸送手段としてとらえている。

ドローン輸送に関しての市場規模は、2023年に13億米ドル以上になると予想されている。現在、オンラインと実店舗との買い物比率が半々だが、今後オンラインショッピングがより多くなり、それにともなってドローン輸送も増加していくだろうと予想されている。

アメリカのドローン配達の市場規模

注文した家に最終的に届ける「ラストワンマイル」といわれる輸送部分は、注文者が不在であったり、玄関先においた荷物が盗難されるなど、様々な問題をはらんでいる。何度も再配達となればコストもかかり、配達員に負担がかかる。これを解決する方法のひとつに、ドローン配達が有効視されている。実用化法整備が不十分なため、まだまだ本格的な投入は各企業で見合わせている状態である。

それでも2020年にドローン配達の市場規模は87億米ドルといわれ、2021年から2030年までのCAGRは21.2%もの成長率を見込まれている。その結果、2030年にはドローンによる輸送は600億米ドルに達するのではないかとさえ言われている。既にAIを用いた効率的な配達ルート作成ツールは実用化されており、ドローン配達に組み込まれ、一層の効率化が期待されている。

ラストワンマイルに関して、既にドローンによる商品配達が、各地で実験的に開始されている。従来の、人の車両による配送と比較してドローン配送は効率的であり、また、ノルマ達成のための長時間勤務から人は解放される。車両が入り込めない地形であってもドローン輸送であれば可能になるなど、今後も需要は増えるであろうと予想されている。

ECが爆発的に成長している現在、それにともなってドローン輸送は必要に迫られ、市場規模は拡大していくとされる。10kg以上の荷物をドローン輸送することについて、今後の研究課題とされている。

アメリカのドローン配達の実用化状況

アメリカ運輸省(Federal Aviation Administration)は、2017年から2020年にかけて無人航空機システム統合パイロットプログラム(Unmanned Aircraft System Integration Pilot Program)を実施した。さらに上位レベルプログラムとしてBeyondも用意した。これらの技術訓練や証明書・許可証をもとに、空輸の安全性の徹底度を事業者に対して明確にしている。

2019年4月、Wing Aviation, LLC に対してアメリカではじめて運輸省が公認したドローン輸送許可証を発行した。同年9月、許可を取得したUPS Flight Forwardはノースカロライナ州でアメリカ初の医療品ドローン輸送をなしとげた。2020年8月、Amazonは55パウンド(25kg)を超える荷物をドローン輸送できるように許可を取得した初めての企業であった。

2022年6月、Ziplineは航空会社としてだけではなく、ドローン輸送による運輸業も実施できる許可証をFAAから取得している。2023年1月、Flytrex の長年のパートナーである Causey Aviation Unmannedがドローン輸送の許可を取得し、長距離ドローン輸送を運用し始めた。

その他の企業でも許可取得を済ませており、多くの企業が完全実用化に向けて、さまざまなテストを繰り返している状況である。

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アメリカのドローン配達の主要企業

Prime Time Air

アマゾンは10年以上も前からラストワンマイル配送問題にドローンが有効であると結論付けていた。様々な大きさやシステムのドローンが開発され、2020年にFAAのドローン配送許可を取得すると、カリフォルニア州ロックフォード市とテキサス州カレッジステーション市で実用実験が繰り返された。目標は注文から1時間以内に、しかも無料配送とのことであった。

現在のアマゾンでは、積載最大量は5パウンド(2.2kg)にもかかわらず、本体重量が36kgと、他のドローン機の5kgから18kgと比較して、格段に重いドローンを採用している。実は、2023年3月の時点でドローン機が実際に運んだのは10個程度ではないかと報道されている。同様のテストはアメリカ以外にも、イギリス、オーストリア、フランス、イスラエルで開発センターを設け、テストを繰り返している。

FAAは車道の上を飛行することを、アマゾンに関しては許可していない。Wingはアメリカを含む世界各国で30万件以上の配達実績を持ち、アメリカのウォルマートは6000品以上を既に配送している。アマゾン・プライム・エアー副社長のデイビッド・カーボンが2030年までには年間5億個の荷物をドローン輸送すると語っている。今後のアマゾンの発展が期待はされている。

FedEx

2019年10月、バージニア州クリスチャンバーグ市の家に、アメリカで初のドローン配達が成功した。このドローン配達実験は、FAAが行う無人航空機システム統合パイロットプログラムの一環として、アメリカ運送会社のトップであるFedExとドローン会社のWingが合同で行ったものである。Wing社は家庭向け商業用ドローン配達許可をFAAから授与された最初の企業である。

FedEx社はドローン配達への興味を、近年まで隠していたとされる。革新的なラストワンマイル問題への解決策は、他の会社よりも一歩進んだ状態に存在せねばならず、特許などの問題が複雑に絡み合っていた。このため、メンフィス大学での、FedExドローン配達における研究成果発表時には、無人航空機技術に関する様々な特許を既にアメリカ特許商標庁に登録していたという。

2022年3月にはエルロイエア社と提携し、荷物倉庫での仕分け貨物移動をドローンによって対応するシステムをテストした。倉庫間の荷物移動のためのシステムのための、エルロイエア社が開発した400パウンド(180kg)の荷物を300マイル(480km)離れた倉庫まで空輸する、eVTOL航空貨物システムであった。このドローン輸送システムは充電ステーションなどのインフラを必要とせずに、長距離飛行が可能であった。このドローン技術を利用した、個人宅配達向けへのシステムアップグレードが期待されている。

UPS Flight Forward

UPSは、アメリカでドローン航空会社を運営するため、FAAから公式承認を受けた最初の企業とされている。2019年、UPSはノースカロライナ州ローリー市の病院に、自立型ドローン機によって医療用品を無事に届けることに成功した。さらに2020年には、アメリカ最大の薬局チェーンであるCVSとタイアップして、処方箋薬をフロリダ州ザビレッジ市に配達した。ザビレッジ市は135000人を超す人口で、アメリカ最大の退職者コミュニティといわれる。

さらにUPSは、ドイツのドローンメーカーであるウイングコプター社と提携し、次世代荷物配送ドローンの開発に着手した。当時既に、ウイングコプター社のドローンは、悪天候の中のアイルランドの島に医薬品を届けたり、南海のバヌアツの島にワクチンを輸送した実績もあった。ウイングコプター社の特許取得済みのドローンは悪天候でも安定した動作をすると、現在でも高く評価されている。

更に2021年3月にはドローン設計会社のZipline社と提携し、ガーナでコロナワクチンの配送を支援する事業を開始していた。2024年からBeta Technologiesから電気垂直離着陸ドローンを最大150機購入する計画も発表されており、UPSではドローンによる配達がさらに加速していくと予想されている。

DHL Parcelcopter

ドイツに本社がある輸送業界大手のDHL社は、ドローン配達に対して慎重な態度をとっている。DHLは自社で開発した垂直離着陸ドローンのパーセルコプターを使って、実験を繰り返している。パーセルコプターは2013年に初飛行。初飛行では重さ1kgの荷物を使って、DHL本社までライン川対岸から届ける飛行実験に成功した。

2016年には一般客を対象とした試行期間を設け、自立型パーセルコプターの出荷と配送実験を繰り返した。冬場であれば車で30分かかるスキーリゾート地に、わずか5分程度の最短距離飛行路で荷物を届けている。また、2018年には40万人の島民が住むにもかかわらず複雑な地形と貧弱なインフラのために孤島になった島へ、在庫切れになった医薬品を提供することに成功している。60㎞離れた距離を40分程度で飛行したとされる。

DHL社は、いますぐにドローン配達に切り替える準備はしていないと公言している。今後およそ10年間の時間を経て、ラストワンマイルやミッドマイルの配達において、ドローンが有効手段になるとはしている。実際、アメリカ国内ではトラックにドローンを詰め込み、ラストワンマイルでトラックからドローンによって配送する実験が繰り返されている。

Wing

もとはgoogleの子会社であったが、2018年にスピンオフし、アルファベット社の子会社となった。本社はカリフォルニア州マウンテンビュー市にある。現在はオーストラリア、アメリカ、フィンランドで事業展開している。2019年にはオーストラリアでテイクアウト店から食料と飲料のドローン配達を開始した。また、2019年4月、ドローン配達会社として初めてFAAから運営許可を授与された。2022年には、50000件以上のドローン配達を達成している。

実験の場にオーストラリアが選ばれているのは、ドローン飛行に関する規制がアメリカよりも少ないため。Wing社のドローンの特徴は、荷物をパラシュート落下させないことにある。荷物はドローン本体の中央にeggと呼ばれる専用容器におさめられ、目的地の上空6m程度のところでドローンはホバリングする。そしてケーブルをつけたeggが投下される。地上に落ちたeggから中身を人が受け取ったと感知した後、ドローンは空になったeggを巻き上げ回収し、帰還する。

アメリカ輸送会社大手のFedExや薬局チェーンのWalgreens、そのほか多くの企業と提携し、コロナ禍もあって、2020年には大幅な輸送実績を積み上げた。ただし、実験が盛んだったオーストラリアの住民からは、ドローンが飛行する際の騒音に対するクレームが出されているという。問題はまだ山積みということだ。

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アメリカのドローン配達の実用化に向けた課題

ドローン構造上の問題

現在実験・実用されているドローン機の多くは、耐風性能・防水性能が弱いとされる。両手でなければ傘がさせない風速10m程度のなかで空中停止(ホバリング)することは、現在のドローン機では困難である。緊急を要する医療品の輸送などであれば、悪天候下でも使用できなければドローン輸送の意味が半減する。

安全面に関しての問題点は、最も深刻な問題点といえる。現在のドローン輸送機の主流は幾つかのローターを回転させる、ヘリコプターのような仕組みで飛行するものが多い。離着陸に人を近づけないとしても、墜落などによるローターでの事故は重大な被害になる可能性がある。また、ドローン自体の大きさが小さいことは、それと関連して積載量がまだ少ない点なども課題のひとつである。

自動車メーカーのテスラ社に代表される、自動運転技術は日進月歩である。ドローン機にもAIによる自立型自動運転システムが利用されているものがある。とはいえ、自動車の自動運転技術もまだ完成・完全実用化には及ばず、ドローン技術に利用されているシステムも完全とは言い切れてはいない。

コスト面でも、まだ安価にはなっていない。特に多くのドローン機がバッテリーによる駆動であり、性能を向上させて駆動時間を長くし、コスト面で有利になるように開発を続ける必要がある。より正確に配達するため、搭載されているGPSなどの精度向上も課題となっている。

法にまつわる問題

現在ドローン配達を躊躇している各国の企業が、一番頭を抱える問題点が法律に関係する課題である。アメリカではFAA(アメリカ連邦航空局)がドローン配達にまつわる規制を管理している。当局では、人口過密地区における主要幹線道路上を飛行する際の落下事故への懸念は払拭されていないという。

緊急を要する場合は昼夜問わず配達の必要があるが、現段階では夜間の飛行が禁止されている国が多い。また、領空問題が発生することも考えられる。様々な土地の上空を飛行する際に、土地所有者の上空での権利をどう考えるかも、今後は大きな問題になるだろうと考えられている。

ドローン機にカメラが搭載されているものがある。このカメラはGPSと連動し、現在地が予定位置なのかを判断するために使われるものだが、意図せず人などが写り込んでしまう場合も想定される。こういった場合のプライバシーの扱いも、アメリカでは大きな課題として扱われている。

初期の段階と比較すれば、年々FAAの規制は緩くなってきている。FAAは2024年をめどに最終的なドローン法整備を完成させるとしている。ドローンにwifiを使ってIDを発信させ、重量別に4種類のカテゴリーの規制範囲内であればFAAの承認なくドローンを飛ばせる環境まで、法は整備された。それでも本格的な商用運用に法が整備されるのは数年先になるといわれている。

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