中国の陸運業界は、政府の最先端の交通事業との連携が必要不可欠となっています。2022年には、上海市嘉定区に500.6㎞の自動運転試験道路が全面開通しました。中国の陸運企業は、政府が進める最先端の交通整備に対応して、事業を拡大していくことができるのでしょうか?
今回は、そんな中国の陸運業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 中国の陸運(運輸・物流)業界
NX国際儲運、珠海市と香港を陸路で繋ぐ〜陸運業界動向〜
NIPPONEXPRESSホールディングス株式会社のグループ会社、NX国際儲運有限公司は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、中国国内でさまざまな物流に関連する制限が設けられている中、港珠澳大橋を経由して陸路で珠海市と香港を繋ぐクロスボーダー輸送サービスを2022年9月1日から開始した。
新型コロナウイルス感染症拡大により、華南エリアの深圳市-香港間では現在も厳しい通行規制が実施されており、陸路におけるクロスボーダー輸送においても輸送遅延が常態化し、中国国内の物流にとどまらず香港を輸出入の基点とした国際的なサプライチェーンにも大きな影響が出ている。
NX国際儲運は、華南エリアの珠海市から港珠澳大橋を経由して香港まで陸路で輸送する新たな輸送ルートを開発した。これにより、広東省珠江デルタ内、東側の深圳市、西側の珠海市からの両クロスボーダー輸送が安定することが期待されている。
出典:https://www.nipponexpress-holdings.com/ja/press/2022/20221021-1.html
上海で初の自動運転高速道路がオープン〜陸運業界動向〜
上海市交通委員会が主催する第2回インテリジェント交通上海フォーラムが開催され「道路共同革新アプリケーション作業実施計画(2023-2025)」がリリースされた。
今回、上海市嘉定区に開通した自動運転試験道路の走行距離は500.6kmで、嘉定区の環状高速道路21.5km、北京-上海高速道路19.5km、市内の459.6kmの都市道路303本を含む。これにより嘉定区の自動運転試験道路が全面開通した。
「上海車道共同革新応用工事実施計画(2023-2025)」によると、上海は2025年までに800キロメートル以上のスマート高速道路とスマート都市道路(高速道路を含む)、および500以上のスマート交差点を建設する予定である。
出典:https://www.mot.gov.cn/jiaotongyaowen/202212/t20221208_3720871.html
郵船ロジスティックス、エアポートシティに参画〜陸運業界動向〜
郵船ロジスティクス株式会社は、日系フォワーダーで唯一、香港機場管理局が推進する新たなプロジェクト「エアポートシティ」に参画し、中国華南地区から香港国際空港までフィーダー船を使った航空貨物輸送サービスを開始した。
香港政府の空港管理機関、香港機場管理局(AirportAuthorityHongKong以下、AAHK)は香港国際空港を新たなランドマークにし、経済発展の促進を目指す「エアポートシティ」プロジェクトを推進しており、2022年3月には東莞虎門総合保税区に香港国際空港の拠点が設立された。
これにより、総合保税区において輸出航空貨物を検量、ラベリング、通関手配した後、フィーダー船で香港国際空港へ直接輸送し、航空機に搭載するという新たなソリューションの提供が可能となった。2025年までに、輸入も含めた輸出入一体のオペレーションを行うことも目指している。
出典:https://www.yusen-logistics.com/jp_ja/insights-news/press-releases/16511
江蘇省で1,200kmのスマート道路を建設〜陸運業界動向〜
江蘇省運輸局は「江蘇デジタルハイウェイ開発行動計画(2022-2025)」を発表し、デジタル技術革新を加速し、インフラおよび業界のデジタルガバナンスのレベルを向上させる主要な20のタスクを定めた。
道路管理の意思決定の調整を深めるスマート道路のネットワーク化や、包括的なスマート建設現場の建設、またスマートサービスエリアのパイロット建設を促進し、デジタルロードブランドの総合的構築を目指す。
「第14次5カ年計画」期間の終わりまでに、江蘇省は一般国道、省道、長大橋、トンネルの三次元デジタル化を実現し、1,200km以上のスマート道路を完成させる見込みだ。
出典:https://www.mot.gov.cn/jiaotongyaowen/202211/t20221104_3704663.html
中国運送業大手徳邦が大規模世界展開を発表〜陸運業界動向〜
伝染病の予防と制御のための新しい10の措置が発表された後、中国の多くの省は経済発展に焦点を合わせ始め「海外に出てビジネスをする時が来た」という盛り上がりが生まれている。
徳邦Expressは中国有数の物流会社として、積極的に海運事業を展開しており、現在は欧米市場への有利な航路を確立し、越境輸送を推進している。
国際貿易と電子商取引の急速な発展に伴い、物流の海外進出はますます重要になっている。同社は中国のロジスティクスの代表として、テクノロジーへの投資を増やし、独自のロジスティクスシステムとターミナルの流通を最適化して中国の対外貿易経済に確実に貢献していくことを誓った。
出典:https://www.deppon.com/aboutus/newscenter/detailcontentid=8a7b021d84c3730301850e2bbea7006d
2021年 中国の陸運(運輸・物流)業界
中国の日通、生生物流と医薬品物流で業務提携〜陸運業界動向〜
2021年6月25日の発表によると、日本通運の中国現地法人は、バイオ系医薬品の輸送を主力事業とする上海生生物流と医薬品物流に関して業務提携の覚書を締結した。
中国日通のグローバルネットワークを生かした医薬品物流サービスと、生生物流の中国国内の輸送ネットワーク、保冷・低温の梱包技術を組み合わせ、コールドチェーン一貫輸送サービスなどを開発していく。
生生物流は、中国国内におけるバイオ系医薬品分野でトップクラスの企業。日通は同国での医薬品物流を強化するにあたり、規制などの関係で外国系企業が参入できない医薬品物流の業務領域をカバーするために同社との業務提携を検討していた。
出典:https://www.nittsu.co.jp/press/2021/20210625-1.html
中国のSGHグローバルジャパン、菜鳥と物流提携〜陸運業界動向〜
2021年6月7日の発表によると、佐川急便グループであるSGHグローバル・ジャパンは、中国のアリババグループの物流部門を担う菜鳥網絡と提携した。
同社は、菜鳥網絡が担う日本から中国の消費者向けの直送物流を受託し、越境ECなどに取り組む日系企業の中国市場参入を支援する。
一方、菜鳥網絡は、24時間以内に中国本土のあらゆる場所に、72時間以内に世界中に配送するという目標を掲げている。今回の提携で、この目標達成を目指していく。
出典: https://www.sg-hldgs.co.jp/newsrelease/2021/0617_4791.html
中国のサプライチェーン本部基地プロジェクト開始〜陸運業界動向〜
1999年に設立し、陸運と空運の二本柱の事業を行う韵达快递はサプライチェーン本部基地プロジェクト開始した。
同プロジェクトの着工建設は、遼中地区の経済をさらに大きくし、産業構造の調整を推進し、産業化のプロセスを加速するのに重大な影響を与えるものとなった。
遼中区の交通は四方八方に通じており、電気商物流産業の発展に恵まれているため、同社は東北地区全体のモノのインターネットセンターとしての発展を目指している。
出典: http://www.yundaex.com/cn/news_detail.php?id=3697
中国の中通快递、中国物流業界の発展について見解〜陸運業界動向〜
2002年に設立し、2時間以内の集荷サービスや、当日配達などを行っている中通快递は、中国物流業界の発展について今後の展望を発表した。
中国の物流業界には全体的なイノベーション能力の弱さ、国際化レベルの低さ、緊急時の能力の弱さ、人材不足、体制・メカニズムと法律政策の不備などの問題があり改善の余地があるとした。
一方で中国の宅配便量はすでに2018年に米国、日本、欧州などの先進経済体の合計を上回っている。同業界の世界成長への貢献度は50%を超えており、速達業者が中国のネット通販の急成長を支えているともいえると報告した。
出典:https://www.zto.com/companyIntroduce/newsListDetail.html?id=1267204
中国の菜鸟裹裹、2021年の中間報告を発表〜陸運業界動向〜
アリババグループの傘下で、1日あたり1億個の貨物を取り扱う菜鸟裹裹は、2021年7月5日に中間報告を発表した。
2021年6月の時点で、同社のユーザー数は3億人を突破しており、2021年の半年間で1億人の増加を記録した。そのうち、1995年以降に生まれたユーザーの割合は3割を超えた。更にその内72%以上は女性の利用者であった。
全国349都市の消費者に対して、訪問受け取りサービスを受けており、いつでもどこでも、送りたいと思ったら簡単に宅配便を送ることができるようになった。
出典: https://www.cainiao.com/news_detail.html?spm=cainiao.15079573.newsFont.1.19f93d5a0gss7m&id=2026
2020年 中国の陸運(運輸・物流)業界
中国の京東、低層都市・村への24時間内配送を実現へ〜陸運業界動向〜
スピーディーな配送は京東物流の強みである。低層都市や村にむけて24時間内配送を実現するために、低層都市の近くに倉庫の増設・トランジットとスマート設備の投資・配送頻度の向上等の施策に取り組む予定である。
京東は2007年より自社物流システムに投資し続け、10年間で大陸すべてをカバーするネットワークを構築した。特に「6.18」ネットショッピング祭りの時には、91%の自社倉庫出荷荷物が当日あるいは翌日到着できた。初期投資で構築した全面的で綿密な物流ネットのおかげで、1件当たりの物流コストが下がり、京東は2019年上期に損益バランスがとれるようになった。
また、さまざまな配送シナリオに対応し、宅配ロッカー、コミュニティサポートスポット、「大学配」と、多様な独自サービスを展開している。2019年内に10000軒のコミュニティに出荷・荷受け便利代行サービスを拡大する予定である。
出典:https://www.jdwl.com/#/NewsDetail?id=142
中国の中通快逓、物流向け無人運転の商業認可を取得〜陸運業界動向〜
2019年10月26日の発表によると、中国物流大手の中通快逓(ZTOエクスプレス)は、浙江省の徳青において「運輸経営許可証」を取得し、物流企業としてはじめて無人物流車の商業認可を得た。今後、徳青の指定地域において、実際に自動運転技術を用いた無人の物流が実現することになる。
今回の認可の取得に先立って、中通快逓は広州や深センにおいて、10万キロの長時間におよぶ自動運転の走行実験を行い、データや経験を蓄積した。このことが、今回の認可取得につながったようだ。まずは、都市内での短距離輸送を行い、将来的には長距離輸送を目指すとしている。
中通快逓は今後の展望として、再来年を目処に、街中での自動運転物流車のサービスを開始するとしている。歩行者がスマートフォンを用いて、オンデマンドで車両を呼び止め、その場で運輸サービスを享受することができるオンデマンド型のサービスを目指している。
出典:https://www.zto.com/companyIntroduce/newsListDetail.html?id=1266973
中国の国家郵便局が発表、全ての行政単位村に直接郵便が浸透〜陸運業界動向〜
国家郵便局の発表によると、2019年第3四半期までに、郵政業務量と業務収入はそれぞれ31.3%、21.3%増加し、宅配業務量と収入はそれぞれ26.4%、24.1%の増加した。業界は安定的な右肩増加を示している。
業務の集中化は顕著で、増加の60%は、広東省、浙江省、江蘇省の三省が貢献している。また、宅配の単価も継続的に下がっている。
2019年8月末までに、全国すべての行政単位村まで直接郵便が通じ、郵政業者は積極的に農業と農民に支援している。「一市一品」支援戦略で、1188個のプロジェクトを達成し、445の貧困県の7.1万人口に2.3億人民元の増収が実現できた。現在、郵便宅配ネットワーク拠点は3万ヶ所を超え、全国カバー率は96%となっている。
出典:http://www.chinapost.com.cn/html1/report/1911/5687-1.htm
中国の物流業界の新たな局面とは?〜陸運業界動向〜
中国の物流業界は「菜鳥基礎ネットワーク1つ+中国郵政と宅配上場企業7社+物流関連業者N社」という新しい局面となっている。菜鳥基礎ネットワークはスマートブレーンの役割を果たす。中国郵政と宅配上場企業7社は業界リーダーとして、荷物の運送と配送を担う。N社は在庫管理、即時物流、物流技術企業等関連会社を指す。
菜鳥によると、IoTや人工知能等の先端技術は、すでに物流業界に応用されている。IoT未来モデルプラントとなる江蘇無錫中枢では、スマートフォン一つで全プラントを管理できるようになっている。また、アジア最大のロボット倉庫が建設された。700台のロボットが24時間稼働し、物流業務を行っている。
宅配業界において、アリババと菜鳥は中通快遞に13.8億ドルを投資した。宅配上場企業7社の配送件数は1.3億/日、そのうちの8割は菜鳥の電子帳票技術サービスで支えられている。
出典: https://www.cainiao.com/markets/cnwww/cn-news-detail?spm=a21da.144546.0.0.204c3045nQQd9E&id=90
中国の京東物流、ブロックチェーン技術の運用推進へ〜陸運業界動向〜
京東物流は以下4つの方向にフォーカスして、ブロックチェーン技術と物流領域を探索している。①プロセスの最適化②国境を超える物流追跡③物流金融④物流信用クレジット
ブロックチェーンは生産関係の問題を解決する。物流業界で例えると、ショップ側は貨物の安全を重視し、ネットプラットフォームは物流サービスを重視し、消費者は商品の品質とプライベートを重視しているが、ブロックチェーンはこの三者の複雑な需要を同時に満たすことができる。
京東はすでに、[鏈上簽]という物流帳票受領プラットフォームサービスを提供している。分割式帳簿技術とデジタルサイン技術を利用し、ショップ側とのスマート照合ができる。決算違算照合期は今の90日から60日に短縮し、資金繰り効率が高められた。
出典:https://www.jdwl.com/news/5cb585842d2e33ee6aec6fee
まとめ:中国の陸運業界
中国の宅配件数は年々増加しており 、5年連続で世界1位を獲得するなど陸運の需要の高さを表している。最近では低層都市でもスピーディーな発送を可能にするなど、今後も陸運システムに注目すべきです。
上海在住で杭州出身の中国人。一橋大学の経済学修士課程修了。日本企業でマーケットインサイト部門で就労後、中国のIT会社でユーザー研究・マーケットリサーチに携わる。コンサル業界・証券業界の友人が多いため、リサーチ関連で助けとなっている。