中国の製薬業界は、医療制度の需要増加に伴う多額の投資や政府の支援などによって急激に発展しています。2023年3月には英特集团、瑞康医药、江苏医药が戦略的提携に合意するなど、国内製薬企業の連携が進んでおり、この成長は今後も続いていくとみられています。
今回は、そんな中国の製薬・バイオテクノロジー業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 中国の製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
上海医药と香港科技园が戦略的協力の覚書に調印〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2022年8月上海医药は、共同イノベーション・インキュベーターを構築するために、香港科技园と戦略的協力の覚書に調印し、2022年12月には、香港科技园と共同でバイオメディカル・インキュベーターを立ち上げた。
香港科技园代表団は、上海医药、上海医药研究所、建設中の上海生物医学フロンティア産業革新センターの加速器プラットフォーム運営キャリアを訪問し、革新的な研究開発活動と共同運営戦略について意見交換を行った。
香港科技園と上海医药が構築するフロンティア産業イノベーションセンター共同インキュベーターは、香港を本拠とし、世界に向けた生物医学イノベーションインキュベーションプラットフォームである。同プラットフォームは、小規模ながら洗練されたイノベーションエコシステムを育成・発展させ、上海の生物医学フロンティア産業イノベーションセンターの枠組みの下生物医学最先端施設として大きな期待を背負っている。
出典:https://www.sphchina.com/news_center/news_detail.html?id=1105
国药集团と中国旅游集团が戦略的協力協定を締結〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2023年3月15日、国药集团と中国旅游集团は深センで戦略的協力協定を締結し、中国国際医療健康有限公司と中国観光グループCDFG株式会社との間で戦略的協力協定を締結した。
党委員会書記兼中国薬集団董事長の劉景真氏によると、この戦略的協力は党中央委員会と国務院の主要な決定を実施するための手段であり、内需の拡大、消費の全面的な促進、発展と信頼の向上に焦点を当てていると述べた。
資本協力後、国药集团は中国旅游集团の株式の51%を保有し、対外免税、市税免除、会員権購入、クロスボーダーなどの分野で広範かつ綿密な協力を行っていく。また、eコマース、旅行サービス、クルーズ船、ヘルスケアレジデンスなどを組み合わせて、新時代の中国の特徴を備えた「免税+健康」の新しい開発モデルを作成し、人々のニーズを満たしていく。
出典:http://www.sinopharm.com/s/1223-4126-40856.html
广药集团が中国中央広電電視台と提携し由緒ある中国ブランドの高品質な開発を促進〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2023年3月14日、广药集团と中国中央電視台との間で協力書簡の調印式が北京で開催された。
中国中央電視台は中国で影響力の強いメディアであり、广药集团の「ブランド化プロジェクト」は「国家ブランドの普及と達成」を目的とし、中国中央広電電視台の統合メディア通信プラットフォームを利用し、中国国内でブランドを育成していく。
广药集团は今後も積極的に優れたブランドイメージを高め、ブランドのビジョンを広め、伝統ある中国ブランドの質の高い発展のために強力な文化的勢いを作り続けるため、伝統的な中国医学の文化と実践の普及者として、中国経済の質の高い発展と中国式近代化の促進にさらに貢献するよう努めると述べた。
出典:https://www.gpc.com.cn/article/13334.html
英特集团、瑞康医药、江苏医药が戦略的提携に合意〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2023年3月21日午後、浙江英特集団有限公司は瑞康製薬集団有限公司、江蘇省製薬有限公司と戦略協力協定を締結した。市場範囲、顧客ネットワーク、ブランドの管理、医療と健康の分野で戦略的協力を行い、中国の医薬品流通業界の高品質な発展を促進するために協力していく。
英特集团会長は、「両社は地理的に類似しており、同じビジネス形式を持ち、類似した文化を持っており、この戦略的協力はすべての当事者の利点をさらに発揮し、全面的かつ多面的な協力を実行していく」と述べた。この戦略的協力が、地域を超えた国有企業と民間企業の協調発展、相互エンパワーメントのモデルになることが期待されている。
この合意は、中国の医療と健康システムの改革の深化や製薬と健康産業の発展の促進を背景にビジネス戦略の機会を獲得し、産業チェーンの上流と下流のサービス能力を強化や華東と全国の総合的な競争力、影響力、イノベーションをさらに強化していくために有効な手段である。
出典:https://www.realcan.cn/newscenter
武田薬品の革新的後天性血友病治療薬オビズール中国上場承認申請が正式に受理された〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2022年6月27日、武田中国は、同社の革新的な組み換え抗血友病因子(ブタ配列)オビズールの販売承認申請が国家薬品監督管理局の医薬品評価センターによって正式に受理されたことを発表した。
後天性血友病は、循環血液中の抗凝固因子第VIII因子自己抗体の存在によりFVIII活性が低下する後天性出血性疾患で、中国国内の年間発生率は約150万人。また、60.9%の患者に重度の出血があり、生命と健康を脅かしている。
武田薬品は、人々の生存と治療の状況を改善し「健康な中国」という国家の健康目標を実現するために、絶え間ない努力を続けている。2013年以来、武田薬品は血友病の分野で高度な予防治療と個別化された治療計画を次々と導入しており、今後数年間で後天性血友病を含む希少血液疾患のためのより革新的な医薬品の中国市場への導入を加速させていくとしている。血栓性血小板減少性紫斑病など、中国の希少血液疾患患者の満たされていないニーズをさらに満たすために今後も躍進し続ける。
出典:https://www.takeda.com.cn/zh-cn/news-room/news-releases/2022/obizursusoctocog-alfa-2022/06/27
2021年 中国の製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
増加する脳卒中患者に対する新製品とは?J&J中国〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
1992年に中国市場に進出し、2006年にアジア太平洋地域で初のR&Dセンターを設置したJohnson&Johnsonは、2020年10月29日、急性虚血性脳卒中における機械的血栓除去のための新製品としてEmboTrap IIの発売を発表した。
中国経済の急速な発展、ライフスタイルの変化、高齢化社会の進展により、同国では年々新規脳卒中患者が増加している。
脳卒中には虚血性脳卒中(脳梗塞)と出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)があり、そのうち81.3%が虚血性脳卒中である。EmboTrap IIにより、急性かつ重度の脳卒中患者が血栓除去治療を受けられることが期待される。
出典:https://www.jnj.com.cn/news/press-releases/20201029033359
中国の華北製薬、医薬品業界の国際競争力強化に貢献〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
高血糖、がん、心血管、感染症、免疫抑制などの領域の研究開発に力を入れている華北製薬は、再編成ヒト由来抗狂犬病モノクローナル抗体注射の第III期臨床試験を完了したと発表した。
これは狂犬病ワクチンの能動免疫過程で抗体ブランクを補うために使用され、体内の狂犬病ウイルスを中和し受動免疫効果を生み出すものである。現在は供給不足、高価格であることが問題視されている。
再編成ヒト由来抗狂犬病モノクローナル抗体注射は、2004年に研究開発が開始された。安全性は良好であり、バイオ医薬品業界の国際競争力の強化に大きく貢献し、国内の抗体業界の発展を促進する上で非常に重要な役割を果たした。
出典:http://www.bs-btm.cn/?p=13258
中国の白雲山製薬と薬明康徳が提携、その目的とは?〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
広州市政府系の国有企業である広州医薬グループの中核的子会社である白雲山製薬は、薬明康徳とのカテゴリー1の革新的な医薬品プロジェクトの協力協定に署名した。
この協力協定で、両社は革新的な薬剤の研究開発の分野で全面的にサポートをし、新薬の臨床応用を促進することが期待されている。
より高品質で手頃な価格の薬が患者に利益をもたらし、医療および健康産業に貢献をすることを目標にしている。
出典:http://www.gpc.com.cn/article/12964.html
中国の上海医薬、化学製薬業界の優れた企業として評価〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
上海と香港で上場している大手製薬グループの上海医薬は、 2020年10月13日に開催された「2020年中国化学薬品工業年次サミット」に参加した。
このサミットでは中国化学製薬工業協会や中国医薬商業協会などの組織によって選出された「2020年中国の化学製薬業界の優れた企業及び製品ブランド」が発表された。
同社は2020年の中国の医薬品業界企業のトップ10及び2020年の中国の化学製薬業界企業総合力トップ100にランクインし、どちらも2位を獲得した。
出典:http://www.sphchina.com/news_center/news_detail.html?id=620
中国にも進出のNovartis、ESGターゲットを発表〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
中国市場に1997年に進出し、スイスに本部を置くNovartisは、環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略を公開し、影響力の強化と、社会により多くの価値を生み出すという目標を発表した。
Novartisは、ヘルスケア業界におけるリーディングカンパニーになることを掲げた。具体的には、低中所得国(LMIC)でも医薬品へのアクセスが簡単にできるよう、医薬品の患者カバレッジを2025年までに少なくとも200%増やすことを約束した。
また、アフリカ連盟によって発足されたAMSPとのパートナーシップを発表しコロナウイルス対策のサポートをした。
出典:https://www.novartis.com.cn/news/nuo-hua-xuan-bu-esgmu-biao-jiang-jin-yi-bu-ti-sheng-yao-wu-ke-ji-xing-he-shi-xian-wan-quan-tan
2020年 中国の製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
中国 製薬・バイオテクノロジー業界大手のベイジーン、米アムジェンとがん領域で提携
2019年11月1日の発表によると、中国のバイオテクノロジー企業、ベイジーン(百済神州)は、米製薬大手アムジェンと、がん治療薬の販売拡大や開発について提携する。アムジェンは、ベイジーンの米国上場株式を27億ドルで取得し、持株比率は20.5%となる。
がんは中国における死因の第一位である。高齢化に伴い喫緊の課題となることが想定されている。ベイジーンは、「Xgeva」、「KYPROLIS」、「BLINCYTO」の3つの治療薬の中国における商品化を担当し、損益は両者が半分ずつ負担する。
臨床開発においては、両社は共同して20あまりの新薬の開発費用を負担する。そのうちアムジェンは、12.5億ドルを投じる。これら新薬を中国以外で販売する場合、ベイジーンはアムジェンからロイヤリティを受け取る。アムジェンは、ナスダック市場に上場するベイジーン株を一部取得し、取締役を一名送り込む。
出典:http://hkexir.beigene.cn/media/1296/beam-press-release-103119_cn_final.pdf
製薬・バイオテクノロジー業界大手の中国生物製薬、中期報告書を公表
製薬・バイオテクノロジー企業の中国生物製薬は、中期報告書において、2019年上半期の業績を公表した。同社の売上高は前年同期比28.8%増の1,252,731万元、純利益は前年同期比5.8%増の144,435万元となった。
同社は、肝臓、悪性腫瘍、心臓・脳血管など様々な領域において、新薬の開発を行っている。2019年上半期では、新薬「福可維」の上市が売上高の成長を押し上げた。また、売上高に占める割合のうち、肝臓治療薬は26.3%、がん治療薬は20.5%、心臓・脳血管治療薬は13.5%であった。
同社は、2018年に北京泰徳の株式24%を取得しており、損益計算書に一時的な変動を与えている。これらの一過性の損益を除いたコア利益は、20.5%増の167,438万元であった。アメリカの専門誌PharmExecが発表した世界の製薬企業ランキングにおいて42位をマークし、中国企業の中では1位であった。
出典:http://www.sinobiopharm.com/static/upload/file/20190927/1569576467198419.pdf
中国 信達生物製薬、2019年中期業績を発表〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
腫瘍や代謝に関する疾病の治療薬の開発・生産・販売を行う信達生物(innovent)は、2019年第2四半期累計の業績を発表した。売上高は、345.5百万元、及びグロスマージンは88.1%であった。信達生物は、中国蘇州に本社をおき、香港株式取引所に2018年10月に上場を果たしている。
売上高345.5百万元のうち、同社初の商業化製品である「Tyvyt」が、331.6百万元を売り上げ、業績に大きく寄与した。がん免疫治療法薬「Tyvyt」は、中国国産の新薬で初のPD-1阻害剤であり、大きく期待を集めている。
開発の初期・中期段階にある新薬を多く持つがん領域に加え、糖尿病領域における治療薬の展開に引き続き力を入れていくとしている。
出典:http://innoventbio.com/#/news/171
中国内初のがん免疫治療薬、認可へ〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2019年10月8日、米製薬大手のブリストルマイヤーズスクイブは、同社の免疫チェックポイント阻害がん治療薬のオプジーボについて、頭頸部がん治療のための使用が中国国家薬品監督管理局から認められたことを発表した。
オプジーボは、PD-1抑制剤の中では頭頸部がんに用いることができる薬として、初めてかつ唯一の薬となる。オプジーボは、中国国内で初めて認可されたがん免疫治療であり、肺がんに次ぐ2つ目の適用部位となる。
オプジーボは、頭頸部がん患者の生存率及び生活の質を大幅に向上させることができる薬であり、2年生存率は約3倍になる。ブリストルマイヤーズスクイブ中国地区責任者によれば、胃がんや肝臓がんなどさらなる適用の拡大を目指すとしている。
出典:https://www.bms.com/cn/media/press-release-listing/08102019.html
中国 CKライフサイエンス、メラノーマ治療薬の臨床試験結果を発表〜製薬・バイオテクノロジー業界事情動向〜
2019年11月6日、長江グループ傘下のバイオテクノロジー企業、CKライフサイエンス(長江生命科技集団)は、同社傘下の米ポリノーマが、皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)治療薬の最終臨床試験(seviprotimut-L第三段階臨床研究)についての結果を公表したと発表。同社の発表によれば、メラノーマ治療薬に関して、有望な臨床データが示されていた。また、香港に上場する同社の株価は連日の急騰を演じた。
ポリノーマ社によれば、メラノーマの抗原ワクチン免疫治療法は初期段階で期待がもてる数値を示しており、研究分析の中で、治療効果と安全性に高い信頼がもてるとしている。初期段階のデータによれば、seviprotimut-Lはメラノーマ治療にとって画期的で革新的なものであると考えられている。
CKライフサイエンスは、香港の財閥系コングロマリットグループ、長江グループ傘下で、新薬の研究開発を行うバイオテクノロジー企業である。
出典:https://www.ck-lifesciences.com/uploaded_files/images/listing/852/content_file_lang2.pdf
まとめ:中国の製薬・バイオテクノロジー動向
2021年には中国企業の製薬研究開発投資額は450億円を超えると予想されています。安全性などの課題も徐々にクリアしてきていて、今後さらに投資金額は拡大していくと予想されます。
上海在住で杭州出身の中国人。一橋大学の経済学修士課程修了。日本企業でマーケットインサイト部門で就労後、中国のIT会社でユーザー研究・マーケットリサーチに携わる。コンサル業界・証券業界の友人が多いため、リサーチ関連で助けとなっている。