政府主導の医療・保険関連政策による好影響を受け、製薬業界は小規模ながらも安定的な成長を続けています。2023年には、インドネシア製薬大手Phaprosが、天然成分から作る医薬品開発に着手するなど、自国資源の活用に注力しています。
今回は、そんなインドネシアの製薬・バイオテクノロジー業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 インドネシアの製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
Indofarma、ステント・カテーテル国産化挑戦〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの国有製薬会社Indofarma(Persero)Tbk(INAF)は、医薬品・伝統医薬と医療機器の製造販売を行っている。INAFはホームページで、INAFとPTRevassUtamaMedika(Revass)が覚書を締結したことを明らかにした。
2022年9月26日、南ジャカルタのINAFのマーケティングオフィスで、INAFとRevassの間で、心臓ステント製品、バルーンカテーテル、およびその他の血管造影製品の開発における協力に関する覚書が締結された。
Revassは2010年に設立された心臓病介入医療機器の販売代理店で、ステントとバルーンの輸入販売業者からスタートし、30の主要都市に販売ネットワークを持つ。これは、政府の目指す医療機器国産化の具体的取組の一つである。
出典:https://indofarma.id/en/2022/09/26/memorandum-of-understanding-was-signed-between-pt-indofarma-tbk-and-pt-revass-utama-medika/
Darya、10年で700%増の小児糖尿病に警鐘〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの大手製薬会社Darya-VariaLaboratoriaTbkは、2023年2月23日、ホームページで子供の糖尿病に警鐘を鳴らした。インドネシア小児科医協会(IDAI)は最近、子供の糖尿病患者がこの10年で700%増加したと発表した。
糖尿病は正常レベルを超える血糖値の慢性的な上昇によって引き起こされる代謝障害で、膵臓におけるインスリンの産生障害である。
一般的に、小児に発症する糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類あるが、子供によく発症するのは1型(自分の免疫系が膵臓を攻撃して膵臓の機能が損なわれる)で、2型(小児肥満とともに発症)は稀である。糖尿病は本質的に治らないが、血糖値がコントロールされていれば、子供は普通の生活を送ることができるとのことだ。
出典:https://www.darya-varia.com/en/read/beware-of-diabetes-in-children
Phapros、天然成分医薬品の開発に注力〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの大手製薬会社PhaprosTbkは2023年3月2日、インドネシアは最大の漢方薬生産国になる可能性を秘めており、Phaprosは天然成分から作られたFitofarmakaの開発に注力していることを明らかにした。
インドネシアは、天然成分から作られた医薬品の原材料が非常に豊富で、世界で最も豊かな生物多様性を持つ熱帯国の1つである。国立研究開発法人(BRIN)のデータによると、薬用植物としての可能性がある30,000種のうち、少なくとも7,500種に薬効があることが知られており、そのうち800種が漢方薬にされている。
しかし、インドネシアのハーブ市場の世界シェアは1%未満で、Fitofarmakaの工業化とハーブ薬などの伝統的医薬品製造の近代化が不可欠だとしている。
出典:https://www.phapros.co.id/indonesia-berpotensi-menjadi-produsen-obat-herbal-terbesar-phapros-dukung-pengembangan-fitofarmaka
尼大正、ジャカルタ青年スポーツ部門とコラボ〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
2022年11月1日、PT Taisho Pharmaceutical IndonesiaTbkは、DKIジャカルタ州のDispora(Department of Youth and Sports)と協力して、アスリートのフィットネスの改善、スポーツ障害の処理、および大正製品のアスリート向け消炎鎮痛剤Counterpain®のサポートに関する覚書を2022年10月25日に締結したことを明らかにした。
また、同日ジャカルタのラグナンにある学生スポーツトレーニングセンター(PPOP)でDisporaの指導の下、アスリート達にフィットネスの改善、スポーツ障害の処理、およびアスリート向けCounterpain®のサポートに関する教育が具体的に行われた。
なお、調印はインドネシア大正製薬の取締役とDisporaの青年スポーツ部門責任者のもとで行われた。
出典:https://www.taisho.co.id/en/articles/signing-of-the-cooperation-between-pt-taisho-pharmaceutical-indonesia-with-dki-jakarta-dispora
BPOM、武田のデングワクチンQDENGA®承認〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
武田薬品は2022年8月22日、デングワクチンQDENGA® (DengueTetravalent Vaccine [Live, Attenuated]) (TAK-003)が、インドネシア国家医薬品食品管理庁(BPOM)によって承認されたことを発表した。
1)BPOMは、6歳から45歳までの個人に使用するための血清型デング熱予防ワクチンQDENGA (TAK-003)を承認。2)QDENGAは,ワクチン接種前の検査を必要としない個人への使用がインドネシアで承認された唯一のデング熱ワクチン。3)インドネシアでの承認は、武田薬品が日本国外で最初に販売したワクチンであるQDENGAが最初のもの。
近年、インドネシアでは東南アジア内でのデング熱の発症のほぼ半分を占めており、世界で最もデング熱で苦しんでいる。
出典:https://www.takeda.com/newsroom/newsreleases/2022/takedas-qdenga-dengue-tetravalent-vaccine-live-attenuated-approved-in-indonesia-for-use-regardless-of-prior-dengue-exposure
2020年 インドネシアの製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
インドネシアのKimia Farma、医薬品原料の現地化に注力〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの国有製薬会社PT Kimia Farma (Persero) Tbk.(KAEF)は2020年9月10日、健康大臣が西ジャワ州ブカシ県チカランセラタンにあるPT Kimia Farma Sungwun Pharmacopia(KFSP)を視察したことを明らかにした。
KFSPはKAEFの子会社で医薬品原料(BBO)の開発と生産を行っている。インドネシアのBBOの95%が輸入に頼っていることから、政府も大統領令や健康大臣規則で製薬および医療機器業界の発展を加速するプログラムを作って支援している。
KFSPはすでに8つのBBOの製造に成功し、そのうち5つはBPOMに承認され製薬業界で使用できる状態にある。KFSPではBBOの輸入を最大25%削減することを当面の目標にしている。
インドネシアで製薬・バイオテクノロジー業界牽引のKalbe、貧血治療薬の第3相臨床試験開始
インドネシアの製薬会社PT Kalbe Farma Tbk.(KLBF)は2020年8月24日、貧血治療薬のエフェポエチン-アルファの第3相臨床試験を開始したことを発表した。
KLBFは子会社のKalbe-Genexine Biologics(KGBio)を通じて、インドネシアで最初の治験患者を登録し、第3相臨床試験のための薬を提供した。この薬は、慢性的な非透析の腎臓病患者の貧血治療に使用するように設計されており、損傷を受けた赤血球の形成を促進する機能がある。第3相臨床試験は、インドネシア、オーストラリア、台湾、フィリピン、タイ、マレーシアの6か国で実施されている。
Kalbe-Genexine BiologicsはKLBFと韓国のGenexine Incの合弁会社で2016年1月に設立された。
インドネシアで製薬・バイオテクノロジー業界大手のTempo Scan、医薬品部門が二桁成長
インドネシアの製薬会社PT Tempo Scan Pacific Tbk(TSPC)のアニュアルレポートによると、 2019年の販売高は10兆9,938億ルピア(約771億円)で前年比109%。
内訳は、①医薬品部門:3兆618億ルピア(前年比117%)、②コンシューマー製品と化粧品部門:3兆4,412億ルピア(前年比108%)、③物流部門:4兆4,908億ルピア(前年比105%)で医薬品部門が全体を牽引した。
粗利率は①医薬品部門は前年の57.8%から54.1%へ3.7%落とした。②コンシューマー製品と化粧品部門は前年の56.0%から58.3%へ2.3%上げた。③物流部門は前年12.8%とほぼ横ばいで12.9%であった。3部門とも粗利額は前年を上回ったが、コンシューマー製品と化粧品部門が全体を牽引した。
インドネシアのDarya-Varia、 Natur-E新製品発表〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの製薬会社PT Darya-Varia Laboratoria Tbk(DVLA)は2019年11月28日、新製品Natur-E Whiteの発売を発表した。
発売発表会はサウスクオータードームのファンクションホールで行われ、DVLAの役員、Natur-E White ブランドアンバサダー、ダルヤをサポートする美容インフルエンサーたちが出席した。Natur-E Whiteは、TruBright Complex Formulaを配合した美肌用製品。天然成分とハラル成分を使用したこの製品は、効果的かつ均一に肌に潤いを与え、肌を柔らかくし、肌を明るくする。
製品発表の後、製品知識に関するセッションとしてNatur-E White製品に関する質疑応答が行われ、質問に対して美容インフルエンサーたちが回答した。
2019年インドネシア上場製薬会社10社売上高前年比106%〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの上場製薬会社10社の2019年売上高合計は53兆2,059億ルピア(約3,732億円、前年比106%)。
トップ5社の内訳は、1位;PT Kalbe FarmaTbk:22兆,6,335億ルピア(構成比43%、前年比107%)、2位:Tempo Scan Pacific Tbk:10兆9,938億ルピア(構成比21%、前年比109%)、3位:Kimia Farma (Persero) Tbk:9兆4,005億ルピア(構成比18%、前年比111%)、4位:PT Industri Jamu dan Farmasi Sido Muncul Tbk:3兆674億ルピア(構成比6%、前年比111%)、5位:PT Merck Sharp Dohme Pharma Tbk:1兆8,413億ルピア(構成比3%、前年比83%)。
トップ3社で82%、トップ5社で90%を占める。
2019年 インドネシアの製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
インドネシアで製薬・バイオテクノロジー業界牽引のKalbe、2019年3Q増収増益の理由とは
インドネシアの製薬会社PT Kalbe Farma Tbkが2019年10月31日に2019年第3四半期の決算を発表した。
販売は16兆8,270億ルピア(約1,296億円)で、前年上半期の売上15兆6,780億ルピアに対して7.3%の増収となった。栄養食品を3~5%値上げしたことが貢献しているとのこと。2019年上半期の純利益は1兆9,150億ルピアで前年同期比6.2%の増益であった。
一方、粗利率は前年同期の47.7%から46.1%に減少したことから、製品ミックス管理と業務効率の改善を組み合わせながら実施することにしている。カルベでは今後ルピアの動きの影響に注目しながら、市場シェアを維持し、コスト効率を高めることで、市場の成長に合わせて業績を加速する取り組みを進めていく予定である。
聖地に薬局開設!? インドネシア、Kimia Farmaの狙いとは〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの国営製薬会社PT Kimia Farma(Persero)は、薬局事業の海外展開を拡大する中で、イスラム教徒の聖地であるメッカとマディーナに薬局を開設することを2019年7月2日に行われた記者会見で発表した。
目的は、巡礼者向けに薬や医療機器の配達サービスを開始することである。なお、薬局の名前は、Kimia Dawaa。この薬局ではインドネシアからの巡礼者には特別割引を行う予定だということ。
また、前日の7月1日に保険大臣が、第一波で出発するPPIH(聖地巡礼組織委員会)に対して指示を出す際、キミアファルマが聖地に開設した薬局は、まだ大量に薬を販売することはできないが、巡礼者のニーズにはすでに対応できるようになっていると語った。
ハラール保証システムを確立、インドネシアのDarya-Varia〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
インドネシアの上場製薬会社Darya-Varia Laboratoria Tbkは2019年10月10日、ホームページにLPPOM-MUIよりハラール保証システム証明書を取得したことを報告した。
これはDarya-Variaのグヌンプトゥリ工場に与えられたもので、過去3年間、グヌンプトゥリ工場がエクセレントカテゴリーで成功を収めたことにより与えられた非常に名誉ある証明書である。
ハラール保証システムはLPPOM-MUIのルールに従いハラールを保証するためハラール生産プロセスの持続可能性を維持することである。LPPOM-MUIはLembaga Pengkajian Pangan Obat obatan dan Kosmetika Majelis Ulama Indonesia(医薬品食品および化粧品研究所-インドネシアウラマー評議会)の略である。
インドネシアで製薬・バイオテクノロジー業界牽引のIndofarma、生体インピーダンス分析装置の販売
インドネシアの国営製薬会社PT Indofarma(Persero)Tbkは2019年9月24日、PT InBody Corp Indonesiとの間で、バイオインピーダンス分析装置に関する契約を締結した。
PT InBody Corp Indonesiaは韓国に本社を置き世界60か国に展開するInBody Co.Ltdのインドネシア現地法人である。InBody Co.Ltdは体の部位によってインピーダンスのレベルが異なることを利用して、セグメントごとに体組成を正確に分析する生体電気インピーダンス分析(BIA)装置を開発・生産する会社である。
今回の契約でインドファルマはバイオインピーダンス分析製品の販売を行うことができる。両社はインドネシアにおけるビジネスの可能性を最適化するために協力に合意した。
2018年 インドネシアの製薬・バイオテクノロジー(医療・介護)業界
インドネシアのダルヤ-バリア、ハラール認証取得を報告〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
製薬会社ダルヤ-バリアは2018年5月23日付けでMUI(インドネシア・ウラマー評議会)よりハラール認証を取得した。
対象は、ボゴールのグヌン・プトリ工場で生産されるカプセルタイプのサプリメント製品とボゴールのチテラップ工場で製造される固形医薬と委託加工製品である。
インドネシア・ウラマ評議会が発行する食品、医薬品および化粧品のアセスメント機関によるハラール保証システム監査に基づき、グヌング工場とチテラップ工場はともに最優良カテゴリーでハラール保証システムを実施してきた。ダルヤ・バリヤの製品と生産設備のハラール保証は高品質・高信頼性の製品を生産すると言う会社のコミットメントである。
インドネシアのバイエル、政府の家族計画を支援〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
バイエル・インドネシアは9月26日の世界避妊の日にあたり、教育やコミュニケーションなどの手段を通じたリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する啓発運動について同社ウェブサイト上で報告した。1994年のカイロ国連会議で定義がなされたリプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、女性が身体的・精神的・社会的な健康を維持し、子どもを出産することについて選択し、主体的に決定する権利のことを指す。
経口避妊薬製造大手であるバイエル社は過去30年以上にわたり、政府の進める家族計画を支援してきた。また、過去10年間においてはBKKBN (家族計画庁)、IBI (インドネシア助産婦協会)と協働で低用量経口避妊薬 (OC)のアンバサダー活動を展開してきた。
同社によれば2018年現在、360人の助産師からなるOCアンバサダーによる3,600件に及ぶ啓発活動を通じて、約108,000人の女性へ生殖と適切な避妊方法に関する適切かつ正確な知識と情報が共有されている。政府との協力関係のもと、女性の福祉を向上することを目指す。
インドネシアのファイザー、国民健康保険の支援を呼びかけ〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
2018年9月27日、米国-インドネシア投資サミットが首都ジャカルタで開催された。サミットの中ではインドネシア国民健康保険 (JKN)の普及に向けて、投資家の果たす役割の重要性について議論が交わされた。
インドネシア政府からは健康大臣と国家医薬食品管理局 (POM)が出席した。また、製薬業界を代表してファイザーインドネシアとIPMG (国際製薬会社グループ:インドネシアに進出する外資系製薬会社協会)が参加した。
この場で、尼ファイザー社長はJNKが2億人にいきわたり、世界最大の健康保険制度の中で最も安い保険料となったことについて謝意を述べ、「JLNの普及を拡大するにあたって、投資家による業界の枠を超えた協力関係の構築が不可欠である」と協力を呼び掛けた。
インドネシア国家医薬食品管理局、ASEAN諮問委員会を案内〜製薬・バイオテクノロジー業界事情〜
2018年10月17日、国家医薬品監理局はホームページで第30回アセアン標準医薬品安全衛生委員会および健康サプリメント製品のワーキンググループ会議とその関連イベントについて報じた。
2020年の東南アジア諸国連合 (ASEAN)経済共同体の実現に向け、ワーキンググループでは伝統医薬品や健康補助食品に関する規制統一、技術的障壁排除に取り組んでおり、合意の最終段階に至っている。
今回、第30回ASEAN諮問委員会がインドネシアを議長国として、10月29日〜11月2日にジョグジャカルタのマリオットホテルで行われる。BADANはウェブサイト上で「インドネシアの伝統医薬品や健康補助食品がASEAN共同体の時代に突入しても高い競争力を維持する道を拓くため非常によい機会となる」と会議開催の意義に触れた。
まとめ:インドネシアの製薬・バイオテクノロジー業界
近年、インドネシアではノーブランドのジェネリック医薬品の売上も好調である。しかし、消費者の多くは医薬品を購入する際の基準として依然、大手企業から発売されているかの重要度が高いようである。製薬業界は小規模だが成長を続けているので今後も多くのビジネスチャンスを見つけられるのではないでしょうか。
ジャカルタ在住のインドネシア人。観光ガイドと通訳者を務め、インドネシアの観光地を日本語で案内している。日本語学科の大学を卒業し、邦人対応観光ガイド・国際イベントでの日本代表団担当連絡係員・通訳者・日本領事事務所長の地元アシスタントを経験。