高齢者の増加に伴い、医療用具、福祉用具の需要が見込まれながらも、輸入に依存しているマレーシアの医療卸業界。その中で、マレーシアの医療用具業界も徐々に成長してきており、2023年にはマレーシア医療卸業者のLKLが、デジタルヘルスケアを提供するサーブメディカルとMOUを締結するなど、今後の発展に期待できます。
今回は、そんなマレーシアの医療卸業界に関する最新情報をお届け!
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2022年 マレーシアの医療卸(医療・介護)業界
PLSBが北部地域の販売強化〜医療卸業界動向〜
1994年に設立され、後発医薬品や医療機器の研究開発、製造、物流・流通、販売、マーケティングを事業とするファーマニアガは、2023年1月6日、完全子会社のファーマニアガ・ロジスティクス(PLSB)がペナン州において、医薬品や医療機器向けに3,500パレットの倉庫スペースを有する新しい流通センターを正式に開設したことを発表した。
当センターはグループの流通能力の拡大と、在庫準備のバッファを確保すること、そして北部地域の顧客、特にプルリス州とケダ州、ペナン州、ペラ州における保健省施設からの需要増加に対応することを目的としている。
同社においては、今後もマレー半島北部地域の政府医療施設に加えて、より多くの民間病院や診療所からの需要に応えるため、さらに保管容量を増やす予定としている。
出典:https://pharmaniaga.com/wp-content/uploads/2023/01/20230105-Media-Release_PHARMANIAGA-LOGISTICS-OPENS-NEW-DISTRIBUTION-CENTRE-IN-PENANG_DZI_1.pdf
NPRA、輸入及び卸売ライセンス数発表〜医療卸業界動向〜
マレーシア国家医薬品監督庁は、2022年6月10日、2021年に同庁が発行した輸入ライセンスが前年比で10%増となる477件、卸売ライセンスが前年比7%減となる253件であったことを発表した。過去5年間において、輸入及び卸売ライセンスは、共に2018年をピークとして減少傾向が続いている状況にある。
また、2021年にマレーシアで新規に登録された製品は1,491件となり、前年から僅かに減少した。登録製品の60.33%はローカル製品、39.67%が輸入製品といった構成になっており、2021年末時点での累積登録数は24,399件であった。また、登録製品の内訳としては、天然産物が全体の42%を占める627件、健康サプリメントが同29%の438件、処方箋製品が同20%の292件となっている。
次に、国家医薬品副作用監視プログラムでは、2021年に54,927件の副作用報告を受け取っており、前年から41.3%もの増加となった。
出典:https://www.npra.gov.my/index.php/en/informationen/annual-reports/npra-annual-reports.html
LKLがサーブメディカルとMoU締結〜医療卸業界動向〜
2022年5月31日、介護用ベッドなどの医療用・福祉用具を製造・販売するLKLインターナショナルは、デジタルヘルスケアソリューションを提供するサーブメディカルと同社の医療製品やサービスを販売、マーケティング、宣伝をおこなうMoUを締結したことを発表、マレーシアのデジタルヘルスケア市場を開拓するとしている。
MoUでは、LKLは革新的で効率的なデジタルヘルスソリューションを提供することでマレーシアのヘルスケアシステムを改善するという使命を持ち、サーブメディカルと協力する機会をグループに提供するとしている。
LKLインターナショナルにおいては技術移転に向けた新しいタスクフォースを組織し、マレーシアの公立及び民間病院向けにオーダーメードソリューションを設計、段階的に導入していくことを目指している。
出典:https://www.bursamalaysia.com/market_information/announcements/company_announcement/announcement_details?ann_id=3335536
DKSHが医療販売代理店を買収〜医療卸業界動向〜
スイスに本社を置く流通大手のDKSHは、アキュテスト・システムズを買収したことを発表した。1980年代設立のアキュテスト・システムズは、マレーシアで臨床診断用ポイントオブケア検査分析装置、診断・スクリーニング機器・器具、ラボラトリーシステムを販売している会社であり、25名の従業員を擁し、2021年には300万スイスフラン超の純売上高を記録していた。
この買収により、DKSHは医療機器事業の多角化を図り、さらに開業医、薬局チェーン、医療センター、研究所、病院への販路を提供するとしている。
DKSHヘルスケア事業部長であるビジェイ・シン氏は、マレーシアの医療機器市場には成長機会があり、アキュテスト・システムズの全従業員をDKSHに迎え、彼らの専門知識を活用できることを楽しみにしていると述べている。
出典:https://www.dksh.com/my-en/home/media/news?id=en-391f7c9b-c6d3-4d97-a799-2cc552d3e5d3:3
20年の実績を持つティーパムメディカル〜医療卸業界動向〜
ティーパムメディカルは約20年前にペナン州に設立され、現在はサバ州とサラワク州を含む国内6ヶ所に倉庫を所有している。
同社では、自社ブランドの「nur care」において、車いすや病院用マットレス、各種測定器などといった医療機器や消耗品を展開し、医療従事者やエンドユーザーに広く受け入れられることで、国内主要ブランドの一つとして高く評価されている。また、自社ブランド以外にも、セカやリースター、CA-MIなどといったブランドの高品質医療器具、機器、及び使い捨て製品などを販売している。
また、同社は高品質の医療機器、設備、消耗品のマーケティングにおいて標準となること、そしてマレーシアの医療従事者、及び戦略的パートナーにとって好ましいサプライヤーとなることなどをミッションとしている。
出典:https://teephamedical.com.my/2022/07/26/the-beginning/
2020年 マレーシアの医療卸(医療・介護)業界
マレーシアのサイバーダイン、治療の拠点を増設・拡充〜医療卸業界動向〜
介護ロボットスーツHALなどの医療福祉機器を手掛けるサイバーダインは、提携パートナーであるマレーシア政府系従業員社会保障機構(SOCSO)がサイバニクス治療の拠点を増設・拡充したことを発表した。
マレーシア国内のサイバニクス治療センターは、2020年9月末時点でSOCSOマラッカリハビリテーションセンター、SOCSOアラダマンサラメディカルセンター、SOCSOトレンガヌリハビリテーションセンター、マレーシア科学技術大学病院の4拠点に展開しており、60台がサイバニクス治療に使用されている。内訳は、下肢タイプ18台、単関節タイプ24台、腰タイプ18台となっている。
同社はSOCSOとの協力により、社会・職場復帰にも貢献するエコシステムを構築するとしている。
出典:https://www.cyberdyne.jp/company/PressReleases_detail.html?id=9865
マレーシアで医療卸業界大手のLKL、2020年度収益が大幅増
介護用ベッドなどの医療・福祉用具を製造・販売するLKLインターナショナルは、2020年度の収益が7,914万リンギットを記録し、前年度から13.04%の増加となった。収益の83.53%は、国内市場からとなっている。
医療及びヘルスケア用ベッドの売上増加により、ベッド製造の収益は前年度比で27.80%増となる1,462万リンギットであった。また、医療用周辺機器及び付属品販売は、前年度から155.56%増加となる1,587万リンギットに急成長した。
今後について、同社は製品ポートフォリオの拡充、国内リーチ拡充、新規海外市場開拓を企業戦略としている。過去2年間に同社は製品ポートフォリオを拡充しており、国内でCOVID-19治療を行っている公立病院や医療従事者に個人用保護具を提供している。
出典:http://lkl.irplc.com/new-announcement.htm?NewsID=202008285500006&Symbol=0182
カルマがマレーシアで車いすワークショップ開催〜医療卸業界動向〜
車いすをグローバルに展開するカルマのマレーシア法人は、ジョホール州のスルタナ・アミナ病院リハビリテーション科にて、車いすワークショップを初開催した。
ワークショップ前半では、カルマ製車いす「VIP515」を使用し、傾斜機能の臨床的な利点について説明した。同院の医師は、小児用車いすにも傾斜機能を搭載することの重要性と、使用者の滑り落ち防止について解説した。
ワークショップ後半では、2020年の最新モデルである「アジャイル」が紹介された。アジャイルは車いすの出し入れを簡単にするために、跳ね上げ式のアームレストと取り外し可能なフットレストが装備されている。同モデルは、2020年10月にマレーシアで発売される。
出典:https://www.karmamedical.my/2020/10/karma-malaysias-first-cme-wheelchair-workshop-1/
マレーシアのフェルコメディカルがSME賞受賞〜医療卸業界動向〜
フェルコメディカルサプライは、2007年に病院及び介護施設へリハビリテーション関連用具を提供する会社として設立された。同社は、医療機器の適正流通基準(GDPMD)とISO 13485を取得している。
2019年12月13日、クアラルンプール・コンベンションセンターにおいて「SME100アワード2019」が開催され、フェルコメディカルサプライは、ファースト・ムービング企業賞のカテゴリーにおいてSME賞を受賞した。
SME100アワードは、東南アジアで最も売れているビジネス誌が定性・定量評価及び現場監査といった厳しいプロセスにて選考するものであり、域内中小企業にとって最大の賞となっている。
出典:https://felcomedical.com/2020/03/09/sme-award-100-fast-moving-company-award/
マレーシアのBCM、2019年度収益は12%増〜医療卸業界動向〜
BCMアライアンスは、医療機関へMRI装置、CTスキャナ、デジタルX線撮影装置などの医療機器や、医療用ベッド、洗浄・消毒装置、ヘルスケア製品(血圧計、体脂肪計、体温計)などを販売する会社であり、マレーシア証券取引所のACE市場に上場している。
同社の2019年度の収益は、前年度比で12%増となる1億375万リンギットを記録した。2019年度の売上増は、主に医療機器事業及びヘルスケア製品事業が増加したことに加え、新規事業である業務用ランドリー事業が26万リンギット寄与した。
2020年度については、主要事業において広告と販売促進活動を強化し、アフターサービスを改善するとともに、既存顧客との関係強化を図るとしている。
出典:https://www.insage.com.my/ir/cmn/downloading.aspx?sFileName=20179000037614&sReportType=AR&sCompanyCode=BCMALL
2019年 マレーシアの医療卸(医療・介護)業界
マレーシアのLKL、医療用ベッド製造で収益増加〜医療卸業界動向〜
2019年4月30日、医療設備を製造・販売するマレーシアのLKLインターナショナルは、2019年度の収益が前年比25.1%増となる3,718万リンギットを記録したと発表。全収益の82.28%は国内市場からであり、前年度から50.25%増加した。
医療・ヘルスケア向けベッドの製造は、市場全体が困難な状況であったが、2019年度は前年度比で17.45%増となる1,144万リンギットを記録した。対して医療周辺機器及び付属品製造は、前年度比2.25%増と僅かに増加して1,499万リンギットであった。
今後の見通しについては、同社グループは需要が堅調でないことから、国内外の厳しい競争の中で収益と利益率が低下する可能性を指摘している。同社は高品質製品に注力することで競争力を維持し、製品群を充実することを戦略としている。
医療用HAL下肢タイプ、マレーシアで認可取得〜医療卸業界動向〜
2019年10月15日、写真株式会社は、身体機能改善を目的とした装着型サイボーグである医療用HAL下肢タイプが、マレーシア医療機器庁から医療機器の製造販売承認を取得したことを発表した。
同社は、2018年11月に従業員社会保障機構(SOCSO)傘下にある国内最大のリハビリテーション病院に24台のHALシリーズを導入、サイバニクス治療を行っていた。同時に、マレーシア国内の一般医療機関においても医療用HAL下肢タイプが利用できるよう、SOCSO と協力して医療機器承認手続きを進めていた。
販売に際しては、マレーシア科学大学病院など複数の医療機関での導入が内定しており、10月より順次出荷が開始される。また、SOCSO傘下のPERKESO社との協力により、国内販売を展開する。
マレーシアのネオリー・レハブ・サプライがジョホール進出〜医療卸業界動向〜
ネオリー・レハブ・サプライは医療用リハビリテーション製品の調達と供給で20年以上の実績を持っており、マレーシア政府機関や介護施設等へ車いすや病院用ベッド、便器、歩行補助具の販売を行っている。
同社は、これまでクアラルンプールとサバ州の2ヵ所にショールームを備えた店舗を展開していたが、2019年6月29日の発表によると、新たにジョホール州のタマン・ジョホール・ジャヤに新店舗を開設し、国内3店舗体制となった。
また、同社は自社ウェブページを通じて車いすや医療ベッド、病院用家具、失禁ケア製品、歩行補助具、リハビリテーション用具をオンラインでも販売している。
マレーシアのDKSH、香港に続きTAPA認証取得〜医療卸業界動向〜
2019年6月24日、アジアを中心とした市場拡大サービスプロバイダーのDKSHは、シャーラムにあるDKSHマレーシアの医療流通センターが施設のセキュリティ要件に関するTAPAのレベル『A』認証を取得したことを発表した。
今年1月には、DKSH香港のMapletree配送センターがヘルスケアサプライチェーンで同認定を取得しており、マレーシアはこれに続く取得となる。
同社のサプライチェーンマネジメント担当のローク・カ・ケオン副社長は、「当社は市場拡大の大手プロバイダーとして保管する商品を高レベルで管理しており、サプライチェーンセキュリティの重要性を認識している」と述べ、TAPA認定は同社のセキュリティー向上、及び顧客の厳しい要件へ取り組んでいる証であるとしている。
2018年 マレーシアの医療卸(医療・介護)業界
DKSHマレーシア、ワッカー社と栄養・食品セミナーで商品紹介〜医療卸業界動向〜
DKSHは、法人を対象としてアジアを中心に包括的事業サポートサービスを提供する商社。DKSHマレーシアは1923年にペナンに設立され、2018年現在、消費財やヘルスケア、機能素材など多様な領域をカバーしている。
DKSHは、マレーシアでドイツのワッカー社と共同で栄養・食品セミナーを開催し、初めてワッカー社のCAVACURMINとHTEssenceを紹介した。同セミナーはマレーシア初の共同イベントで、アジア各国で高まる健康・栄養問題に焦点を当てている。
ワッカー社の特許である多段階合成法により製造される高純度のヒドロキシチロソール(HTEssence)は、栄養補助食品やスキンケア化粧品の製造業者に革命をもたらしており、DKSHがディストリビューターとなっている。
マレーシアのインターサイエンス、ハイドルと提携〜医療卸業界動向〜
インターサイエンスは、科学・医療機器、病院インフラストラクチャおよび実験室備品のプロバイダーであり、東南アジアの7ヵ国で事業を展開している。医療向けでは、洗浄消毒器、血液保冷庫、保温キャビネット、モジュール型手術室システム 、滅菌装置、無影灯、手術台などを取り扱っている。
同社は、ドイツの高品質の実験機器メーカーであるハイドル・インスルメンツとパートナーシップを締結したことを発表した。さらに、ハイドル社は、インターサイエンスをマレーシア国内での製品とサービスの販売代理店に任命した。このパートナーシップにより、現地市場のカバレッジ拡大とアクセス性改善をもたらし、より良いサービスを提供することになる。
マレーシアのLKLインターナショナル、 FKSメディカル・ケアとMoU締結〜医療卸業界動向〜
LKLインターナショナルは、マレーシア国内で医療・ヘルスケアベッド、車椅子やキャビネットなどの周辺機器及び付属品を提供している。
2018年9月26日の発表によると、同社は子会社のLKLアドバンス・メタルテックを通じて、FKSメディカル・ケアとMoUを締結、サヌウエーブ・ヘルス社の急性・慢性創傷治療に使用される高度な医療装置『dermaPACE』の市場開発で協力する。dermaPACEは体外衝撃波装置で、米国食品医薬品局の承認を経て糖尿病性足潰瘍治療に使用されている。
MoUのもと、FKSはdermaPACEをマレーシアで販売する責任を負い、FKSとLKLアドバンス・メタルテックは販売促進とマーケティングで協力する。MoUの期間は2年間となっている。
マレーシアのファルマニアーガ、2017年の収益は6%増加〜医療卸業界動向〜
ファルマニアーガは1994年にマレーシアに設立された最大手のヘルスケアソリューション企業で、ジェネリック医薬品の製造・販売、及び医療製品・病院機器のディストリビューションなどを手掛けている。
同社の2017年の売上高は23億2,400万リンギットであり、前年から6%増加した。また、税引き前利益は7,310万リンギットで、前年から1.5%の増加となった。
ディストリビューション事業においては顧客満足度に重点を置いており、カスタマーケアコールセンターは93%が3回の呼び出しで応答することに成功している。またサービスレベルの改善によって、満足度調査では『非常に良い』と『良い』との評価が95%に達した。
まとめ:マレーシアの医療卸業界
医療用福祉用具市場において、現在の主な顧客層は65歳以上の高齢者です。今後は、平均寿命の延伸による高齢化によりさらに多くの需要が見込まれるだろう医療用福祉用具市場では、まだまだビジネスチャンスが眠っているのではないでしょうか。
クアラルンプール在住4年目の日本人。大学卒業後、東京で飲料メーカーの営業を担当。その後、マレーシアのクアラルンプールへ移住し食品商社の営業及び購買のサポートを担当。