タイのFinTech(フィンテック)革命:東南アジアのハブへの急成長と5大注目企業

タイのFinTech革命が加速しています!政府の積極的支援と急成長するスタートアップエコシステムにより、タイは東南アジアのフィンテックハブへと急速に変貌を遂げています。デジタル決済からAI駆動の融資、革新的な保険テクノロジーまで、タイのフィンテック企業は金融サービスの常識を覆しています。Sunday、bitkub、deemoneyなど、注目のスタートアップが次々と台頭し、数億ドル規模の資金調達に成功。これらの企業はどのようにしてタイの金融landscape を塗り替え、東南アジア市場に進出しているのでしょうか?

タイのFinTech成功の秘訣と、今後の展望を徹底解説します。

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タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと
目次

タイのFinTech業界の現状と成長要因

タイの金融市場の概要

タイの経済と金融システムは変革の真っ只中にある。技術の進歩は金融サービスの向上を加速させ、企業や家庭の金融アクセスのギャップを縮小させている。近年、タイの人々の金融サービス利用行動は急速に変化している。例えば、QRコードをスキャンしてキャッシュレスで商品を購入することは、過去5年間には存在しなかったが、現在、タイの人々はキャッシュレスでの購入に慣れている。モバイルフォンを使って簡単に海外送金ができ、手数料も大幅に低く、時間も短縮されている。また、顔認識技術を利用して、支店に行かずにスマートフォンからオンラインで銀行口座を開設することも可能。

金融サービスに加え、デジタル技術は、国民デジタルID(NDID)やブロックチェーン上の電子保証状(e-LG on blockchain)、またAIなどの新しい技術を屈指し、サービスの向上と新たなフィンテックのサービスの拡大を促進している。

出典:Financial Landscape

タイフィンテックの成長要因

タイのフィンテックセクターは、政府の支援政策、スタートアップエコシステムの相乗効果により、近年目覚ましい成長を遂げている。現在、タイは東南アジア諸国の中でフィンテック資金調達で5位にランクインしており、商業銀行と中央銀行の積極的な参加を通じてデジタル金融システムの強化を目指している。過去3年間でデジタル取引が急増し、デジタルウォレットやモバイル決済プラットフォームが広く普及した。また、ピアツーピア融資ネットワークが従来の銀行ローンに代わる信頼できる選択肢として登場し、信用のアクセスが簡素化され、多くの人々が従来の金融サービスを利用できるようになった。

タイ政府は、資金調達、メンターシッププログラム、スタートアップインキュベーションプログラムを通じて、フィンテックセクターの拡大を支援。この取り組みの一環として、「タイ4.0」イニシアティブを導入し、国の金融インフラを向上させ、フィンテック企業の成長を促進している。具体的には、特定の分野への投資を誘引し、革新を促進するための施策やインセンティブが導入されており、税制優遇、研究開発資金、スタートアップ支援、特別経済区の設立が含まれている。

今後、タイ中央銀行は電子銀行とフィンテックの進展に対応するためにインフラの強化を進め、ISO 20022金融取引報告基準を導入。さらに、バーチャルバンクのライセンス制度を発表し、新しい金融サービスプロバイダーの導入を目指している。これにより、デジタルチャネルを通じて顧客のニーズに応える新たな金融ソリューションが提供される予定。タイ中央銀行は、2023年にライセンス規制を確定、申請プロセスは、2024年9月19日まで受け付けられ、合計5件の申請が行われた。BOTは、財務省の通知に基づいて、バーチャルバンクのライセンス申請および発行のための規則、手続き、条件を評価し、申請者の資格、潜在能力、バーチャルバンクの運営能力を評価、資格のある申請者のリストは財務大臣に提出され、承認を受けることになる。財務大臣によって承認されたバーチャルバンクを設立する申請者のリストは2025年半ばに発表される見込み。タイの金融市場に新たな風が吹き込み、より多様で効率的な金融サービスが実現することが期待されている。

出典:https://thailand.acclime.com/insights/establishing-fintech-business/

https://www.bot.or.th/en/news-and-media/news/news-20240923.html

規制環境と政府の役割

タイ中央銀行は、タイの金融サービス提供者に対して、海外のフィンテックを認識し、最先端技術を迅速かつ創造的に、タイ社会に適合させて導入することを奨励している。しかし、これらの技術には固有のリスクが伴うため、BOTは規制サンドボックスプログラムを導入し、QRコード、生体認証、ブロックチェーン、AIなどの新しい技術を初期段階で限られた範囲内で試行し、適切なリスク管理を実施している。この取り組みにより、これらの新技術がタイ経済に実際に利益をもたらし、消費者や社会に悪影響を与えないことを目指している。

SECの重要な役割は、市場の信頼性と秩序を維持するために必要な規制を行い監視していくこと。SECは、規則の発行、遵守の確保、違反時の執行を行い、個人の自由に制限が生じる場合もあるが、市場全体を保護するために慎重かつ公正に権力を行使する。資本市場は、証券発行者や投資家などから成る無形の場所であり、その監視は市場参加者とシステムの秩序と効率性を確保することに焦点を当てている。市場監視メカニズムは、自己規律、市場規律、規制規律の三つの分野をカバーしている。デジタル資産については、管理する法律の下に資本市場を監督し、規制している。

出典:https://www.bot.or.th/en/financial-innovation/digital-finance/fintech-in-thailand.html

https://www.sec.or.th/cgthailand/EN/pages/overview/secroles.aspx

https://www.sec.or.th/EN/Pages/AboutUs/HowWeRegulate.aspx

サンドボックス制度やライセンス規制の概要

タイ中央銀行は、新しい金融製品やサービスのテストを支援するために、強化されたサンドボックス制度(Enhanced Regulatory Sandbox)を設けた。強化されたサンドボックス制度は、技術発展の傾向と方向性に沿った新しい製品やサービスのテストのためのメカニズムとなり、新しい製品やサービスの利益とリスクを効果的に評価し、適切な政策や規制ガイドラインの確立につなげることができる。金融サービスを支援するための技術の応用や金融におけるイノベーションの開発をサンドボックス制度でテストするためには、以下の要件を満たす必要がある。

(1) テストは、タイ中央銀行が規制する金融業務の範囲内であるか、BOTが規制対象者に実施を許可したビジネスまたは活動であること。
(2) 提案された製品またはサービスは、QRコード決済のようにタイの金融セクターのインフラストラクチャーまたは共通の基準に発展する可能性があるものであるか、P2Pレンディングやデジタル資産の保有など、関連する法律または規制ガイドラインに基づいて規制サンドボックスでテストが求められるものであること。さらに、BOTがテストの必要性を認めた場合、技術革新の応用に伴うリスクを密接に監視・評価することを許可する。

出典:https://www.bot.or.th/content/dam/bot/financial-innovation/digital-finance/fintech/sandbox/UnofficialTranslation_RegulatorySandboxGuidelines.pdf

タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと

タイの主要FinTech企業とサービス

デジタル決済

タイ中央銀行は、市民ID、携帯電話番号(または受取人の他の識別番号)、および銀行口座番号を使用して、より低い料金でデジタルチャネルを介して送金するユーザーのオプションの拡大する支払いシステムインフラストラクチャとして ”Prompt Pay”2016年から開始、公共、企業、および政府部門の間で非常に人気を博したさまざまな補足サービスを提供し、支払い取引の継続的な増加を促進している。また、ASEANへの支払い接続イニシアチブの一環として、PromptPayのカバレッジを他のASEAN諸国に拡大。ASEANを超えて、特に出稼ぎ労働者や観光客が大量に流入しているタイと強い経済的つながりを持つ国々とのつながりも築かれている。将来的には、より多くの戦略的パートナー国を追加し、人々のニーズによりよく応えるためにサービスプロバイダーの数を増やすことを期待。最後に、エンドツーエンドのビジネスプロセスを強化するための貿易、国を超えた送金(ベトナム、マレーシア、インドネシア、シンガポール、カンボジアなど)および支払いデータの銀行間デジタル伝送のための統一された金融および支払いインフラストラクチャ”Prompt Biz“などを支援している。

出典:https://www.bot.or.th/en/financial-innovation/digital-finance/digital-payment.html

デジタルレンディング 

タイでは銀行へのアクセスが広がっているにもかかわらず、信用のアクセスは依然として著しく制限されている。タイの家庭の80%以上が銀行融資やクレジットカードなどの正式な金融サービスにアクセスできていない状況である。従来の貸し出しシステムは、リスク評価や運営に伴う高コストのために、低所得層への対応が不十分で、給与所得者のような容易に評価できるセグメントに焦点を当てる傾向があり、自営業者やフリーランス、低所得者層を除外している。以前は3人に1人が非公式の融資、高利の年利100%を超える強欲な貸し手に頼ることが多く、しばしば倫理に反する回収方法に直面に頼っていたが、現在デジタルレンディングの出現で、利用者も非常に増えている。リスクを評価し、高い精度でローンの決定を下すAIシステムを備えており、最初の登録からローンの支払いまでの時間は平均15〜20分と通常のローンの決定より、断然短くなっている。ABACUS digitalのユーザーの50%以上がローンを受け取った後、収入が増加しているなど、AIを活用した貸し出しイノベーションの未来は明るく、今後もタイの人々の金融アクセスは、拡大していくと見込まれている。

出典:https://www.abacusdigital.com/post/moneythunder-abacusdigital-demark-award-2024

https://www.scbx.com/th/scbx-exclusive/abacus-digital-ai-moneythunder/

https://www.abacusdigital.com/social-impact

WealthTechと投資プラットフォーム

ウェルステックは、資産と資産管理会社が顧客サービスを向上させる手助けをしており、金融機関、ファイナンシャルアドバイザー、エージェント、そしてエンドユーザーに至るまで広範囲にわたる。アジア太平洋地域同様、タイでは、個人の金融資産の大部分が現金や預金として保有されており、地元のニーズに応える多くの興味深いウェルステックプラットフォームが登場し、ここ数年でウェルステックはますます人気を集めている。タイの銀行は、特に近年の変化に迅速に適応、長年の信頼性と大規模な顧客基盤を活かし、デジタルプラットフォームに保険や投資オプションを直接組み込んでいる。この迅速な移行により、ポートフォリオを便利に管理でき、銀行は信頼できる金融パートナーとしての役割を強化。しかし、銀行のガバナンスはウェルステックとの連携を困難にしており、提供可能な資産の種類に厳しい制限があるのが現状である。一方で、仲介会社は、クライアントの主要な接点であった物理的な拠点への依存を戦略的に減らし、デジタルプラットフォームへの移行を進めている。特にモバイルアプリに投資することで、変化するクライアントのニーズに応え、新世代の投資家向けにサービスの効率性を向上させている。

出典:https://appsynth.net/wealth-tech-thailand/

InsurTech

保険業界はまだデジタル化の初期段階にある。今日のスタートアップ企業は、パートナーシップ(埋め込み保険)、消費者への直接販売、そして代理店プラットフォームを通じた製品のデジタル流通に焦点を当てている。しかし、保険会社は放置されており、多くの場合、プロセスや流通のデジタル化に対する解決策を自ら見つける必要がある。タイ、フィリピン、インドネシアには多くの保険会社が、現状では、業界の大手企業が親会社からの資金源やデジタル化プロジェクトへの支援を享受している一方で、中小規模の保険会社はこれらのリソースを自由に利用できず、取り残されている状況である。

今年のOIC InsurTech Award 2024では、デジタル技術を活用して人々の生活の質や健康を向上させる保険商品やサービスに重点を置いたイノベーションの創出に焦点を当て、人々が便利で迅速にサービスにアクセスできるようにすることを目指している。さらに、このプロジェクトは保険業界を強化し、新しいコンセプトや技術を用いた保険イノベーション(InsurTech)の開発を促進し、一般の人々が保険にアクセスできるよう支援し、保険知識を広めることを目的としている。

出典:https://www.eazydigital.io/jp/blogs/wavemaker-seedstars-invest-in-thai-saas-insurtech-startup-eazy-digital

https://onlineweblaw.oic.or.th/insurtechaward/

タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと

主要企業

Sunday

2017年に設立されたタイで初となるAIとデジタルプラットフォームを使用したフルスタック型insurtechグループ、生命および非生命仲介会社であるSunday Ins、ヘルスケアおよび電子機器保護プロバイダーであるSunday Care、およびデータサイエンスおよびテクノロジープロバイダーであるSunday Technologiesの3つの主要なブランドがある。

2019年にタイのベストfintechスタートアップに選ばれた企業で、中小企業や法人向けの団体健康保険、各種ヘルスケアサービスの他に、自動車、健康、 および旅行保険など個人向けのサービスを提供する。これまでに100万を超える保険契約と、健康保険プラットフォームで10万を超えるアクティブユーザーを獲得した実績で、2020年の世界のinsurtechランキングでトップ100入りを果たした。Insurtechは、100%の収益成長の目標達成に近づいている。SCBのベンチャーキャピタル部門であるSCB10Xが主導のシリーズBラウンドで900万米ドルの資金調達をした。同社は、タイとインドネシアでの急速な成長計画をサポートするために新しい資本の展開を目指す。

出典:https://easysunday.com/about/

bitkub

2018年2月に事業を開始したタイのNo.1ブロックチェーンスタートアップ。バンコクを拠点とするタイ最大のデジタル資産取引所で、2023年の総市場シェアの77%以上を占める。有名なタイのビットコイン取引サイト「bitkub.com」を介してBitcoinやその他の主要な暗号通貨の取引が可能である。2020年7月に3500万バーツの収益と338%の飛躍的な成長を明らかにし、総加入者数が4,000万人を超えるタイのインフルエンサーと$ FANS(FansToken)を立ち上げたことから、2020年上半期に600%の成長を示した。また、タイと英国の間にRippleNetの新しい支払い回廊を確立、さらに2020年11月には、同社の暗号取引量が史上初となる過去最高の10億バーツに達し、タイ人がデジタル資産への投資に関心を持つ事を示した。2023年6月のSECのレポートによると、タイで最も多くの暗号通貨の取引量を持っており、取引プラットフォームは、約60億バーツの価値がある。資本調達し、市場でのBitkubの評判を高めるため、2025年にタイ証券取引所(SEC)に上場する計画を発表。調達目標額は10億ドル。

出典:Bitkub แพลตฟอร์มเทรดเหรียญดิจิทัลชั้นนำในไทย | Bitkub.com

deemoney

2017年にタイ中央銀行から非銀行国際送金サービスライセンス、電子決済サービスライセンス、および認定両替者ライセンスを取得、タイ銀行から国際送金および為替サービスの実施を認可された国内初の非銀行組織、2018年から運営するタイの国際送金を専門とするタイの大手フィンテック企業。1,000THBから800,000THBまでの国際送金に対して業界初の定額料金と個々の顧客に業界最高のFXレートを提供する。2019年には、約15,000人の顧客基盤を持ち、タイで最も有望なFintechの新興企業に選ばれた。2020年にはRippleNetのブロックチェーン技術を採用し、世界中の300の金融機関への資金移動を容易にするタイで最初の非銀行組織となった。

現在、世界64か国への支払いと受取人の銀行口座への直接送金が可能であり、さらには世界180か国以上へMoneygram送金サービスを提供する。2020年には、29の国で利用可能な翌日国際送金サービス「DeeNEXT」を開始し、現時点は 56カ国に対して利用可能である。現在累計1000億バーツの転送価値、700万回の送金取引、60企業以上のグローバルパートナーの取引実績がある。

出典:https://www.deemoney.com/what-is-deemoney

finnomena

2016年に設立された金融と投資に焦点を当てた企業で、タイのウェルスマネージメント業界の先駆者である。投資家のための相互資金取引プラットフォームサービスを提供し、120万人を超えるオンライン加入者、および18万人を超えるメンバーを獲得した結果、タイで第一位の証券会社となり、100億バーツ以上の投資顧問金を代表する。2020年1月にシリーズB投資ラウンドにおいて1,000万米ドルの資金調達を実施し、世界をリードするベンチャーキャピタルが主導の合併企業を立ち上げた。同社はFinTechの分野における金融業界のメガトレンドに焦点を当てた計画を持ち、さらにはSSFおよびRMFファンド取引システムを立ち上げた。

現時点、10億ドル以上の資産の扱いがあり、登録者数は60万人、2500人以上のファイナンシャルアドバイザーが登録している。2024年10月には、投資金融技術におけるリーダーシップを強化し、タイのイノベーションを促進し、支援するためにナショナルイノベーションオフィス(公的機関)が開催しているナショナルイノベーション賞(NIA)を受賞した。2024年内にすべての投資スタイルに対応する税控除ファンドを立ち上げることを目指している。

出典:https://www.finnomena.com/about-us
   ttps://www.finnomena.com/z-admin/nia-2024/

Ascend Money

2013年に設立、デジタル決済などのデジタル金融商品とサービスを提供するプラットフォームであるTrueMoneyを運営するタイのフィンテックアプリ開発会社。eコマース、データ、クラウドのデジタルビジネスのコングロマリットであるAscend Groupの傘下である。TrueMoneyには、東南アジアに5000万人以上のユーザーと88,000人のエージェントがいる。タイでは、5年間で月間アクティブユーザーが250万人から1400万人に増加し、2022年初頭には収益と取引がそれぞれ25%と60%増加した。2021年、Ascend Moneyは、TrueMoney Walletアプリやその他のデジタル金融サービスを地域全体に拡大するために、15億ドルの評価額で1億5000万ドルを調達した。

現在 タイ、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、ベトナム、フィリピンの6カ国をカバーし、累計140億ドルの金額を処理、5000万人のユーザーと顧客、2100万人の電子財布ユーザー、88,000のエージェントのネットワークを保有している。デジタル融資、デジタル貯蓄、デジタル投資など、あらゆるデジタル金融サービスをカバーするようにポートフォリオを拡大している。

出典:https://www.ascendmoneygroup.com/about/

タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと

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