アメリカの資格・社会人教育に革新の波が押し寄せています。AIとVR技術を活用した24時間対応の学習プラットフォームが急速に普及し、パーソナライズされた学習体験が主流に。オンライン教育の拡大と産学連携の強化により、業界の姿が劇的に変化しつつあります。
今回は、そんなアメリカの資格・社会人教育業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2023-2024年 アメリカの資格・社会人教育業界
Udacity 新しい AI チャット ボットのリリースを発表
資格取得講座や社会人教育業界大手のUdacityは、個別のサポートや個別の指導用に新たにAIを搭載したチャットボットを利用すると発表した。このチャットボットは、最新といわれるチャットGPT-4ターボを搭載している。
チャットボットによるサポートは人間と違って24時間体制で利用が可能となる。電話によるサポートは回線がふさがって待たされることも多々見られるが、チャットボットであれば同時に数千の対話が処理可能。学習者は必要な時に、 いつでも必要なサポートを受けることができる。
同社では、これまでのグローバルメンターネットワークとAIチャットボットを組み合わせることで、世界中のUdacity学習者に最適な指導ができると期待している。この方法が軌道に乗れば、学習者サポート方法の革命をもたらす可能性があるという。
AIの利用はまだ始まったばかりなので、可能性は無限であるという。今後も同社ではチャットボットの利用法や ヒント・コツなどを紹介していくという。
出典:https://www.udacity.com/blog/2023/03/announcing-our-new-ai-chatbot-on-demand-learning-guidance-made-easy.html
Skillshare リアルタイムで作成して接続
オンライン社会人教育の最大手Skillshareでは、デジタル分野やアート系の技術をレクチャーするコンテンツが充実している。技術を持つものが、オンライン上で受講者に有料・無料で講義するという仕組みになっている。
世界中に700万人ものユーザーを抱え、25000以上の講座が開かれ、その中には新たにソーシャルマーケッテイング・アカウント・生産向上のための技術などのビジネス講座も用意された。
講座の中でも人気であるのが、ライブセッションである。このイベントは、志を同じとするクリエイターと一緒に、 リアルタイムで何かを作り上げることが可能である。
各ライブ講座はクリエイターが実践を深め、更にインスピレーションを与える講師や仲間と交流し、新しい作品や洞察を得ることに役立つと、同社では広報している。
出典:https://www.skillshare.com/en/blog/introducing-skillshare-live-sessions-create-and-connect-in-real-time/
edX Degreedとの戦略的パートナーシップを強化
eDXは、世界最高の教育を誰もが利用できることを目標に、2012年にハーバード大学とMITによって作られたオンライン学習プラットフォームである。同じく2012年に設立されたDegreedは、企業に勤める社会人がキャリアアップのためにスキル向上を助けるための学習プラットフォームである。
このオンラインによる資格・社会人教育の業界大手二社が戦略的パートナーシップの拡大を発表した。効果的な学習および能力開発プログラムの推進を目指す企業向けのedX For Businessを、Degreedのプラットフォーム内で直接利用できるようになったのである。
「コラボができて大変うれしい」とDegreed製品担当副社長デビッド・プラット氏は喜んだ。またedX For Business 責任者であるアンディ・モーガン氏は、「Degreedとのパートナーシップの拡大により、世界中の受講者に多用途性とコホートベースの学習のダイナミズムが広まる」と述べた。
出典:https://press.edx.org/edx-degreed-strengthen-partnership
Macmillan Learning Packbackと提携し、AIを使用して教室で好奇心を育む
教育出版及び社会人教育サービス会社であるMacmillan Learningと、教育テクノロジー会社であるPackbackが、Macmillan Learningが持つ数百の教材と、 Packback が持つAIを活用したテクノロジーとを組み合わせるパートナー シップを発表した。
発表によると、この2つを組み合わせると、生徒の成果が向上し、さらに生徒が講座内容に集中できるようになったという。「好奇心が生まれ、真の学力の成長を促進し、学生が自らの学習行程において、より積極的な役割を果たすようになっている」とMacmillan LearningのCEOであるスーザン・ウィンスロー氏は述べた。
「このコラボレーションは、基礎的な学習ができるだけでなく、教室からキャリアまでの成功への架け橋となるだろう。切望されているAIコラボレーションスキルの先駆者になると思う」とPackbackのCEOであるケルゼイ・ベリンジャー氏が述べた。
出典:https://community.macmillanlearning.com/t5/press-release/macmillan-learning-and-packback-team-up-to-cultivate-curiosity/ba-p/19336
Pearson 2025年の夏にはオンラインで試験を受験可能に
Pearson Edexcelは、アメリカのハーバード大などを含むアイビーリーグの入学願書にスコアを記入できる資格のひとつである。そのなかで、イギリスの高校卒業資格のGCSE(General Certificate of Secondary Education・中等教育終了一般資格)のうち、英語と英文学の試験がPearson Edexcelによるオンライン試験で受験できるようになった。
2025年夏には、最大で125000人の学生が受験できるようにオンラインシステムを整えているという。アメリカでも実施されている国際GCSEはオンライン受験が可能なようにカスタマイズされている。ピアソンスクールのマネージングディレクターであるシャロン・ヘイグ氏が「オンライン受験希望者は前年度比2倍」と語っている。
Pearsonは10年以上にわたり世界115か国以上でオンライン講座を提供してきた。一例として、同社のファンクショナルスキル英語および数学の資格試験には、紙ベースまたはオンラインの選択が含まれている。
出典:https://plc.pearson.com/en-GB/news-and-insights/news/students-sit-gcse-english-onscreen-first-time-next-summer-pearson-edexcel
2021-2022年 アメリカの資格・社会人教育業界
LinkedIn Learning 4つの無料コースでリーダーシップスキルを向上
経営者としての社会人教育コースを用意しているLinkedIn Learningでは、「コースクラブ」を用意している。この クラブに入会すると、四半期ごとに無料のオンラインコースを受講できる。
今回公開された4つの無料講座は「従業員のコーチングと育成」「マネージャーによる社内流動性の促進」「成長マインドセット」「変化疲労を乗り越えて成長エッジへ」の4講座。いずれも具体的な例を使って、すぐに実行できるように詳細なアドバイスを含んでいる。
同社の調査によると、従業員の91%が、会社側の指導・教育が不足していると感じている。経営者側のスキル構築は、従業員のキャリアを向上するために必要な学習をモデル化することにもつながっている。
同社は「従業員に与える影響を、過小評価しないように」と経営者側に警告している。経営者側は、組織が将来必要とするスキルを従業員と一緒に構築していくと意識すべきだ、と同社は考えている。
出典:https://www.linkedin.com/business/talent/blog/learning-and-development/boost-your-leadership-skills-with-these-free-courses
Skillsoft Codecademyを買収し8500万人を超えるコミュニティを構築
デジタル学習の世界的リーダーであるSkillsoftが、技術スキル向けの大手オンライン学習プラットフォームであるCodecademyを約5億2500万米ドルで買収する最終契約を結んだ。
SkillsoftのCEOであるジェフリー・R・タール氏は「Skillsoftの12000 社を超える企業顧客と4500万人を超える学習者と、Codecademyの 4000万人の学習者、洗練されたデジタルマーケティング能力、影響力のあるブランドを組み合わせることで、大きな収益相乗効果が得られると期待している」と述べた。
Codecademyの創設者兼CEOのザック・シムス氏は「成長を促進する追加のリソースと機会により、私たちはこの重要な次の章に着手できることを楽しみにしている」と合併を喜んだ。
Codecademyのインタラクティブで自分のペースで進められるコースや実践的学習と、SkillsoftのAI主導のプラット フォームである Percipioを通じ、さらに没入型体験を提供できるようになるという。
出典:https://investor.skillsoft.com/news-events/press-releases/detail/340/skillsoft-to-acquire-codecademy-a-leading-platform-for
Pluralsight デジタル化支援のための新しいソリューション
テクノロジー人材開発会社であるPluralsightが、TechFoundationsの立ち上げを発表した。これは、個々の技術的背景に関係なく、誰もがテクノロジーに精通できるようにするためのソリューションである。また、カスタムクラウドサンドボックスを発表し、組織のクラウド環境に合わせて調整されたサンドボックス環境を通じ、実践的な学習体験を提供する。
TechFoundations は、アジャイル、クラウド コンピューティング、プラットフォーム、拡張現実とメタバース、自動化、データ、セキュリティなどを含む 12 のトピックにわたる専用コンテンツを提供。学習評価も含まれており、参加者が既存の技術知識を判断できるようになり、必要がある分野にのみ時間を費やすことが可能となる。
Pluralsightの最高製品責任者であるゲイリー・アイマーマン氏は、「今日、どの企業もテクノロジー企業となっており、従業員がテクノロジーの基本を理解することが不可欠となっている。テクノロジーに関する知識がなければ、競争に 後れを取る危険がある」と述べている。
出典:https://www.pluralsight.com/newsroom/press-releases/pluralsight-introduces-tech-foundations
ライトブリッジアカデミー 幼児教育業界の支援方法
カリフォルニア大学リバーサイド エクステンション(以下UCRXとする)と世界をリードするオンライン学習プラットフォームである edX が、提携を発表した。edXプラットフォーム上でUCRXのオープンオンラインコースが受講できるようにクラスを開講する。
このコースはメンタルヘルス・健康・世界の言語に関するコンテンツがあり、edX利用者は無料で視聴できる。「世界中で生涯学習者となる新世代の革新的な思想家を準備するというUCRXの使命を導入する」と同大学の学部長兼人類学教授のケビン・J・ヴォーン博士が述べた。
「このパートナーシップの拡大により、どこからでもアクセスが可能で、しかも手頃な価格の教育機会を提供するという取り組みをさらに強化できる」とeDXパートナーシップ担当社長のアンドリュー・ハーマリン氏は述べた。
これまで提携してきたコーディングとサイバーセキュリティのブートキャンププログラムも提供し続ける予定である。
出典:https://press.edx.org/university-of-california-riverside
Cengage 第 11 回 年間ベスト・イン・ビズ・アワードで銀賞を受賞
米国高等教育事業であるCengageが、各部門で審査される唯一の独立したビジネス賞プログラムである2021年ベスト・イン・ビズ・アワードで最も革新的な教育製品(銀賞)を受賞した。
2020年、パンデミックにより遠隔学習への突然の移行が余儀なくされたとき、同社はeTextbookとオンライン学習プラットフォームへの無料アクセスを提供した。こうした企業努力が今回の受賞につながったとされている。
Cengage GroupのCEOであるマイケル・ハンセン氏は「学生は高等教育を受けるまでに依然として多くの障壁に直面しており、すべての学生が雇用の可能性と生活を向上させる教育を手頃な価格で受けられるようにするためには、さらなる取り組みが必要だ」と述べた。
第11回目となる今回のベスト・イン・ビズ・アワードには、700社以上の企業がエントリーし、回復力と適応力、大小さまざまな問題における顧客への模範的な献身を紹介していた。
出典:https://www.cengagegroup.com/news/press-releases/2021/cengage-wins-silver-in-11th-annual-best-in-biz-awards/
まとめ:アメリカの資格・社会人教育業界
アメリカの資格・社会人教育業界は、AIやVR技術を活用した革新的な学習プラットフォームの普及により、大きな変革期を迎えています。24時間対応のAIチャットボットやパーソナライズされた学習体験が主流となる中、オンライン教育の拡大と産学連携が進んでいます。今後は、さらなる技術革新とスキルベース教育へのシフトにより、生涯学習のあり方そのものが変わる可能性があります。
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。