米国の幼児教育・学習塾業界が、コロナ後の学力低下を追い風に急成長中です。大手フランチャイズの躍進、AIやSTEAM教育の導入、多様性重視の取り組みが広がる一方、医療専門家の参入や地域密着型の新モデルが台頭。この 革新的な潮流が、米国の教育界に変革をもたらしています。
今回は、そんなアメリカの幼児教育・学習塾業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2023-2024年 アメリカの幼児教育・学習塾業界
ゴダード・スクール フランチャイズ展開の機会として表彰される
プレミアム幼児教育プロバイダーとして有名なゴダード・スクールが、フランチャイズ業界誌で有名な「アントレプレナー・フランチャイズ500」と「フランチャイズ・ビジネス・レビュー」と「フランチャイズタイムトップ400」などから高評価を与えられた。
特に「フランチャイズ500」に関しては、45年間の歴史を持つフランチャイズ業界では有名な出版物で、フランチャイズ加盟店では貴重な情報リソースとして認識されている。
ゴダード・スクールは26年連続でランキングされており、アントレプレナー社はゴダード・スクールを殿堂入りに加えた。ゴダード・ スクール会長兼最高経営責任者のデニス・R・メープル氏は「高い保育に対するニーズは加速するばかりであり、ゴダード・スクールを開校することで、より多くの起業家に遺産を築き、地域社会に貢献する機会を提供できるよう、私たちは成長を続けるつもりだ。」と述べた。
出典:https://www.goddardschool.com/news/2024/goddard-school-top-franchise-2024
プリムローズ・スクールズ フランチャイズ500 校目の設立を発表
質の高い早期教育が定評あるプリムローズ・スクールが500校目の開校を発表した。2023年には20校の新規開校となったが、最初のフランチャイズからちょうど500校目に達したという。
プリムローズ・スクールの全米拡大は続いており、ボストン・ロサンゼルス・ソルトレークシティ・ワシントンDC など、特に都市部では180校が開校している。プリムローズ・スクールのCEO、ジョー・カーチナー氏は「私たちは研究に基づいたカリキュラムを継続的に強化し、質の高い早期教育とケアを必要とするコミュニティにシームレスに適応できるよう、フランチャイズ モデルを進化させている」と述べた。
プリムローズ・スクールでは、目的のある遊びをしながら、STEAM 教育を日常体験に組み込んでる。その結果、2022年から2023年度では、主要な学問的・社会的・感情的な概念を習得することができたという。
出典:https://www.primroseschools.com/newsroom/primrose-schools-500-location
ライトブリッジアカデミー 就学前の生徒が幼稚園入学準備評価で 97% の習熟度を達成
ライトブリッジアカデミーが、主要な学習領域にわたる4歳と5歳の未就学児を対象とした2022~2023年のVine評価(幼稚園への準備スキル)で、例年より5%高い97%の習熟度を達成した。
この結果に対してライトブリッジアカデミーの教育・トレーニング担当副社長ジェニファー・ロマノフ氏は、「今年テストされた生徒の多くは、最初の2年間はコロナ禍の影響を受けている。他社との交流が限られていたため、発達に多少の遅れが生じていた。それにもかかわらず、この結果が出せたことは、バランスのとれた魅力的なカリキュラムであるという証拠となっている。」と述べた。
「当社のインタラクティブなカリキュラムとサークル・オブ・ケアの理念は、学問的・感情的・社会的・身体的発達に焦点を当てたアプローチを通じ、子どもたちが確実に育ち、可能な限り最高の教育を受けられることである」と最高 経営責任者のジジ・シュワイカート氏は述べた。
出典: https://www.prnewswire.com/news-releases/lightbridge-academy-pre-k-students-achieve-97-proficiency-in-kindergarten-readiness-assessment-301907579.html
KUMON 2024 年に期待される 教育フランチャイズのトレンド
アメリカでは2023年のハイパーインフレのために経済市場が冷え込んだといわれるが、一方で、民間教育セクターにおけるフランチャイズの機会は依然として熱いともいわれている。2024年に向けて、KUMON はその勢いを利用して成長を続けるという。
Nature Human Behavior誌の調査によると、コロナ禍で世界中の子供たちが学習内容の約3分の1を失い、数学と読解の成績が大幅に低下し続けていることが示された。この学力低下は公立学校の授業だけでは埋められないと、保護者たちは私立教育市場にさらに注目した。KUMONは新入生の登録者数の記録を更新してきた。また、世界の個別指導市場は、2022年の約1460億米ドルから2030年までに2908億米ドルに達すると予測されている。
米国市場は 2022年に261億米ドルと推定され、2030年までに11.6% 増の892億ドルに成長すると予想されている。「子供たちを助けるために、需要に応えたいと考えています」とKumon North Americaのセンター開発担当副社長の ジョン・コリンズ氏は述べた。
出典:https://www.kumonfranchise.com/us-en/assets/pressrelease/release2023-1201.html
CAIS 中国語イマージョン幼児教育者を支援
CAIS(チャイニーズ・アメリカン・インターナショナル・スクール)は、2月1日・7日・15日に新人中国語イマージョン幼稚園教師を対象とした講習会を無料で提供すると発表した。
この講習会はZOOMを使ったオンラインで2回、CAISの校舎で対面で行うのが1回で構成される。すべて中国語で講義され、CAISの後援により、中国語イマージョン教育に専念する新人教師の専門能力開発をサポートすることを目的としている。
一回目のテーマは「積極的な規律」、二回目は「学級運営における協力」、そして三回目は「キャリアプランニング」となっている。三回の講演を通して、参加者に「中国語イマージョン幼児教育の専門家になる」という信念を持ってもらうことを狙っている。
講師は現役のCAIS幼稚園教師が担当し、またCAISのコーディネーターやプリスクールのディレクターなども担当するので、幼児教育のみならず、進学後のことをも視野に入れた講義を聴くことができる。
出典:https://www.cais.org/empowering-novice-mandarin-immersion-preschool-educators/
2022-2023年 アメリカの学校業界
ラーニング・エクスペリエンス フランチャイズ 500 でトップ フランチャイズにランクイン
教育保育会社であるラーニング・エクスペリエンスは、フランチャイズ業界専門誌「アントレプレナー」による 「フランチャイズ 500」において、チャイルドサービス部門第4位に選出された。
アントレプレナー社のフランチャイズ500は、フランチャイズ加盟社にとっての貴重な情報源となっており、投資家からは成長力や財務力、安定性やブランド力を数値としてみることができるものになっている。
ラーニング・エクスペリエンスCEO兼会長のリチャード・ワイズマン 氏は、「多くの業界がコロナによって大きな打撃を受けた過去数年間において、安定を維持し拡大を続ける当社の能力は、献身的で有能なフランチャイズ加盟店と システム全体のチームメンバーが作り上げてくれたものである」と述べた。
「今年のリストに名を連ねた企業は、立ち直り力があり、協力的で機敏、気概と革新性を持っている」とアントレプレナー社ジェイソン・ファイファー氏が述べた。
出典:https://thelearningexperience.com/press/the-learning-experience-ranked-among-top-franchises-in-entrepreneur-magazines-franchise-500-for-2022/
キッズアールキッズ 多様性、公平性、包括性を重視したイベントとプログラムを展開
キッズアールキッズは、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)が企業内で適切に取り組まれているかを調査・指導する企業のInclusent社と2021年6月から提携していた。提携後、キッズアールキッズは、Inclusent社が提案するDEI分野の継続的な改善に取り組んできた。
Inclusent社の最高戦略責任者ビル・ホーソーン氏が率いる第三者評価チームは、経営陣のリーダーシップ・ブランドの地位と評判・慈善活動への投資・カリキュラム・フランチャイズ加盟店の連携などについて評価した。
また教育ストラテジストであるジョセリン・ローガン・エド博士によるZOOMイベント・プログラムを開催。例えば「黒人歴史月間と旧正月を理解する」というのが2月のテーマだった。
キッズアールキッズ上級リーダーは、児童学習業界におけるDEIを主導するコンピテンシーの構築に署名した。
出典:https://kidsrkids.com/press-statements/
チルドレンズ・ライトハウス 新しいカリキュラムを発表
質の高い幼児教育を提供するアメリカ国内大手のチルドレンズ・ライトハウスは、幼児の発達を助けるために厳選された新しいカリキュラム、を発表した。
同社の教育訓練ディレクターであるクリスティ・スミス博士は、「この新しいカリキュラムは、人生の精神的および感情的成長の最大の時期を経験する幼児や乳幼児に特に焦点を当てた」と述べた。さらに新しいカリキュラムは、基本的な自主性と自助スキルを学びながら、同社の就学前プログラムに参加するために必要な形成スキルを習得できるという。
幼児がカリキュラムプログラムを進め、上のクラス移るにつれ、明確に定義された学習エリアが徐々に子供たちに組み込まれ、最終的には大小のグループ指導とともに自主学習ができる状態になるという。「保護者と協力し、子供の特定のニーズを念頭に置いて設計された3年齢に適したカリキュラムを通じて、子供たちを育成する場所を提供している。さらに、ネットワーク全体のフランチャイジーは、ボランティア活動や寄付などを通じて、定期的に地域コミュニティと関わっている」と前述のスミス博士は述べた。
出典:https://www.franchise.org/media-center/press-releases/childrens-lighthouse-announces-new-lighthouse-brighttm-curriculum
ライトブリッジアカデミー 幼児教育業界の支援方法
カナダ公衆衛生ジャーナルが発表した2020年の研究結果によると、幼児は社会的および知的発達の重要な時期にコロナの影響を大きく受けたのではないかとされている。
子どもたちは本来、社交的な生き物である。「遊び」は感情のコントロールなどの重要なライフスキルを学ぶ方法である。学校や保育所が再開し始める中、対面の教室に戻ることを躊躇したり不安に感じている子供が存在する。
幼児教育業界が子供たちを支援する方法のひとつとして、「スケジュールを立てる」ということがあげられる。またパートタイム保育などの小グループ環境に参加し、家庭で過ごす時間とのバランスを取ることができる「ハイブリッド型のアプローチを採用する」のが効果的とされる。
さらに幼児教育提供者は「子供たちを落ち着かせること」により注意を払うことになるだろうとされている。
出典:https://lightbridgeacademy.com/blog/pandemic-had-major-impact-childrens-socialization-skills-heres-how-early-childhood-education
KUMON 教育を通じて 人生を変える地元の小児科医
テキサス州サンアンジェロ市の小児科医であるシリカンス・ポダララ医師は、15年間、地元の医療に貢献してきた。しかし、医師の地元コミュニティーへの貢献をさらに拡大したいという気持ちが大きくなり、公文フランチャイジーになることを決意したという。
ポダララ医師は、公文式の算数と読解プログラムを二人の娘に学ばせ、娘たちに学業の自立・安定性・成功をもたらせた。それをきっかけに、医師の傍ら、公文教室のオーナー兼インストラクターをはじめた。
「私はできる限りの方法でコミュニティに恩返ししたいと常に考えています。小児科医として私が世話している多くの子供たちが、ADHDやディスレクシアなどで苦しんでいるのを見てきました。彼らに公文式を使って学習の機会を提供できることに興奮しています」とポダララ医師は熱く語った。
「子供たちを教育するためのより多くのツールを提供することは、学業で成功し、将来がどのような方向に進んでも、有意義で永続的な結果を残す責任ある国民につながるでしょう」と医師は結んだ。
出典:https://www.kumon.com/assets/us-en/pressrelease/release2021-0202-02.html
まとめ:アメリカの学校業界
アメリカの幼児教育・学習塾業界は、コロナ後の需要増を背景に急成長し、AI・STEAM教育の導入や多様性重視の取り組みが進んでいます。大手フランチャイズの躍進と地域密着型の新モデル台頭が特徴的で、子どもの総合的発達を支援する革新的アプローチが広がっています。今後はテクノロジー活用と個別化学習の深化が進み、米国の教育界全体に変革をもたらすと予想されます。
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。