ベトナムの建設市場は231億ドル規模へと急成長し、都市化とインフラ需要の拡大が加速中です。
AI・BIM・ドローン技術などのConTechが、労働力不足や安全性の課題を解決し、業界の生産性を飛躍的に向上しています。
この変革を牽引する主要企業の最新動向と政府の戦略とは?
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ベトナムのConTech・建設業界の現状
1. ベトナムの建設テック市場の概要
ベトナムの建設市場が活況を呈している。今年の市場規模は231億ドルに達し、予測期間中に年平均成長率(CAGR)8.5%以上という力強い成長が見込まれている。東アジアにおける最新の成長エンジンとして注目を集めるベトナムは、まさに変革の真っただ中にある。政府主導の経済改革が功を奏し、世界でも有数の急速な経済成長を遂げる国へと変貌を遂げた。感染症の影響を受けながらも、ベトナム経済は力強い成長を維持して、海外投資家にとって魅力的な投資先としての地位を確立している。
東南アジア屈指の成長国、ベトナムの建設業界が大きな変革の波に乗り出している。急速な都市化とインフラ需要の増大を背景に、建設技術(ConTech)の導入が急速に進みつつある。労働力不足、安全性への懸念、プロジェクトの複雑化といった課題を抱える同業界にとって、ConTechはまさに救世主となり得る存在である。
出典:https://daibieunhandan.vn/nganh-xay-dung-tang-truong-vuot-ke-hoach-uoc-dat-78-82-post399277.html http://moc.gov.vn/vn/tin-tuc/1173/83220/bo-truong-nguyen-thanh-nghi-du-hoi-nghi-tong-ket-nam-2024-va-phuong-huong-nhiem-vu–giai-phap-thuc-hien-nam-2025-cua-vien-khoa-hoc-cong-nghe-xay-dung.aspx
2. ConTechが必要とされる背景
ベトナムの建設市場は、近年の経済成長と都市部への人口集中を背景に、目覚ましい発展を遂げてきた。ハノイやホーチミンといった大都市圏では高層ビルや商業施設の建設ラッシュが続き、道路、橋梁、港湾などのインフラ整備も急ピッチで進められている。
ベトナム経済の発展を支える重要な柱の一つとして、建設業界は大きな役割を果たしてきたと言えるであろう。しかし、従来の建設手法は労働集約型であり、多くの課題を抱えているのも事実。
まず、深刻な労働力不足と技能労働者の不足が挙げられる。建設現場では労働力不足が深刻化して、特に熟練技能労働者の不足は深刻な問題となっている。若年層の建設業離れも進んでおり、将来的な労働力不足も懸念されている状況である。これは、ベトナム全体の労働市場の変化や、より魅力的な職種への人材流出などが複合的に影響していると考えられる。
次に、安全性への懸念も大きな課題である。建設現場における労働災害は依然として多く、安全管理の徹底が求められている。特に高所作業や重機作業における事故が多発し、安全対策の強化が急務となっている。従来の安全管理手法では限界があり、技術的な対策と併せて、労働者の安全意識の向上も求められる。
さらに、プロジェクトの複雑化と大規模化も課題の一つ。近年、建設プロジェクトは複雑化、大規模化の一途を辿って、従来の管理手法では対応が難しくなっている。工期遅延やコスト超過などが頻発して、プロジェクト管理の高度化が求められている。特に大規模プロジェクトにおいては、複数の企業や関係者が関わるため、情報共有や連携が重要となる。 最後に、品質管理の課題も無視できない。建設物の品質確保も重要な課題となっている。手作業に頼る部分が多く、品質のばらつきや施工不良などが問題となるケースも見られる。これは、技能労働者の不足とも関連して、熟練した職人の減少が品質に影響を与えていると考えられる。 これらの課題を解決する切り札として注目されているのが、建設技術(ConTech)である。ConTechは、情報技術、人工知能(AI)、ロボット工学などの先端技術を建設業界に応用することで、生産性向上、安全性向上、品質向上、コスト削減などを実現することが期待される。
出典:https://aitmpm.com/cac-thach-thuc-lon-trong-nganh-xay-dung-hien-nay https://moc.gov.vn/vn/tin-tuc/1299/82307/thong-cao-cong-bo-thong-tin-thong-ke-nganh-xay-dung-pho-bien-chinh-thuc-nam-2023-va-6-thang-dau-nam-2024.aspx
3. 政府の取り組みと支援策
ベトナム政府は、建設業界の近代化と効率化を進めるため、デジタル化を国家戦略の重要な一部として位置づけている。2024年から2025年を対象とした建設業界のデジタル化計画を中心に、ConTech市場の発展を後押しする数々の政策が展開されている。
政府の取り組みは、建設業界の効率向上にとどまらず、ベトナム全体のデジタル経済の発展やスマートシティ構築、さらには国際競争力の強化を目指している。これにより、急速に成長を遂げる経済を支える基盤のさらなる強化が期待されている。
ベトナムのデジタル化戦略は、「デジタル経済開発戦略(Decision No. 411/QD-TTg)」を基盤として進められている。この戦略では、2025年までにGDPに占めるデジタル経済の割合を20%、2030年には30%に引き上げるという目標を掲げている。建設業界のデジタル化もこの枠組みの中で推進されており、都市化の進展に合わせた効率的な建設プロセスが模索されている。
また、「スマートシティ開発目標」は、都市計画、建設、維持管理の効率化にConTechの活用が不可欠であることを示している。これにより、建設業界の技術革新が国家目標の達成に直結していることが明確となっている。
政府の取り組みの一環として、全国的な建設活動データベースの構築や建築情報モデリング(BIM)の普及、GIS技術を活用した都市計画データの管理が進められている。さらに、行政手続きのデジタル化や電子サービスの普及により、効率的で透明性の高い運営が目指されている。
これらの政策により、建設業界はこれまで以上に近代化し、ベトナム全体の経済成長をさらに加速させるであろう。
出典:https://moc.gov.vn/vn/tin-tuc/1176/82416/phe-duyet-de-an-chuyen-doi-so-nganh-xay-dung-giai-doan-2024-2025–dinh-huong-den-nam-2030.aspx https://moc.gov.vn/vn/tin-tuc/1184/75480/lo-trinh-ap-dung-mo-hinh-thong-tin-cong-trinh-bim-trong-hoat-dong-xay-dung.aspx https://www.most.gov.vn/vn/tin-tuc/24722/thuc-day-ung-dung–chuyen-giao-cong-nghe-va-doi-moi-sang-tao-trong-nganh-xay-dung.aspx
ベトナムのConTech主要技術とその活用事例
Propzy:オンライン不動産取引プラットフォームによるデジタル化の推進
都市化の進展とインフラ需要の増大を背景に、建設技術(ConTech)の導入が加速して、効率性と持続可能性の両立が求められる中で、ConTechは重要な役割を果たしている。
出典:https://propzy.net/
1. 建築情報モデリング(BIM):プロジェクト管理の効率化と品質向上
建築情報モデリング(BIM)は、3Dモデルを用いて設計、施工、維持管理といった建設プロジェクトの全段階を統合的に管理する技術である。従来の2D図面と異なり、BIMモデルは建物やインフラの形状だけでなく、材料、コスト、工程などの情報も含むため、プロジェクト関係者間の情報共有が円滑になり、設計段階での干渉チェックや施工シミュレーションが可能となる。
例えば、大規模インフラプロジェクトにおいて、BIMは設計段階で構造的な問題点を早期に発見し、手戻りを削減することでコスト削減に貢献する。また、施工段階では、BIMモデルに基づいた施工計画を作成することで、作業の効率化と安全性の向上を図ることができる。さらに、維持管理段階では、BIMモデルに蓄積された情報を用いて、建物のメンテナンスや改修を効率的に行うことができる。ベトナムでは、高層ビル建設や大規模複合施設開発において、BIMの導入が進み始めて、プロジェクトの品質向上とコスト削減に貢献している。
出典:https://baoxaydung.com.vn/ung-dung-cong-nghe-nao-trong-thiet-ke-xay-dung-cua-tuong-lai-378996.html https://moc.gov.vn/vn/tin-tuc/1184/75480/lo-trinh-ap-dung-mo-hinh-thong-tin-cong-trinh-bim-trong-hoat-dong-xay-dung.aspx
2. ドローン技術:現場調査と進捗監視の効率化
ドローン技術は、建設現場の調査や進捗監視に革命をもたらしている。従来の地上測量に比べて、短時間で広範囲のデータを収集することができ、高精度な3Dモデルやオルソ画像を作成することが可能となる。これにより、現場の状況をリアルタイムで把握し、進捗状況の可視化や問題点の早期発見に役立つ。
例えば、道路建設プロジェクトにおいて、ドローンは定期的な空撮によって進捗状況を監視し、計画とのずれを早期に発見することができる。また、災害発生時には、ドローンを活用して被災状況を迅速に把握し、復旧作業の効率化に貢献する。ベトナムでは、山岳部や遠隔地におけるインフラ整備において、ドローンの活用が期待されている。
出典:https://www.hancorp.com.vn/6-loi-ich-ma-drone-ho-tro-cuc-tot-trong-nganh-xay-dung/
3. モジュラー建設技術:工期短縮と廃棄物削減
モジュラー建設技術は、工場でプレハブ部品を事前に製造し、現場で組み立てる工法である。従来の現場打ち工法に比べて、工期を大幅に短縮することができ、労働力不足の解消にも貢献する。また、工場で管理された環境で製造されるため、品質の安定化や廃棄物の削減にもつながる。 例えば、ホーチミン市の郊外に建設された集合住宅プロジェクトでは、従来の建設手法と比較して30%以上の工期短縮を達成した。
出典:https://amdmodular.com/gioi-thieu/
4. IoTセンサーとスマート建材:建物管理の最適化と環境負荷低減
IoTセンサーとAI技術を組み合わせることで、建設現場のリアルタイム監視とデータ分析が可能になっている。これにより、建物の品質管理や安全性が向上している。具体例として、ダナン市のスマートシティプロジェクトでは、IoTセンサーを使って建物の温度、湿度、振動などをモニタリングし、AIによる異常検知で迅速な対応を実現している。
出典:https://viettelhightech.vn/en/vht-chia-se-cach-thuc-ap-dung-ai-va-iot-trong-xay-dung-thanh-pho-thong-minh
5. スマート建材
環境に優しいスマート建材の導入も進んでいる。断熱性や耐久性に優れた材料が、エネルギー効率の向上と持続可能な建設に貢献している。ハノイ市の新しいオフィスビルでは、太陽光発電を可能にするスマートガラスが採用され、エネルギーコストを20%削減した。
出典:https://udideco.com.vn/tin-tuc/vat-lieu-thong-minh-tuong-lai-cua-thiet-ke-xay-dung-410.html https://fastwork.vn/10-cong-nghe-4-0-moi-nhat/
ベトナムのCon Tech主要企業
Coteccons
Coteccons Construction Corporation(コテコンズ建設株式会社)は、ベトナムを代表する大手建設会社の一つとして、その革新性と多様なプロジェクトで知られている。 ・企業概要: 2004年設立。高層ビル、商業施設、住宅、工場、インフラなど幅広い建設プロジェクトを手掛け、特に高層ビル建設で高い評価を得ている。
・技術: 建設業界のデジタル化をリードする存在。同社はFPT Information System(FPT IS)と協力し、建設コストと効率管理のためのデジタルソリューションを導入した。このシステムにより、プロジェクトのコスト管理、効率向上、安全性確保が可能になっている。
・貢献: 国内外の大型プロジェクトを手掛けることで、インフラの発展に寄与し、ベトナム経済の成長を支えている。また、同社の技術革新とデジタル化の推進により、業界全体の効率性と競争力が向上している。
出典:https://www.coteccons.vn/en/
Vinaconex
Vinaconexは、ベトナムを代表する総合建設企業であり、高層ビル、インフラ、工業プラントなど、幅広い分野で実績を有している。
・企業概要: 国営企業として設立され、その後民営化されました。長年の経験と実績を持ち、ベトナム建設業界において重要な役割を果たしている。
・技術: 最新の建設技術を積極的に導入し、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)の活用、プレハブ工法の導入、高度な施工管理技術の導入など、プロジェクトの効率化と品質向上に努めている。また、近年では、ドローン測量やIoTセンサーを用いた現場管理など、ConTech技術の導入にも力を入れている。
・貢献: 大規模プロジェクトの成功を通じて、ベトナムのインフラ整備と経済発展に支えている。技術力とプロジェクトマネジメント能力の向上を通じて、ベトナム建設業界全体のレベルアップに貢献している。
出典:https://vinaconex.com.vn/
Newtecons
Newteconsは、比較的新しい企業ながら、高品質な建設サービスを提供することで急速に成長を遂げている企業。特に、高層ビルや複合施設の建設において高い評価を得ている。
・企業概要: 顧客のニーズに合わせた柔軟な対応と、高い技術力で信頼を獲得している。
・技術: 最新の建設技術と国際的な基準を取り入れ、高品質な建設サービスを提供している。BIMの活用、プレハブ工法の導入、厳格な品質管理体制の構築など、プロジェクトの品質と効率性を追求している。また、AIベースの監視システムを採用し安全管理にも力を入れて、労働災害の防止に努めている。
・貢献: 高品質な建設プロジェクトを通じて、ベトナムの都市景観のを向上している。若い世代の技術者育成にも力を入れて、ベトナム建設業界の将来を担う人材育成に貢献している。
出典:https://newtecons.vn/
Viettel Construction
Viettel Constructionは、ベトナム最大の通信事業者であるViettelグループの一員であり、通信インフラ建設で培った技術力を建設分野に展開している。
・企業概要: 通信インフラ建設で培った高度な技術力とプロジェクトマネジメント能力を有している。近年では、一般建築やインフラプロジェクトにも積極的に参入している。
・技術: 通信インフラ建設で培ったネットワーク技術やIoT技術を建設分野に応用して、スマートビルディングやスマートシティ関連のプロジェクトに強みを持っている。例えば、IoTセンサーを用いた建物管理システムや、データ分析に基づいたエネルギー効率最適化システムなどを提供している。
・貢献: 通信技術を融合したスマートビルディングやスマートシティの構築において、技術革新をリードしている。
出典:https://viettelconstruction.com.vn/gioi-thieu/
Hoa Binh Construction Group
Hoa Binh Construction Groupは、ベトナムを代表する大手建設会社の一つであり、幅広い分野の建設プロジェクトを通じて、同国の経済発展に貢献している。
・企業概要: 1987年設立。住宅、商業施設、工業施設、インフラストラクチャーなど、多様な建築物を建設。ベトナム国内に多数の支社を持ち、ホーチミン証券取引所に上場。
・技術: BIM、プレハブ工法、厳格な品質・安全管理体制を導入。最新技術の導入と技術者育成に注力し、国際規格に準拠した高品質な建設サービスを提供。環境負荷低減にも配慮。
・貢献: 数多くの建設プロジェクトを通じてベトナムの経済発展、雇用創出、技術力向上、都市景観の向上に貢献。
出典:https://hbcg.vn/
ハノイ在住のベトナム人。名古屋大学で文部科学省奨学金の日研生として留学経験有り。日越の翻訳、通訳などが得意で、日本語教師の経験有り。ハノイで日系IT企業に入社後、主に総務・人事、日本親会社との取引業務を約3年経験し、その後長野県で日本企業で勤務。