環境先進国である台湾は、2023年1月に炭素排出関する新しい法律が可決されるなど、その地位を保っています。それに伴い、環境の知識をもった人材やIT人材の育成が必要とされています。中華民国職業訓練研究発展中心では、環境保護に関するコースが新設されるなどしています。
今回は、そんな台湾の資格・社会人教育業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
読了時間の目安:5分
[toc]
2022年 台湾の資格・社会人教育(教育)業界
減少傾向にある技能検定試験の受験者数〜資格・社会人教育業界動向〜
2023年1月の統計によると、技能検定試験の受験者数は年々減少傾向にある。2012年の技能試験受験者は66万517人だったのに対し、2022年は44万4,331人であった。少子化や新型コロナウィルス流行の影響を大きく受けていると考えられ、過去10年間で約30%の減少となった。
技能試験の138職種の内、クレーン運転や保育士、中華料理調理、労働安全衛生等の82職種は、法律や規制によって、仕事に従事する為に技能資格証明書が必要な職種であり、受験者の減少と同時に、多くの業界が証明書取得技術者の採用に苦労している。
労働部労働及び職業安全衛生研究所の調査によると、技能資格保持者の7年間の給与上昇率は26%で、業界全体の労働者の給与上昇率13%を上回っている。また、技術取得を推奨する為、労働省労働発展庁では一定の技能資格に対するインセンティブが検討されている。
出典:https://statdb.mol.gov.tw/evta/jspProxy.aspx?sys=100&kind=10&type=1&funid=wqrymenu2&cparm1=wq15&rdm=cKeyjmri
女性の為の職業訓練、2023年のコースを発表〜資格・社会人教育業界動向〜
労働部労働力発展署では、無職の女性達が、就職能力及び専門性を高め、1日でも早く仕事復帰できるよう、様々な就職訓練を実施している。2023年3月8日の発表によると、これまでに職業訓練を受けた女性の人数は延べ3万人以上に及んでいる。
失業中の女性は自身のキャリアプランに応じて適したコースを選択する事が可能である。また、研修費用の80%または100%を補助する他、研修期間中の経済負担を軽減する為、職業訓練生活手当を申請する事ができる。
2023年4月の職業訓練コースでは、介護福祉や機械製図、保育士、マルチメディアクリエイティブデザイン、事務スタッフ情報スキル、パン作り技術実習等の幅広いジャンルが開かれる予定である。
出典:https://www.wda.gov.tw/News_Content.aspx?n=7F220D7E656BE749&sms=E9F640ECE968A7E1&s=CD4E77466E4487E2
炭素削減人材の輩出に向けたSGS認定コース開設〜資格・社会人教育業界動向〜
立法院で国内気候変動対応法の改正案が2023年1月10日に可決され、2024年から287社の炭素排出業社から炭素税を徴収する事となる。企業における炭素削減人材の育成が必要とされる中、中華民国職業訓練研究発展中心では、SGS認定コースが開設される。
業界のニーズを満たす為、センターとSGSは、二酸化炭素排出量と温室効果ガスに関する一連のコースを編成する予定であり、コースを修了してテスト合格すると、SGSとセンターから証明書が発行される。
「気候変動対応法」は、国の長期的な温室効果ガス削減目標を“2050年までに正味ゼロ排出”と設定し、気候ガバナンスを強化、温室効果ガスの為の特別基金を設立する。また、対象となる287社から炭素税も導入され、削減目標を達成した企業は割引料金が適用される。
出典:https://www.training.org.tw/news_details.php?cid=16&id=457
中原大學商學院がEFMDメンバーへ〜資格・社会人教育業界動向〜
中原大學商學院は2023年にEFMD(欧州経営開発財団)会員校となった。国内では、政治大学、清華大学、中山大学、雲林科技大学に続き、中央大学と共に全国6番目のEFMD会員となり、私立大学で唯一のEFMDグローバル会員となった。
EFMDは、ヨーロッパ最大のビジネススクール連合で、世界的に認められた教育機関及び企業認証機関である。ビジネスと経営の教育を促進し、学者と産業界の架け橋となる事を目指している。
EFMDのメンバーには、世界中の900を超えるビジネススクールや政府機関がある。中原大學商學院がEFMDに参加した後、学生は世界中の900以上の優れたメンバー校とコミュニケーションを取り、国際競争力を強化する事ができる。
出典:https://cob.cycu.edu.tw/8743/
輔大國創所、Entrepreneurshipで世界64位に〜資格・社会人教育業界動向〜
2022年11月11日の発表によると、輔大國創所がEDUNIVERSAL2022 BestMaster‘s Rankingsの「Entrepreneurship」部門で世界第64位の栄誉を獲得した。
EDUNIVERSALは、ヨーロッパで非常に権威のあるビジネススクールのランキング機関である。輔大國創所のEMBAクラスの教授のレベルの高さ、実践的な教育のレベルの高さを業界へ印象付けただけでなく、一般的なEMBAカリキュラムとの違いが認められた事になる。
EDUNIVERSALのランキングメカニズムの中に“パームリーフ評価”があり、1,000のビジネススクールが5段階に分けられ、数字が大きい程レベルが高い。台湾では7校のみがパームリーフを与えられ、その内の1校である輔大國創所は3パームリーフを獲得した。
出典:http://www.management.fju.edu.tw/subweb/gemba/news-detail.php?NID=2684
2021年 台湾の資格・社会人教育(教育)業界
台湾の中原大学、AACSBの国際認証を再獲得〜資格・社会人教育業界動向〜
中原大学は、2015年にAACSB国際ビジネススクール推進協会の国際認定を通過し、世界のトップ5%のビジネススクールとなった。2021年も正式にAACSB再認証を通過した。認定会員資格は5年継続される。
AACSB認証を再度獲得したことは、教育の質や研究成果が国際的に認められたといえる。COVID-19の影響を受け、台湾で初めてオンラインでAACSB認定を獲得した私立大学となった。
中原大学は「全人教育」をコアバリューとして挙げている。専門知識、国際観、倫理素養を備えた優秀な人材を育てるため、商学院での教育の軸として「革新、人間性、ローカリゼーション」を挙げている。
出典:中原大学商学院 https://cob.cycu.edu.tw/6523/
台湾の生涯学習への取り組み〜資格・社会人教育業界動向〜
台湾は「生涯学習法」を制定している国であり、「学習社会に向けた白書」に従って、生涯学習環境を確立するための多くのプロジェクト計画を推進している。
特に「台湾国民に多様な生涯学習チャネルを提供すること」「社会教育機構と図書館サービス品質を継続的に改善すること」の2つに重点的に取り組んでいる。
例えば、地方の生涯学習リソースを統合し、地方自治体が学習都市を作ることを支援している。また、地方公共図書館の発展を支援し、地域の文化的伝達および生涯学習のための多機能センターを構築するために「協力して分かち合う公共図書館システムの構築に関する長期事例計画」を推進している。
出典:行政院 https://www.ey.gov.tw/state/42093E2A09F1729B/b267fbf1-1240-45dc-955e-1f558d8b4c59
台湾の教育部、多機能学習センター設立を支援〜資格・社会人教育業界動向〜
教育部は19の県・市に助成金を支給し、合計35のコミュニティ多機能学習センターを設立した。学習センターは、主に地域の文化とコミュニティのリソースを組み合わせ、地域の特性を発展させることを目的としている。既に一部の学習センターは生涯学習の拠点となっている。
地域教育は学習センターを主体とし、学校、地域及び民間団体と共同で取り組みを行っていく。例えば宜蘭県南安中学校は、地域の地理や海洋資源を活かして、地域特有の学習法を形作っている。
地域の天然資源を組み合わせた学習センターが多様な学習コースを提供し、地域コミュニティと学校間の架け橋になることが期待される。
出典: https://depart.moe.edu.tw/ed2400/News_Content.aspx?n=15388506A60ACB81&sms=87137EA6056ADFD1&s=7618DF300D0B5C2A
世界的に認められた台湾のビジネススクールとは?〜資格・社会人教育業界動向〜
輔仁大學管理學院は、EDUNIVERSAL2020グローバルベスト1000ビジネススクールランキングにて、台湾で6位になり、3つのパルムリーグを獲得した。
また、2021年のベストマスターズ&MBAsランキングでは、輔仁大學管理學院國際創業與經管理碩士學位學程が、2021年のベストマスターランキングの「創業類」で世界63位にランクインした。台湾国立大学と國立陽明交通大學も共にグローバルトップ100リストに入っている。
EDUNIVERSALは、ヨーロッパで権威のあるビジネススクールのランキング機関である。この栄誉を獲得することで、同校の教育が国際的に認められたことになった。
出典:輔仁大學 http://www.management.fju.edu.tw/subweb/gemba/news-detail.php?NID=2355
台湾の逢甲大学、通常授業を再開〜資格・社会人教育業界動向〜
2021年9月1日、逢甲大学は「2021年度学務発展・拡大会議」を開催した。会議には160人近くの管理職が出席し、学務の最新状況と学校の発展の方向性を把握した。
通常授業は、予定通り2021年9月13日に再開されることが発表された。対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド教育が不可欠であるため、対面での教育環境を支援することが重要となる。
通常授業開始までに全ての教室と施設を整備して安全なキャンパスを提供することで、質の高い教育が損なわれることなく、すべての生徒が安心して通学できるようにする。
出典:逢甲商学院 https://business.fcu.edu.tw/news-detail/?id=33452
2020年 台湾の資格・社会人教育(教育)業界
台湾で応用バイオテクノロジー産業の人材育成へ〜資格・社会人教育業界動向〜
南台科学技術大学は、応用バイオテクノロジー産業を発展させるために、食品と農業のための「応用バイオテクノロジーモジュール化生産ライン工場」を設立した。
環境保護や特殊化学品などのバイオテクノロジー産業向けの専門的な人材育成拠点となる。また、国内初の応用バイオテクノロジー業界の人材育成センターとなる。
政府が推進している「5+2」の主要産業の中で、「医療」、「新農業」、「循環経済」は、国内の応用バイオテクノロジー産業と密接に関連しており、急成長を遂げている。2018年の生産額は1,047億台湾ドルに達し、バイオテクノロジー産業全体の生産額の20%を占め、同業界の専門家の需要がますます高まっている。
出典:教育部 https://bit.ly/35cOtVx
EMBAランキング公開、台湾の台北大学国内トップ3へ〜資格・社会人教育業界動向〜
《Cheers》の最新データによると、3,000社の経営者の調査と評価によって国立台北大学のEMBA / IEMBA / eMBA / MEMBA / MIEMBAは国内トップ3にランクされ、各界から認められた。
国立台北大学企業管理学系は、国内で最も歴史のある最大の経営管理学部。完全な教育システムを備えており、革新的な思考、卓越したリーダーシップ、国際的な展望を備えた経営人材の育成に取り組んでいる。
学科には、博士課程、学士課程があり、学生数は約1,300人。また、専任教員は30名を超え、その全員が国内外の著名な大学の博士号を取得しており、戦略的経営、組織行動・人材管理、財務、マーケティング管理、情報管理、職務管理などの分野を専門としている。
国立台北大学企業管理学系の卒業生には、上場企業の経営者、中小企業起業家、プロの経営者、高官、会計士、弁護士、その他の社会的エリートが含まれ、様々な分野で多くの優れた才能を育成している。
出典:国立台北大学企業管理学系 https://www.dba.ntpu.edu.tw/news.php?id=69
台湾で国際レベルの航空宇宙整備人材の育成へ〜資格・社会人教育業界動向〜
2020年10月16日の発表によると、国立虎尾科学技術大学は、国際レベルの航空宇宙整備人材の訓練環境を設立するために、文部省の「2019年の優れた技術および職業学校実施環境プログラム」から助成金を受けた。
文部省は、将来を見据えたインフラ設計図を通じて「技術・職業学校の実施環境計画の最適化」を推進し、虎尾科学技術大学に5,100万台湾ドルの助成金を支給した。
また、実際の航空会社の保守生産ラインや作業状況に類似した教育場所を建設した。航空業界と同じ学習環境を実現するために、追加の国際クラスの航空機と運用エンジンも購入した。
出典:教育部 https://bit.ly/37gy8Sr
今年のDBAプログラムの内容とは?台湾の国立政治大学〜資格・社会人教育業界動向〜
国立政治大学商学院は、2020年6月12日に第3回産業博士課程DBA研究発表会を開催した。これはDBAプログラムの毎年恒例の学術イベントである。この活動は、商学院学術副院長である周関南教授と、DBA鄭至甫のCEOが主宰している。
国内最大のブランドタクシ—「台灣大車隊」の副会長である李瓊淑は、UBERの台湾への参入が台湾にどのような影響を与えたかを話し、ローカルプラットフォームを形成するための攻めと守りの範囲について話した。
DBAは、台湾の経営管理教育のマイルストーンを設定して、マクロ思考、革新的なアプリケーションの検討、経験的学問の深化、ビジネス倫理の強調を通じて、より革新的なビジョンと専門的な価値を学生にもたらしていく。
出典:国立政治大学商学院 https://bit.ly/3kbbChF
台湾の東海大學管理学院、海外大学とダブル学位の連携〜資格・社会人教育業界動向〜
東海大学管理学院では、学生の国際的な流動性と雇用競争力を高めるため、2019年度に「グローバルエリートプログラム」を大学院で学部を問わず実施し、海外の著名大学とのダブル学位取得の連携を積極的に計画した。
ダブル学位協力プログラムでは、ラトガーズ大学、テキサス大学ダラス校、ロードアイランド大学、サウスフロリダ大学と継続的に協力することとなった。
米国のTunghai大学とRutgers大学の経営学部は、Win-Winの状況を作り出し、将来の才能を育成することを期待して、ダブル学位に署名した。リベラルアーツ教育などのソフトパワーの育成に注目し、このダブル学位協力プログラムを通じて、学生が国際的な視野を持つことが期待されている。
出典:東海大学管理学院 http://mana.thu.edu.tw/web/news/news_detail.php?cid=1&id=254
2019年 台湾の資格・社会人教育(教育)業界
台湾マイクロソフト、政治大学とAI商学院を設立〜資格・社会人教育業界動向〜
2020年1月8日の発表によると、企業のデジタル化及びAIの導入に向け、台湾マイクロソフトと政治大学は「AI商学院」を設立し、理論及び実務を兼ね備えたAI商業マネジメントカリキュラムを作るとのこと。
マイクロソフトのAIは「人」が操ることを前提としている。AI技術を活用するには操作する人の理解と専門技術の習得が不可欠であることから、本AI商学院を設立する運びとなった。
企業のデジタル化に際し、重要なのは企業上層部のAIに対する認知向上及び訓練である。マイクロソフトと世界トップクラスの商学院INSEADは手を組み、AI商学院オンライン授業を推奨。2019年3月に開講して以来、わずか半年で数万人を超える受講者を集めた。
出典:https://news.microsoft.com/zh-tw/ralph_aibs/
人材レベル向上へ、台湾労働部の補助金制度とは?〜資格・社会人教育業界動向〜
2019年12月12日の発表によると、労働部は企業の人材資源向上及び小企業の人材レベル向上のため、訓練補助金として最高350万元を支給するとのこと。2020年度より補助金の申請が開始される。労働部はより多くの企業に対し、本資源を活用するよう呼び掛けている。
10年前に政府の訓練補助金制度を申請した春源スチール社は、この10年間カリキュラムの微調整による教育内容の向上を続け、2017年度にはTTQS(教育訓練品質評価システム)において金賞を受賞した。
多くの企業に積極的な補助金申請をしてもらうよう、12月中旬には申請に関する説明会を開催。今後企業が社員の向上心をくみ取ることが大いに期待される。
出典:https://reurl.cc/D1Mo0E
台湾教育部国教署、小中学校の英語教師を対象に海外研修制度を拡大〜資格・社会人教育業界動向〜
小中学校の英語教育の質向上のため、教育部国教署は2019年、小中学校の英語教師を対象とした海外研修制度を拡充させた。計60名の教師をアメリカ、カナダ、ニュージーランドへ派遣し、5週間の研修制度を実施した。2019年12月に成果発表会を開催し、今後各小中学校での質の高い英語教育が期待される。
教師の海外派遣先及びカリキュラムはそれぞれ異なる。アメリカ派遣チームは教育理論と原住民文化を融合させたカリキュラムの受講や、アメリカの教師たちと共同でクラウド教育計画を行った。今後はスポーツや地理、お祝い行事等、教科書の内容にとどまらない幅広い生きた英語教育に期待が寄せられる。
教育部国教署は、今後も本研修制度を継続し、小中学校の英語教育の質を高めるとともに、国外の先進的なカリキュラムの導入により英語教育の多元化を図る。
出典:https://www.edu.tw/News_Content.aspx?n=9E7AC85F1954DDA8&sms=169B8E91BB75571F&s=073F4BED91F431C4
台湾唯一の「再生水類産及び人材育成基地」開幕、〜資格・社会人教育業界動向〜
台湾唯一の「再生水類産及び人材育成基地」の開幕式が2019年12月に開かれ、循環経済産業の新たな1ページが刻まれた。教育部はかねてより国内重要産業の人員育成に力をいれており、今回4,000万元もの経費をかけ、産業・教育・研究を融合させた未来産業の人材育成施設を誕生させた。
本育成基地には汚水処理工場、湿地、水道施設及び水質分析、下水道施設のメンテナンス測定室など、実践を通じて技術者の技術を磨く環境が整っており、技術力向上が期待される。労働部の関連産業人材訓練計画の投資計画とも組み合わせることで国内就業能力の向上にも繋がっている。
本基地は国内の30社を超える水資源関連法人や協会と「水資源産業人材教育連盟契約」を結んでいる。契約企業からは毎年90名の実習生募集枠が提供され、今後一貫した人材育成制度が期待される。
出典:http://www.cnu.edu.tw/news-single.asp?id=1910
まとめ:台湾の資格・社会人教育業界
台湾で現在のところ最も人気の資格は安全管理者であり、その次に中華料理調理資格と続いています。しかし、近年のITスキルの需要増加によりソフトウェア開発技術者の資格も中華料理調理資格とほぼ同じ水準にまで達しているため、今後数年間で抜くことが想定されます。このように今後、求められる資格は大きく変化していくでしょう。
台北在住の台湾人。日本の東北大学で修士号取得後、7年以上IT企業でマーケティングを担当。デジタルマーケティングと市場分析の専門家として、製品の市場導入とブランド戦略を得意とする。