多数の海外ブランドを展開する台湾では、新たなアパレル企業の進出が急増しています。その中でも日系企業の展開は拡大しており、2022年には無印用品やUniqloが独自のサービスを新たに導入するなど更なる展開を試みています。
今回は、そんな台湾のアパレル業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 台湾のアパレル(流通・小売)業界
台湾の布・衣類小売業の売上高が9年連続で増加〜アパレル業界動向〜
近年、海外の衣料品ブランドが相次いで台湾に進出し、台湾の布地・衣料品小売業界の売上高は9年連続で増加を見せている。
2020年から2021年にかけて新型コロナウィルス流行の影響を受けたものの、台湾国内の流行状況が比較的安定していた為、消費者は自宅での消費を続け、高品質の商品やブランド衣料品の売上が増加した。更にオンライン販売チャネルの拡大が加速し、布地・衣料品小売業界は小売業界全体の傾向に逆行し、2020年と2021年それぞれ1.6%と2.1%成長した。
2022年1月から8月にかけて、消費者の新型コロナウィルスワクチンの接種率の増加により、ブティック商品の購入が引き続き増加し、前年の5月から7月の防疫措置が厳しく、比較基準が低い事もあり、売上高は26.3%と大幅に増加した。
出典:経済部統計局
Frontierのデジタルテキスタイルをadidasが認定〜アパレル業界動向〜
デジタルファッションとスマートな生産プロセスサービスを提供するFrontierが新たに「Frontier.cool デジタル テキスタイル サービス センター」を設立し、世界的に有名なスポーツウェアブランドであるadidasによって認定され、同ブランドの指定グローバル ファブリック デジタル パートナーとなった。
また同日(2023年4月18日)、デジタル発展部デジタル産業局長が立ち合いのもと、Frontierは台湾繊維デジタルアップグレード開発協会(AADT)とも契約を締結し、よりグローバルなファッションブランドからサプライチェーンに至るデジタル化の規模を加速し、より多くのデジタルテキスタイルアプリケーションを革新し作成する事ができる。
産業のデジタル化は世界的な傾向であり、政府はあらゆる分野に於けるデジタル変革の問題を重視しており、デジタル産業局はサービスを指導する「デジタルクラウドサービス研究開発補助金プログラム」を立ち上げた。
出典:中華民國紡織業拓展會
無印良品が政府と協力し台東県の発展を推進〜アパレル業界動向〜
台湾無印良品の総支配人と台東県長は2022年7月27日、台東県政府の講堂で協力覚書に著名し、様々な提案を行った。その内の一つが「無印良品移動サービス車」で、現在は台東市内の6つの町のみでのサービス提供になるが、将来的には更に多くの町に拡大する予定である。
台湾無印良品の総支配人は、現在ネットショッピングは便利だが“人間関係の大切さ”この目標を達成するには、より多くの人々の支援が必要であり、県政府の支援のおかげで、地元の生活や住民に近づく事ができると述べた。
台東県長は、台東県が最近強調している「スローエコノミー」は無印良品の「グッドライフ」のコンセプトと同じであり、「無印良品移動サービス車」は台東県の発展を促進する双方にとっての第一歩であり、更なる発展に期待していると述べた。
出典:MUJI無印良品
UNIQLO台湾進出12年で72店舗を展開〜アパレル業界動向〜
日本の衣料品小売大手のUNIQLOは台湾進出12年目となり、現在台湾では72店舗を展開している。台湾UNIQLOは、オンラインとオフラインの両方のチャネルを統合し、地元地域と共栄し、台湾になくてはならないブランドになる事を目指している。
UNIQLOのビジネスは世界各国にまたがっており、国ごとに展開戦略も異なる、台湾は他国に比べてデジタルサービスの受け入れが高く早い、例えば、「ORDER&PICK」の2時間クイックピックアップサービスやライブECの2大デジタルサービスによるプロモーションが成功している。
2022年7月に開始した2時間クイックピックアップサービス「ORDER&PICK」は、現在台湾全土33店舗で利用可能となっており、利用した消費者の96%が満足し、オンラインストアでの注文の28%が実店舗での受け取りを選択している。
出典:FAST RETAILING
アダストリアが台湾に11ブランド53店舗を展開〜アパレル業界動向〜
カジュアルファッション及び雑貨を中心としたブランドを展開するアダストリアグループは、2003年に最初の海外市場参入として台湾出店を開始し、2020年には台湾での会員数20万人を突破、2023年5月現在、台湾で11ブランド53店舗を展開し、2023年には更に21店舗拡大する予定である。
2022年前四半期におけるアダストリアの台湾、中国、香港、米国などの海外事業の売上高は好調で、前年同期比50.9%の増加となった。この内、台湾市場は店舗展開や新ブランド立ち上げの効果により前年同期比76%の増加となり、海外事業の中で最も収益性の高い市場となっている。
アダストリアは実店舗の他に、11ブランド全てを扱う公式アプリ「dotst台湾」を展開し、アプリによる顧客管理の強化は確かに高いリターンをもたらしており、コンバージョン率は公式アプリの3倍近くに達している。
出典:dot st Taiwan
2021年 台湾のアパレル(流通・小売)業界
台湾の繊維産業の現状〜アパレル業界動向〜
2019年の繊維産業の生産額は前年比7.7%減少し、3,740.3億台湾ドルになった。同年の人工繊維産業の生産額は945.5億台湾ドルで、2018年から15.1%のマイナス成長となり、繊維産業全体の生産額に占める割合は27.5%から25.3%に低下した。
衣料品およびアパレル業界の生産額は178.0億台湾ドルで、2018年と比較して2.6%のマイナス成長、繊維業界全体の生産額に占める割合は4.5%から4.8%に上昇した。
全体的なマイナス成長の影響を与えた主な理由は、①市場の供給過剰②中国本土の生産能力の増強③東南アジアへの生産箇所のシフトチェンジが挙げられている。
出典:iDB https://www.tipo.org.tw/tc/about_textile_2.aspx
台湾の服飾製造業、労働人口や給料について〜アパレル業界動向〜
衣料・アパレル業界は変貌を遂げつつあるが、基本的には労働集約型の業界であり、管理者・専門家などの知識豊富な労働者が占める割合はごくわずかである。台湾の若い労働者の特徴として、基本的なスキルや労働ベースの仕事に従事する意欲がなく、熟練労働者や縫製工場の労働者が不足している。
台湾の2019年7月の服飾製造業の雇用者数は40,113人であり、技術者、機械設備オペレーター、組立要員(55.97%)が最も多く、次いで技術支援要員(12.35%)だった。
2019年7月の1人当たりの平均月収は33,374台湾ドルであった。服飾製造業界は通常給与のみの場合が多く、特別配当がつく場合はとても少ない。この業界の給与構成は、主に年功序列、職歴、業績に基づいており、管理職、専門家、技術者、アシスタントの平均給与は、機械オペレーター、組立担当者の平均給与よりも高く、服飾製造業界が専門的なスキルを重視していることを示している。
出典:労働部 https://www.mol.gov.tw/statistics/2475/2477/3536?PageSize=40
台湾の服飾小売業界の売上額〜アパレル業界動向〜
服飾小売業界の売上額は、2014年から2018年にかけて徐々に上昇しており、5年間で約200億台湾ドル成長している。そのうち、便利に買い物できるオンライン販売プラットフォームの拡大は特に成長の追い風となっており、今度も成長が見込まれる分野である。 2020年は1〜11月にかけて約2550億台湾ドルの売上に達しているが、2019年の売上高にはまだ約11%未達である。12月も新型コロナ肺炎の影響により大幅な成長は見込めない。
出典:経済部 https://dmz26.moea.gov.tw/GMWeb/investigate/InvestigateEA.aspx
台湾、オンライン販売業績は20%以上成長〜アパレル業界動向〜
新型コロナウイルスの世界的蔓延により、台湾でも外出の自粛が行われている。2020年9月の服飾小売業界では、コロナウイルスの影響と、オンライン販売プラットフォームの拡大により、オンライン販売での売上高は21.2%成長した。
2020年度の服飾小売業界全体の売上高は、コロナウイルスの拡大に比例して2月から大幅に低下。秋頃から政府主導の振興券などの販促キャンペーンにより売上額は徐々に回復している。
出典:経済部 https://www.moea.gov.tw/MNS/dos/bulletin/Bulletin.aspx?kind=8&html=1&menu_id=6727&bull_id=7869
UNIQLO台湾の第29回衣類リサイクルイベント〜アパレル業界動向〜
UNIQLOの第29回衣類回収リサイクル・寄付イベントは、初めて海を越えた澎湖島で行われ、温かい交流となった。2020年12月13日~14日、UNIQLOと台湾採印協会が協力し、澎湖島にある中興小学校で「衣類の寄付チャリティーアクション」を開催した。
地元の17箇所の学校の総勢300人以上の子供たちに心のこもった衣類の寄付が行われた。UNIQLOから14人の思いやりあるボランティアが澎湖の中興小学校に出向いた。地元の児童のために専属販売店を作り、49人の児童と温かい交流を通して素晴らしい時間を過ごした。
UNIQLOは他にも定期的に各小学校、中学校、介護施設などで衣類回収や寄付イベントを行っている。新型コロナ肺炎の治療に関わっている従事者へのマスクの寄付や支援をしている。
出典:ユニクロ https://www.uniqlo.com/tw/collection/sustainability/
2020年 台湾のアパレル(流通・小売)業界
ECサイト運営のFASBEE、台湾でのマーケティングに注力〜アパレル業界動向〜
BEENOS株式会社の連結子会社であり、株式会社ファッション・コ・ラボとの合弁会社であるファッション専門の越境ECサイトを運営するFASBEE(ファスビー)株式会社は、日本のアパレル商品を海外消費者に販売するグローバルファッションECサイト「FASBEE」を2019年7月2日より正式にリリースした。
FASBEEは、日本のアパレル商品を海外消費者にシームレスに届けるグローバルファッションECサイト。出店企業は、商品データをFASBEEと連携するだけで、これまでの販売オペレーションを変えることなく海外120の国・地域への販売が可能になる。
FASBEEが特に注力しているのが台湾で、インフルエンサーイベントを開催し認知拡大を図るべくFASBEEサービス発表&体験会を実施した。
出典:https://beenos.com/news-center/detail/20190702_fsb_pr
アパレル業界大手のGUとユニクロ、台湾全店舗で使わない服の回収開始
2019年4月1日の発表によると、2010年より台湾で店舗を展開するユニクロと2014年に台湾で営業を開始したGUは全台湾の店舗で使わなくなった服の回収を始めた。
ユニクロとGU店舗で回収した服をリユースとして活用し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界各地のNGO・NPOとともに、難民キャンプや被災地への緊急災害支援など、世界中の服を必要としている人たちに届けるというのが活動の目的。リユースしない服は燃料やリサイクル素材として活用する。
台湾での活動の概要は以下の通りになっている実施期間:営業時間内ならいつでも。回収場所:全台湾のユニクロ、GU店舗。回収方法:店内に置かれた回収箱へ。回収商品:ユニクロ、GUで販売した商品
出典:http://www.gu-global.com/tw/store/feature/gu/news/20190402/
台湾初のアカチャンホンポ、秀泰樹林店に出店〜アパレル業界動向〜
「台灣阿卡將本舖股份有限公司」は、日本の「株式会社赤ちゃん本舗」が100%出資する台湾の子会社である。同社は2019年10月4日に「秀泰生活樹林店」6F(新北市樹林区樹新路40-6号)にオープンする。店舗面積は165坪で、資本期は2億台湾ドル(日本円換算約8億円当社100%)である。
株式会社赤ちゃん本舗(あかちゃんほんぽ)は、大阪市中央区に本社を置く乳幼児向けマタニティ・チャイルド・ベビー用品のチェーン店を運営する企業である。創業から今まで87年間で、「スマイルで育児を」を会社のスローガンとしてきた。
2017年に台湾で法人として登録後、店舗オープンの準備に約2年間を費やした。秀泰生活樹林は2018年にオープンしたばかりのショッピングモールで、台湾で唯一、ムービーエンターテイメントをテーマとした複合式のショッピングモールで、キッズ・ショッピング・映画などの多元的な娯楽を提供する。
出典:https://bit.ly/2PVFFNo
台湾国民下着のEASY SHOP、新たな試み〜アパレル業界動向〜
2019年7月27日、台中県の青海二店にオープンしたEASY SHOPは、台湾初の子供の遊戯場を備えた女性下着専門店である。デザインにおいても、台湾人女性の好みをベースにしているだけでなく、価格も台湾人の平均収入で購入できる範囲に設定している。そのため、国民下着という名で親しまれている。
EASY SHOP青海二店は、遊戯場のほか「Audreyブランドコーナー」、「U&ZOutletコーナー」、「EASYSHOP国民下着コーナー」、「マタニティーコーナー」、「マスコットキャラクター小橘のフィギュア・ドールコーナー」なども設け、多元的な空間を売りに出している。また、青春期を迎えた女の子の下着類なども豊富に用意しており、母子揃ってお買い物ができるようなコーナーを備えている。
最近では、「私の美は、私が決める」というスローガンの下、痩せている人でも、太っている人でもこの店に来れば、欲しい下着が見つかるということで、多元的で広い消費者層の人気を集めている。
出典:https://bit.ly/2tMoOUI
台湾と国交を結ぶパラグアイの技術団、新ブランドを発表〜アパレル業界動向〜
2019年6月27日「零細及び中小企業の日」に、台湾と国交を結ぶパラグアイの商工部において、パラグアイに駐在する財団法人国際合作發展基金会(国合会)の技術団によって生まれた服飾ブランドの「Ñaguaru」が発表された。
「Ñaguaru」は、パラグアイの伝統的織物技術AoPo‘iと現代的ファッションのデザインを組み合わせて生まれた。パラグアイ商工部の零細及び中小企業次長は「将来は、パラグアイ政府・UniversidadNacionaldeAsunción・台湾国合会・服飾業界が協力して、パラグアイのメーカーを指導する予定」と述べた。
パキスタンの服飾加工業界は、長期にわたってファスナーやボタンの縫製、或いは布同士を縫い合わせ、ケースごとに報酬が発生する加工代行労働が主であったが、これは時間がかかるうえ、収入が安価であった。近年は、中国の既製服産業が台頭してきたため、パラグアイは更に困窮状況となっていた。
出典:https://bit.ly/2Mrw66I
まとめ:台湾のアパレル業界
台湾では国内ブランドの収益が年々低下しており、外国のファストファッションブランドの人気が高まっています。特に台湾には親日家も多いため日系のアパレル企業の参入余地もまだまだありそうです。
台北在住の台湾人。日本の東北大学で修士号取得後、7年以上IT企業でマーケティングを担当。デジタルマーケティングと市場分析の専門家として、製品の市場導入とブランド戦略を得意とする。