タイ政府は、2025~2026年に向け道路、鉄道、水上交通、航空の5分野で、バンコク外環状道路整備、電気バス導入、クルーズターミナル建設など革新的プロジェクトを推進中です。これらの施策により交通渋滞緩和、物流コスト削減、持続可能な経済成長を実現が期待されます。
本記事ではタイの未来交通インフラの「今」を明らかにします!
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タイの交通事情とMaaS導入の土壌
タイ政府、2025年から2026年にかけて、国を地域の交通ハブに変革するための重要なインフラ開発計画を発表
政府は、2025年から2026年にかけて、タイを地域の交通ハブに変革するための重要なインフラ開発計画を発表。この計画は、「タイの機会のための交通政策推進」というテーマの下、2025年に1364.9億バーツを投じて223件のプロジェクトを実施し、2026年には1169.6億バーツで64件のプロジェクトが予定されている。計画は、交通手段全体の接続性、安全性、持続可能性を向上させることを目的としている。
副首相兼運輸大臣のスリヤ・ジュングルングレーンキット氏によれば、2025年の計画は5つの主要な交通分野、まず、道路交通では、チャロンラット高速道路の延長やバンコク外環状道路(M9)の整備、プーケットとチェンマイの交通渋滞解消策など、50件のプロジェクトが計画。陸上交通では、41件のプロジェクトが公共交通機関の強化に取り組み、特に1,520台の電気バス導入やバスターミナルの改修が含まれ、都市部では渋滞料金制度の導入も進められている。
鉄道分野では、69件のプロジェクトが物流コストの削減とネットワーク拡充を目指しており、3つの新しいレッドライン郊外列車路線や、メトロ運賃の上限を20バーツにすることが含まれている。水上交通では、レムチャバン港のフェーズ3、サムイ島、パタヤ、プーケットの新しいクルーズターミナル、チャオプラヤ川沿いの公共桟橋29か所の改修が計画。航空交通では、空港容量の拡充を目指して、チェンマイ空港とプーケット空港のフェーズ2拡張や水上飛行機運航の準備が進められている。
2026年の施策は、これらの計画をさらに進展させ、特に高速道路や鉄道のプロジェクトが加速、タイと中国を結ぶ高速鉄道のフェーズ2やプーケット高速道路の拡張が含まれている。海事分野ではビーチの浸食対策が行われ、航空分野ではスワンナプーム空港の新南ターミナル拡張が予定されている。この戦略的ビジョンは、タイのインフラ開発を新たな高みに引き上げ、地域における交通のハブとしての地位を確立することを目指している。
出典:https://thailand.go.th/public/issue-focus-detail/thailand-unveils-2025-2026-key-infrastructure-development-plan-transforming-the-country-into-regional-transport-hub-
タイの国家革新機構(NIA)のEV産業発展への支援
現在、タイの国家革新機構(NIA)は、同国における革新的な電気自動車(EV)産業の成長の可能性を探求し、推進している。タイは自動車生産のグローバルハブとしての重要な位置を占めており、政府はタイをアジア地域におけるEVおよび自動車部品の主要な生産センターとするという野心的な目標を掲げている。
また、政府はゼロエミッション車(ZEV)の製造を目指し、2030年までにゼロエミッション車が全車両生産の30%を占めることを目指している。この取り組みは、第13次国民経済社会開発計画に盛り込まれており、単なるEVの生産促進にとどまらず、EV技術に関連するイノベーションの推進と発展にも重点を置いている。NIAは、電気自動車産業とその関連技術の成長潜在力を活かすため、これを経済革新プロジェクトの重要なセクターとして指定し、資金提供の対象としている。
「義務的イノベーションビジネスプラットフォーム」を通じて、業界のイノベーターには最大500万バーツの助成金が提供され、これには市場テスト、製品改善、標準テスト、商業化に向けたイノベーションの拡大などが含まれている。昨年の支援に関するプロジェクト提案には、100人以上の革新型企業家からの関心が集まり、NIAはこれを受けて、関連市場とのつながりを構築し、機会の創出を支援する準備が整っている。NIAの取り組みは、EV産業の発展を単なる乗用車の製造に留まらず、観光や交通、その他関連産業と統合することを目指しており、産業全体の進展に寄与することが期待されている。
出典:https://www.nia.or.th/EV-Industry-in-Thailand
経済成長におけるライドヘイリングの主な役割
タイにおけるライドヘイリングの成長は顕著で、バンコク、チェンマイ、パタヤ、プーケット、ハジャイといった主要都市に加え、チェンライやウドンタニーなどの新興市場では最大90%の成長を遂げている。現在、タイでは50万人以上のドライバーがライドヘイリングプラットフォームを通じて生計を立てており、この業界は年間平均10%の成長を遂げている。これらのドライバーの約75%は、月に約30,000バーツを稼いでおり、これは国の最低賃金の2倍以上にあたる。
この業界は年間で200億バーツ以上の収益を生み出すと予想されており、そのうち3300万バーツは税収として貢献。また、タイの自動車業界は、車両販売、リース、メンテナンスを通じて年間550億バーツの価値を生み出している。観光業もまた、大きな恩恵を受けている分野で、データによると、タイのライドヘイリングユーザーの60%が月に1回以上これらのサービスを利用しており、そのうち25%は国際的な訪問者。このセクターだけで、年間178億バーツの地域ビジネス収益を生み出している。
ライドヘイリングは、車の所有に対する意識の変化も促進、1200人のタイのユーザーを対象にした調査によると、非所有者の12.5%が以前に車を売却した経験があり、現在車を所有している23%は所有車を売ることを検討していると回答。彼らは車の所有にかかる費用よりも、アプリを通じたライドを選んでいる。
しかし、業界は依然として規制上の課題に直面しており、特に約50年前に制定されたオートバイタクシーサービスに関する旧式の法律が問題となっている。複雑なライセンス取得手続きや、パートタイムドライバーにとって高額な保険費用は、ドライバーにとって大きな障壁となっており、業界の広範な成長を制限。ライドヘイリングの完全な可能性を引き出すためには、タイの規制枠組みが現在の経済的・社会的現実に適応する必要がある。
出典:https://www.bangkokpost.com/thailand/pr/2961013/bolt-highlights-ride-hailings-key-role-in-thailands-economic-growth
スマートシティ開発推進のための小委員会が承認された
デジタル経済・社会大臣のプラセート・ジャンタラルアンットン氏は、2025年1月9日にデジタル経済・社会振興開発委員会の会議を主宰した後、委員会が「スマートシティ開発推進のための小委員会」の設立を承認したことを明らかにした。このイニシアティブは、スマートシティの開発の継続性を確保し、デジタル技術の適切かつ効率的な適用を促進することを目的としている。
小委員会は、タイの20年国家戦略に沿ったスマートシティ開発を推進するための政策、マスタープラン、プロジェクト、ガイドライン、措置、およびメカニズムを策定する役割を担う。これらの提案は、さらなる検討のためにデジタル経済・社会振興開発委員会に提出される予定である。また、会議では、タイが経済協力開発機構(OECD)の人工知能に関する評議会の勧告に従う意向を承認。
このコミットメントは、国家デジタル経済・社会委員会に承認を求め、その後内閣に提出され、さらに検討される予定。この意向表明は、タイが世界舞台での人工知能(AI)の開発においてその役割を示す重要な機会を迎えるものと考えられている。
出典:https://www.nationthailand.com/news/policy/40045103
タイ政府は、EV交換可能バッテリー導入でタイの自動車産業を支援
タイの大学、科学、研究およびイノベーション省(アウ)と科学、研究およびイノベーション促進委員会は、電動小型車両用の交換可能バッテリー産業の促進を目的とした「Thailand Battswap」イベントをネットワークパートナーと共に開催した。タイの電動バイク市場では、まだ高価であり、バッテリー容量が小さい、充電が不便、そして交換可能なバッテリーが特定のブランドにしか対応していないという制約が存在している。
こうした問題を解決するために、交換可能バッテリーの標準化が必要であると強調されており、中央標準が確立されることにより、製造業者のコスト削減、インフラの共有、そしてユーザーの費用削減が可能になると言われている。このような標準化は、電動車両の普及と成長を加速するために不可欠であり、コスト削減がEVの普及に貢献するという点で非常に重要。
タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)、スカスワ、タイ技術開発機構(S.O.V.T)、自動車技術研究所(Automotive Institute)、タイ電動車協会(EVAT)、タイエネルギー貯蔵技術協会(TESTA)など、6つの主要機関は、標準的なコネクタの開発や、バンコクで500〜1,000台の電動バイクをテストする市内実験プロジェクト「City Lab」について意見を交換。
このプロジェクトは、電動車両に関する重要な技術開発を推進し、タイのEV産業の発展に向けた大きな一歩となると期待されている。イノベーション促進委員会は、電動車両の研究と開発を促進する主要機関として、電動バイク用の交換可能標準バッテリーパッケージプラットフォームプロジェクトを支援。
このプロジェクトは、タイ国立科学技術開発機構(NSTDA)と、国家競争力向上基金(BPC)から資金を受け、輸入依存を減らし、持続可能な国内産業の育成に貢献する技術開発を行っている。これにより、タイのEV産業は国際的な競争力を高め、環境に優しい交通手段の普及を促進することが期待されている。
出典:https://www.posttoday.com/smart-city/719474
主要企業
Grab Thailand
GrabThailandは、東南アジア全域で広く利用されているオンデマンドのライドシェアリングサービス「Grab」を提供しているタイにおける事業部門、ライドシェアサービスだけでなく、食料配達、金融サービスなど、幅広いサービスを展開している。Grab Thailandは、急速に発展している市場であり、今後もさまざまな新しい技術やサービスを導入することが期待されている。
アプリを通じた配車サービスとフードデリバリーサービスの事業強化を目指し、ドライバーや店舗パートナーとのエコシステムのバランスを維持しながら、ビジネス、社会、環境、そして人材の3つの柱を通じて持続可能性を追求することを目指している。またタイ政府と協力して交通問題の解決や都市のモビリティ改善にも貢献しており、EV(電動車両)の導入や環境への配慮も進めている。
現在10,000台以上の電気自動車(EV)がドライバーとライダーによってそのプラットフォームで使用されている。EVへの移行をさらに加速するために、GrabはSUSCO、Whale EV、AGEWAY、SHARGE、Spark EVの5つの新しい協力者と提携を行なった。
出典:tiny.bizlab.sg/4fzy5htf
muvmi
日常の都市での移動を便利かつ効率的に行えるオンデマンドのライドシェアサービスを提供している。全電動トゥクトゥクのアルゴリズムを開発し、乗客に最大限の効率でサービスを行っている。
MuvMiアプリケーションは、主要な都市エリアをシームレスに接続し、人々が簡単かつ安全に移動できるようにサポートしている。バンコク全体には、2,500以上のホップポイントをつなげ都市交通の接続性向上に貢献している。温室効果ガスの排出と地球温暖化の問題に取り組む目標の一環として、1,200トン以上のCo2eを削減することに成功している。
特に、車両の排気ガスによる影響に対処しており、さらに重要なこととして、トゥクトゥクでは、従来のガソリン消費を再生可能なグリーンエネルギーに置き換え、環境保護に真剣に取り組む姿勢を改めて強調している。ドライバーの約15%はシニア層で、5%は女性とすべての人に収入を得る機会を提供することで社会に貢献している。
出典:https://muvmi.co/en/about-us
Spacely AI
Spacely AIは、2023年に設立、SCBXグループの子会社であるSCB 10Xから戦略的プレシード投資を受けている。ジェネレーティブAIを活用した空間デザインプラットフォームであり、インテリアデザイナーや企業が大規模に売上と生産性を向上させることを支援している。
eコマース、不動産、インテリアデザイン、ジェネレーティブAIに深い専門知識を持つ創業者チームによって運営されており、創業チームは過去2年間で複数のテクノロジー製品を成功裏に開発・ローンチしており、技術革新と卓越性への取り組みを実証してきた。Spacely AIでは、多様なスキルを活かして、デザインプロセスを強化し、インテリアデザイン分野における効率を向上させるソリューションを提供している。急速にグローバルな足跡を広げており、タイ、アメリカ、ポルトガルなど、世界中のユーザーにサービスを提供、また、「Tech in Asia 2023 Regional Startup Competition」で200以上のチーム中第3位、「LabLab Stable Diffusion Hackathon 2023」で2,600以上のグローバル参加者中第2位を獲得し、グローバルスタートアップコミュニティから認知されている。
Index Living MallやProud Real Estateとの戦略的パートナーシップを形成し、世界中の120,000人以上のユーザーのために1,000,000件以上の空間デザインを提供、プラットフォームには12以上の革新的なデザイン機能、100以上の厳選されたインテリアテーマ、100以上の空間タイプ(インテリアからエクステリア、イベントまで)をサポートする包括的なソリューションが揃っている。
出典:https://www.spacely.ai/about
Gentari
マレーシアのGentari Sdn Bhd(Gentari)は、完全子会社であるGentari Green Mobility Sdn Bhdを通じて、2024年12月に、タイにおける電気自動車(EV)充電ネットワークの拡大と「Vehicle-as-a-Service」の提供を強化する新たな協力を発表した。これらの取り組みは、タイの「30@30」目標に貢献することを目的としており、2030年までにEVの市場シェアを30%にすることを目指している。
この目標には、民間車両、トラック、バスが含まれ、12,000か所の充電ステーションが整備される予定である。タイでの利便性を高めるため、Gentariは「Gentari Go」を導入、このアプリは、EV充電施設を簡単に見つけ、使用し、支払いができるだけでなく、リアルタイムでエネルギー消費を管理する機能も備えている。さらに、GentariはタイのEV充電プロバイダーEvolt Technologyと提携し、充電ステーションのネットワークを拡大。これにより、タイ国内はもちろん、マレーシアやシンガポールの2,800以上の充電ポイントにもアクセスできるようになった。
さらに、Gentari Green MobilityはThaiEVと共同で「Gentari Mobility Co Ltd(GMCL)」を設立。GMCLは、タイにおける「Vehicle-as-a-Service」の導入を支援し、EV充電サービスやフリート管理サービス「Gentari Go for Business」を提供している。このパートナーシップにより、企業向けに効率的で競争力のある車両パッケージが提供され、タイの持続可能な交通への移行が加速される。
出典:https://www.gentari.com/insight/gentari-expands-green-mobility-offerings-thailand-new-collaborations
Evolt Technology
タイのテックスタートアップ、Evolt Technologyは、2017年に設立以来、電気自動車の充電体験を提供することに注力してきた。Banpu NEXTと提携し、デジタル技術とユーザーフレンドリーなアプリケーションを活用して、統合された充電ステーションプラットフォームへのアクセスの拡大と効率向上を目指す。
両社は、今後数年で電動交通手段が広く普及する中で、消費者が充電プラットフォームを利用しやすくするための枠組みを策定した。目標は、2025年までにタイ全土で5,000基の充電ステーションを提供し、Banpu NEXTのモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)コンセプトのもとで電動車両を提供すること、このパートナーシップは、クリーンエネルギー技術への需要が高まる中で、すべての関係者から高く評価されている。
出典:tiny.bizlab.sg/2p83nkc2
Mobilix
タイ初の統合型グリーン物流ソリューションプロバイダーとして2024年に設立、Mobilixは、1. 包括的EVレンタルサービス 2. オンプレミスおよび公共EV充電ソリューション:個人および商業用EV向けの充電ステーションと関連機器の提供3. Mobilixソフトウェアソリューション:EVとバッテリーの管理用の最先端デジタルプラットフォームの3つの主要サービスを提供。2024年の成果として、Mobilixは318台の電動車両をレンタルフリートに追加し、Voltality、EVMe、GrabなどのEV業界の主要技術企業との戦略的パートナーシップを築いた。
これらのコラボレーションは、ビジネス内でのEVエコシステムの強化を目指している。また、MobilixはEV充電エコシステムの開発をリードするSHARGEとの商業サービスパートナーシップを開始し、5,400キロワットの容量を持つEV充電ステーションの建設に着手した。今後5年間で20,000台のEVレンタル車両を提供することを目標としている。
これを達成するために、EVエコシステム全体でのパートナーシップの強化、EVおよびバッテリーのライフサイクル管理の効果的な実施、および顧客のニーズに合わせた包括的で柔軟なサービス提供を行う。2025年には、1,700台以上のEVがレンタル可能になることを目指している。
出典:https://www.wha-industrialestate.com/en/media-activities/news/company-news/5509/wha-group-announces-ambitious-plan-for-exponential-growth-targets-150-billion-baht-revenue-in-5-years-adds-green-mobility-to-expand-to-5-business-hubs-reinforcing-sustainable-growth-amid-challenges
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。