韓国の法律事務所業界は、急速に進化するデジタル技術や多様化する顧客ニーズに応じて新たなトレンドが台頭しています。特に、AIの活用やリモートワークの普及が顧客サービスを一変させ、競争力を高める要因となっています。これにより、業界全体が大きな変革を迎えています。 本記事では、韓国の法律事務所業界を変革する最新トレンドを深掘りし、未来の市場を見据えたインサイトをお届けします。
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2022-2023年 韓国の法律事務所業界
ベーカーマッケンジー、韓国の法律事務所KL Partnersと合弁事務所を開設〜法律事務所業界動向〜
2023年10月の発表によるとベーカーマッケンジーは、韓国の大手法律事務所であるKL Partnersと合弁事務所を開設し、韓国における当ファームの基盤を大幅に強化する。Baker McKenzie & KL Partners・Joint Venture Law Firm(以下、「Baker McKenzie KLP JV」)は、韓国法務部より正式な認可を受け、2023年10月中旬より正式に業務を開始する。20名以上の弁護士を擁し、パートナー層の厚さで韓国最大の国際総合法律事務所となる。
Baker McKenzie KLP JVは、エネルギー・インフラ、クロスボーダー仲裁・訴訟及びコーポレートM&Aを始めとする重要業務において、韓国法及び国際的なリーガル・アドバイスをクライアントへワンストップで提供する。また、市場で高評価を得ているベーカーマッケンジーのエネルギー・インフラ開発及びファイナンスに関するアウトバウンド業務と、KL Partnersの主要なクロスボーダー紛争及びインバウンドコーポレート業務が効果的に組み合わさり、より一層高度なサービスの提供が可能となる。
Baker McKenzie KLP JV共同代表となるBeomsu Kimは、「韓国企業だけでなく、多くの日本企業に大きなメリットになると確信している」と述べた。
出典:https://www.bakermckenzie.co.jp/topics/8439
太平洋(BKL) 国際規則・紛争対応研究所発足〜法律事務所業界動向〜
太平洋は、2023年9月5日、変化し複雑化する国際規制と紛争に対して、同事務所が持つノウハウを結集させ、関連研究で専門性を強化するべく「国際規制・紛争対応研究所」を発足させた。
同研究所は、複合提訴の動向(商社仲裁、国際投資仲裁、通常紛争、国際訴訟など)、国際通常紛争(WTO・FTA)、国際投資仲裁手続き対応、国際扮装における訴訟戦略の樹立、国際仲裁比較法的分析などを研究する予定である。
同研究所に参加するのは、国際仲裁と外交、規制、金融、通商など様々な分野の専門家30人余りであり、研究所長は「メイソン・シンドラー国際投資紛争(ISDS)」仲裁実務を統括した、ハン・チャンワンが務める。また、関連学位を有した専門家研究員を引続き迎える予定である。
地平 韓国ITサービス産業協会(ITSA)と法的支援に関する覚書を締結〜法律事務所業界動向〜
2023年5月4日、地平法律事務所は、韓国ITサービス産業協会(以下、ITSA)と協定締結式を本部で開催し、ITSA会員企業に対する法的支援に関する覚書を締結した。
今後、ITSA会員企業に対しては、国家契約法、ソフトウェア振興法、電子政府法に関する法律相談、国等が発注した契約に関する法的紛争、事業範囲の決定に関する助言、不当な発注行為に関する助言など、ITSA会員企業に対して直接的または間接的に事業に関連するあらゆる事項について、法的助言や紛争解決支援を行う。
ユン・ソンウォン代表弁護士は「韓国で唯一のITサービス組織である韓国ITサービス産業協会と法的支援契約を締結したことは非常に有意義で喜ばしいことだ」とし、「IT業界の最前線で重要な役割を果たすITSAとその会員に最高の法律サービスを提供していく」と述べた。
出典:https://www.jipyong.com/kr/board/jipyongNews_post.php?seq=5933&page=1&value=&type=&nownum=3
大陸亜州 「選挙グループ」発足〜法律事務所業界動向〜
2023年10月12日、大陸亜州は、2024年4月10日の総選挙に備え、既存の「選挙センター」を拡大編成した「選挙グループ」を発足させた。
大陸亜州「選挙センター」は、選挙法が適用されるあらゆる種類の選挙事件を専門的に取扱う部署であり、同事務所は「選挙センター」を設置した最初のローファームである。
「選挙グループ」は、捜査対応チーム、選挙諮問・教育センターに分けられ、選挙管理委員会の調査から、検察・警察の捜査、裁判までを段階的にカスタマイズされた法律サービスを提供し、選挙運動過程でも充実した諮問を提供する予定である。
また、「選挙グループ」は来年総選挙に出馬する候補者にコンサルティングプログラムを提供するとともに、全国で「選挙アカデミー」を開催している。
太平洋 AI翻訳等の導入でデジタル化を推進〜法律事務所業界動向〜
太平洋は、定常的・反復的な業務を自動で処理する技術(RPA)や、専用翻訳AIソリューションを採用している。
2022年8月、RPAは、法律事務所で日常的に行われている書類照会や各種書類の発行などに活用されており、加えて、RPAを最大限に活用するために、独自のアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を開発した。これにより、処理すべき業務を太平洋の社内システムに登録すると、即座に複数のロボットに作業を分割し、リアルタイムに自動処理するシステムが国内法律事務所で初めて、導入された。
また、法律文書を迅速に翻訳するために、AI翻訳ソリューション「Language Weaver」を採用した。さらに翻訳の最適化レベルを継続的に向上させる翻訳ツール「Trados」を導入し、TradosとLanguage Warberを連携させることで、翻訳されたデータを直接AIエンジンに学習させるシステムを構築した。
関係者は「クライアントの要望を迅速に解決できるサービスを提供できるようになった」と述べた。
2021年 韓国の法律事務所業界
太平洋 国内法律事務所初「メタバース」を通じたフォーラムとコンサルティング開催〜法律事務所業界動向〜
太平洋法律事務所は2021年10月27日、「2021 Path to Sustainable Innovation」をテーマに、海外の著名な研究者が参加し、DBR(Dong-A Business Review)とグローバルESGフォーラムを開催し、メタバースプラットフォーム上でESGリスクとケイパビリティ診断を実施した。
第1部と第2部に分けて開催され、第2部では、太平洋法律事務所が韓国の法律事務所として初めて、「メタバース」プラットフォーム上で、参加者が事前に申請した診断シートに基づいて、国内外の業界ごとのESGリスク要因を説明・確認した。
「パシフィックESGラボ」のパク・ジュンギ弁護士がコンプライアンスを担当し、専門家メンバーのイ・ヨンウ氏がリスクと競争力に重点を置いた詳細かつ包括的なコンサルティングを行い、注目を集めた。
労務士による「労働法律事務所」の名称使用は弁護士法違反〜法律事務所業界動向〜
2021年10月の発表によると労務士が「労働法律事務所」という名称を使用して事務所を運営していたことが弁護士法に違反するか否かが問われた事件の裁判で、当該行為は弁護士法に違反するとの判決が出された。
弁護士法第112条第3項は、「弁護士でなくても、弁護士若しくは法律事務所に印字若しくは掲載し、又は利益を得る目的で法律相談その他の法律事務を取り扱う意思を表明し、若しくは示した者は、3年以下の懲役又は2,000万ウォン以下の罰金に処し、罰金と懲役を合わせることができる」と規定している。
昨今、法曹界に隣接する有資格企業による「法律事務所」や「法務」の名称使用が頻発しており、消費者に弁護士が経営する法律事務所や法律事務所と誤解させるおそれがある。この判決によって違法な名称が法的根拠なく使用されることに歯止めがかかることが期待される。
大陸亜州 韓国産業団地経営者協会と企業支援業務協約締結〜法律事務所業界動向〜
大陸亜州は2021年8月18日、韓国工業団地管理協会と業務協定を締結した。
本協定により、各分野の専門家による講義、重大事故やESGに関するアドバイス、コンサルティング、アカデミーへの参加、オンライン・オフラインの事業推進の協力に合意した。
大陸亜州のイ・ギュチョル最高経営責任者(CEO)は「今回の協定を通じて、COVID-19で多くの困難に直面している企業の経営活動全般を支援し、特に重大災害やESG関連業務で互いに協力する良い機会になる」と述べた。
出典:https://www.draju.com/ko/sub/firm_news.html?type=view&bsNo=172&page=23
地平・社団法人ドゥル「第4回大韓民国法務大賞」で「公益賞」受賞〜法律事務所業界動向〜
地平法律事務所と社団法人ドゥルは2021年6月16日、「第4回大韓民国正義大賞」で「公益賞」を受賞した。「大韓民国法律大賞」は、各分野において最も意義のある業績を選出・表彰する法律分野の賞である。
受賞にあたり評価された点は、次の2つの違憲判決の獲得である。第一に、教員の基本的政治的権利をめぐる憲法訴訟の違憲判決である。これは、憲法で保障された基本的政治的権利を事実上剥奪された状態で生活してきた教員が憲法上告を提起公務員が政治団体の結成に参加または参加してはならないと規定する国家公務員法第65条第1項は違憲であるとの判決を得ることに成功した。
第二に、軍の営倉制度(韓国の軍隊における懲戒処分として行われる拘禁)の違憲性を確認した判決である。この判決は、軍人には例外なく身体の自由を保障すべきとし、124年ぶりに営倉制度を廃止した。地平と社団法人ドゥルは「『司法の関与を伴わない拘禁』は人権に反するとの反省を踏まえ、より人権に配慮した懲戒制度の導入を決定した」と述べた。
出典:https://www.jipyong.com/kr/board/jipyongNews_post.php?seq=5107&page=64&value=&type=&nownum=567
広場 気候変動センターと「2050年炭素中立協力のための業務提携協約」締結〜法律事務所業界動向〜
広場法律事務所は2021年4月13日、気候変動センターと「2050年カーボンニュートラル協力」に関する覚書を締結し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために協力することに合意した。
政府は「2050年カーボンニュートラル推進戦略」で温室効果ガスの排出をゼロを目標としているほか、COVID-19によりカーボンニュートラルの実現への関心が高まっている。また、最近のESGが企業経営の最大のテーマとして浮上しており、広場と気候変動センターは、今回の協定を通じてESG経営に備えた戦略を策定することとした。
具体的には、気候変動センターと共同で研究活動を行う予定で、カーボンニュートラルの意識向上を図るため、気候変動に関するアカデミーやセミナー、会議なども積極的に支援する予定だ。気候変動センターのアン・ヨンソク代表弁護士は「今回の合意を通じて、温室効果ガスの排出削減などESG経営について、より具体的かつ実践的な法的アドバイスを法人の顧客に提供する」と述べた。
出典:https://www.leeko.com/leenko/news/seminarView.do?lang=KR&boardNo=12964
ソウル在住の韓国人。日本での在住経験は12年。日本の有名大学を卒業し、大手シンクタンクの正社員及び経営コンサルタントとして勤務。ビジネス戦略とイノベーションの分野で活躍。
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