インドネシアにおける交通渋滞と大気汚染の問題は、大都市だけでなく小規模な地方都市でも大きな課題となっており、これに対する解決策の1つとしてバスの利用が注目を集めています
今回は、そんなインドネシアの鉄道・バス業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2021年 インドネシアの鉄道・バス(運輸・物流)業界
インドネシアのジャカルタMRTの2020年の業績〜鉄道・バス業界動向〜
ジャカルタの地下鉄を運行するPT MRT Jakartaの2020年の売上高は1兆855億ルピアで前年比116%であった。
内訳をみると運賃収入が820億ルピアで前年比43%と大幅減収となった。COVID-19パンデミックによって1日の平均乗降客数が2019年の89,645人から2020年には27,122 人へと減少したことが要因とみられる。また、DKIジャカルタ州政府からの補助金収入は6,208億ルピアで前年比116%とパンデミックの大規模社会制限(PSBB)に対応したことにより増加している。
広告サービスやQRコードによるデジタル決済、ATMのスペースレンタルなどの運賃以外の収入は様々な協業を拡大することにより、3,827億ルピアで前年比184%と大幅な増収となった。
出典:https://jakartamrt.co.id/sites/default/files/2021-05/AR%20MRT%20Jakarta%202020_Lowres_compressed.pdf
インドネシアのトランスジャカルタ、TIJEアプリでチケット注文〜鉄道・バス業界動向〜
2021年5月1日、PT Transport Jakarta(Transjakarta)はTIJEアプリケーションのチケット購入機能を更新したことを案内した。
このチケット購入機能はRoyaltransプレミアムサービスを利用する顧客を対象としている。TIJEアプリケーションはTransjakartaのデジタルトランスフォーメーションの一環として導入された。
チケットの注文が完了すると、顧客はアプリケーションとポップアップメッセージの両方に入力されたデータに基づいて通知を受け取ることができる。そのため顧客はチケットを購入する際に個人データを入力する必要がある。チケットが正常に予約された後、出発予定時刻の30分前に乗車確認の通知メッセージを受け取ることになる。
出典:https://transjakarta.co.id/penyegaran-pembelian-tiket-pada-tije-apps/
インドネシアのKAIコミューター、帰省禁止期間乗客減〜鉄道・バス業界動向〜
ジョグジャカルタ-ソロKRLとプランバナン急行列車の運行を行うPT Kereta Commuter Indonesiaは、2021年のレバラン帰省禁止期間中に利用客が減少したことを明らかにした。
この間、ジョグジャカルターソロKRLは1日20回、プランバナン急行列車は1日8回の運行を行い、ジョグジャカルターソロKRLの利用客数は48,572人で前週より5.8%減、プランバナン急行列車は14,061人で前週より4%減であった。
乗客の運賃支払い方法は60%がトップアップのできるマルチトリップカード(KMT)、次いで銀行の電子カードが21%、残り19%がQRコードによるものとのこと。レバラン帰省禁止期間中に販売されたマルチトリップカード(KMT)の枚数は7,384枚であった。
出典:http://www.krl.co.id/mobilitas-pengguna-krl-yogyakarta-solo-dan-ka-prameks-berkurang-selama-masa-larangan-mudik-lebaran-2021/
インドネシアのDAMRI、レバラン帰省禁止期間終了後に運行再開〜鉄道・バス業界動向〜
DAMRIは、2021年のレバラン帰省の禁止期間の終了後、さまざまな地域への都市間および州間のバス運行を再開したことをアナウンスした。
COVID-19パンデミック中の国内旅行の実施に関する2021年第38号運輸省通達によって国内旅行が規制されている。顧客は渡航許可証を取得する必要がなくなったが、出発前に有効なRT-PCR検査結果の陰性または迅速抗原検査結果の証明書の取得が必要だとしている。
DAMRIでは顧客に検査結果証明書の有効期間に注意を払うことと健康プロトコル(マスク着用、手指消毒、身体的距離)の順守を要請している。
出典:https://damri.co.id/artikel/syarat-perjalanan-damri-pasca-larangan-mudik-2021.html
インドネシアのRailink、Gapeka2021を発表〜鉄道・バス業界動向〜
2021年2月10日、PT Railinkは「Gapeka2021」を発表した。「Gapeka」は列車運行チャートである。スカルノハッタ空港列車は2021年2月10日から出発スケジュールを新しいGapekaに変更する。
「Gapeka 2021」は、2020年KP1362運輸大臣令に基づいている。運行本数は以前と変わらず1日40往復としている。
一方、乗客の利便性改善のため、アプリ、ウェブサイト、Railinkパートナーからオンライン経由でチケット購入できるようにしたり、銀行の電子マネーカードとKMT(マルチトリップカード)でタップするだけの「タップアンドゴー」システムも提供しているとのこと。
出典:https://www.railink.co.id/detailnews/en/35/mulai-tanggal-10-februari-2021-pt-railink-akan-memberlakukan-grafik-perjalanan-kereta-api-gapeka-2021-kebijakan-ini-akan-mempegaruhi-perubahan-jadwal-keberangkatan-kai-bandara
2020年 インドネシアの鉄道・バス(運輸・物流)業界
インドネシアのKAI、コロナ対策の上、長距離列車運行開始〜鉄道・バス業界動向〜
インドネシアの国有鉄道PT Kereta Api Indonesia Persero(KAI)は、2020年6月8日より一般客の長距離列車の利用を再開するアナウンスをした。
臨時列車の利用規約は下記の通り。①PCR検査あるいは簡易検査の結果が陰性であるという証明書を有すること。②PCR検査や簡易検査のできない地域の乗客は病院/医師の診断書を有すること。③首都ジャカルタに出入りする場合は出入許可証を有すること。④体温が37.3度以下であること。⑤健康(かぜをひいていない、熱がない、咳をしていない)こと。⑥マスクを着用していること。
なお、切符は駅員が乗客の適性をチェックしたうえで、2日前から出発駅の窓口でのみ、代理人ではない本人にのみ販売されるということ。
DAMRI、インドネシア・スマトラ島で新路線開設〜鉄道・バス業界動向〜
インドネシアの国有バス会社Djawatan Angkoetan Motor Repoeblik(DAMRI)はインドネシア全土での旅行ルートの拡大の一環として、スマトラ島の新しいバス路線Bandar Lampung-Palembangを開設したことをホームページで明らかにした。
この路線はトランススマトラ有料道路を横断するもので、乗客の快適さをサポートするために、同社は安全で快適なマイクロバスを運行している。
ランプンからの出発時間は毎日WIB(西部インドネシア時間)で18:00。パレンバンからの出発時間は毎日WIB20:00。ランプン-パレンバン間の料金は18万ルピア(約1,360円)。ランプン-パレンバン間のチケットはDAMRIアプリアプリケーションからオンラインで購入できる。
清水・ インドネシアのAdhi KaryaJV、第二期地下鉄工事受注〜鉄道・バス業界動向〜
2020年2月7日、ジャカルタの地下鉄を運営するPT MRT Jakartaは、第二期工事の進捗を明らかにした。
2期工事は、Bundaran Hotel Indonesia駅からKota駅までの幹線5.8㎞と地下6駅のフェーズ2A、Kota駅からDepo駅までの5.2㎞(フィージビリティ検討中)のフェーズ2Bに分かれている。
フェーズ2Aは、CP200(モナス地域の変電所のためのD-Wall建設)が2019年9月に完了した後、CP201(Bundaran HI駅からThamrin駅へのトンネル、Thamrin駅、Thamrin駅からMonas駅へのトンネル、Monas駅、Monas駅からHarmoni駅までのトンネル:2つの地下駅と3つのトンネル幹線の建設)を清水建設とAdhi Karyaが約4兆ルピアで落札。2020年3月には工事が開始される予定。
2019年におけるインドネシアKCIの取り組みとは?〜鉄道・バス業界動向〜
2020年3月5日のホームページにて、ジャカルタ近郊のJabodetabekで鉄道を運行するPT Kereta Commuter Indonesia(KCI)は、2019年の取り組みの総括を行った。
KCIが2019年に実施したサービス革新は主に3つ。
①スディルマン駅、チキニ駅、パルメラ駅、インドネシア大学駅、タマンコタ駅の5駅をマルチトリップカード(KMT)が使用できる特別駅に制定:2019年のKMT売上げは751,122カードと前年比186%でキャッシュレス化に大きく貢献。②スディルマン駅、クレンダー駅、ジュランマング駅の3駅を環境にやさしい駅に制定:太陽電池パネルによる携帯電話の充電、廃棄物の分別収集、駅に複数個所の公園設置。③妊娠中の女性へのサービス提供:すでに4,850人の妊婦が登録済とのこと。
インドネシアのTransJakartaが次に狙う目標とは?〜鉄道・バス業界動向〜
ジャカルタでバスを運営するPT Transportation Jakartaは2020年2月4日、初めて一日の乗客数が百万人を超えたことをホームページで明らかにした。2020年2月4日の正確な乗客数は1,006,579人であった。
PT Transportation Jakarta はDKI州政府による公営企業(BUMD)として、乗客の輸送サービスをさらに強化するため、今後、バス台数を増加させる計画である。具体的には、高速バス967台、通常バス1,167台とマイクロバス2,200台の合計4,334台になるまで現状の保有バス台数を19%増やす計画である。さらに、サービス路線数も現状の278路線から285路線に拡大する計画である。
このような取り組みを進めながら、次に狙う目標は一日の乗客数が2百万人である。
2019年 インドネシアの鉄道・バス(運輸・物流)業界
DAMRI、インドネシア・スラバヤでキャッシュレス化〜鉄道・バス業界動向〜
国有バス会社のDAMRIはスラバヤでBNI銀行と協力して、2018年10月24日からBRI銀行の電子マネーBRIZIでJuanda国際空港に発着するバスの運賃を支払えるようにすると発表した。
スラバヤとその周辺地域の住民は、BRIZIカードを使うことで、おつりを受け取る手間や偽造紙幣の混入のリスクを減らせる上、2018年12月31日までBRIZIで支払うとバス運賃が10%割引になる。頻繁にバスを利用する人にとってはとてもお金の節約になる。
BRIZIカードの普及のため、BRI銀行は空港で利用者に無料でカードを配布している。カードはDAMRIのカウンターでも手に入る。BRIZIカードはスーパーマーケット、モールなどでの支払いにも使える。
インドネシアのTrsansJakarta、電気バスの導入実験中〜鉄道・バス業界動向〜
公営バス会社のPT Transportasi Jakartaは2019年4月29日、電気バスのテストをしていることを公表した。電気バスは近い将来国立記念碑(モナス)周辺で運行される計画だ。
大気汚染を減らすために電気バスの取り組みが期待されている。現在、2社のバスがテストされている。1社はインドネシア企業のMobil Anak Bangsa。もう1社は中国のBYD。実際に電気バスを導入する際は5社による入札が行われる予定だ。
大型電気バスの定員は48名。座席数は28席。残り20名は立ち客。定員18名の中型バスも検討されている。電気バスは時速100kmまで出せる。1回充電すると300㎞の距離が走れる。時間にすると2.5時間から4時間相当。
インドネシアのジャカルタMRT、正式開通〜鉄道・バス業界動向〜
ジャカルタMRTは料金を取らない試運転を行った後、2019年4月1日に正式に運行を開始した。
Bundaran HI駅とLebak Bulus駅の間を午前5:30から午後10:01まで約10分間隔で運行する。一方、ジャカルタ特別州政府は正式運行を開始してから約1か月の間は通常の運賃の半額で運行することを決めた。
MRTを使うために運賃を支払う方法が2つある。一つはMRTの駅にある切符自動販売機あるいは切符売り場で1回限りしか使えない切符を買う方法である。もう一つは銀行の電子マネーカード、すなわち、JakLingko、E-Money(Mandiri銀行)、Brizzi(BRI銀行)、Tap Cash(BNI銀行)、Flazz(BCA銀行)、およびJakartOne(DKI銀行)を使う方法である。
インドネシアのKIA、レバラン休みの乗客増加〜鉄道・バス業界動向〜
2019年6月9日の国有鉄道会社PT Kereta Api Indonesia (KIA)の発表によると、2019年のレバラン期間の乗客数は4,428,261人と2018年の4,037,654人より9.67%増加した。
レバラン休みに入って、2~3日経つと、駅での乗客の流れはよくなり、通常のようにそれぞれの故郷に帰っていくが、中部ジャワ、ジョグジャカルタと東ジャワへの列車が発車するガンビールとパサールスネンのような駅ではまだ混雑が見られる。
KIAは増加した乗客に対応するため、356便の定期ダイヤに50の追加増便を加えて406便を運航した。とりわけ、混雑時に乗客がスムーズに駅の中を移動できるよう、KAIの職員、ボランティア、軍隊、警察などの協力を得て乗客を誘導した。
2018年 インドネシアの鉄道・バス(運輸・物流)業界
インドネシアのジャカルタMRT、フェーズⅡのローンファンド契約を協議〜鉄道・バス業界動向〜
ジャカルタMRTは2018年7月4日、MRTフェーズⅡ開発に向けたローン契約の協議会を南ジャカルタのホテルメルキューレで開催した。出席者は、インドネシア国財務省・インドネシア国交通省・国家開発計画省(BAPPANAS)・ジャカルタ特別州開発計画庁(BAPPEDA DKI Jakarta)・インドネシア銀行などの政府団体。
フェーズⅡの計画概要
路線 :ブンダランホテルインドネシア~カンプン・バンダン間
駅数 :8駅 (地下駅7、地上駅1)
距離 :約8.3km
乗客数:378,000人/日 (ラッシュアワー運行: 4分間隔)
予算 :22.5兆ルピア (約1,800億円)
スケジュール
2018年12月:着工、2024年末:完成、2025年1月:運行開始
パレンバンのLRT計画をインドネシア・ジョコ大統領が視察〜鉄道・バス業界動向〜
2018年7月13日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は LRT視察のために南スマトラ州のパレンバンを訪問した。パレンバンは、2018年8月に開催されるアジア最大のスポーツイベント、アジア大会の会場のひとつとなっており、大統領は同大会のアクセスに関連する LRT の運用準備状況を確認した。
パレンバンのLRT開発は、2015年に開始。空港からJakabaring運動競技場までの約23kmと、川沿いの約435mに建設される。建設費用は、州予算から9兆9000億ルピアが充てられる。
大統領は、LRT が安全で快適な交通機関として国民の生活を支えること、今後はパレンバンだけでなく、スラバヤ、メダン、バンドゥンといった都市においても建設される予定であると述べた。
インドネシアのKai Commuter Jabodetabek、昨年の利用者数315万人を達成〜鉄道・バス業界動向〜
Kai Commuter Jabodetabek は Kereta Api Indonesia の子会社で、ジャカルタ、ボゴール、デポク、タンゲラン、ベカシを走行する鉄道を運営している。
ほとんどの鉄道車両は、東京メトロや東急電鉄など日本の鉄道会社から輸入した中古車両である。
2017年の同社の利用者数は、315万人に達した。ここに至るまでには様々なサービス向上のための取り組みがあった。例を挙げると、10両・12両編成の列車数を増加、ジャカルタ・コタ、テベット、タンゲラン、タナ・アバンなどの駅におけるホームの拡張や、チケットの自動販売機や自動ゲートの設置、列車の停車位置を示す電子画面の設置などといった様々な改革が行われてきた。
「OK Otrip プログラム」がインドネシア・ジャカルタ全域に拡大〜鉄道・バス業界動向〜
ジャカルタ特別州政府の輸送部門が進める「OK Otrip (One ticket One trip:乗降車に関わらず同一運賃)」の政策に基づき、トランスジャカルタはこれに対応する路線として、新たにOK-16 (PGC – Condet間) を2018年6月27日から運行開始した。
これまでにトランスジャカルタが導入した OK Otrip 対応路線は、
以下の6路線。
OK-2:Kampung Melayu – Duren Sawit
OK-3:Lebak Bulus – Pondok Labu
OK-4:Grogok – Tubagus Angke
OK-5:Semper – Rorotan
OK-6:Kampung Rambutan – Pondok Gede
OK-15:Tanjung Priok – Bulak Turi
まとめ:インドネシアの鉄道・バス業界
同国の交通渋滞と大気汚染問題を受け、政府は自家用車の利用を減らし、公共交通機関の利用拡大に力を注いでいます。補助金やプロモーションなどの政府の政策にも注目することで同国の鉄道・バス業界は今後もビジネスチャンスを見つけられるのではないでしょうか。
ジャカルタ在住のインドネシア人。観光ガイドと通訳者を務め、インドネシアの観光地を日本語で案内している。日本語学科の大学を卒業し、邦人対応観光ガイド・国際イベントでの日本代表団担当連絡係員・通訳者・日本領事事務所長の地元アシスタントを経験。