韓国の鉄道・バス業界は、持続可能な交通手段の普及やデジタル化の進展により急速に進化しています。新技術とエコ意識の高まりが相まって、効率的で快適な移動手段の提供が求められています。都市間の連携強化やスマート交通システムの導入が進む中、業界の競争はますます激化しています。本記事では、韓国の鉄道・バス業界を変革する最新トレンドを深掘りし、未来の市場を見据えたインサイトをお届けします。
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2023-2024年 韓国の鉄道・バス業界
韓国 国土交通部 交通分野の革新戦略3つを発表(1/2)〜鉄道・バス業界動向〜
政府は2024年1月25日「通勤30分時代、交通格差解消」をテーマとする民生討論会を開催し、「交通分野における3つの革新戦略」を発表した。討論会には会社員、公務員、地域住民といった実際の通勤客に加え、都市・交通分野の専門家も参加し議論した。
1.速度革新:全国GTX時代を通じ、広域にわたって接続された経済生活権を実現する。24年3月にはGTX事業A路線を開通させ、以降28年まで順次延伸させる。B・C路線は、それぞれ2030年、2028年の開通を目指し今年度に着工し、首都圏でのGTX時代を切り拓く。またA・B・Cなどの路線延長を進めるほか、D・E・F等の新路線の新設計画を進める。
2.住環境の革新:新都市における交通問題を解消することで住民の生活の質を向上させる。主要圏域別に広域バス導入を加速させるほか、専用道路の導入などの交通対策を進める。加えて、2階建ての電気バスや広域DRT(Demand Responsive Transit)の導入拡大、急行バスの導入、座席予約制の拡大などを通じ、広域バスの持続的な利便性向上も進める方針。
3.空間の革新:鉄道・道路の地下化を通じ都市空間を再構築する。「鉄道地下化特別法」の施行に合わせ、地下化総合計画を策定し、鉄道地下化のための推進基盤を完備する。
政府は、これらの1~3の革新戦略の実行にあたり、134兆ウォンの資金を投入する予定である。
出典:http://www.molit.go.kr/USR/NEWS/m_71/dtl.jsp?lcmspage=3&id=95089349
韓国鉄道(KORAIL) 2024年「デジタル新経営」、総合モビリティ企業への変革に挑む〜鉄道・バス業界動向〜
ハン・ムンヒ社長は2024年の新年挨拶において、2024年を「デジタル新経営」元年とし、先端技術と安全性に関するデジタル基盤への投資を進め、安全性とサービス改善を実現しつつ、総合モビリティ企業への変革に挑むとの抱負を語った。
保守整備(メンテナンス)と安全性に関するデジタル化、総合モビリティ企業への転換、事業ポートフォリオの再編による財務健全性の確保、未来人材の養成などを重点的に推進する。
2026年までの投資額は、安全性分野には5兆ウォン、先端技術分野には1兆ウォンを想定。
AIとビッグデータ基盤の統合安全管理プラットフォームを作り、状態に基づいた保全(CBM, Condition Based Maintenance)システムの拡大と業務の自動化・機械化を推進する。また、列車乗車券、レンタカー、荷物配送などのサービスをひとつにつなげる「コレイル型MaaS(Mobility as a Service)」を推進する。
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ソウル交通公社 通勤時間帯の座席なし電車の試験運行を開始(ソウル地下鉄4号線)〜鉄道・バス業界動向〜
ソウル交通公社は、2024年1月10日、朝の通勤時間帯から4号線において、混雑緩和をめざし車内の座席を改良した車両の試験運行を開始すると発表した。
試験では、4号線を走る電車1編成の内1両で車内の座席が取り外される。4号線は23年第3四半期には混雑度が193.4%に達しており、ソウル地下鉄の1~8号線において最も混雑が激しい。混雑度の高い4号線をデモ事業対象に選定することで、混雑度改善効果を検証する狙い。
車内の座席を取り外すことで混雑率は最大40%まで改善され、1両あたり12.6㎡のスペースを確保できることから乗客の利便性向上につながると見ている。
同公社は、試験運行にて混雑度改善が実証された場合には方針を拡大する予定。
出典:http://www.seoulmetro.co.kr/kr/board.do?menuIdx=547&bbsIdx=2217244
空港鉄道 海外入国客を対象とした交通カードの事前販売サービスを開始〜鉄道・バス業界動向〜
空港鉄道は、空港直通列車からソウル市内の地下鉄各線に乗り換える利用客の利便性向上のため、2024年2月1日からオンラインでの交通カードの事前販売を開始した。
韓国入国前に空港鉄道の直通列車の予約・販売アプリにてT-moneyを購入し、直通列車内で事前購入した交通カードを受け取ることで、ソウル駅で簡単に別路線に乗り換えできるサービス。
従来、直通列車の利用客がソウル市内の地下鉄に乗り換える場合、直通列車でソウル駅到着後に一旦改札を出た後、新たに交通カードを購入して別の地下鉄に乗り換えなければならなかった。事前販売の交通カードを使うことでソウル駅での乗り換え時の手間が削減され、利便性の向上につながる。
交通カードの事前購入は、乗車60日前から1日前まで可能。
大邱交通公社 大邱都市鉄道1号線の無人化を推進〜鉄道・バス業界動向〜
大邱交通公社は2035年をめどに、都市鉄道1号線の無人運転システムを導入する。
これは、無線通信を基盤とした韓国型の列車制御システム(KTCS-M)の商用化と、鉄道統合無線網(LTE-R)による技術基盤の安全性が確認されたことにより、現在は運転手が乗務する1号線を無人運転システムに変更する事業となる。
運行中の都市鉄道の信号設備を改良し、無人運転の電車を製作・導入するのは国内初となる。総費用は約5,800億ウォンにものぼる大型事業となる見込み。
2024年に専門機関による安全性、経済性などの調査を行い、無人運転電車の導入計画などを策定する計画である。
出典:https://www.dtro.or.kr/index.do?menu_link=/icms/bbs/selectBoardArticle.do
2022年 韓国の鉄道・バス業界
韓国 国土交通部 低床バスの導入義務化によるバリアフリー化を実現〜鉄道・バス業界動向〜
国土交通部は、路線バス車両の入れ替え時に低床バス導入を義務づける改正法案を2022年7月19日に立法予告*すると発表した。
「交通弱者の移動便の増進法施行令・施行規則」改正法案では、23年1月19日以降、市内・農漁村の各路線において、バス車両入れ替え時に低床バスを導入することが義務付けられる。高速・直行・一般型の市外バスは対象外となる。
道路設備・構造等により低床バス導入が困難な路線においては、運行事業者は各自治体の交通行政当局に導入例外を要請することができる。
国土交通部のユン総合交通政策官は「低床バス導入義務化に伴い、歩行困難な障がい者はもちろん、高齢者・乳幼児を連れた家族といった国民全般の公共交通利便性が大幅に向上する」と期待を寄せる。
*立法予告:韓国の行政手続法に従い、法令の制定/改正/廃止を行う場合、立法案を策定した行政庁が国民に対し事前予告しなければならないもの。
出典:http://www.molit.go.kr/USR/NEWS/m_71/dtl.jsp?id=95086965
韓国 国土交通部 首都圏広域バス路線に2階建てEVバスの導入を拡大〜鉄道・バス業界動向〜
国土交通部大都市圏広域交通委員会は、2023年度末をめどに広域バス22路線に2階建てEVバス40台を追加導入し、新都市等の首都圏広域交通の利便性を大幅に改善すると発表した。
2階建て電気バスの1台あたりの旅客輸送量は既存バス比で60%以上と、通勤ラッシュ時の混雑を抜本的に解消できる大型の交通手段として期待されている。
2022年までの2年間に60台を導入済であり、23年度内に追加で40台を導入し、合計100台まで拡大する方針。
輸送力拡大や温室効果ガス削減などを目的とし、国土交通部と現代自動車が国家R&D事業で共同開発した車両が導入される。輸送力の増加(40人から70人に増加)によるサービス改善のみならず、広域での使用やカーボンニュートラルなどのメガトレンド にも対応できる次世代の広域交通手段として注目される。
出典:http://www.molit.go.kr/USR/NEWS/m_71/dtl.jsp?id=95087954
韓国鉄道(KORAIL) チャット相談サービス「コレールトーク・チャット」の提供を開始〜鉄道・バス業界動向〜
KORAIL(コレール)は、鉄道利用情報をリアルタイムで知らせる「コレールトーク・チャット相談」サービスを2022年9月27日から開始する。運行状況の確認から座席予約まで可能となる。
これまで聴覚障害者を対象に提供してきたサービスを、スマートフォンの「チャット相談」の普及にあわせて拡大する。
コレールトークの顧客センターメニューから「チャット相談」アイコンを選択することで、チャットで会話するように情報の受け取りが可能となる。
列車予約および乗車券関連の問い合わせといったよくある質問は即時回答が可能。「時刻表」や「区間運賃」に関する回答は資料のリンクを送る。 利用可能時間は平日午前9時から午後6時まで。
ソウル交通公社 地下鉄の犯罪との戦争…安全な地下鉄を作る〜鉄道・バス業界動向〜
毎年2千件以上発生するソウル地下鉄内の犯罪に対応すべく、ソウル交通公社が地下鉄保安官のパトロール強化とあわせ、安心ミラー(鏡)と安全地帯(Safe Zone)設置・駅および車内防犯カメラの増設など、さまざまな防犯策を推進している。
ソウル地下鉄内での犯罪は違法撮影などの性関連犯罪の割合が最も高い。路線別では2号線の犯罪件数が最多で、次いで5号線、7号線、4号線、3号線、1号線、6号線、8号線の順であった。
同公社は、地下鉄での犯罪撲滅のためには「利用者からの迅速な通報やパトロールの際の円滑な協力といった市民の積極的な参加も必須」と強調する。犯罪行為を目撃した際、警察または「トタ地下鉄*」アプリを通じ、地下鉄保安官の駆けつけを要請することで迅速な初動対応が可能になるとしている。
*トタ地下鉄:市民の安全と利便性を高める目的でソウル交通公社が運営するアプリ。地下鉄や駅の情報を提供するとともに通報位置把握や列車移動情報をリアルタイムで確認できる。
出典:http://www.seoulmetro.co.kr/kr/board.do?menuIdx=547&bbsIdx=2213886
蔚山広域市 大邱エキスポ(DIFA2022)でEVバスのコア技術をPR〜鉄道・バス業界動向〜
蔚山広域市は、2022年10月27日から29日までの3日間、大邱エクスコで開催される「大邱国際未来移動手段エキスポ(DIFA2022)」において広報ブースを運営すると公表した。
広報館には蔚山地域の企業が中心となり開発した「自律走行EVバス」と「小型EVバスプラットフォーム」などが展示される。
「自律走行EVバス」は自律走行レベル3段階以上を目指し開発が進む。周囲の状況や歩行者などといった情報を、リアルタイムで共有可能な「車両事物通信(V2X)」との連携ができる。現在蔚山市内において約30km距離で実証試験の運行中である。
「小型EVバスプラットフォーム」は、既存の小型内燃機関バスをEVバス用に改造したプラットフォーム。蔚山地域のEVバス製造能力を示す製品として開発が進む。
ソウル在住の韓国人。日本での在住経験は12年。日本の有名大学を卒業し、大手シンクタンクの正社員及び経営コンサルタントとして勤務。ビジネス戦略とイノベーションの分野で活躍。
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