インドネシアでは、医療技術の向上、医療制度の整備と共に、今まで輸入に頼っていた医療機器を国内生産しようとする動きがみられています。2022年9月にはインドネシア医療卸大手のDV Medikaが医療用電気機器の国内生産を開始するなど発展が続いています。
今回は、そんなインドネシアの医療卸業界に関する最新情報をお届けします!
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2022年 インドネシアの医療卸(医療・介護)業界
Enseval、Samuderaと子会社の資本提携〜医療卸業界動向〜
Kalbe Farmaのロジスティック部門が独立してできた医療卸会社PT Enseval Putera Megatrading Tbkは2022年11月17日、ホームページでPT Enseval Putera Megatrading Tbk (Enseval)とPT Samudera Indonesia Tbk(Samudera)が、各々の子会社であるSamuderaのPT Samudera Sarana Logistik (SSLog)とEnsevalのPT Mostrans Global Digilog (Mostrans)間で、SSLogがMostransに20%出資する資本提携を行ったことを明らかにした。
これにより、Mostransを通じたKalbeとSamuderaの戦略的協力は、ロジスティクス部門のデジタルトランスフォーメーションを加速することになる。
物流部門での総合的なデジタルソリューションの提供が期待されている。
出典:https://www.enseval.com/news/detail/kolaborasi-enseval-dan-samudera-indonesia–mendorong-percepatan-transformasi-digital-di-sektor-logistik/161
尼APL、インドネシア大学薬学部と健康教育改善〜医療卸業界動向〜
今年で100周年を迎えるZuellig Pharmaのメンバーで、1985年以来インドネシアのヘルスケア市場に進出した医療卸のPT Anugerah Pharmindo Lestari (APL)は、2022年6月23日、ホームページでAPLがインドネシア大学薬学部と協力してインドネシアの健康教育の改善を図ることを明らかにした。
これはインドネシアの15,000名の以上の薬剤師を対象としたプログラムである。
APLは、インドネシア大学薬学部と協力して、eZRxプラットフォーム内の教育機能であるeZEducationを開始することにより、ヘルスリテラシーの向上を図るというものだ。ちなみに、eZEducationはAPLが立ち上げたすべてのAPL消費者がアクセスできるデジタルイノベーションのことである。
出典:https://www.aplcare.com/en/news/read/pt-anugerah-pharmindo-lestari-apl-collaborates-with-faculty-of-pharmacy-university-of-indonesia-to-improve-health-education-in-indonesia
DV Medika、Mindray医療機器委託生産開始〜医療卸業界動向〜
1999年、バリ島のデンパサールにて設立され、現在インドネシア全土の病院と医療施設に展開する医療卸のPT D&V International Makmur Gemilang (DVMedika)が2022年8月27日、ホームページでDVMedikaとPT Mindray Medical Indonesiaがついに生産施設を開設し、Kendal工業地域のDV MedikaでMindrayの医療用電気機器の国内生産を開始したことを明らかにした。
医療機器の国産化を目論む政府を代表して、生産開始の記念式典にはBudi Gunadi Sadikinインドネシア保健大臣が出席し、デモンストレーションで石碑に署名が行われた。
将来的には、DV Medikaが国内の医療機器産業の発展を加速する上で常に最高のものを提供できるようになることが期待されている。
出典:https://www.dvmedika.com/id/news/dv-medika-and-mindray-product-launching_61.html
Meditrans、医療用GFRのデモ実演を提供〜医療卸業界動向〜
2012年にスラバヤで設立された医療卸会社PT Meditrans Globalは、Aneka Gas、Siemens Healthcare、GE Healthcare、および多くの政府または私立病院、多くの大企業との広範なネットワークを持っている。
病院や医療機器提供会社、プリンシパルと官民パートナーシップ(PPP)当事者の両方と協力して、X線、CTスキャン、MRI、Cathlabのインストールや手術室、放射線室などの補強構造の建設および改修も手掛けている。
2023年2月21日Meditransは、デジタル化の進展に伴う生理学的分析に用いるカテーテルラボ支援ソフトウェアである医療用QFRについて、製品の販売とは別に、QFRを必要とする病院向けにQFRのデモンストレーションを提供していることを明らかにした。
出典:https://www.meditrans.id/demo-qfr-di-salah-satu-rs-jantung-terkemuka-di-jakarta/
Organon、親元変更で「女性の健康革新」推進〜医療卸業界動向〜
グローバル親会社による事業分割をきっかけに、事業譲渡プロセスにあるPT Organon Pharma Indonesia,Tbkは2022年5月31日、2021 Annual Reportを公表した。
役員報告の中で、2021年社名を親会社にちなみPT Organon PharmaIndonesia Tbkに変更し、現在Organonの「女性のための健康革新」というコミットメントに焦点を当て、事業を推進していることを明らかにした。
2021年の中央統計局のデータによると、女性の28.32%が医療に不満を感じており、男性の26.15%よりも高い。また、2021年の入院者数が女性の場合4.36%に対し、男性は2.37%と少ない。そのため、Organonは女性の健康を奨励することで、より健康な家族や地域社会を支援している。
出典:https://www.idx.co.id/StaticData/NewsAndAnnouncement/ANNOUNCEMENTSTOCK/From_EREP/202205/b0d97a1d8a_f81c8dd1
2020年 インドネシアの医療卸(医療・介護)業界
インドネシアのチトセ、2019年病院向け販売前年比218%〜医療卸業界動向〜
インドネシアでイス・家具および病院用器具の生産販売を行う日系のPt Chitose Internasional Tbk(チトセ)が、2020年3月31日にインドネシア証券取引所(IDX)に提出した2019アニュアルレポートによると、同社の2019年の売上高は4,118億ルピアで前年比111%と二桁成長した。
その中で病院向けの売上高は53億ルピアで前年比218%、構成比は1.3%と低いが、伸び率は高い。
2019年、チトセは子会社のPT Chitose C-Engineering Indonesiaを通じて、マットレストッパーの分野で革新的な製品を導入した。この製品を生産するためにチトセではエアーメイト・テクノロジーと呼ばれる独自の3次元ノードテクノロジーを開発している。
インドネシアのパラマウントベッド、立ち上がるベッドを開発〜医療卸業界動向〜
パラマウントベッドのインドネシア現地法人PT Paramount Bed Indonesiaは2020年5月29日、Total Lift Bed(TLB:立ち上がるベッド)をホームページで紹介した。
このベッドはCovid-19の患者をサポートするのに役立つよう設計されている。
TLBを使うと、看護師がリモコン操作でベッドを動かし、患者が起き上がるのを手助けできる。看護師が介護作業で負傷するリスクも排除できる。また、複数の補助呼吸装置を外すことなくリハビリを行えるため、患者のリスクも回避できる。さらに、患者が移動する必要がないため、ウイルスで汚染された空気や器具が拡散せず感染リスクを回避できる。
出典:https://www.paramount.co.id/news/detail/solusi_vitalgo
インドネシアのEnseval、2019年医療機器売上高前年比117% 〜医療卸業界動向〜
インドネシアで医薬品および医療機器の卸販売を行うPT Enseval Putera Megatrading Tbkが2020年4月13日にIDXに提出した2019アニュアルレポートによると、2019年の売上高は22兆2,269億ルピア(約1,569億円)で前年比108%であった。
内訳の上位5位は下記の通り。
①再販商品:9兆5,315億ルピア(前年比:110%、構成比:43%)
②処方薬:6兆2,821億ルピア(前年比:110%、構成比:28%)
③非処方薬:2兆9,339億ルピア(前年比97%、構成比:13%)
④原材料:1兆8,088億ルピア(前年比:104%、構成比:8%)
⑤医療機器:1兆6,212億ルピア(前年比:117%、構成比:7%)
医療機器ではとりわけ血液透析装置が20%以上成長した。
出典:https://www.idx.co.id/StaticData/NewsAndAnnouncement/ANNOUNCEMENTSTOCK/From_EREP/202004/74e041922c_adff3bdabf.pdf 54ページ、75ページ
インドネシアのIndofarma、医療用機器新製品を発表〜医療卸業界動向〜
インドネシアの製薬会社PT Indofarma Tbk(INAF)は2020年7月27日、INAFの102周年を記念して、医療用機器の新製品の発表とウェブセミナーを行った。
今回発表された医療用機器の新製品は全部で6点。①INAマスク②CLIND手指消毒剤③Teledoc独立型健康診断④INAVENT緊急換気装置⑤Indofarma InBody Testの体組成を測定するためのツール⑥Hemodind透析(血液透析)装置である。
新製品の発表はINAFの役員によって行われた。ウェブセミナーも役員がインタビューを受ける形式で新製品の説明をするもので、YouTubeのINDOFARMA CHANNELに「Lanching Product & Webminar Indofarma」というタイトルで掲載されている。
出典:https://indofarma.id/2020/07/27/product-launching-dan-webinar-indofarma/
オムロンインドネシア、大手ネット通販6社が取り扱い〜医療卸業界動向〜
オムロンのインドネシア現地法人PT Omron Indonesiaは、2020年7月9日のフェイスブックで、同社製品をオンラインE-commerceで購入できることを案内した。
今回紹介されたのは6社で、オムロンがofficial storeを開設しているオンラインプラットフォーム、Shopee、Tokopedia,Bukalapak、Lazada、Blibli、Dinomarketである。
「自宅やオフィスでの作業中も、オムロン製品をオンラインのeコマースで購入できます。」がキャッチコピーで、6社のうち5社(Shopee、Bukapalak、Tokopedia、Dinomarket、Lazada)のリンク先が添付されている。各サイトではオムロン製の体温計、血圧計、体重計、吸引器などあらゆる製品が掲載されている。
出典:https://www.facebook.com/omronhealthcareindonesia/photos/a.195542550620900/1335834199925057
2019年 インドネシアの医療卸(医療・介護)業界
インドネシアのEnseval、デジタルプラットフォーム立ち上げ〜医療卸業界動向〜
2019年10月10日の発表によると、インドネシアの大手医療品代理店のEnseval Putera Mega Trading Tbkは、Ensevalのビジネスパートナーである医療品会社や運送会社とインドネシアで最初の健康産業向けデジタルプラットフォームを立ち上げた。
このプラットフォームはMOSTRANSと名付けられ、医療品会社と運送会社の間で医療サプライチェーンエコシステムを接続し、オフラインからオンラインまでのサービスを統合する。また、MOSTRANSでは、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、マーケットプレイス、サプライチェーンファイナンスなどのソリューションが提供される。
現在、合計3,000台以上のトラックを所有する25社の運送会社が参画している。
販路拡大にネット販売会社を活用、日系インドネシア企業チトセの販売戦略〜医療卸業界動向〜
日系家具メーカーで病院用のベッドも生産するPT CHITOSE INTERNASIONAL Tbkは、チトセの商品が、家具のネット販売サイトPersegi(URL:https://www.persegi.co.id)で閲覧購入できると発表。
このサイトは家具専門のサイトで、PT. Santomas Velo Intikarya(ホーム&リビングの分野でオンデマンドプラットフォームを提供している会社)によって運営されている。
現在、チトセの製品はイスを中心に102点が掲載されている。ほとんどの商品が定価より約15%引きで販売されている。積極的にネット販売を活用していこうという戦略である。
インドネシアで医療卸業界大手のOmronがリウマチ治療に推奨する機器とは?
インドネシアで健康機器を製造・販売するOmron Indonesiaは、同社フェイスブック上でリウマチと痛風の違いについて紹介した。
リウマチは関節の炎症によって起こり、痛みと硬直が引き起こされる。リウマチは治癒できないが、症状は緩和できる。一方、痛風は体内の過剰な尿酸レベルによって引き起こされる。そのため、痛風は健康的な食事を通じて予防および治療できると説明している。
そして、オムロンHV-F128がリウマチの症状によって引き起こされる硬直や痛みを緩和するのに役立つことを紹介している。HV-F128の刺激機能は「痛みを和らげるモード」と「こりをほぐすモード」が選択でき、6つの部位(その一つが間接)にマッサージとセラピーを施すことができる。
インドネシアのDV MEDIKA、Hospital Medan Expo出展〜医療卸業界動向〜
インドネシアの医療品代理店であるDV MEDIKAは、2019年2月20〜22日にメダンにあるホテルサンティカプレミアダイアンドラで開催された第9回Hospital Medan Expoに参加したことを明らかにした。
このイベントでDV MEDIKAが達成する目標は、北スマトラ州の地域でDV MEDIKAが販売するブランドの医療機器を紹介することである。そのため、参加者、特に医師に最新の医療機器技術を説明しているとのこと。
また、展示会と合わせてインドネシア全国病院協会の主催するセミナーが開催された。今年のテーマは「北スマトラ州での国民健康保険実施における政府の役割を含む医療機関に起こる様々な問題を提起する。」ということで、様々な課題について論議されたとのこと。
2018年 インドネシアの医療卸(医療・介護)業界
インドネシアで医療卸業界牽引のタワダ、アセアンリーンヘルスケア賞受賞者発表
2018年4月1日、インドネシアで代表的な医療器具商社タワダは同社ウェブサイト上で、スラバヤに位置するストモ病院がシーメンスの主催する〈アセアンリーンヘルスケア賞2017〉を受賞したことを報じた。
2017年にこの賞を受賞したのはアジアで5社。ベトナムが3社、マレーシアが1社、そしてインドネシアがストモ病院だ。ストモ病院の受賞理由として、優れた顧客サービスと検査時間短縮に向けた取り組みが評価された。
ストモ病院では2012年にシーメンス社の検査設備「ストリームラボ」を導入。2016年には検査量のアップと検査の柔軟性を向上させるため、ベルトラインをベースにした検体搬送処理システム「アプティオオートメーション」へ設備投資を行った。
インドネシアのDV MEDIKA、世界膠原病の日に因む〜医療卸業界動向〜
2018年5月10日、病院用のベッドや医療器具を扱うDV MEDIKAは、5月10日が世界膠原病の日であることに因み膠原病に関する正しい知識をホームページに掲載した。
①膠原病は自己免疫疾患の一種:膠原病患者は免疫が過剰活動して健康な体細胞を攻撃してしまう。
②膠原病の種類:全身性膠原病、円板状紅斑性膠原病、薬物誘発性膠原病など。
③膠原病が損傷を与える器官:関節、皮膚、腎臓、肝臓、肺、血管、および脳など。
④膠原病克服には複数にわたる分野の医師チームが必要。
⑤膠原病患者でも妊娠出産は可能。
⑥膠原病の単一検査法はない。
⑦膠原病の原因は不明:遺伝的要因があると考えられているが、まだ研究段階にあるとのこと。
日系インドネシア企業のチトセ、2部門でトップブランド賞受賞〜医療具卸業界動向〜
2018年2月21日の発表によると、椅子の総合メーカーで病院用ベッドも手掛けるチトセ・インターナショナル(本社:日本)がフロンティアコンサルティング主催の2018トップブランド賞を事務用椅子と折りたたみ椅子の2部門で受賞した。
フロンティアコンサルティングでは、全国主要15都市で、ランダムサンプリング方式で選ばれた12,000名の調査結果に基づきトップブランドを決定している。事務用椅子部門では36.7%で第一位、折りたたみ椅子部門では54.3%で第一位という結果であった。
チトセ・インターナショナルは1979年に設立され、現地生産・現地販売に39年の歴史を持つ。インドネシアの市場で圧倒的なシェアを誇る日系メーカーの一つである。
オムロンインドネシア、オムロンコネクトを紹介〜医療卸業界動向〜
オムロンインドネシアは2018年10月23日、同社Facebook上でオムロンコネクトが開発した、自分の健康データを簡単にモニター管理できるアプリを紹介した。オムロンコネクトはApple StoreあるいはGoogle Playから携帯端末へ手軽にダウンロードできる。
FacebookページのURLをクリックすると新機能の紹介にジャンプする。新機能は、血圧管理。
薬を飲んだ後、スポーツをした後、アルコールを飲んだ後などいくつかのメモアイコンを使用して血圧値が入力でき、血圧の状態がカレンダーやグラフで表示される。過去の履歴データは電子メールでパソコンへPDFファイルとして送信できるので印刷が可能である。通知設定をオンにすると薬の服用時間もリマインドしてくれるという優れもの。
まとめ:インドネシアの医療卸業界
近年、インドネシアでは急速な高齢化により車椅子市場の売上も大きな成長を遂げています。健康寿命の延伸により今後も注目が集まると考えられるインドネシアの医療卸業界ではまだまだビジネスチャンスが眠っているのではないでしょうか?
ジャカルタ在住のインドネシア人。観光ガイドと通訳者を務め、インドネシアの観光地を日本語で案内している。日本語学科の大学を卒業し、邦人対応観光ガイド・国際イベントでの日本代表団担当連絡係員・通訳者・日本領事事務所長の地元アシスタントを経験。