韓国の製薬・バイオテクノロジー業界は、急速に進化を遂げています。特にAIやデジタルヘルスの活用が進み、新薬開発の効率化や個別化医療が注目を集めています。また、グローバル市場への進出も加速中です。これらのトレンドは、競争力を高める鍵となるでしょう。本記事では、韓国の製薬・バイオテクノロジー業界を変革する最新トレンドを深掘りし、未来の市場を見据えたインサイトをお届けします。
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2023-2024年 韓国の製薬・バイオテクノロジー業界
KWANGDONG PHARMACEUTICAL済州で健康機能食品に関する教育を実施地域の中小企業競争力強化に寄与〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2023年11月、KWANGDONG PHARMACEUTICALは、済州テクノパーク社と共同で地域の中小企業の競争力強化のため、健康機能食品の企画開発に関する教育を実施した。
内容は、一日目が▲機能性飲料の企画開発▲健康機能食品の新規素材開発▲ビーガン認証コンサルティング▲ロングテール時代の健康機能食品のトレンド、などをテーマとした講習、二日目は健康機能食品の製造・殺菌工程などの見学など。
受講者からは「多様な製剤の工程を見学でき、知識や経験が豊富な専門家に企画から開発まで多岐にわたる話を聞けた。また内容も済州地域にすぐに適用できるものが多い」と満足する声が多かった。
該社関係者は、中小企業や農家など、地域社会との共生を着実に実践してきたとし、今後も済州島民の助けとなる様々な活動を継続していきたい、と語る。
出典:https://www.ekdp.com/PRcenter/news_view.do?seq=1273&page=1&s_keyword=
Hanmi Pharmaceutical 次世代肥満治療薬の臨床試験を開始〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2024年5月の発表によるとHanmi Pharmaceuticalは、筋肉量の減少を抑えつつ、25%以上の減量効果が期待される次世代肥満治療薬(LA-GLP/GIP/GCG、コード名:HM15275)の臨床第1ステージの試験に着手した。
HM15275は、臨床第3ステージの“エペグレナタイド(GLP-1単剤)”の改良版新薬で、グルカゴン類似のペプチド(GLP-1)と胃抑制ペプチド(GIP)、グルカゴン(Glucagon、 GCG)など、それぞれの受容体作用を最適化することで肥満治療に特化している。また関連する様々な代謝性疾患にも効果を発揮する。
これら3つの薬理作用を適切に活用することで、2型糖尿病および心血管疾患に対しても治療の可能性を最大化できる、と同社は説明する。
6月には米国で開催される米国糖尿病学会(ADA)で、HM15275に関する4件の非臨床研究結果を発表する予定。
出典:https://www.hanmi.co.kr/about/news-media/press/detail-562.hm
SAMSUNG BIOLOGICS レゴケムバイオ社とADC治療薬開発で協業〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2024年2月の発表によるとSAMSUNG BIOLOGICS(以下、サムスンバイオ)は、国内ADC分野の首位であるレゴケムバイオ社と共同で、ADC(抗体薬物接合体・Antibody-drug conjugate)治療薬の開発に取り掛かる。委託開発の為の新規契約を締結したと明らかにした。
レゴケムバイオは2006年設立。現在はADC技術および合成新薬分野において競争力のあるR&D能力を有する。
昨年は大腸ガンなどを対象としたADC治療薬「LCB84」に関し、ジョンソン・アンド・ジョンソン子会社のヤンセン・バイオテック社と17億ドル(2兆2,400億ウォン)で技術移転契約を締結した。これまでレゴケムバイオが締結した技術移転契約は計13件で、8兆7,000億ウォン規模にものぼる。
本契約により、サムスンバイオはADC治療薬の開発に不可欠な抗体開発に取り掛かる。細胞株の開発から臨床物質の生産全体までにわたる委託契約をレゴケムバイオに提供する。
SK bioscience 自社インフルワクチンを南半球地域へ展開〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2024年3月の発表によるとSK bioscienceは自社開発の細胞培養インフルエンザワクチン「スカイセルフル」のタイ向け輸出を開始した。東南アジアおよび南半球地域への本格展開を進める。
本輸出により、タイのインフルエンザワクチン市場におけるシェア拡大に加え、UNICEF(国連児童基金)やPAHO(パンアメリカン保険機関)等国連機関の調達元としての可能性、また海外展開の先例となることで、グローバル市場への拡大可否についても検証する。
WHO(世界保健機関)はインフルエンザ菌株の動向について、年2回発表している。インフル菌株は、南半球で変動がない場合は北半球でも同じ菌株で生産が可能となることから、供給期間の短縮、製造コストの削減にもつながる。該社の南半球進出は今回が初めてだが、北/南半球の双方に市場を持つことで競争力の強化につながるとみている。
アン社長は「今回のタイ輸出は東南アジア、また南半球市場への進出、ひいては本格的なグローバル市場拡大のための足掛かりとなる。また臨床第3ステージ目前の次世代肺炎球菌ワクチン等の新規ワクチン開発にとどまらず既存製品の市場多様化も進められる」と話す。
出典:https://www.skbioscience.com/kr/news/news_01_01?mode=view&id=261&
JW Pharmaceutical韓国初の「ハイブリッド保育器」発売〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2023年6月の発表によるとJW Phaumaceuticalが、グループ内で医療機器事業部門を譲り受けて初めての新製品となるハイブリッド保育器(インキュベーター)を発表した。
ハイブリッド保育器とは、上部パネルが開放された状態でも加温装置が作動し、新生児に最も適した温度を提供する医療機器。国内ヘルスケア企業で製品化したのは今回が初めて。
新たに保育器ブランド「HI-MAMMI」を立ち上げ、開放型保温機能を備えたハイブリッド機器、高級型、普及型などの新製品3種を発売する。
ハイブリッド/高級型保育器は、グローバルメーカー3社(GE社ヘルスケア(米)、アトムメディカル(日)、ドラガー(独))の製品にも搭載されているマットレスリクライニング機能に加え、調整角度まで確認できるのが特徴。
この立ち上げにより、海外ブランドが独占している保育器市場に挑む。今後は、臨床データ基盤のディープラーニング技術を適用したAI(人工知能)スマートケアシステムを開発し、カスタマイズされた新生児集中治療環境も構築する計画。
出典:https://www.jw-pharma.co.kr/pharma/ko/prcenter/all_view.jsp?contentsCd=230628092739405C36P7
2021-2022年 韓国の製薬・バイオテクノロジー業界
CELLTRION レムシマSCの特許権を確保〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
Celltrion(セルトリオン)は、2022年11月、自己免疫疾患治療薬「レムシマSC」がグローバルのシェアを急拡大する中、世界各国で特許が承認されつつあることで、安定した収益基盤の構築が進んでいると公表した。
同薬は世界初のインフリキシマブ皮下注射(SC)の剤形であることから、2018年から米国/欧州/アジアの主要国において、同社はレムシマSCの剤形と投与法について特許を出願してきた。
審査を経て各国で特許が登録されると、レムシマSCの剤形は2037年6月、投与法は2038年8月まで特許権による保護を受ける。
レムシマSCは迅速な投薬効果と剤形の利便性が強みで、欧州主要5カ国のインフリキシマブ市場でシェア10.7%を占める。今後はグローバル市場でもシェア拡大が続くと想定される。
GC Biopharma 国内の製薬会社初の血友病患者向けパーソナライズ型ソフトウェアを発売〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
GC Biopharma(以下、GCノクシプチャ)は、韓国の血友病患者向けのパーソナライズ型ソフトウェア「WAPPS-HEMO」を発売したと2022年6月30日、明らかにした。 国内製薬会社の中では初である。
「WAPPS-HEMO」は、GCノクシプチャの血友病治療薬「グリーンジンエフ」と「グリーンモノ」を処方する医療スタッフが、患者の処方履歴をベースに、適切な投与量と間隔を決定するのに役立つことが特徴 。これにより、患者は専用のアプリケーションで、自分の血中凝固因子レベルを確認し疾患を自ら管理できるようになる。
ソフトウェアは、カナダのマクマスター大学、ウォータールー大学と共同で開発した。
同社のデータサイエンスチーム長は、国内の血友病患者にパーソナライズされた治療を提供し、服薬率を高め、出血率の減少による医療費の削減と、生活の質の向上が期待できると話す。また、今後も希少疾患の患者が最適な治療を受けることができる環境を作るのに努力していきたいと抱負を語った。
出典:https://www.gccorp.com/kor/pr/news-view?idx=348
Boryung CIS Challengeを主催宇宙ヘルスケアのあり方を模索〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2022年4月の発表によるとBoryung社は、宇宙でのヒューマンヘルスケアソリューションを模索すべく「CIS Challenge」を主催する。本企画は米国の宇宙開発専業のアクシオムスペース社、航空宇宙スタートアップのエクセラレータースターバースト社も共同主催として参加する。
同社は宇宙時代の到来に向け、大気圏外での人間の健康状態の変化に対応すべく、2020年からCIS(Care In Space)プロジェクトを展開している。
今回の「CIS Challenge」は、世界各国の宇宙でのヘルスケア分野のスタートアップ企業などが参加し、今後宇宙で想定される様々なヘルスケア問題への解決策を見出すことが目的。
参加企業は7月にUCLA Conference Hallで開催されるイベントで競う。選抜されたチームは、12月のデモデーで世界中の投資家にアイデアとソリューションを説明する機会を得られる。
出典:https://www.boryung.co.kr/ko/news/detail/41
SK BIOPHARMACEUTICALSがん治療薬の開発を加速〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2022年11月、SK BIOPHARMACEUTICALSは、自社開発の抗がん新薬「SKL27969」が国家新薬開発事業に選定され、協約を締結したと発表した。
本協約により、SKL2796は米国での臨床第1ステージ及び非臨床研究について、2年間の支援を受けられる。
SKL27969は、前臨床開発による効果検証で良い結果が得られたことに加え、十分な安全性も有することが確認された。
同社は今年1月、米国食品医薬品局(FDA)からSKL27969の臨床第1・2ステージの計画(IND)が承認され、脳腫瘍と脳に転移したがん向けの「ベストインクラス(best-in-class)」の治療薬開発を行っている。
今回の協約締結により臨床研究を加速させたい狙い。臨床開発を手掛ける米国子会社SK Life Scienceと共同で進行性がん患者に対する投与試験を行い、安全性と効果を検証する。
出典:https://www.skbp.com/kor/news/view.do?boardCode=BDCD0002&boardSeq=585¤tPage=5&search=
Dongkook Pharmaceutical エフィルバイオサイエンス社と協業〜製薬・バイオテクノロジー業界動向〜
2022年6月、Dongkook Pharmaceuticalは新薬開発のため、エフィルバイオサイエンス社と業務協約を協業契約を締結したと発表した。
コレステロール代謝阻害剤を利用した非臨床の効能試験、薬物伝達システム(DDS)、製品商用化、許認可およびマーケティングなど、各社の専門性を活かすことで、新薬開発のための共同研究においてシナジー創出が可能と期待を込める。
両社は今後共同委員会を立ち上げ、共同研究を進める物質の選定、導出、特許や権利の確保、技術輸出など、新薬開発及び商業化に関する全ての過程において協業を進める。
2022年末までに1つ以上の非臨床の候補物質を選定し、2023年には本格的な臨床試験(IND; investigational new drug)用の非臨床研究を進めることを目指す。
出典:https://www.dkpharm.co.kr/boards/view.php?btype=news&stype=all&stext=&idx=678&page=17&stext=
ソウル在住の韓国人。日本での在住経験は12年。日本の有名大学を卒業し、大手シンクタンクの正社員及び経営コンサルタントとして勤務。ビジネス戦略とイノベーションの分野で活躍。
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