【アメリカの製薬・バイオテクノロジーの展望】アメリカの製薬・バイオテクノロジー業界の最新トレンド

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アメリカの製薬・バイオテクノロジー業界では、がん治療の地域間格差解消や新薬開発、デジタルヘルスケアの推進に注力しています。大手製薬会社は新型コロナウイルス治療薬の開発・供給を進めるとともに、希少疾患や慢性疾患の治療法開発にも取り組んでいます。また、健康の公平性向上や社会貢献活等、医療アクセス全体の改善を目指しています。

今回は、そんなアメリカの製薬・バイオテクノロジー業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!

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アメリカの製薬・バイオテクノロジー業界 業界地図はこちら!
目次

2023-2024年 アメリカの製薬・バイオテクノロジー業界

Pfizer がん治療の格差を埋めるための3年間で1500万ドル

アメリカがん協会とファイザーが、がん治療の格差を埋めるためのプログラムを立ち上げた。このプログラムはファイザーから1500万ドルの資金提供を受けて設立された。

がん治療の実態は、都市部と農村部とで格差が大きい。例えば乳がんや前立腺がんは全米でみられるがんではあるが、特定の人種や民族に大きな影響を与えており、治療に対しての格差がみられる。また、農村地域住民は、医療施設が少ないこともあり、死亡率の上昇を招いている。

ファイザー最高腫瘍責任者兼執行副社長であるクリス・ボショフ氏は、「がん自体は差別しないし、また、がん治療も差別すべきではない」と述べた。プログラムを通じて、患者がどの地域に住んでいても、どのような民族であっても、同じ治療が受けられるように無料または低コストのスクリーニングやプログラムやサービスへのアクセスを加速させる。

アメリカがん協会は持続可能なソリューションを推進し、すべての患者に公平な結果を保証することを目指していると述べた。

出典:https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/breaking-barriers-cancer-care-american-cancer-society-and

Merck & Co 最も責任ある企業リストで第1位

米国とカナダ以外ではMSDとして知られるメルクは、ニューズウィーク誌のアメリカで最も責任のある企業ランキングでトップを獲得した。また、同誌の2024年コーポレート・ガバナンスにおいて100/100点を獲得した唯一の企業でもあった。

メルクの会長兼最高経営責任者ロバート・M・デイビス氏は、「私たちが、世界中の人々の安全で健康的な未来が実現できるように取り組んでいるということが認められたと思うとうれしく思います」と述べた。

ニューズウィーク誌は、2024 年のアメリカで最も責任のある企業のリストを作成するために、世界的な調査データ会社であるStatistaと提携し、米国最大の上場企業1200社を分析し、30の企業責任の主要業績評価指標にわたってそれぞれを評価した。

2023年初め、メルクはCNBCとJUSTCapitalのアメリカで最もJUSTな企業のリスト、およびバロン誌の最も持続可能な米国企業100社のリストでも、業界リーダーに選ばれている。

出典:https://www.merck.com/news/merck-ranks-no-1-on-newsweeks-list-of-americas-most-responsible-companies-2024/

Bristol Myers Squibbシニア無担保債券の価格を設定

ブリストル・マイヤーズスクイブは、優先無担保社債の公募の価格を元本総額130億ドルとした。ブリストル・マイヤーズスクイブは、慣例的な完了条件が満たされることを条件として、株式公開の完了が2024年2月22日に行われるよう期待しているという。

本債券は9回に分けて発行される。(i)2026年満期変動利付債元本総額5億ドル、(ii)2026年満期10億ドル、(iii) 2027年満期10億ドル。(iv)2029年満期17.5億ドル、(v) 2031年満期12.5億ドル、(vi)2034年満期25億ドル、(vii)2044年満期5億ドル、(viii)2054年満期27.5億ドル、(ix)2064年満期17.5億ドルである。

ブリストル・マイヤーズ スクイブは、株式公開による残りの純収益を一般的な企業目的に使用する予定としている。以前発表されているカルナの買収には、本件は関与しないとされている。

Citigroup Global Markets、BofA Securities、Wells FargoおよびMizuho Securities USAが、本募集の共同主幹事および共同ブックランニング・マネージャーを務めている。

出典:https://news.bms.com/news/corporate-financial/2024/Bristol-Myers-Squibb-Prices-13-Billion-of-Senior-Unsecured-Notes/default.aspx

Eli Lilly エンドツーエンドのデジタルヘルスケア エクスペリエンスを開始

イーライリリーアンドカンパニーが、患者向け​​の新しいデジタル ヘルスケアエクスペリエンス「LillyDirect」を発表した。LillyDirectは、独立した医療提供者へのアクセス、カスタマイズされたサポート、厳選された医薬品の直接宅配などの疾患管理リソースを提供する。その他、リリーサードパーティの薬局調剤サービスを通じて医薬品を提供する。

同社の会長兼CEOのデビッド・A・リックス氏は「LillyDirectは、人々がどこでどのように医療にアクセスできるかについて、より多くの選択肢を提供します。これには、便利な宅配オプションも含まれます。」と説明した。

同社副社長のフランク・カニングハム氏は「人々が日常のさまざまなニーズを満たすために、デジタル ソリューションの効率性と利便性に依存するようになっているのは承知しています。ヘルスケアもその 1 つです。」と述べた。

LillyDirectは、今後も拡張され進化し続けるという。

出典:https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-launches-end-end-digital-healthcare-experience-through

Moderna  第4四半期および2023年会計年度の財務結果を報告

モデルナが財務結果を報告し、2023年度第4 四半期および会計年度の事業最新情報を提供した。第4四半期の売上高は28億ドル、GAAP純利益は2億1700万ドル、GAAP希薄化後EPSは0.55 ドルとなった。

同社の通年の収益は68億ドル、GAAP純損失は47億ドル、GAAP希薄化後EPSは12.33ドルと報告。損失の主な原因は、サイズ変更と税金評価性引当金に関連する37億ドルの現金以外の費用だという。

2024年の製品売上高が約40億ドルと予想されることを再確認した。これは高齢者向け治験中のRSVワクチンの規制当局の承認が2024年前半に始まると予想しているためで、後期パイプラインからさらなる重要なマイルストーンが達成されると予想している。

モデルナの最高経営責任者ステファン・バンセル氏は「2023年はモデルナにとって流行病市場に適応する移行の年でした。同時に、当社の開発チームは感染症、腫瘍学、希少疾患にわたるパイプラインを大幅に進歩させ、商業チームは新型コロナウイルス感染症の市場シェアを拡大​​しました。」と語った。

出典:https://investors.modernatx.com/news/news-details/2024/Moderna-Reports-Fourth-Quarter-and-Fiscal-Year-2023-Financial-Results-and-Provides-Business-Updates/default.aspx

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2022-2023年 アメリカの製薬・バイオテクノロジー業界

Pfizer 新型コロナウイルス感染症経口抗ウイルス薬の緊急使用許可をFDAから取得

ファイザーは、アメリカ食品医薬品局(FDA)が軽度から中等度の新型コロナウイルス感染症 の治療にPAXLOVID錠剤の緊急使用を許可したと発表した。この新薬は、成人重症患者や体重40㎏以上で12歳以上の小児重症患者への緊急使用認可が下りている。

同社の科長兼最高経営責任者のアルバート・ブルラ氏は「投薬により入院と死亡を大幅に減らすことが証明されており、自宅でも受けられるため、新型コロナウイルス感染症の治療方法が変わり、医療システムと病院システムが直面している重大な圧力の一部を軽減するのに役立つことを期待している」と述べた。

PAXLOVID錠剤の緊急使用が認可されたため、ファイザーは米国で直ちに納入を開始できるよう準備を整えているという。すでに2021年11月にはPAXLOVID錠剤の1000人分を供給する米国政府との契約を発表しており、納入履行は2022年中に完了する予定だという。

出典:https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-receives-us-fda-emergency-use-authorization-novel

AbbVie  クローン病成人治療用リサンキズマブ対する肯定的な意見を確保

アッヴィが、アメリカだけでなく欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CMHP)でも、同社の新薬「リサンキズマブ」の承認を推奨する肯定的な意見が提出されたと発表した。

クローン病は、消化管内の炎症として現れ、持続的な下痢や腹痛を引き起こす慢性の全身性疾患。進行性の病気であり、かなりの割合の患者で時間の経過とともに悪化するか、手術を含む緊急の治療が必要な合併症を発症する可能性がある。クローン病の兆候や症状は予測できないため、この病気とともに生きる人々は、身体的だけでなく、精神的、経済的にも大きな負担を強いられる。

ベルギーのルーヴェン大学病院消化器科・肝臓科のマーク・フェランテ医学博士は「リサンキズマブは、中等度から重度の活動性クローン病を患い続ける成人患者にとって心強い選択肢となる可能性がある」と新薬の肯定的なとらわれ方を喜んだ。

出典:https://news.abbvie.com/2022-09-19-AbbVie-Secures-Positive-CHMP-Opinion-for-Risankizumab-SKYRIZI-R-for-the-Treatment-of-Adults-with-Moderate-to-Severe-Crohns-Disease

Merck & Co  Imago BioSciencesの買収に向けた公開買付けを開始

米国とカナダ以外ではMSDとして知られるメルクは、子会社を通じて、同社の発行済み普通株式のすべてを購入する現金公開買い付けを開始した。2022年11月21日、同社はImago BioSciencesを買収する最終契約を締結したと発表している。

公開買い付けが無事終了すると、Imagoの株主は有効に応募され、有効に応募が取り消されなかったImago普通株式1株につき、無利息で必要な源泉徴収の控除対象となる現金36ドルを受け取ることになる。公開買い付けによる株式の購入後、 Imagoはメルクと合併して完全子会社化する。ただし、合併後もImagoのブランドは存続させる。

メルクは、米国証券取引委員会(SEC)に公開買い付けの条件を定めたスケジュールTOに基づく公開買い付け報告書を提出する予定。さらに、Imagoは、同社の取締役会の勧告を含む、株主が公開買い付けを受け入れて株式を応募する、スケジュール14D-9に基づく勧誘/推奨声明をSECに提出する予定であるという。

出典:https://www.merck.com/news/merck-begins-tender-offer-to-acquire-imago-biosciences-inc/

Gilead Sciences  同社の治療薬が日本で承認

ギリアド社のカイト・ファーマ・インクと第一三共株式会社は、日本の厚生労働省が再発・難治性患者の初期治療としてキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるYescartaを承認したと共同発表した。

大細胞型B細胞リンパ腫(R/R LBCL)患者への治療は、これまで化学免疫療法で始まり、大量化学療法(HDT)が続き、最後に幹細胞移植(ASCT)で終わるプロセスであった。今回の治療法で診断されたLBCL患者の約60%は化学療法による初回治療に反応したが、40%は再発するか反応しなかったため、二次治療が必要となった。Yescarta は現在、日本でR/R LBCL 患者の初期治療薬として承認されている。

カイトCEOのクリスティ・ショウ氏は「日本は非ホジキンリンパ腫と診断される人の数が世界で2番目に多い国であるため、今回の承認は、この革新的な治療法をより多くの患者に早期に提供するための重要な一歩となる」と述べた。

出典:https://www.gilead.com/news-and-press/press-room/press-releases/2022/12/yescarta-now-approved-in-japan-for-initial-treatment-of-relapsedrefractory-large-b-cell-lymphoma

AstraZeneca 健康の公平性を推進する非営利団体に400万ドルを授与

アストラゼネカは、健康の公平性に関する第2回Accelerate Change Together (ACT・コミュニティソリューションチャレンジおよび国家戦略的コラボレーション)を通じて、52の非営利団体に400万ドルの資金拠出をした。

副社長兼アストラゼネカ財団理事長のクリスティ・ブルームクイスト氏は、「資源が不足している地域社会の健康公平性を推進するには、医療システム全体が協力する必要がある」と述べた。今回の資金提供は社会的・感情的・学術的なサポート、医療従事者の訓練、病気の教育、交通機関や食糧不安などの障壁と闘うサービス、STEMキャリアとリーダーシップスキルの訓練などに使われる。

アストラゼネカ財団は2023年にその戦略的焦点を進化させ、健康の公平性におけるアストラゼネカの長期的な野心を支援する新しい特徴的な助成金プログラムをすでに開発しているという。

出典:https://www.astrazeneca-us.com/media/press-releases/2022/astrazeneca-awards-4m-to-nonprofit-organizations-to-advance-health-equity1.html

まとめ:アメリカの医療機器業界

アメリカの製薬・バイオテクノロジー業界では、がん治療の地域間格差解消や新薬開発、デジタルヘルスケアの推進に注力しています。大手製薬会社は新型コロナウイルス治療薬の開発・供給を進めるとともに、希少疾患や慢性疾患の治療法開発にも取り組んでいます。また、健康の公平性向上や社会貢献活等、医療アクセス全体の改善を目指しています。

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