2023年、アメリカの人材サービス業界では、パンデミックの影響を受けた労働環境の変化が引き続き大きな課題となっています。リモートワークの普及やハイブリッド勤務体制の導入が進む一方で、給与や職場環境に対する労働者の意識も大きく変わりました。人材サービス各社は、これらのトレンドに対応するため、柔軟な雇用戦略と新しい労働環境の構築に取り組んでいます。
今回は、そんなアメリカの人材サービス事務所業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2023年 アメリカの人材サービス事務所(金融・法人サービス)業界
ロバートハーフ 2023 年に知っておくべき 5 つのトレンド〜人材サービス業界動向〜
世界的なパンデミックは、雇用主・従業員・求職者に大きな変化を引き起こした。人材サービス会社のロバートハーフ社は、今知っておくべき5つのリモートワークトレンドを明らかにしている。
「今後も続く」ということ。転職希望者の87%はハイブリッドまたは完全なリモートでの勤務を希望しているという。「柔軟性」ということ。リモートを利用する労働者の77%はコロナ前よりも労働時間が伸び、それにもかかわらず46%が仕事に対する満足度が高いとしている。
「給与よりも」ということ。リモートに移行したため給与が減ることになっても、平均18%は納得しているという。IT専門家の47%・18歳~25歳の42%は、給与削減を不満言うことなく受け入れているという。「対面のメリット」ということ。当然、実際に会ったことがある関係のほうがより良い関係になると理解はされている。「機会均等」ということ。リモートのために昇給が妨げられているとは、従業員も管理者も、思っていないという。
出典:https://press.roberthalf.com/2023-02-21-The-State-of-Remote-Work-5-Trends-to-Know-for-2023
コーンフェリー小売業界の給与、雇用、職場の動向を調査〜人材サービス業界動向〜
人材サービス会社のコーンフェリーが小売業界の実態を調査した。それによると、小売店舗従業員の初任給の中央値は2019年の時給10ドルから2023年には時給12ドルに昇給しているという。しかも小売業者の29%は最低時給は15ドル程度だろうと明言している。
小売業者の82%は、いまでも従業員の雇用に問題を抱えているという。また小売業者の81%はパンデミックの影響で導入したハイブリッド型の職場体制を今後も維持する予定という。24%の小売業者が、従業員の週2日程度の出社を期待しているという。しかし実際は、週3日程度出社すべきと考えている小売企業が39%に達している。
人材サービス会社コーンフェリーが実施した調査は、年間売り上げが5億米ドルから200億米ドルの大手小売業者100社以上を対象としたものである。調査は2023年3月下旬に実施された。
出典: https://www.kornferry.com/about-us/press/korn-ferry-survey-examines-pay-hiring-and-workplace-trends-in-retail
リンクトイン LGBTQ+ 労働力の現状〜人材サービス業界動向〜
ソーシャルメディア人材サービス会社の老舗であるLinkedInは、第一線で働くLGBTQ+の社員と雇用主が、どういう労働環境なのか、より生産的な労働力は、どのような環境で作られるのかを知るために、本格的な調査をした。これは2022年だけで240件近くの反LGBTQ法案が出されたことで、彼らに対しての暴力や差別が増加していることによる。
LGBTQ+社員の54%は職場は協力的だとしている。しかし、三人のうちの一人は、職場で孤独を感じるという。さらに24%は職場での昇給に影響を感じているという。また、23%は職場が安全な環境とは思えないと感じたことがあるという。LGBTQ+社員の59%は、企業サイドからLGBTQ+についての公式見解を受け取っていないという。また33%は企業が反LGBTQ信者から守ってくれるような公式声明を聞いていないという。
75%のLGBTQ+社員が職場は居心地の良いものであるべきと考えており、精神的なサポートがまだまだ足りていないということが分かった。
出典: https://news.linkedin.com/2022/june/the-state-of-lgbtq-workforce-2022
ケリーサービス John Deereの「パートナーレベルのサプライヤー」として認定〜人材サービス業界動向〜
アメリカ人材サービス会社のケリーサービスは、アメリカで最大手のトラクターメーカーであるJohn Deere社から、2022年パートナーレベルのサプライヤーとして認められた。パートナーレベルというものは、 John Deere社が取引相手に対して最高の評価に値する賞である。
人材サービス会社のケリーサービス社に対してJohn Deere社は、優れた能力を持つ人材の育成と提供されるサービスの質、継続的な改善への取り組みが高く評価され、この栄誉に選出されたという。
アメリカの人材サービス会社のケリーサービス社は、アメリカとカナダでJohn Deere社の事業に対するマネージド・サービスプロバイダーおよび採用プロセスアウトソーシングソリューションのサプライヤーである。 Achieving Excellence Programに参加するサプライヤーは、毎年評価される。継続的な改善を促進するサプライヤーの評価とフィードバックのプロセスを提供するために、 John Deere社は1991 年にこのプログラムを作成した。
出典: https://www.kellyservices.com/global/about-us/news-center/news-releases/ocg/2023/kellyocg-earns-recognition-as-a-john-deere-partner-level-supplier/
エクスプレス エンプロイメント プロフェッショナルズ 売上が 2022 年に急増〜人材サービス業界動向〜
アメリカの大手人材派遣会社のExpress Employment Professionals は、アメリカ・カナダ・南アフリカ・オーストラリア・ニュージーランドでの2022年の売上高を、前年度比8%増の44億6000万米ドルとし、2021年の記録破りの売上高を、さらに上回ったと発表した。
世界に拡大する同社の事務所は合計860ものフランチャイズ拠点となり、合計で57万9000人の従業員を雇用している。フランチャイズの拡大は、カナダのブリティッシュコロンビア州とオンタリオ州、アメリカのテキサス州とカリフォルニア州の拠点を含む、45の新しいフランチャイズ開発契約を締結したことが含まれている。
同社の最高経営責任者であるビル・ストーラー氏は「昨年、あらゆる分野で人材の需要が高まり、人材派遣に対する当社の地域密着型のアプローチがニーズをうまく満たし、何十万人もの質の高い求職者を経済に不可欠な評判の高い企業と結びつけることができた」と述べた。
出典: https://www.expresspros.com/Newsroom/Corporate-News/Express-Employment-Professionals-Sales-Skyrocket-in-2022—Highest-Grossing-Year-on-Record.aspx?&referrer=http://www.expresspros.com/Newsroom/Corporate-News-List.aspx?PageNumber=2
2021-2022年 アメリカの人材サービス(金融・法人サービス)業界
マンパワーグループ 米国の雇用主は雇用について楽観的な意向〜人材サービス業界動向〜
人材サービス会社のマンパワーグループは、6000社以上の企業を対象とした大規模な調査を行った。その結果、アメリカの雇用主は雇用状況に対しては楽観的に考えており、純雇用見通しが41%を報告、アメリカは世界で8番目に強い雇用状態であるとわかった。これは1962年の調査開始以来、最も楽観的な予想となっている。
IT/テクノロジー・電気通信・メディア系が+60%と好調な見通しとし、銀行・金融・保険・不動産も+50%としている。IT系の従業員の43%は、2,3日のオンサイト勤務形態のハイブリッド式で働くことを期待している。製造業系と生産業計は常に職場にいる可能性が46%と最も高く、逆にIT系と財務系はフルリモートになる可能性が21%と最も高いとしている。
マンパワーグループ社長のベッキー・フランキウィッツ氏は「雇用主が労働者を労働市場に復帰させ続けており、労働者の望むものと雇用主が必要としているものとの調和が続いているため、楽観的な報告書となっているのではないか」と述べている。
出典:https://www.manpowergroup.com/en/news-releases/news/new-year-hiring-boom–u-s–employers-report-optimistic-intentions-for-q1-2022-hiring
ロバートハーフ 10 人に 4 人が新しい仕事を探す予定〜人材サービス業界動向〜
人材サービスおよびビジネスコンサルティング会社のロバートハーフ社が2400人を対象とした調査で、41%が新しい仕事を探す予定であると回答している。転職希望理由の上位には、54%が給与の増額のため、38%が福利厚生の充実のため、34%が永続的なリモート勤務の可能性のためと回答している。
就職活動を始める可能性が高いのは、52%の専門職に就くZ世代や49%の勤続2年から4年の従業員、47%の技術職系の労働者としている。さらにこの調査では、職業技術を身に着けながらも新しい仕事を探している従業員のうち、その28%は、次の仕事が見つからなくても先に仕事を辞めてしまうだろうと答えている。
同社のシニアエグゼクティブディレクターであるポール・マクドナルド氏は「私の37年間の人材派遣のキャリアの中で、市場でこれほど多くの動きがあり、あらゆるレベルの労働者にこれほど多くの機会があるのを見たのは初めてだ」と語った。
出典: https://press.roberthalf.com/2021-12-15-4-IN-10-WORKERS-PLAN-TO-LOOK-FOR-A-NEW-JOB-IN-FIRST-HALF-OF-2022
リンクドイン 2021 年に最も急成長している仕事と、その仕事を獲得するために必要なスキル〜人材サービス業界動向〜
ソーシャルメディア人材サービス会社の老舗であるLinkedInが、過去1年間の同社のデータに基づき、急成長している上位5つの求人トレンドを分析した。その5つは「EC最前線の業務」「ローンの専門家」「医療アシスタント」「事業開発専門家」「職場の多様性の専門家」の5つ。
「 EC最前線の業務」には運送ドライバーや梱包者なども含まれ、求められているスキルは時間管理能力・顧客へのサービス精神・チームをまとめるリーダーシップがある。「ローンの専門家」は住宅関係のローンなどに関する業務であり、求められるスキルは信用分析能力やリスク管理能力である。 「医療アシスタント」は、薬局技術者や歯科助手、在宅医療補助者なども含む。求められるスキルは医師との良好な関係を作れる能力とデータ入力などの事務能力。
「事業開発専門家」はパンデミックから立ち上がるための戦略アドバイザーやセールススペシャリストを含む。スキルは販売プロセスなど。そして「職場の多様性の専門家」は、企業が人種差別や権力者の多様性の欠如に留意した結果である。求められるスキルはコミュニティ支援能力などである。
出典: https://news.linkedin.com/2021/january/jobs-on-the-rise-2021
ケリーサービス 新しい RPO ソリューション Kelly Aceを発表〜人材サービス業界動向〜
アメリカ人材サービス会社のケリーサービスが、新しいRPOソリューションであるKellyAceを発表した。KellyAceは採用及び応募に関するチャットボットであり、雇用主が優秀な人材に迅速につながるためのツールである。
KellyAceは、企業の応募者追跡システムと連携し、ロボットオートメーションを使用して、手動での入力を最小限に抑え、応募プロセスに関する洞察を雇用主に提供するシステムになっている。応募者には適切なリアルタイムフィードバックが提供され、採用サイクルは短縮され、企業のブランド力に対してもプラスに働くことになる。
ケリーサービス社のタミー・ブラウニング社長は、「応募者は応募プロセスに多大な時間を費やしている。KellyAceは主要な部分をデジタル化するため、雇用主は適格な人材が『ブラックホール』に埋もれることなく、プロセスを迅速に進めていることを確信でき、組織が必要な人材に迅速かつ確実にアクセスできるようになる」と述べた。
出典 :https://www.kellyservices.com/global/about-us/news-center/news-releases/kelly/2022/kelly-helps-companies-rescue-candidates-from-the-job-application-black-hole-with-new-rpo-solution-kelly-ace/
エクスプレス エンプロイメント プロフェッショナルズ 全国雇用週間を開催〜人材サービス業界動向〜
アメリカの大手人材派遣会社のExpress Employment Professionals は、一斉面接イベントである「全国雇用週間」を開催する。以前は「National Interview Day」と呼ばれていたこのイベントは、人材派遣会社によって2018年にスタートし、歴史的に逼迫した労働市場で求職者を採用および教育する新しい方法として評価された。
求職者には面接の準備のための無料特典として、National Hiring Week Web サイトに ExpressのJob Journeyブログへのリンクがあり、キャリアのあらゆるステップに関する記事やアドバイスが提供されている。これには、面接のヒント、履歴書の批評、給与交渉も含まれている。
同社のビル・ストーラー最高経営責任者は「弊社は北米全土で3万9000人以上の求人を抱えている。2020年の景気後退からの景気回復が加速する中、企業は成長を維持するために労働者を必要としている。仕事に戻る機会はあり、当社の採用担当者はさまざまなポジションを用意している。」と述べた。
出典:https://www.expresspros.com/Newsroom/Corporate-News/Express-Hosts-National-Hiring-Week-Aug–2-6-Amidst-Hiring-Crunch.aspx?&referrer=http://www.expresspros.com/Newsroom/Corporate-News-List.aspx?PageNumber=7
まとめ:アメリカの人材サービス業界
2023年のアメリカ人材サービス業界では、リモートワークが引き続き主流であり、求職者の多くがハイブリッドまたは完全なリモート勤務を希望しています。企業は、従業員のニーズに対応しつつ、労働市場の変化に柔軟に対応する必要があります。また、給与以外の要素や職場環境の改善が重視され、LGBTQ+の労働者に対する職場環境の向上も求められています。全体として、雇用主は楽観的であり、労働力の多様化と新たな雇用形態への対応が求められています。
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。