中国の海運業界は、国内だけでなく、海外にも事業を拡大し続けています。2022年6月には、中国運輸大手のSinotransが東南アジアへの水上輸送チャネルを構築しました。また、中国運輸大手のCOSCOはアメリカのバージニア港にデジタルプラットフォームを構築するなど、存在感を強めています。
今回は、そんな中国の海運業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 中国の海運(運輸・物流)業界
深圳塩田港グループとファーウェイが提携〜海運業界動向〜
2022年7月4日、深圳塩田港グループとファーウェイが「戦略的協力協定」に調印した。両社はデジタルトランスフォーメーションの分野で協力し、顕著な成果を上げている。この戦略的協力協定の調印は、港のデジタル変換の分野における両当事者間の協力のさらなるアップグレードを示している。
ファーウェイは、技術革新を通じて顧客にデジタル変換ソリューションと製品を提供し、港の生産と運営がインテリジェントでデジタルな低炭素開発を実現するのを支援する。
塩田港集団とファーウェイは協力して人材や技術などの優れたリソースを集め、塩田港集団のデジタル変革を促進していく。
出典:https://www.huawei.com/cn/news/2022/7/yantian-smart-port
Sinotrans、東南アジアへの水上輸送チャネルを構築〜海運業界動向〜
2022年6月20日の発表によると中国運輸物流大手のSinotransは、江門、佛山、中山を経由し、南沙港の第3期ターミナルからベトナムとタイへ貨物を輸送する「南中国-東南アジア」水上輸送チャネルを開通した。
新型コロナウイルスの影響で輸出入企業が問題に直面している中、アジア太平洋地域のRCEP協定発効を機に、珠江デルタと東南アジア間のサプライチェーンを再構築した。
「南中国-東南アジア」水路開通は、国内外の物流循環促進や複数事業セグメントの相乗効果発揮を目指すSinotransの新たな成果を反映している。同水路の「エンドツーエンド」製品サービス構築により、顧客により便利で効率的で安定したサプライチェーン物流サービスが提供される。
出典:http://www.sinotrans.com/art/2022/6/20/art_2391_35326.html
COSCO、デジタルプラットフォーム構築〜海運業界動向〜
中国の国際運送大手COSCOSHIPPINGは、アメリカのバージニア港にデジタルプラットフォームを構築することで合意した。これにより、バージニア港はアメリカで最も先進的なデジタル港湾の1つになることが期待される。
このプラットフォームは、コンテナターミナルの運営効率を向上させるために、自動化技術やAI、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、インターネットなどの最新技術を活用する。さらに、スマート港湾構築のために、データ共有とサプライチェーンの相互接続性を促進し、港湾の運営効率を向上させることが目指されている。
このプロジェクトは、COSCOSHIPPINGが中国国内で行っているスマート港湾建設プロジェクトの成功を受けて、アメリカ市場に展開されることになった。バージニア港にデジタルプラットフォームが導入されることで、両国間の物流や貿易の効率がさらに向上することが期待されている。
出典:https://development.coscoshipping.com/art/2023/2/10/art_1555_310003.html
日本郵船中国、LNG船6隻の長期定期契約を締結〜海運業界動向〜
2022年5月2日の発表によると、日本郵船は子会社を通じ、CNOOC Gasand Power Singapore Trading&Marketing Pte.Ltd.と液化天然ガス(LNG)運搬船6隻の長期定期傭船契約を締結した。
また、同社は滬東中華造船と造船契約も結んでおり、2026年から2027年に竣工し、主に中国向けLNG輸送に従事予定である。
新船は、次世代二元燃料機関「X-DF2.1iCER」や最新型再液化装置を搭載し、効率的で経済的な運航を実現している。カーゴタンクは容量174,000㎥のメンブレン型で、防熱性能に優れたタンク方式を採用している。
出典:https://www.nyk.com/news/2022/20220502_01.html
CIMCE nric、「珠江のガス化」を推進〜海運業界動向〜
CIMC Enricは、液化天然ガス(LNG)および圧縮天然ガス(CNG)の運搬や保存に使用されるタンクコンテナや車両、ガス処理設備などの幅広い製品を扱っている。
2023年1月13日の発表によると、同社は子会社CIMC Bluewater Technology Development (Guangdong)を設立し、珠海港グループ子会社の珠海港海運へ29隻のLNG改造船を納入予定である。
これは中国国内最大の石油からガスへの変換船納で、広東省の「ガス化珠江」プロジェクトの重要な成果となる。CIMC Enricが設計した電源システムと関連設備は、ほぼ無公害を実現する中国国内トップレベルの技術である。省エネと排出削減目標を両立し、船舶の経済性を高める効果がある。
出典:http://www.cimc.com/index.php?m=content&c=index&a=show&catid=17&id=3062
2021年 中国の海運(運輸・物流)業界
中国のGSBN協定により海運のデジタル化を推進〜海運業界動向〜
2021年3月24日の発表によると、China Ocean Shipping Holdings傘下の中遠海運國際貨運有限公司は、輸送管理ソフトウェアソリューションサプライヤーであるCargoSmartと、グローバル輸送ビジネスネットワーク(GSBN)サービス協定を締結し、海運のデジタル化を推進している。
GSBNブロックチェーンアライアンスは、顧客とサプライチェーン全体に大きな価値をもたらす機会を提供する。
GSBNの設立後は、信頼できるデータを活用して貨物輸送の透明性や可視性を高めるとともに、データ管理のフレームワークをベースに、ユーザー事例やデータアクセスAPI、アプリケーションのロードマップの構築をリードしていく。
出典: https://world.lines.coscoshipping.com/COSFRE/cn/news/companynews/3/1
中国の船舶管理デジタルプラットフォームIMPの運用〜海運業界動向〜
2021年7月15日の発表によると、China Merchants Groupに所属している招商局能源运輸股份有限公司は、船舶管理デジタルプラットフォームIMPの運用を開始した。
招商船IMPクラウドプラットフォームは、現在の市場では珍しい全クラウド化で構築された多機能な船管システムである。全システムのトップダウン計画、分割建設、船舶管理の主要な活動において、オンライン化とデジタル化を秩序正しく推進していく。
商汽船IMPクラウドプラットフォームはすでに第一期の建設を完成しており、香港の明華大型散貨物船団と岸基会社で運用されている。
出典:https://www.cmenergyshipping.com/post.php?p=1163&c=cmes
中国の中聯航運、揚子江船業とコンテナ船の建造契約締結〜海運業界動向〜
2005年に設立され、台湾海峡と東南アジアの両側での直送サービスを専門としている中聯航運は、揚子江船業とコンテナ船の建造契約を締結した。
新しい船はデジタル化された知能船舶管理システムをプリインストールし、データ収集システムを通じて全船の航行情報、運行情報、冷凍庫監視情報を収集することで遠隔リアルタイム監視を実現している。
デジタル化手段を積極的に用いることで、船舶の運行安全、環境保護、効率化を促進する。
出典:http://www.culines.com/site/details/326
中国の中谷海運、環世物流らと戦略的協力協定を締結〜海運業界動向〜
2021年5月12日の発表によると、主に中国本土の海運事業に従事している中谷海運は、三一海洋重工、環世物流と戦略的協力協定を締結した。
環世物流との協定では、環世物流の物流サプライチェーン統合面での優位性を十分に発揮することで、物流分野でのより広い発展のきっかけを作ることを目的としている。
国内の重量級企業2社と戦略的協力協定を締結したのは、国内外のコンテナ輸送市場の良好な発展傾向に基づき、戦略的な計画と優位性を補完するためである。
出典:http://www.zhonggushipping.com/News/News_content?id=5109468a-f268-4c2b-a5cd-669a197e6bad
中国の太倉港集装箱海运有限公司の2021年の目標〜海運業界動向〜
主に東アジア、東南アジアの航路で定期船輸送およびコンテナリースを行っている太倉港集装箱海运有限公司は、2020年度の業務報告及び2021年の取り組みについて発表した。
コロナ渦であった2020年は、厳しい局面においても目標不変のまま本業にフォーカスし、乗り切ることができた。
2021年は「一区三港」と全省、長江デルタ及び長江経済ベルト港へのサービスを目標としている。自社での建設を強化し、地方の発展能力を確実に向上させること、コスト管理を徹底することなどを目標に掲げた。
出典:http://www.tclcline.com.cn/news/464.html
2020年 中国の海運(運輸・物流)業界
中国の福建海運集団、ハイエンド観光船へ投資〜海運業界動向〜
2019年12月22日の発表によると、福建海運集団は、ハイエンド観光船の「閩江之星」を建造するための投資契約の式典を福建省の福州台江客運埠頭で行った。発注先の建造業者は、無錫東方高速艇発展有限公司であり、発注投資額は、2600万人民元となる。また、2020年の下半期に福建海運集団への引き渡しが予定されている。
「閩江之星」は、212の乗客キャパシティを持ち、船の全長は40メートル、幅10メートル、最大吃水1.5メートル、最大航行速度9〜10ノットのスペックとなる。このスペックは、閩江航行に最適化されたものであり、船室内では、巨大な窓ガラスとジャスミンの花をモチーフにしたデザインも採用されている。
「閩江之星」は、主に閩江両岸の風光明媚な景色を遊覧するために用いられ、団体遊覧、サミット、飲食、娯楽など様々な機能を併せ持つことになる。近年、急増する旅行需要に応えて、福建海運集団は、福建省に根を張る国有系の企業として、閩江周辺の観光資源の開発に力を入れている。
出典:http://www.fjcts.cn/contents/view.php?aid=11455
中国の山東海運、ノルウェー船級社と戦略提携〜海運業界動向〜
2019年9月19日、山東省系の国有海運企業である山東海運は、山東省青島において、海運能源とともに、ノルウェー船級社と戦略提携を行うことを発表した。三社の協議によれば、ISO認証、企業のリスク管理、リスクの識別とその評価、第三者認証などの分野で協力することを確認した。また、今後は、新船舶の建造、船舶の運行管理、海洋エンジニアリング、海洋資源開発、海洋再生エネルギー、漁業などの領域での協業を模索するとしている。
ノルウェー船級社は、リスク管理とリスク認証に関するソリューションプロバイダーとして、世界におけるリーディングカンパニーである。船舶サービス、リスク認証サービス、技術サービスなどの業務を手がけている。
山東海運は、山東省人民政府の批准によって設立された国有企業である。主に鉱物、エネルギー資源、食糧、化学品、雑貨の物流を手掛けている。また、鉱砂や液化石油の海運に関して、最大規模の船舶と輸送キャパシティを誇る。
出典:https://www.sdshipping.cn/document/1263.html
中国の東方海外、2019年第3四半期の業績を公表〜海運業界動向〜
海運大手の東方海外貨櫃航運(OrientOverseas)は、2019年第3四半期の業績を公表した。第3四半期において、コンテナ貨物の総積載量は、前年同期比4.1%増の1781千箱、総収益は、5.8%増の1646229千米ドルであった。また、積載キャパシティは、前年同期比4.7%の増加、積載率は、0.4%の減少となった。
積載量の内訳別では、アジア/欧州ラインが前年同期比11.4%増の高成長を見せ、次いで、大西洋ラインの5.8%増、太平洋ラインの3.5%増、アジア内/オーストラリアラインの1.2%となり、全ての海運ラインで取扱貨物量の成長がみられた。収益成長への寄与という観点からみると、12%増の大西洋ライン、次いで、7.1%増の太平洋ラインが最も貢献した。
東方海外貨櫃航運は、香港に拠点をおく東宝海外(國際)の100%子会社。東方海外(国際)は、2017年に中国国有海運大手のCOSCOから買収されている。
出典:https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2019/1025/ltn20191025050_c.pdf
中国の錦程物流、15年連続で中国国際貨物物流で第1位〜海運業界動向〜
2019年9月11日の発表によると、2019年の中国国際貨物物流トップ100企業評定において、錦程国際物流グループは15年連続で第一位となった。
錦程国際物流グループは常に「革新し、常に他の人の前を歩く」という企業精神を持って、電子商取引と集中購買のビジネスモデルを打ち出した。同社はインターネット革新サービスプラットフォームを構築し、業界内最大規模の24時間コールセンターを構える。
技術革新と情報技術、電子商取引に対する投入により、同社はオンラインとオフラインを結合する新たなビジネスモデルを構築した。これにより、最大限に取引先の物流輸送コストを削減し、貨物の流通効率を向上できた。
出典:http://www.jctrans.cn/news/company/87394.html
中国の遠洋海運、国家電投と提携!目的は?〜海運業界動向〜
2019年12月9日、中国遠洋海運と国家電投は、北京で戦略協力枠組み協議を締結した。中国遠洋海運グループの董事長、国家電投董事長などが調印式に出席した。
国家電投は中国唯一の水力発電、火力発電、新エネルギー資産を持つ総合エネルギー企業集団であり、世界最大の太陽光発電企業である。中国遠洋海運は世界最大の総合海運物流グループであり、世界トップの総合物流サプライチェーンの構築に力を尽くしている。
双方は戦略的パートナーシップを構築し、市場と資源、航運物流、インフラ整備と投資、装備製造、科学技術革新応用、産業金融投資などの面で全面的な協力を展開し、それぞれの主要業務の優位性を活かしていく予定。共同効果を強化し、双方の高品質発展の促進を図る。
出典:http://www.coscoshipping.com/art/2019/12/9/art_6864_126218.html
まとめ:中国の海運業界
中国のコンテナ取扱量は年々増加していますが、国内貿易海運市場は上位3社で市場の8割を占めるなど 寡占市場状態にあります。海運業界においては、これらの会社との提携などが現実的な方法ではないでしょうか。
上海在住で杭州出身の中国人。一橋大学の経済学修士課程修了。日本企業でマーケットインサイト部門で就労後、中国のIT会社でユーザー研究・マーケットリサーチに携わる。コンサル業界・証券業界の友人が多いため、リサーチ関連で助けとなっている。