タイでは、近年の急激な少子高齢化の影響で、介護業界の需要が高まり続けています。それに対応するように、高齢者施設や高齢者サービスの新設が相次いで行われています。例えば2023年3月には、タイ大手病院グループBDMSが、大規模高齢者用施設の建設プロジェクトを発表しました。
今回は、そんなタイの介護業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 タイの介護(医療・介護)業界
病院大手BDMS、高齢者用施設の建設プロジェクトを発表〜介護業界動向〜
2023年3月10日、タイの病院グループ大手バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシーズ(BDMS)は、ウェルネス・ヘルスケア事業の拡充のため、高齢者用施設「BDMSシルバー・ウェルネス・アンド・レジデンス」の建設プロジェクトを発表した。
同プロジェクトは、バンコク中心部のルンピニ公園の北に13ライ(2万平方メートル)以上の土地を取得し、ホテルやクリニックが入るウェルネス・タワーと居住用のレジデンス・タワーの2棟を建設し、土地取得、施設建設合わせて235億バーツの投資を行う予定だ。開業は2029年を予定している。
利用者のターゲットとしては高齢者の他にも国内外の富裕層、デジタルノマドなども含まれている。
出典:https://bdms.listedcompany.com/misc/PRESN/20220526-bdms-sw-rp.pdf
病院大手サミティベート、建設メジャーと在宅医療で提携〜介護業界動向〜
2022年11月29日、タイの病院大手サミティベートは、建設大手メジャー・ディベロップメントとバンコク東部の住宅地MaltonGatesにおける在宅医療サービスで提携することを発表した。
今回の提携により、同住宅地の住人はサミティベート病院の医師とのビデオ通話による相談、24時間体制での家庭用医療機器の提供といったサービスを受けることが可能となる。また、これらのサービスは専用のアプリケーション上で管理され、健康データがリアルタイムで記録される。
さらに、居住者は無料の救急車サービス、処方箋や健康診断などの割引、ワクチンサービスも受けることができる。
出典:https://www.samitivejhospitals.com/about-us/news/detail/Samitivej-X-Malton-Gate
国民健康保険局、障がい者の自立を支援〜介護業界動向〜
2022年9月7日の発表によると、タイの国民健康保険局(NHSO)は、タイ自立生活評議会(TCIL)や障がい者団体とともに、タイの障がい者の自立とヘルスケアサービスおよび社会福祉へのアクセスを強化するための会議を開催した。
TCILは障がい者が自立した生活を送るための研修を提供しており、修了した受講者には証明書を発行している。この研修の背景には、日本での障がい者に対するサポート体制を参考にしている。具体的には、公共交通機関や職場において障がい者に配慮した仕組みや、障がい者の自立した生活などが挙げられる。
NHSOは、TCILに金銭的な支援を行うとともに障がい者自立支援センターの運営を支援する。
出典:https://eng.nhso.go.th/view/1/DescriptionNews/NHSO-supports-disabled-people-to-live-independently-/467/EN-US
公衆衛生省事務次官情報局、東北部に高齢者用病院を開設〜介護業界動向〜
2023年3月23日、タイ公衆衛生省事務次官情報局は、東北部ムクダーハーン県において高齢者用病院であるNong Sung病院を開設したと発表した。
同病院は、同県の約4千人の高齢者人口の多くにみられる事前スクリーニングでの口腔健康リスク、聴覚障害や身体障害リスクを持った住民へのワンストップサービスを提供する。
また、特別病棟も併設していて、同病棟では公衆衛生省が1千万バーツで寄付した16の患者用ベッドを備え、寺院からの100万バーツの寄付も2019年に完成した。コロナ禍では、新型コロナ患者用に利用されていたが、2023年2月より主に高血圧の患者向けに外来の受け入れを開始している。
出典:https://pr.moph.go.th/?url=pr/detail/2/04/188500/
国立チェンマイ大学、高齢者介護に関する講義を開講〜介護業界動向〜
2023年3月13日の発表によると、国立チェンマイ大学の看護学部は、高齢者介護に関する285時間の講義を開講した。これは、チェンマイ地区非公式教育センターや公平教育基金(EEF: Equitable Education Fund)、チェンマイ・ソーシャルワーク・スクールの支援を受けている。
今回開講された講義は、若者や非公式労働者への教育機会の拡充と専門職能の向上のため、新たな学習モデルを開発することを目的としている。
チェンマイ大学看護学部は通常の4年制の学部、修士過程、博士過程に加え、このようなパートタイムの学生に向けた講義も行っている。
出典:https://www.nurse.cmu.ac.th/web/en/Readmore.aspx?type=3&id=33197
2020年 タイの介護(医療・介護)業界
タイの高齢化社会へ対応、Rajaphiphat病院〜介護業界動向〜
2019年2月1日の発表によると、Rajaphiphat病院ではタイ国内の高齢化社会への対応として「高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト(S-TOP)」の研究と普及に取り組んでいる。
日本の独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力しタイ国内の地域での医療・リハビリテーション・生活支援といった切れ目のないサービス提供を目指し、チェンマイ、バンコク、プーケットなど8ヵ所の試行地域でスタートしている。
最終目標として高齢者が病院から在宅生活にスムーズに移行できるようなモデルを構築し、やがてはタイ全土まで広げ、ひいては周辺諸国への展開を目指す。
タイ保健省、高齢者ケアの国際協力関係を推進〜介護業界動向〜
2019年11月15日、タイの保健省はHospital Management Programme in Thailandを開催し、都市部向けのシームレスな高齢者介護システムのガイドラインの開発をシンガポールと共に行うと発表した。
シンガポールとタイの専門家チームを発足させ、バンコクの医療サービス局および機関の医療・公衆衛生担当者会議への参加を行う。特に今後高齢化社会の中心となる都市部でのケアに焦点を当てた、両国に適用できるガイドラインの開発を行う。
特に都市部での高齢者ケアを進めるために人材の育成が重要なテーマとなる。トレーニング活動の調整や医療と公衆衛生、栄養管理に関する専門家のための共通カリキュラムの作成を目ざす。
タイでリハビリ事業開始、STAR PARTNERS〜介護業界動向〜
介護経営コンサルティング事業を展開するSTAR PARTNERSは現地法人Japan Care and Medical co.,Ltdを設立し、2019年1月に「脳梗塞・認知症リハビリテーションBANGKOK」をバンコクにて開業。
「脳梗塞・認知症リハビリテーションBANGKOK」は、脳梗塞発症後に残ってしまった麻痺のリハビリや、科学的根拠に基づいた非薬物的な認知症への改善アプローチを、日本での実証に基づいて提供する施設。
高齢者人口が約950万人のタイでは脳卒中・認知症が高齢者の中で増加している。タイでは回復期・慢性期入院医療がなく、すでに一部の高所得者層は自費によるリハビリテーションを利用している。
介護の訓練でキャリア形成へ、タイで介護業界大手のBuddy HomeCare
Thai Health Promotion Foundationは、社会的、環境的、および財政的な目標を掲げ、恵まれない人々への訓練と社会的企業活動に参加する機会創出を行っており、 2019年11月24日、活動の一環として介護者の訓練を行うと発表した。
プロジェクトはBuddy HomeCareと名付けられ、恵まれない立場の人が介護の訓練を受け、介護の必要のある地域の高齢者のもとへ派遣される地域密着型のケアメカニズムを構築する。
Buddy HomeCareはタイ北部チェンマイで開始されるが、チェンマイには人口の18%に当たる316,847人の高齢者がおり、恵まれない人々ののキャリア形成と収入を生み出し、高齢者ケアのための社会的企業モデルとなることを目指している。
2019年 タイの介護(医療・介護)業界
タイで高齢者デイケア施設の開設〜介護業界動向〜
Institute of Geriatric Medicine高齢者医学研究所によると、タイは2025年までの8年間で全人口比20%の高齢者を抱えることが予想されている。タイでは迫り来る高齢化社会に対応するため、日本をモデルとした政府、民間サービスの準備開始し、高齢者を完全にサポートする。
その一環として高齢者のためのデイサービスを開設し、家族が働く間、昼間の高齢者をケアする場所として機能させる。一人暮らしの高齢者の世話も行い、事故の危険性や高齢者のうつ病を減らす狙い。
高齢化社会へのタイ政府の対応〜介護業界動向〜
タイの高齢化社会現象への危機は他の国より大きいとされているが、タイのプラユット首相をはじめ、財務省、労働省、社会開発省などの関係省庁が今後の方針を話し合った。
高齢化社会の進行は予想よりもはるかに早く進んでおり、現在の出生率(1%以下)のままでは今後10年で60歳以上の人口比は30%を超えると予想されている。更にタイには1000万人以上に及ぶ貧困層がいるとされ(全人口は6600万人)、高齢者のケアが行き届かないのではとの懸念されている。
今後、政府レベルで高齢者へのサービス、家族支援、シルバー雇用の促進、災害時高齢者援助などを検討している。税金の状況に関して、タイには1030万人の所得報告者しかおらず実質納税者は400万人となっている。限られた税金の使用法を政府レベルで検討する。
要介護高齢者に関する医療とは?タイ国家保険事務局が設立〜介護業界動向〜
国家保健事務局(สปสช.)は高齢者介護医療のための医療サービスネットワーク 「60 Crescent Health Care Center」を2018年に設立する。
まずは首都バンコクにて創業し、順次地方にも展開する予定である。
国家保健事務局は特に高齢者の健康増進と疾病予防を目的とした事業のため4億バーツの予算配分を申請、承認された。
タイの公的介護教育機関〜介護業界動向〜
2018年1月2日の発表によると、北部の高齢者ケアセンターが介護の問題に直面していることを明らかにした。この点に関して介護従事者の実数が少ないことと、介護従事者のサービスの質という二重の問題があると指摘している。
タイでは教育省のもとにある職業教育機関で介護に関する教育を受けることができる。18歳以上が420時間以上のカリキュラムを受けることで卒業できる。
タイの気候的優位などを考えて多くの高齢者が外国より移住し過ごしているが、このような状況も見てタイの北部ピサヌロークでは介護学習に日本語教育、英語教育の組み合わせを始めた。
2018年 タイの介護(医療・介護)業界
タイのRama9病院、最高企業賞を受賞〜介護業界動向〜
2018年11月23日の発表によると、Rama9病院ことPraram 9 Hospitalはタイランド・ビジネス・プラスマガジンとタイ商工会議所大学が主催する〈最高企業賞 2018〉において健康サービス業界における優良企業として大賞を受賞した。
デジタル化する社会の変化に対応するために健康サービス業として有用な企業戦略を打ち立てている点、高齢化社会に対応した高齢者への医療サービスが充実している点などが評価された。
2018年10月にはタイ証券取引所(SET)に新しく2,000万株を上場し病院施設の増改築、最新医療機器の導入を行い、特に高齢者のためのサービス等の建設と外国人のヘルスケア・医療ツーリズム旅行者を対象としたサービスを展開する。
タイ健康振興財団による高齢者の福祉政策支援〜介護業界動向〜
タイ健康振興財団(Thai Health Promotion Foundation)広報部は2001年に健康促進財団法を根拠にして設立された
2018年4月19日の発表によると、2018-2021年の期間に計画されている高齢者ケア計画の第2期の詳細を作成し、保健省公衆衛生局が2018-2021年に計画する〈国民健康計画〉と、労働省の計画する2018-2021年の〈高齢者のための雇用計画〉の調整を行う。
タイでは介護保険は取り決められていないが、高齢者の中でも低所得者を始めとする、多くの援助を必要とする人のための補助金の計画などを進め、タイを福祉国家として成長させることを目標としている。
タイ政府、高齢者社会における介護政策を刷新〜介護業界動向〜
現在タイには60歳以上の高齢者が全人口約7,000万人に対して1,100万を占めるとされ、2021年には高齢化社会に突入し、2031年には高齢者の割合は全人口の28%を占めると試算されている。
タイ老人研究開発協会(PSU)によるとタイの高齢者の約3分の1は貧困状態にあるとされ、タイの国民年金は600バーツ/月(約2,000円/月)と不十分な状態が続いている。
タイの貧困家庭(年収10万バーツ以下)を対象とした調査の結果、高齢者の200万人が貧困者に該当する結果となり、政府は2018年より高齢者年金の他に1,200~1,500バーツ/月(4,000~6,000円/月)の支援金の給付を開始することを決定した。
日本式介護施設リエイがタイ・バンコクへ進出〜介護業界動向〜
日本式のきめ細やかなサービスを武器に日本国内外で介護施設の経営を展開する株式会社リエイは、タイ支社が運営する介護施設『Riei Nursing Home Ladprao』(バンコク)を設置した。
アジア経済情報誌「The Daily NNA(タイ版)」をはじめ、日系でいち早くタイへ進出したリエイの介護事業(2003年7月~)が取り上げられ注目を浴びている。
『高齢化進むタイ 注目される“日本式介護”』としてタイ社会でも支持を集める。経済格差の大きいタイでは特に富裕層から中間所得層をターゲットにした清潔で心地よい高齢者サービスが人気で、競合プレーヤーの参入も増加している。
タイにおける介護業界は発展を続ける分野でありながらも、介護サービスを担う働き手の不足が深刻となっています。今後はこのようなトレンドに注目することでビジネスチャンスにつながるのではないでしょうか?
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。