世界的な食糧供給危機が問題となっている現在、加工食品業界では植物由来の肉の需要が拡大しています。今後はさらなる代替肉が普及していくと言われており、シンガポールでも植物由来の食品づくりが取り組まれています。
今回は、そんなシンガポールの食品業界に焦点を当てて、最新の業界情報をお届けします。
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2022年 シンガポールの加工食品(飲食・食品メーカー)業界
QAF Ltd、2022年製パン事業回復の兆し〜加工食品業界動向〜
シンガポール、フィリピン、オーストラリア、マレーシアなどで製パン事業を行っているQAF Ltd.が2023年3月29日に2022 Annual Reportを公表した。
2022年の売上高は578百万SGDで前年比103%であった。シンガポールの製パン事業については、世界的な原材料費、流通費、光熱費の高騰や労働力不足などの経営課題にもかかわらず、引き続き前年比で売上高の増加を達成し、現地の包装パン業界での市場シェアを拡大した。
また、海外旅行制限の解除と、家庭外での食事や旅行のリベンジに対する鬱積した需要により、シンガポールの食品・飲料(F&B)、航空旅行、観光部門は力強い回復を見せており、白パンや全粒粉パンなどのより手頃な価格の基本的なパンに力を入れているとのこと。
出典:https://www.qaf.com.sg/wp-content/uploads/2023/03/QAF-AR-W-CR-20230329.pdf
Bread Talk、e-storeの普及に注力〜加工食品業界動向〜
シンガポールで著名なパンのチェーン店Break Talkは2023年5月26日Facebookのカバー写真を24時間年中無休のe-storeがオープンしたことをアナウンスする写真に入れ替えた。
e-storeでは、Value Bandle(パンのセット)、ケーキ(ChilledCake、Chiffon Cake、Pound Cake、Sponge Cakeなど)、特注ケーキ、トースト(食パン)、その他(クッキー、ジャム、豆沙餅(TauSar Piah)、やT-シャツなど)が取り扱われている。
e-storeを使って注文すると、配送料は一律10ドル。午後8時までの注文だと翌日配送 (午前10時–午後7時の間)される。なお、端午節の期間、Thye Moh Chan とのコラボレーションによる伝統的な潮州バクチャンもe-storeでも提供される。
出典:https://www.facebook.com/breadtalksingapore/posts/1322116265045865:1322116265045865
Shiok Meats、東洋製罐グループと業務提携〜加工食品業界動向〜
2018年に設立されたシンガポールと東南アジアで初めての、肉とシーフードの栽培企業で細胞養殖および細胞ベースの肉会社Shiok MeatsPte.Ltd.が2023年3月6日、Shiok Meatsと東洋製罐グループが養殖貝類の米国市場への導入を目指し、テキサス州オースティンで開催されるSXSW2023に出展したことを明らかにした。
細胞培養技術を活用した次世代貝類の生産・供給を目指すShiok Meatsと水産物の安定供給を目的とした缶詰メーカーとして創業100年を誇る東洋製罐グループが2020年9月に業務提携を開始した。
現在、Shiok Meatsは東洋製罐グループの支援を受け、2024年にシンガポールでエビ製品の商業販売を開始するためのパイロット工場の規模拡大と建設を行っている。
出典:https://shiokmeats.com/wp-content/uploads/2023/03/EN-%E3%80%90PR%E3%80%91-Toyo-Seikan-Group-Shiok-Meats-co-exhibit-%E3%80%8CSXSW2023%E3%80%8D.pdf
NextGen Foods、植物由来肉が食糧危機を救う〜加工食品業界動向〜
植物ベースの肉製品を提供するStart-up企業のNextGen FoodsはFood& Beverage Asia 2022年8月/9月号のインタビューで「世界的な食糧供給危機との戦い」と題して、代替プロテインなどの新技術の台頭がこの困難な時代への答えとなることについて語った。
今後、植物由来の肉の需要が拡大し続け、代替肉セクターの成長が加速すると予想されている。BCGとBlue Horizon Corporationによると、代替タンパク質の世界市場は、現在の年間1,300万トンから2035年までに9,700万トンに成長すると予想されている。
また、Kerry調査報告書ではアジア太平洋地域の消費者の62%が代替肉の購入に関心があり、44%が代替肉をもっと食べるつもりであることも明らかになったとのこと。
出典:https://nextgenfoods.sg/news/
Next Meats、竹葉亭と植物由来グルメづくり〜加工食品業界動向〜
日本発の植物由来の代替肉のStart-upであるNext Meats Singaporeが2023年2月16日、Next Meatsと竹葉亭Singaporeが「植物由来のグルメづくり」をコラボレーションしたことを明らかにした。
竹葉亭は、1851年創業の伝統的な日本料理店。今回、竹葉亭SingaporeはNext Meatsの新メニュー「Next Wagyu Original:焼肉のスライス」と「Next Chicken Original:鶏もも肉」を会席料理に取り入れた。両方とも見た目と触感を再現した大豆ミート。
2023年2月8日の試食会では、F&B業界や報道陣からのさまざまなゲストが招待され、竹葉亭の植物ベースのメニューが試食され、風味と旨味がぎっしりと詰まっているにもかかわらず、料理が自然でさわやかだというコメントであったとのこと。
出典:https://nextmeats.sg/blogs/news/next-meats-x-chikuyotei-making-plant-based-gourmet
2021年 シンガポールの加工食品(飲食・食品メーカー)業界
シンガポールで加工食品業界牽引のFraser & Neaveのサステナビリティレポート
1883年設立のローカル老舗加工食品企業のFraser & Neaveがサステナビリティレポートを発表した。2020年は目標数値の半分以上を達成した。サステナビリティプランとして同社は次のような目標を立てていた。
2020年までに固形廃棄物を5%減らす、RSPO認証の100%クレジットのパーム油を使用する、継続的に製品とプロセス革新に対して投資をする、役員および非役員の従業員にそれぞれ平均16, 10時間のトレーニングを行う、シンガポール、マレーシア、タイで継続的に社会奉仕活動とエンゲージメントプログラムを提供する。
この他にシンガポール環境省と共同でスマートリザーブ自動販売機を設置するプロジェクトも開始。これにより、使用済みペットボトルや缶のリサイクルを促進することができる。今後も消費者の健康を視野に入れつつ、環境にやさしい取り組みを継続していく見込み。
出典:https://www.fraserandneave.com/docs/default-source/newsroom/2020/quarter-4/f-n-sustainability-report-2020.pdf?sfvrsn=b2c2aa2b_4
シンガポールで加工食品業界大手のDel Monte Pacificの第1四半期決算
2020年9月23日、外資系大手食品加工企業のDel Monte Pacificは、グループの第1四半期決算を発表。売上高は4億1,310万米ドルで、前年同期から10%増加した。
同社は健康的で保存安定性の高い製品を提供している。コロナウイルスのパンデミックの影響もあり、ほぼすべてのカテゴリーで売り上げを伸ばした。小売チャネルとフードサービスチャネルの両方で売上が増加した。
グループは引き続きCOVID-19に対する厳格な安全対策を実施しながら、生産を最適化していく。戦略はグループの中核事業を強化し、健康とウェルネスのトレンド市場の動向に合わせて、製品ポートフォリオを拡大し、非戦略的な事業セグメントを削減しながら、ブランドビジネスを成長させていく見込み。
出典:https://www.delmontepacific.com/hubfs/pdf/DMPL_1QFY2021_PressRelease_FINAL.pdf
シンガポールのUnilever、The Vegetarian Butcherと提携〜加工食品業界動向〜
Unilever Food Solutions(UFS)は、国際的に有名な肉代用品ブランドのThe Vegetarian Butcherとの提携を発表した。肉愛好家によって肉愛好家のために作られた、 The Vegetarian Butcherの高品質で用途の広い植物ベースの代替肉は、幅広い消費者に確実に適合する。
シンガポールは現在、植物ベースの食品消費の業界でアジア市場をリードしている。シンガポール人の5人に2人がフレキシタリアンダイエットを採用している。また肉の消費量が少なく、世界で2番目にビーガンに優しい都市である。
UFS、シンガポール、マレーシアのマネージングディレクターであるIvan Luは「シンガポールでThe Vegetarian Butcherを発売することで、シェフが国内の多国籍料理に植物ベースの代替肉の利点をどう反映させていくかが今後注目のポイントである」と述べた。
出典:https://www.unilever.com.sg/news/news-and-features/2020/the-vegetarian-butcher-comes-to-singapore.html
シンガポール一般消費者対象の日本産生鮮食品の直販ECとは?〜加工食品業界動向〜
「Tokyo Fresh Direct」は、日本産の生鮮食品や加工食品をシンガポールの一般消費者に直販するECサイト。大田市場で仲卸の目利きが厳選したこだわりの生鮮品を中心に取り扱い、入手手段が限られていた高品質な日本産食材を、現地で手軽に購入できる。
在留邦人が多いシンガポールは、日本からの食品輸出額が堅調に伸びているが、高品質な日本産食品を手に入れられる場所は百貨店などに限られる。同社は潜在的な消費者ニーズにがあると見込み、2023年末までに20億円の売上をめざす。今後は香港やマレーシア、インドネシア、ベトナム、タイなど東南アジア諸国でも展開する予定。
なお、同事業は、農林水産省が新型コロナウィルスの影響を受けた輸出商流の維持・確保、海外ニーズの変化などに対応するため輸出を行う食品事業者等に対して、海外での販路開拓・プロモーションを支援する「令和2年度日本産農林水産物・食品海外販路開拓緊急支援事業」の補助対象事業となっている。
出典:http://weagri.jp/
シンガポール初の棒ラーメンが発売開始へ 〜加工食品業界動向〜
Nissin Foods Singaporeはシンガポールで初めて棒ラーメンを発売することを発表した。これまで同社はインスタント麺の販売をしており、国内でも人気を博していた。
この棒ラーメンはこれまでのインスタント麺と違い、ノンフライのストレート麺となっている。ストレート麺は家庭でもお店の味が楽しめ、ノンフライ麺はフレッシュな麺の味が楽しめることで人気を集めそうである。
今回発売するラーメンは三種類。ブラックガーリックの豚骨、九州とんこつ、北海道味噌とんこつである。国内のスーパーマーケットとe-コマースサイトで購入可能。
出典:https://www.nissinfoods.com.sg/en_sg/news/9055
2020年 シンガポールの加工食品(飲食・食品メーカー)業界
シンガポールで加工食品業界大手のQAF、タイのGardenia Bakeryに出資
2019年8月29日の発表によると、シンガポールの食品事業大手で製パン業を主力事業とするQAFグループは、タイで新設した「Gardenia Bakery Trading Co., Ltd (ガーデニアベーカリートレーディング株式会社)」の発行済株式の24.5%を取得した。出資額は、1,225万タイバーツ(約56.2万SGD相当)になる。主な事業はタイでのベーカリーやその他の食品の販売と流通だ。
Gardenia BakeryはQAFが展開する主力製パンブランドでシンガポール国内の製パンブランドとしては国内売上トップ。1日に20万個以上のパンを製造している。
シンガポール国外では、タイを含めた東南アジアやオーストラリアを中心に販売網を確立しており、マレーシア、フィリピン、オーストラリアに子会社やJV会社を持っていたが、今回新たに設立したタイでの事業会社に出資するもの。
出典: https://www.qaf.com.sg/wp-content/uploads/2019/12/Asset-Acquisitions-and-Disposals__Investment-in-Thailand.pdf
シンガポールで加工食品業界大手のFood Empire、価値あるブランド100に選出
2019年8月1日の発表によると、シンガポールに本社を置き、インスタントコーヒー、コーヒーカプセル、冷凍食品やフィンガーフード事業などを展開するFood Empireは戦略コンサルタント会社Brand Financeが選出する、「Most Valuable Singaporean Brands(最も価値のあるシンガポールブランド100選)」の1つに選ばれた。
ブランドランキング全体では58位にランクインし、これは同社が本ランキングに入っている2016年からの3年間で最も高い。 グループのブランド価値も向上し、2018年の7,300万USドルから2019年には7,600万USドルに上った。
受賞についてTan Wang Cheow会長は次のように述べた。「今年のブランドファイナンスアワードでのグループのパフォーマンスに満足している。双方的な顧客との関係性が評価された。今後は既存の事業市場での存在感をさらに高めるため、継続的なブランド開発とサービス/製品の強化を図る」。
出典:http://www.foodempire.com/food-empire-clinches-the-58th-spot-for-this-years-most-valuable-singaporean-brands-by-brand-finance/
ヨシムラフード、シンガポールの水産加工メーカーを買収〜加工食品業界動向〜
2019年4月19日の発表によると、ヨシムラ・フード・ホールディングスは、シンガポールの水産加工メーカー、PACIFIC SORBY PTE. LTD. を子会社化する。シンガポール内での買収は3社目となる。国内外での同社グループ会社の連携を強化し、アジア地域での展開を強化する。
同社は海外事業を統括するヨシムラ・フード・ホールディングス・アジアを通じ、PACIFIC SORBY PTE. LTD. の発行済み株式の70%を取得。取得総額は16億2,800万円で、5月13日に株式譲渡を終える予定。
PACIFIC SORBY PTE. LTD.は冷凍水産品や鮮魚を仕入れ、自社にて加工もしくは卸売にてシンガポールの主に4つ星、5つ星ホテルや病院等へ販売を行っている会社だ。主な取扱商品は、カニ、ロブスター、エビ、サーモン等の冷凍水産品及びシンガポール近海で漁獲される鮮魚だ。同社はホテルに対する販路、加工設備及びノウハウ、独自の仕入ルートを強みとしている。
出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/1693532/00.pdf
Wu Pao Chun、シンガポールのBread Talk Groupと業務提携〜加工食品業界動向〜
2019年6月14日の発表によると、台湾の高雄市発祥でパン作りの世界チャンピオン Wu Pao Chun(吳寶春)氏が手掛けるベーカリー「Wu Pao Chun」のシンガポール一号店が街の中心地、City Hall駅直結の高級ショッピングモールCapital Piazzaにオープンした。
販売する60種類のパンや菓子などのうち、10種類がシンガポール限定の現地グルメを取り入れたり商品になっている。海南チキンライスやコピなどをイメージしたパンも販売している。
これに先駆け、2018年3月にシンガポールの食品事業大手Bread Talk GroupはWu Pao Chunと業務提携し、完全子会社のWu Pao Chun Food Ltdを設立。同氏が既に展開している台湾以外の中国本土、香港、シンガポールなどの中華圏で事業を展開するJV会社を設立している。
出典: http://breadtalk.listedcompany.com/newsroom/20190614_195211_CTN_BYE5UED1PTGLARK3.1.pdf
2019年 シンガポールの加工食品(飲食・食品メーカー)業界
シンガポールで加工食品業界大手のQAF、2018年度の利益は前年同期比1%減少
ベーカリー製品や菓子製品を手がけるQAF Limited(QAF)は2018年度における決算報告書を公開した。グループ全体の収益は2017年度と比較して、1%減少し814.9百万シンガポールドル(SGD)を計上した。
2018年度における全体的な業績は、Rivalea部門の低迷に大きく影響を受けている。同社は2001年以来、一次生産事業を展開しており、その影響を緩和することが困難な状況となっていると言える。また、当事業の停滞は外的要因が大きいと見られ、食肉の一般市場価格と気候変動によって家畜飼料の原材料費が大きく変動したこともそのうちの1つである。
オーストラリア東部で起きた史上最悪の干ばつにより、穀物価格は過去10年間で最高値まで上昇した。一次生産事業は3年から5年の周期で周期的な性質を持ち、2006年、2009年および2016年に最大の業績を上げている一方で、2016年のピーク以来、そのパフォーマンスは現在2017年に始まったダウンサイクルとなっている。同社は「一次生産部門が2018年度の売上高の約43%を占めていたため、Rivaleaの事業の循環的な性質がグループの業績に大きな変動をもたらしている」と分析している。
出典: http://www.qaf.com.sg/wp-content/uploads/2019/02/QAF-Limited_FY2018-Results-Announcement.pdf
シンガポールのTri Marine、マグロ漁業の貿易権を取得〜加工食品業界動向〜
Tri Marineは、ソロモン諸島のキハダマグロとカツオなどマグロ漁業のフェアトレード認証ライセンスを取得したと発表した。Tri Marineの関連会社であるナショナル・フィッシャリーズ・ディベロップメント (NFD)は現在、5つの中規模漁船などでマグロ漁獲物にフェアトレード認証ロゴを付けることを承認されている。同社は、米国の販売部門である小売Tuna Storeにおいて、認証済みマグロに対する需要が高まると予測してさらなる取得に踏み切った。
フェアトレードUSAは非営利団体であり、北米におけるフェアトレード製品の主要認証機関。信頼度の高い認証済み製品は、持続可能な暮らしと適切な労働条件、環境保護、強靭で透明性の高いサプライチェーンを促進する、厳正なフェアトレード基準に従って製造されたことを証明するものとして活用されている。
Tri Marineは、シンガポールに拠点を置くイタリア政府所有のマグロサプライヤーとして1972年に設立された。同社は現在、高品質のマグロ製品の漁業、加工、流通をグローバルに展開している。
出典: http://www.trimarinegroup.com/2019/03/14/tri-marine-announces-fair-trade-certification-of-solomon-islands-tuna-fishery/
シンガポールで加工食品業界大手のBreadTalk、新たなビジョンとミッションを発表
国内にてベーカリーショップなどを展開するBreadTalkはアニュアルレポートを発表した。
2018年は、厳しいマクロ環境が続く一方で、ジョイントベンチャーを通じたビジネスパイプラインの構築や人材育成およびサポートインフラストラクチャへの投資を中心に展開した1年となった。中国本土ではSong Fa Bak Kut Teh、シンガポールではNayukiとTaiGaiといった新ブランドを導入することで、既存市場での収益拡大を展開した。また、ロンドンのCovent Gardenに主力のDin Tai Fungレストランがオープンし、新たな市場の開拓にも精力的に取り組んだ。
同社が新たに掲げたビジョンは「Inspiring innovative F&B concepts; delighting the world everyday」(革新的な飲食業のコンセプトを掘り起こし、世界中の人たちの毎日を喜びで彩る)。また、新たなミッションとして「人材、製品および作業工程に対して継続的な改善を図ることで、卓越性を追求し、創造的で、透明性があり調和の取れた企業文化を育むこと」を掲げた。
出典: http://breadtalk.listedcompany.com/newsroom/20190321_201851_CTN_TN8V4TWGJ8IPV0QK.1.pdf
F&N、シンガポールのNTUと共同研究〜加工食品業界動向〜
シンガポールに本拠地を置く大手飲料メーカーFraser and Neave (F&N)は、健康製品などの開発研究に向けた4年間の研究提携を南洋理工大学 (NTU)と開始し、新しい研究所を開設した。Thai Beverageが過半数を所有するF&Nは、「シーズンズ」ブランドのアイスティー、「スパークリング・ドリンク」のソーダフレーバー、「アイス・マウンテン」のボトル入り飲料水などを製造・販売している。
NTUの新しいF&N-NTU F&B イノベーション研究所における取り組みの一環として、新商品のレシピ開発が進行されている。NTUは「この共同研究では高品質な食料品や、環境に優しい包装などの製造開発に取り組んでおり、そして食品加工から生じる廃棄物の再利用技術に関する研究を行なう予定である」とコメントしている。
F&Nは直近の決算報告書において、消費者心理に対する公共政策の影響の可能性を指摘しており、甘味飲料に対するマレーシアの次期「砂糖税」を念頭に入れていることを示唆している。
出典: https://media.ntu.edu.sg/Pages/newsdetail.aspx?news=770b734a-3026-4cf9-9441-625d1b4a751a
2018年 シンガポールの加工食品(飲食・食品メーカー)業界
シンガポールの食品輸入規制最新版!〜加工食品業界動向〜
シンガポールの食品規制は、農産物・家畜庁のAVA (Agri-Food & Veterinary Authority of Singapore)の管理下にある。
2018年5月現在の輸入規制は以下の通り。
出典:https://www.ava.gov.sg/docs/default-source/tools-and-resources/resources-for-businesses/approved-countries
シンガポールのIPA、産学連携で業界にイノベーションを〜加工食品業界動向〜
IPA (Food Innovation Product Award)は、食品業界でのイノベーションを促進するため2016年に始まった。シンガポール経済開発庁(EDB)など政府機関も参加する大規模な取り組みである。
食品メーカーは、高等教育機関(Institute of Higher Learnings)のメンバーで構成されるチームとの協力下、新しく革新的な食品の開発を行ってきた。B2B / B2C、国内向け / 輸出向けの両面で、商品開発を実現している。
9ヶ月もの長い時間をかけて学生と企業(情報管理会社のNielsen)やオーストラリアの大学、シンガポール工科大大学などの研究機関が共同でプロジェクトにあたっている。
出典:https://www.sfma.org.sg/news/view/food-innovation-product-award-2018
シンガポールで加工食品業界大手のBreadTalk、厳しいビジネス環境の中でも堅実な成長
BreadTalkは、シンガポールおよびアジアでベーカリーショップチェーンなどを展開している星企業。業界を取り巻く厳しい環境の中、2017年6月期の決算報告ではEBITDAベースの年間成長率が16.1%の伸びを見せたと発表した。
これは、常にトレンドを押さえ、現状の人気を維持するだけにとどまらず、新商品の導入や新しい成長領域への挑戦を続けてきた結果である。
今後は、新店舗の展開を慎重に行っていく一方で、収益性の高い新市場への進出を推し進める予定。
今後は、新店舗の展開を慎重に行っていく一方で、収益性の高い新市場への進出を推し進める予定。
出典:http://breadtalk.listedcompany.com/newsroom/20170802_190658_5DA_YKMSNQR7PFBSS1A3.2.pdf
シンガポールの加工食品業界、テクノロジーの導入で人材不足を改善
食品業界での人材資源不足は特にSME(中小企業)で深刻であるが、それを高圧処理技術の開発によって補おうとする動きが見えている。
高圧処理技術を用いることで、冷蔵の段階で食品のバクテリアを消滅させ、添加物や熱処理を加えずに加工することが可能になる。食品媒介の病原体をなくすことで冷蔵食品として輸出もでき、人材資源に乏しいSMEの研究開発費や労働力の削減にも繋がる。
製品開発には、政府機関のWorkforce Singapore (WSG)やSPRING Singapore、教育機関からはSingapore Polytechnic、そしてSMEのThe Soup Spoonが協力。今後は50以上のSMEに導入の機会を提供していく。
製品開発には、政府機関のWorkforce Singapore (WSG)やSPRING Singapore、教育機関からはSingapore Polytechnic、そしてSMEのThe Soup Spoonが協力。今後は50以上のSMEに導入の機会を提供していく。
出典:http://www.ssg-wsg.gov.sg/content/dam/ssg-wsg/ssgwsg/news/media-release/31052017/High%20Pressure%20Processing%20technology%20uplifts%20manpower-lean%20capabilities%20and%20opens%20up%20export%20opportunities%20for%20local%20food%20companies_Media%20Release_310517.pdf
海外展開をシンガポール政府機関がサポート〜加工食品業界動向〜
シンガポール通商産業省傘下にあるEnterprise Singapore (ES)とSingapore Manufacturing Federation (SMF)は、2018年のFood & Hotel Asia開催に合わせてB2Bのオンラインプラットフォームを導入した。
SMF SMART Appと呼ばれるこの仕組みは、ローカルの食品メーカーが自社商品を海外のバイヤーへより簡単に、迅速に紹介できるようにすることが目的。展示会のパビリオンでバーコードをスキャンするだけで、商品の詳細や条件を確認する事ができる。
海外のバイヤーには商品情報を確認することができるツールを提供し、オンライン注文から支払までがその場で完了可能。書類のハードコピーによる手続きも削減される。
海外のバイヤーには商品情報を確認することができるツールを提供し、オンライン注文から支払までがその場で完了可能。書類のハードコピーによる手続きも削減される。
出典:https://www.gov.sg/~/sgpcmedia/media_releases/enterprise-sg/press_release/P-20180424-1/attachment/MR00518_Enterprise%20Singapore%20Media%20Factsheet_FHA%202018_2018%2004%2024.pdf
まとめ:シンガポールの加工食品業界
技術革新や行政のサポート、研究機関との連携などにより、さらなる発展を目指すシンガポールの食品業界。メーカーだけでなく、産学官を巻き込んだ大きなイノベーションが起きています。開発、製造、販売などあらゆる面で新しい取り組みが進められているシンガポールには、大きなビジネスチャンスが眠っているのではないでしょうか。
2017年よりシンガポール在住の日本人。元客室乗務員。大学ではマーケティングと経済を学び、卒業後は海外での生活と旅行を重ね、さまざまな国の文化や人々、食に関する豊富な知識を身につける。シンガポール人の旦那との結婚を機にシンガポールに移住し、現地で就労。現在はライター業と翻訳業を行っている。