アメリカの電力・ガス業界は、再生可能エネルギーへのシフトと技術革新です。天然ガスが主要エネルギー源である一方、風力や太陽光発電の拡大が進行中です。また、送電インフラの強化やエネルギー貯蔵技術の開発が重要視されています。さらに、企業はカーボンニュートラルを目指し、ゼロカーボン電力の割合を増やすための投資を加速させています。
今回は、そんなアメリカの電力・ガス業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022-2023年 アメリカの電力・ガス(建設・インフラ・環境)業界
EQT ウクライナに生産設備を寄贈〜電力・ガス業界動向〜
アメリカ最大の天然ガス生産会社であるEQTが、ウクライナにある中央および東ヨーロッパ最大の天然ガス生産会社JSCウクルガスヴィドブヴァンニャに石油・ガス生産設備を寄贈したと発表した。EQT社長のトビー・Z氏は「困難な状況下でも恐れることなく生産活動を続けるウクライナのエネルギー労働者の仲間たちを支援できることを誇りに思う」と述べた。
JSCウクルガスヴィドブヴァンニャCEOオレグ・トルマチョフ氏は「彼らの寛大な寄付のおかげで、損傷した施設をより早く修復し、我が国に切望されているガスを供給する重要な生産プロジェクトを実施できるようになるだろう。」と述べた。
JSCウクルガスヴィドブヴァンニャはウクライナのガス総生産量の約70%を占めている。EQTが寄贈した機器の輸送作業は両国政府が支援し、2月上旬に現地に到着した。
出典:https://ir.eqt.com/newsroom/news-releases/news-release-details/2023/EQT-Donates-Production-Equipment-to-Ukraine
サウスウェスタン・エナジー 第10回年次企業責任報告書を発表〜電力・ガス業界動向〜
天然ガス・液体天然ガス生産のアメリカ最大手であるサウスウェスタン・エナジーが、第10回年次企業責任報告書を発表した。ここのところ世間で注目されている、各企業が実現しているSDGsの具体的実施状況を報告している。
同社CEOのビル・ウェイ氏はまず、「明るい未来に向けて継続的に努力している」と述べた。報告書には「2021年比で2022年はメタン強度の20%削減を達成」「温室ガス排出単位が17%削減」「7年連続で淡水ニュートラル操業を達成・維持」「2023年6月にインド系取締役を加え、人種ダイバシティーが50%に増加」などを挙げ、同社が様々な面で持続可能な価値創造のアプローチをしていることを強調した。
特に同社は2035年までに温室ガス排出量を50%削減、2050年までに実質ゼロ排出を目指している。信頼性が高く、クリーンなエネルギーに対する世界的な需要の高まりを確保しながら、低炭素の未来を実現する、複雑な課題に全力で取り組むと、ウェイ氏は締めくくった。
出典:https://ir.swn.com/CorporateProfile/press-releases/news-details/2023/Southwestern-Energy-Releases-Tenth-Annual-Corporate-Responsibility-Report/default.aspx#new_tab
アンテロ・リソーシズ 2023 年第 3 四半期の財務および営業実績と増産ガイダンスを発表〜電力・ガス業界動向〜
ウエストバージニア州とオハイオ数のアパラチア盆地を中心にした独立系天然ガスおよび液体天然ガス会社のアンテロ・リソシーズが、2023 年第 3 四半期財務及び営業実績報告・今後の増産計画などについて発表報告をした。
それによると、天然ガスの生産量は前年比4%増、液体天然ガスの生産量は前年比18%増であり、純生産量は前年比9%増となったという。CEOのポール・ラディ氏は「採掘チームと生産チームの両社が、会社記録を樹立した」と喜んだ。続けて「記録的な天然ガス発電量、好調な液体天然ガスの輸出などが背景となり、今後も営業成績は伸びていくと考えている」と述べた。
また限定的ではあるが、アメリカでの生産量が増え、そのためにキャッシュフローが生み出されると予測。負債を返済し、株主に資本を還元し続けると、ラディ氏は強く語った。
出典:https://www.anteroresources.com/news-events/press-releases/detail/231/antero-resources-announces-third-quarter-2023-financial-and
サザン・カンパニー 南部3州の連邦施設に100%炭素汚染のない電力を供給する契約を発表〜電力・ガス業界動向〜
アメリカ一般調達局(General Services Administration、通称GSA)は、アメリカ南東部の900万家庭にエネルギーを供給しているサザン・カンパニーとの間で、アメリカ南部3州にある連邦政府施設に向けた100%炭素汚染のない電力システムを開発すると公式発表した。(覚書 Memorandum of Understanding、通称MOUといわれる形式で発表された)
Carbon pollution-Free Electricity(炭素汚染のない電力、通称CFE)は、両者が協力して開発していく予定。実現できれば大統領命令14057号で概説されているSDGsのうちの、信頼性と回復力の目標を達成することが可能となる。
GSA長官ロビン・カーナハン氏は「サザン・カンパニーを通じて、持続可能性を推進し、雇用を生み出し、納税者の税金を節約し、子供たちのために健康的な地球を確保することができる」と述べた。サザン・カンパニーCEOのクリス・ウォマック氏も「目標達成に向けた重要なステップとなるだろう」と述べている。
出典: https://www.xylem.com/en-us/about-xylem/newsroom/press-releases/xylem-awarded-for-innovation-at-weftec/
BP EV充電ネットワークを強化〜電力・ガス業界動向〜
イギリスのエネルギー会社bp社のアメリカ国内EV充電事業であるbpパルス社が、1億米ドルでテスラ超高速充電器を発注。アメリカでのEV充電ネットワークを強化していくと発表した。
テスラとの合意は、2030年までにアメリカ全土のEV充電器に最大10億米ドルを投資するという、bpの事業計画の一環となる。bpパルスは、すでに全米の27000か所以上の充電ポイントを設置している。2030年までに世界で100000か所以上の充電ポイントを展開することを目指している。
早ければ2024年に、主なbp、Amoco、ampmの各ガソリンスタンド、およびbpパルスのネットワークにテスラ充電器が設置される予定という。他にも、Thorntons ブランドのサイト、TravelCenters of America の拠点、および米国全土の空港近くおよび主要都市圏にある bp パルスのGigahub充電サイトに、テスラ充電器が設置される予定という。
出典:https://www.bp.com/en_us/united-states/home/news/press-releases/bp-boosts-ev-charging-network-with-100-million-dollar-order-of-tesla-ultra-fast-chargers.html
2021-2022年 アメリカの電力・ガス(建設・インフラ・環境)業界
エクソンモービル 大規模先進リサイクル施設の稼働を開始〜電力・ガス業界動向〜
エクソンモービルは、北米最大級の、先進的リサイクル施設の立ち上げに成功したことを発表した。テキサス州ベイタウン市にある同社の総合製造複合施設では、独自の技術を利用してリサイクルが難しいといわれているプラスチックを分解し、新製品の原材料に変換する。この施設では年間8000万パウンドを超えるプラスチック廃棄物を処理する能力がある。
エクソンモービル・プロダクト・ソリューションズ・カンパニー社長のカレン・マッキー氏は「政府、業界、コミュニティと協力してプラスチック廃棄物の収集と分別を拡大し、リサイクル率を向上させ、世界中の顧客が持続可能性の目標を達成できるよう支援する」と述べた。
リサイクルシステムを近代化し、廃棄物収集を改善するための効果的な政府政策が導入されたことで、より多くのプラスチック材料、特に現在リサイクルが容易ではないプラスチックを収集、分別、リサイクルできるようになったという。
出典:https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2022/1214_exxonmobil-starts-operations-at-large-scale-advanced-recycling-facility
エクセロン STEMリーダーシップ アカデミーを開始〜電力・ガス業界動向〜
エクセロン財団は、国内最大のカーボンフリーエネルギー発電会社であるエクセロンと協力し、女子学生の専門分野への進学を奨励するために 2018 年に開始された毎年恒例のSTEM(サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・数学)のリーダーシップアカデミーを再開することを発表した。
2021年度版は、シカゴ(7月11日~16日)、フィラデルフィア(7月25日~30日)、ワシントンDC/ボルチモア(8月1日~6日)で180名の学生を対象に開催される。エクセロンの社長兼CEOのクリス・クレーン氏は「次世代のSTEMリーダーを巻き込み、教育し、インスピレーションを与え、将来の専門的なキャリアに備えて必要なツールとリソースを提供することが重要だ」と述べた。
同社は2020年に教育関連の活動に 1,130 万ドルを寄付し、慈善活動資金の 84% は、多様性・公平性・包括性に焦点を当てたプログラムと取り組みに対して使われた。
出典: https://www.exeloncorp.com/newsroom/exelon-foundation-launches-first-ever-hybrid-stem-leadership-academy
サザン・カンパニー 環境破壊度の透明性が高い評価〜電力・ガス業界動向〜
アメリカ南東部の家庭にエネルギーを配給しているサザン・カンパニーが、2022年CDP(Carbon Disclosure Project)気候変動開示において3年連続のAスコアを獲得し、北米での火力発電所などでの環境に優しいエネルギー生産会社であることを世間に知らしめた。
CDPは企業や自治体向けの環境情報開示システムを運営する、グローバルな非営利団体である。サザン・カンパニーは、2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す企業である。同社の会長兼CEOのトム・ファニング氏は「環境破壊度の透明性が高いことを、CDPのAスコアを得ることで証明できて光栄だ」と述べている。
CDPの厳格な調査結果は、第三者を含めての正確なデータ分析もなされている。特に、多くの温室効果ガスを生成している電気事業所などには厳しい検査が行われている。さらに無炭素及び低炭素発電に関する情報を開示要求。環境破壊度の透明性が高いだけではなく、それを地球規模で広めていこうとするCDPの意思を反映している。
出典:https://www.southerncompany.com/newsroom/news-releases.html
パシフィック・ガス&エレクトリック ワイヤレス電力の増加を促進するためのいくつかの新しいリモートグリッドシステムを開発〜電力・ガス業界動向〜
カリフォルニア州のエネルギー会社であるパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(PG&E)は、火災発生率が高い地域の送電線をワイヤレス電力に切り替えるために、新しい4つのシステムを開発。順次システムを拡大していくと発表した。
送電線のないシステムは、ソーラーパネル・蓄電装置・バックアップのための発電機からなり、これまでの電柱や送電線と同等の電力信頼性を提供できるとされている。カリフォルニア州パスケンタ市・マリポサ市アワニー市に新たに設置した、合計4つのワイヤレスシステムにより、4.5マイルの送電線や電柱などを廃止・撤去した。
PG&E執行副社長のジェイソン・グリックマン氏は「山火事などのために停止される送電線とは異なり、ワイヤレスシステムは火災発生時であっても稼働し続けることが可能だ」と胸を張った。同社は今後もワイヤレスシステムを設置していく予定としている。
出典 : https://www.pge.com/en/newsroom/press-release-details.e85321b4-8c83-4d0b-9535-299a4bcecb30.html
BP エネルギーと気候変動問題でバイデン政権と協力することを約束〜電力・ガス業界動向〜
気候変動への取り組みと連邦所有地におけるすべての新規石油・ガスリースを一時停止するという、バイデン・ハリス政権による大統領令を受け、bpアメリカ会長兼社長のデイブ・ローラー氏は「bp の野心は、2050 年か、それより早い時期までに温室効果ガス排出実質ゼロ企業となることだ。また、世界が同じようになれるよう支援することも野心のひとつだ。アメリカが今世紀半ばまでにネット・ゼロに到達するというバイデン大統領の野望を、我々は強く支持する」と述べた。
更に「政府と緊密に連携して、メタンに対する連邦による直接規制を含め、アメリカと世界をネットゼロに向けて前進させる。適切に設計された気候変動政策の策定に取り組む予定だ」とも述べている。
また「bpは、ネットゼロを目指して努力している企業だ。bpが行っているのと同じように、アメリカも低炭素エネルギーミックスに移行させようとしている。bpは、そうしたアメリカの取り組みを支持しており、炭化水素がエネルギー移行において果たすべき役割があると信じている」と、まとめた。
出典:https://www.bp.com/en_us/united-states/home/news/press-releases/bp-commits-to-working-with-biden-administration-on-energy-and-climate-agenda.html
まとめ:アメリカの電力・ガス業界
アメリカの水道業界は、老朽化したインフラのアップグレードとデジタル技術の導入が進展しています。主要企業のアメリカンウォーター、Cal Water Service、Xylemなどは、地域の水供給システムを強化し、持続可能な技術開発に注力しています。また、低所得者支援プログラムや水道資産の民営化契約を通じて、コスト効率と環境保護を両立する取り組みも進行中です。これらのトレンドは、今後もアメリカの水インフラの向上に貢献すると予想されます。
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。