2021年、韓国ではエコカー(電気、水素、ハイブリッド車)の登録台数が前年比で41.3%と大きく増加し、EV(電気自動車)に関しては累計10万台以上が登録されました。また、EVの市場拡大によりEV用電池メーカーの売上も大きく伸びています。今回はそんな韓国のEV業界について、主要メーカーを取り上げながら詳しく解説します。
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韓国のEV(電気自動車)市場
韓国のEV(電気自動車)の市場規模
2021年基準、自動車の登録台数が2,491万台を突破し、電気自動車の新規登録は10万台を突破した。中でもエコカー(電気、水素、ハイブリッド車)が昨年と比べて41.3%(+339千台)増加し、累計登録車数が116万台を記録(1,159千台)している。
2021年末電気自動車は、昨対比71.5%(+96.481台)増加し合計で231,443台が累積登録された。2018年に比べると4.2倍の増加だ。また、2021年に韓国は電気自動車を10万台以上登録した国家となった。韓国国内の地域別登録では、京畿道、ソウル、済州島が多く、電気自動車(93,342台)が登録された。自動車輸出では、コロナの影響で減少していた輸出件数が2021年に入り回復傾向である。
2020年韓国市場で2万7888台の電気自動車を販売した現代自動車グループは、昨対比157%増加した7万1785台を販売し急成長した。昨年の韓国国内電気自動車販売1位は、2万2671台を販売した現代自動車アイオニック5となり、2位は現代自動車ポーターEV6が1万5805台、3位は起亜自動車が1万1023台、4位が起亜自動車のボンゴEVが1万728台である。韓国国内でのテスラは、モデル3が8898台、モデルYが8891台を記録し、国内市場での販売台数は1万7828台だ。
韓国のEV用電池(車載電池)の市場規模
韓国のEV用電池企業を代表する3社(LGエナジーソリューション、SKオン、サムソン)が、前年の37.9%を下回りはしたが、韓国国内の市場占有率32.7%を維持する企業である。これは、韓国のEV用電池を使用する電気自動車が増加した為である。
世界の市場では、韓国のEV用電池が45.9%の年間成長率を記録し、2021年の8億ドルから2025年には39億ドルへ増加する見込みだ。また韓国は、サムソン電子やLG化学、そして関連企業を拡大し、輸出する為のEV用電池を多く生産している国家である。そして、他の国に比べてバスやトラックなどの大型車に対する需要が高い国だ。
EV用電池の交換周期が近づくにつれ、廃棄バッテリーに対する関心が増加している模様だ。2030年までにEV用電池市場が、20兆ウォンの規模まで成長するとの展望だ。韓国国内の企業達は市場を先占する為に関連事業の拡大を行なっている。
廃棄バッテリー連合では、民間企業、研究機関、大学などで集まり、廃棄バッテリーの性能を評価し、再作用や再制作、再活用を行うためのインフラの構築を目標にしており、特に廃棄バッテリーを再利用したESS(エナジー保存装置)の事業化をする為モデルの構築に集中している。
韓国のEV政策
電気自動車の補助金政策
韓国政府は、2021年から新たな電気自動車購入時の補償金支給に対する政策を発表した。2020年での電気自動車支援台数は9万9,650台、支援予算は8,174億ウォンである。2021年からは、支援台数が12万1,000台、支援予算が1兆230億ウォンと21.4%支援台数の増加である。
今年韓国政府は、電気自動車購入時に支援する補償金を最大800万ウォンへと昨年と比べて20万ウォン減少した。補償金算出方式を詳しく見ると環境に優しい電気自動車の購入を誘導する為に高性能、高効率の電気自動車に対する補償金の支援の拡大を実施した。
補償金と関連して、消費者の購入価格により補償金の算出が自動で行われるようになった。6,000万ウォン未満の電気自動車には補償金を100%、6,000万ウォン以上9,000万ウォン未満の電気自動車には補法金を50%の支援となる。また、韓国国内でも地域により補償金の金額は異なる。
政府は環境問題に大きい影響を与えることのできる、公共交通機関や商用車に対する支援も強化している。電気タクシーは商業用電気自動車がもらう事のできる最大補償金800万ウォンへ200万ウォンを追加して受け取ることが可能だ。
エコカーの普及とインフラ拡充
韓国政府は、2030年までに電気自動車などをはじめとした、エコカー785万台の普及を目指しており、温室効果ガスを24%減少させることが目標である。電気自動車の普及台数の内50%以上の充電インフラ50万機を構築し、部品素材の国産化などで電気自動車の価格を1000万ウォン以上にさせることが目標である。
電気自動車をはじめとしたエコカーの輸出を現在の3倍の規模にすることが目標だ。
政府は、2023年までに自動車の温室効果ガス24%が減少するのを目標に2025年までにエコカー283万台、2030年までに785人の普及を目標としている。その為、公共機関では電気自動車をはじめとしたエコカーを100%義務購入するように、レンタカー、大企業などの民間企業から今年からエコカーの購入目標を導入する計画だ。
充電のインフラの拡大、2025年までに今普及している多数の50%以上の充電器を増加させ、20分充電の超高速充電器で300kmまで運転可能な超高速充電器の普及を本格化させている。
電気自動車の価格競争力の拡大の為に、専用のプラットフォームの構築や部品の生産を国産にするなどして、2025年までに自動車単位の価格を1000万ウォン以上下げることを目標にしている。
韓国の主要EV(電気自動車)メーカー3選
ヒュンデ(現代自動車)
現代自動車は、自動車部門が80%、金融部門が14.3%、その他の部門が5.7%の企業だ。グローバル自動車企業で初めてコミュニティーを基盤としたNFT市場へ進出した。顧客へさまざまなブランドの体験を提供している。
現代自動車は、2030年まで国内電気自動車分分野で総21兆ウォンを投資したと発表した。国内電気自動車生産量拡大、専用プラットフォーム開発、電気自動車充電所インフラ構築などに要約することができる。
2030年までに韓国国内の電気自動車の生産量を144万台まで増やす計画をしており、現在35万台の国内の電気自動車の生産量を2030年までに4倍以上増やす計画だ。現代自動車の2030年グローバル電気自動車の生産目標は、323万台でグローバル電気自動車の生産比率では、海外輸出量が国内生産量の45%を占めている。現代自動車グループは、2030年グローバル市場で323万台の電気自動車を販売し、市場占有率12%を達成するのが目標だ。
グローバル市場での市場占有率12%を達成する為に、最大の電気自動車市場のアメリカとヨーロッパを含めた主要電気自動車市場を分析し、全17個以上の電気自動車のラインナップを構築する計画だ。
キア(起亜自動車)
キア自動車の3大戦略は、電動化、 PBV、モビリティソリューションだ。電動化はEVへの切り替えやEVのラインナップの構築で、PBVは目的型の顧客にあったオーダーメイドの車両、B2B物流、共有サービスなどがある。モビリティーソリューションは、EVや自動運転自動車を基盤としたモビリティサービスの提供を意味する。
市場の変化に柔軟に対応する為に対応する為に、一般的な自動車と電気自動車を一緒に生産する混流生産方式を採用している。最初から電気自動車を生産する生産方式では無く、既存の生産ラインで作る方式を採用しているが、効果的に合理的に生産する為の方法を常に模索している。
キア自動車は、2030年までに電気自動車分野で国内総21兆ウォンを投資する予定だ。同時に、今年35万台にに到達すると予想される国内電気自動車の年間生産量は、2030年144万台まで大きく拡大する模様だ。
中長期戦略の’Plan S’を基盤に、新しいモビリティーサービスと結合したPBV事業を活発に展開する予定だ。2025年に披露する予定のPBVラインナップの最初のモデルSWは、中型級のサイズで開発される。スケートボード形のPBV電気自動車専用’eS’プラットフォーム基盤の様々な種類の車体を柔軟に合わせることが可能だ。
ジェネシス(GENESIS)
ジェネシスは現代自動車のプレミアムブランドだ。ジェネシスと言う名前は、熱意の想像、新しい始まりと肯定的な変化へ向かう私達の願いが込められている。グローバル累計販売量80万台を突破した。2015年11月発売以降約7年ぶりの事だ。ジェネシスの韓国国内でのブランドイメージは、社長や会長が使用する車と言うイメージが根付いている。
その反面で、海外ではプレミアムブランドのイメージを浸透できておらず、高い評価を貰えていないのが現実だ。ジェネシスは24個のブランドのうち信頼度の順位が12位だ。競争相手のプレミアムブランドの中でもラクサスが2位、BMWが3位、アウディーが6だ。プレミアムブランドではない、一般ブランドの中でも中間の順位と言う結果である。
ジェネシスだけの強みが無いとの評価がブランドの評価に繋がっている。
ジェネシスの販売量は2015年384台、2016年5万7451台、2017年7万8586台に急成長した。2020年に13万台、2021年は20万台を突破した。2022年10月までの販売量は17万3929台だ。ジェネシスが達成した累計発売量は80万6739台の71.4%だ。国内販売量は57万5712台、海外販売が23万1027台だ。
韓国の主要EV用電池(車載電池)メーカー3選
LGエナジーソリューション
LGエナジーソリューションは、パックに革命的な技術を集結した電気自動車のバッテリーセル、モジュール、BMS、パック製品を通して安全で速く、環境を保護することの出来る電気自動車の普及の最前線を走っている。
世界有数の完成形メーカーと行った、様々なプロジェクトの経験を基盤に、生産から廃棄EV用電池の再利用まで、EV用電池の生態系を新しく作り出している。
テスラへ円形型EV用電池を供給するLGエナジーソリューションを始めとした、国内の2次電柱に対する投資心理が、急激に冷え込んだものとみえる。
高い技術力を基盤にしたセル、モジュール、パックの製品に最適化されたBMSと技術支援を可能にしたトータルソリューションを提供している。また、約30年のR&D力量が集約した商品、素材、技術力を基盤に70個余のグローバルプロジェクトを行なった。そして、韓国と中国、米国、ポーランドの企業が最多のグローバル生産拠点を構築し、同時に古くからの生産経験を保有し顧客が市場に適切な早い対応を可能にする。
EVソリューションでは、高エナジー密度バッテリーで長距離運転を実現し、バッテリー軽量化を通した戦備形状、急速充電を通じた仕様車収益性極大化、様々な大きさのバッテリーを通じて空間活用も最適化する。
SKオン
SKオンは電気自転車の市場成長と技術的トレンドの変化に合わせて革新的なバッテリー技術を開発してきた。世界で最前線を行くHigh-Nickel技術の最前線を走る先駆者として、高エナジー密度電気自動車用電池の開発と、 NCM622 (2014年), NCM811 (2018年), NCM9½½EV用電池を量産している。(2022年)
グローバル自動車企業と一緒に電気自動車の時代を切り開いている。電気自動車企業達と供給の契約を締結し、様々な分野で協力し電気車電池事業を拡大している。優秀な技術力と信頼を基盤に有数の企業とパートナーシップを結んでいる。
環境問題改善に努める技術と商品で社会的価値を生み出している。社会的責任を移行する為に環境を考慮したEV電池を開発に沢山の努力を傾けている。高効率、高容量リチウムイオンバッテリーを開発し、グローバル自動車企業を供給することで、CO2排出によって発生する大気汚染を最小限に抑えている。
SKオンは、今年10月基準で電気自動車の電池市場において占有率5位を記録した。年間バッテリー生産能力を 2021年の40GWhから2025年には240GWh以上まで増やすという積極的な拡大計画も行っている。
サムスン
サムスン電気自動車はEV電池製造方式に大きな変化を与えた。高密度、高容量のバッテリーを作る為に、既存のワイディング方式では無く、スタッキング方式を導入した。スタキング方式は、LG化学とSKノーベイション電気自動車を作るのに活用している技術だ。
これまでの間、陽極材、分離膜、陰極材を囲む「ワインディング」方式を活用してバッテリーを製造してきた。一つの巨大なセルを丸く巻いて、角形や円筒型のケースに入れてバッテリーを作る方法だ。ワインディング方式はサムスンSDIがそれまでに使用してきたサムスンSDIバッテリーを代表する技術とされている。
サムスンSDIは、業界最大の容量と一個体の面積あたりの最高エネルギー密度など革新的な角形セル技術を活用しており、業界初である。サムスンは、同じ階級の中でも最高のEV/PHEV/HEVバッテリーセルを生産している。
理想的なバッテリーは、小型で軽量であり、同時に大容量である必要がある。リチウムは3番目に軽い元素であり、最も軽い金属だ。リチウムイオン電池はニッケルや鉛ベースのバッテリーに比べてエネルギー密度は高く、サムスンのSDIは容量当たりより大きいエネルギー密度のバッテリーを生産するのが目標だ。
ソウル在住の韓国人。日本での在住経験は12年。日本の有名大学を卒業し、大手シンクタンクの正社員及び経営コンサルタントとして勤務。ビジネス戦略とイノベーションの分野で活躍。