【アメリカの半導体】主要半導体メーカー5選と半導体政策を解説

2021年の世界の半導体売上高の首位は韓国のサムスン電子とアメリカのインテルが同率で各12%強で、売上上位10社にはインテルを含めアメリカ半導体企業の8社が名を連ねました。家庭電化製品のAI化やEV市場の拡大で世界の半導体市場が拡大する中で、アメリカの主要半導体メーカーや政府の動向を解説します。

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アメリカでビジネスをするなら知っておきたい10のこと
目次

アメリカの半導体市場

世界の半導体事情

世界の半導体市場は2022年に4576億9000万米ドルを記録している。このうちアジア太平洋地域の市場は2021年に2416億7000万米ドルだった。世界の半導体市場は2030年までに複合年間成長率6.6%が見込まれ、7720億3000万米ドルになると予想されている。

急速に発展する電子機器に対応するため、半導体市場は拡大し続けている。特に家庭電化製品のAI化や電化製品の高速処理化のために世界中の半導体市場が潤っている。今後はさらに、電気自動車(EV)などが半導体市場を牽引するのではないかともいわれている。

2020年ごろからアメリカと中国との関係悪化、日本やアメリカでの半導体生産工場の事故、半導体生産工場の老朽化、またコロナ禍やウクライナ戦争で流通経路が混乱し、世界中の半導体市場に大きな影響があった。しかしこれらは、2023年までに改善されると予想されている。

アメリカの半導体市場

2021年のデータからは、世界の半導体は全体の35%を中国が占める。アメリカは第2位であり、全体の21%を占める。3位の欧州は全体の9%なので、中国とアメリカが半導体市場の過半数を占めていることがわかる。

アメリカの半導体企業の売り上げは、世界の46%を占める。アメリカ半導体企業のシェア率は、中国市場であっても半数を占める。その他の国々においても、アメリカ半導体企業の売り上げは40%から50%近くを占めている。

2021年の世界の半導体売上高の首位は韓国のサムスン電子とアメリカのインテルが同率で各12%強であった。また、売り上げ上位10社にはインテルを含めアメリカ半導体企業の8社が名を連ねている。

2021年のアメリカ半導体輸出額は528億米ドルだった。一方アメリカ半導体輸入額は413億米ドルであり、過去20年間においてアメリカ半導体市場は貿易黒字を維持している。アメリカ半導体企業の売り上げの8割以上が、アメリカ国外への輸出から得られている。石油化学、航空産業、原油、天然ガスに次ぐ、アメリカ輸出品目の第5番目となっている。

アメリカ国外に生産工場を持っていたアメリカ半導体企業が多かったが、アメリカ政府がCHIPS法制定などで支援を開始した。

アメリカの半導体不足による製造業への影響

アメリカの自動車企業では、機械的には完成している販売車両の数千台が、半導体不足のために出荷できない状態で放置されている。また半導体不足のため、生産台数を削減すると発表した自動車企業もある。

2021年7月、アップル社のティム・クックCEOは半導体不足のためにスマートフォンやタブレット端末などに大きな影響が出ると警告を発している。インテル社も、半導体不足を解消するには数年かかると警告を発した。

アメリカ国内における半導体不足で大きな影響が出たのは自動車産業であり、新車生産台数が150万から500万台減少させられた。このため中古車価格が高騰し、コロナ禍による公共交通網利用を敬遠したい自動車購入希望者が増加していたにもかかわらず、全米規模の車不足が発生した。

大手の家電メーカーは早い段階から半導体の備蓄を始めてはいたが、アップル社は早々に製品販売の遅れを発表した。また高度な情報処理能力を要求されるゲーム機などにも半導体不足が大きく影響した。

アメリカの半導体生産における他国への投資状況

1960年代まで、アメリカ国内での半導体生産は、自国での使用を8割、海外輸出を2割程度としていた。その後、70年代にかけて、集積回路の進化や家電などの進化により生産が追い付かなくなっていく。

半導体は小さな部品であり、重量もないことから、海外に原材料を送り、製品を自国に送り返すような輸送費を考えても、それほど負担にはならないことがわかっていた。さらにアメリカと比較すれば十分の一にも満たない安い人件費が魅力となり、アジアや南米の発展途上国に工場設置などの投資が相次いだ。

設計はアメリカ国内で行い、基本的なパーツは海外工場で作成する。最終工程はアメリカ国内で仕上げるという方法が一般的になっていったのは、1990年代といわれている。香港、シンガポール、台湾、フィリピンなどへ設備投資するアメリカ半導体企業が多かった。

アメリカの対中国貿易関係を懸念して、アメリカ政府は半導体企業にアメリカ国内で生産し、輸出黒字を拡大するように指導した。

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アメリカ政府の半導体生産の政策

AFA

かつて半導体の8割近くはアメリカ国内で生産されていた。現在はわずか12%に過ぎない。現在は台湾と韓国が大半を占める。これらの国に依存すれば、これらの国で何か有事があった時には半導体不足が生じることが懸念される。

もとより台湾は中国と対立しており、韓国は北朝鮮と対立している。リスクを回避するためには半導体生産をアメリカ国内で行い、貿易黒字を目指すべきと政府超党派たちは考えた。これが2020年6月に議会に提出されたAFA(American Foundries Act of 2020)の骨子である。

超党派の上院議員たちによるAFAの具体的プランとしては、アメリカの各州内にある半導体製造施設に対して、設備拡大のための助成金を出すというものである。このための予算は、250億米ドルといわれている。

この法案では、例えば中国政府が所有・管理する企業であったり、中国政府の影響が大きい企業が資金を調達できないようにしている。70年前の、世界の半導体を牽引するアメリカの再来を狙うものである。

CHIPS

AFAに先駆けて議会に提出された法案である。Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors、アメリカ国内の半導体産業に関する法案である。一般にCHIPS法とされることが多い。2020年6月10日に、やはり超党派によって議会に提出された。

AFAが各州に対しての工場拡大のための資金援助だったのに対して、CHIPS法は半導体企業に対しての投資である。500億米ドルのうち、280億米ドルは最先端半導体開発の支援に使用される。また100億米ドルは既存の半導体製品の製造拡大などに投資される。

アメリカ同様に、中国も半導体には巨額の投資をしている。CHIPS法では、援助を得られるのは、今後10年間、半導体生産を中国で増産したり中国国内に新工場建設などを行わないことなどを前提としている。

アメリカ半導体企業の台湾・韓国などにある工場が、アメリカ国内に戻ってくるように仕向けたのがAFAやCHIPSである。半導体を発明したのはアメリカであり、現代生活には不可欠なものとなっている以上、自国での開発・製造・消費を第一に考え、輸出品目として安定を図りたいというのがアメリカの本音である。

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アメリカの半導体主要メーカーの概要と特徴

インテル

インテル・コーポレーションは、1968年創業のアメリカ老舗半導体メーカーである。1992年以降、世界の半導体生産において業界第1位を守り続けている大企業である。創業者のロバート・ノイスはアメリカ老舗半導体メーカーのフェアチャイルド・セミコンダクタを退職してインテルを立ち上げた。

海外事務所は世界50か国以上あり、製造・研究所は世界8か国にある。ただしインテルは情報機密の面からも、自社製造にこだわっている。90年台のIBMとのライセンス生産契約が切れたのを機に、以降は委託生産をしていない。

2021年の売上高は790.2億米ドルであり、営業利益は194.6億米ドルであった。全世界のインテル社員は合わせると11万1100人といわれている。現在、インテル本社はカリフォルニア州サンタ・クララ市にある。

一般的なPCに使われているCPUの約60%がインテル製品ともいわれている。半導体の設計・生産・販売だけではなく、現在は多方面のコンピュータ関連ハードウェア事業も展開している。

日本では、アメリカ法人の日本支社として東京都渋谷区に1971年に設立した。その後、東京都世田谷区と茨城県つくば市の2か所に本社を持っていたが、2016年以降、千代田区にインテル株式会社として移行している。

NIVIDIA

エヌビディアと読む。カリフォルニア州サンタ・クララ市に本社を置く半導体企業である。半導体製品の中でも特にGPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる画像処理装置が有名で、現在はそれをもとに画像以外の演算処に応用した製品を開発・設計・生産している。

サンタ・クララ市にあった老舗半導体メーカーのLSIコーポレーションを退職した台湾系アメリカ人のジェン・スン・ファンが設立した。マイクロソフトと共同開発したxboxの画像処理装置、ソニーと共同開発したPlayStation3の画像処理装置、任天堂との共同開発のNintendo Switchの画像処理装置などが有名である。

2020年の売上高は109.1億米ドルであり、営業利益は28.4億ドルであった。近年はGPUを内蔵したチップセットが各企業から開発され、2010年にはチップセット事業からの撤退を発表している。

現在のNVIDIAでは、AI(人工知能)、その中でも特に自動運転に関する半導体製品を主力としている。2022年8月31日にアメリカ政府から中露への輸出停止を命じられている。これを受け、株価は約8%下落した。

テキサスインスツルメンツ

半導体を開発・製造する世界規模の企業である。本社はテキサス州ダラスにある。社歴は長く、1930年に石油探査会社として設立されたのが前身となる。1951年に社内のエレクトロニクス部門を中心に再編成された。

1950年に世界で初めてシリコン型トランジスタを製品化している。1958年には世界で初めてIC(集積回路)を発明している。1973年にはマイコンの特許を取得している。技術面からいうと、テキサスインスツルメンツは世界規模に影響を与えている企業である。

現在のテキサスインスツルメンツは。DSP(デジタル信号処理)技術とプロジェクターなどに使用されるDLP(デジタル映像表示技術)などを主軸とした、世界25か国以上に製造拠点・販売拠点を有する国際半導体企業である。

2021年は売上高2兆6415億3600万円と、国際企業ならではの売上高を誇っている。世界の従業員を合計すると31000人以上といわれている。アメリカでは計算機といえばテキサスインスツルメンツ製品が一般的である。

マイクロン

アイダホ州ボイシ市に本社を置く、半導体製造の多国籍企業である。1978年10月に、別の半導体メーカーの設計を下請けする企業として創業した。創業時は歯医者の下の地下室の一室だったという逸話が残っている。

現在は、コンピューター用の主記憶・ストレージ用の半導体メモリの開発・製造・販売が主軸となっている。また、引き続き下請け製造もおこなっており、他社ブランドのOEM生産商品も数多くリリースしている。

2012年以降、Top100グローバル・イノベーターに選出されている。研究開発費に多額を投じることが有名な企業であり、2014年の開発研究費への投資額は世界第8位にランキングされていた。

垂直統合型デバイスメーカー(Integrated Device Manufacturer)、略してIDMとは、自社において設計・製造・組み立て・検査・販売を行える設備を持った企業のことであり、マイクロン社は、その規模が世界第4位であるとされている。

AMD

正式な社名はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ (Advanced Micro Devices, Inc.) であり、頭文字を取って通称AMDと呼ばれている。日本での登記社名は「エイ・エム・ディ株式会社」であるが、公式発表などでも「エーエムディー」と呼ばれることが多い。アメリカ本社はカリフォルニア州サンタ・クララ市にある。

ただし半導体の製造部門は、2008年に分社化した。AMDから分社したこのGlobalFoundries社(グローバルファウンドリーズ)は、台湾のTSMC、韓国のSamsungに次ぐ、世界第3位の半導体製造企業である。

AMDは1969年に創業した。創業当時は、インテルからライセンスを買って、コピーモデルを製造・販売していた。1985年以降、インテルがライセンスを出さなくなったため、インテル製品と互換性のある製品を独自に開発している。

当初は安価ゆえに性能面で納得できる・安心できる製品が少なかった。研究開発が進むうちに、本家のインテルをしのぐ製品も開発・販売している。特に2015年発表のZenシリーズはインテルとそん色ないと評価されている。

2013年発売のxbox oneや2014年発売のPlayStation4には、AMDがカスタマイズした半導体が使われている。

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