アメリカの食品卸業界は、2024年に入り、持続可能性への取り組みや最新テクノロジーの導入を中心に大きな変革を遂げています。廃棄物削減を目指すエコフレンドリーな物流、AIによる需要予測、ローカル生産者との提携強化など、競争の激しい業界で生き残るための新たな戦略が注目されています。本記事では、食品卸業界をリードする主要トレンドを詳しく解説します。業界の未来を読み解くヒントをお届けします。
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2023年 アメリカの食品卸業界
Fresh PointがBIX Produceの買収合意を発表〜食品卸業界動向〜
2023年6月26日、アメリカ最大の食品流通会社であるSyscoは、同社の⻘果物専門会社であるFresh Pointが、ミネソタ州を拠点とする⻘果物専門・生鮮カット販売大手のBix Produceを買収することで合意したと発表した。1930年に設立されたBiXProduceは、主にミネソタ州、ウィスコンシン州、ダコタ州、イリノイ州、アイオワ州のレストランやその他の外食産業の顧客に幅広くサービスを提供している。
FreshPointはBIX Produceの全従業員を雇用し、現経営陣も引き続き雇用する予定。この買収は、FreshPointにとって戦略的な機会を提供するものである。
現在営業していない地域への拡大や新鮮なカット野菜や持ち帰り商品など、顧客に提供する特産品を強化することでさらなるRecipe forGrowth戦略を強化する。
出典:https://investors.sysco.com/annual-reports-and-sec-filings/news-releases/2023/06-26-2023-130035528
Golden Food、テキサス州で事業拡大へ〜食品卸業界動向〜
2023年3月13日、米国とカナダで事業を展開する、株式非公開の家族経営のフードサービス・ディストリビューターであるGordon Foodが、地元レストラン、フードオペレーション、および一般消費者にサービスを提供するため、ヒューストン広域にストアを新たに6店舗オープンすることを発表した。
レストランのオーナーやフードサービスのプロに、シェフ品質の食品を提供することを主な目的としている。
新ゴードン・フード・サービス・ストアは、あらゆるタイプのレストラン・オーナーやフードサービス・プロフェッショナルにシェフ品質の食品を提供することを主な目的としているが、家庭での買い物客にも対応する。パック詰めされた新鮮な⻘果物や商品を取り揃え、その多くはその場で調理される。
出典: https://gfs.com/en-us/ideas/new-houston-area-stores/
US FoodsがRenzi Foodserviceを買収〜食品卸業界動向〜
2023年5月19日の発表によると、イリノイ州ローズモント市で1989年に創業、食品卸業ではSyscoに次ぐ全米2位のUS Foodsが、RenziFoodserviceを買収した。Renziは親子2代で経営しており、年間売上は1億8,000万ドル以上。独立系レストラン、医療施設、学校、政府機関、コンビニエンスストアなど2,300以上の顧客にサービスを提供している。
Renzi Foodserviceは、現在事業を行っている11万平方フィートの施設で営業を継続する。買収は2023年第3四半期に完了する。
買収はUS Foodsにとって2020年4月以来のことで、デイブ・フリットマン最高経営責任者(CEO)のリーダーシップの下での最初の買収となる。新しく革新的な製品やビジネスソリューションへのアクセスを拡大することが今回の買収の目的である。
出典:https://ir.usfoods.com/news-events/press-releases/default.aspx
Performance Food、燃料電池トラックを契約〜食品卸業界動向〜
取扱商品は多岐にわたり、2021年現在で肉類・魚介類・農産物・ドリンク・調味料など100000種類を超える食品・調理器具などの非食品用品を125000を超えるクライアントに提供するPerformance Foodは、排ガスゼロの大型燃料電池電気自動車の世界的サプライヤーであるHyzonMotorsと燃料電池トラックに関する契約を締結した。
最初の5台にはHyzonのクラス8 110kW燃料電池システムを搭載し、さらに15台のFCEVにはHyzonの次世代シングル200kW燃料電池システムを搭載する。また、PFGとHyzonは、初回納入後、さらに30台のFCEVを追加で導入するオプションに関しても、相互に合意した。
代替燃料や低炭素技術の探求を進める中で、輸送インフラの改善に役立つ先進的な製品やサービスを利用することが今回の契約の目的である。
出典:https://investors.pfgc.com/press-releases/press-release-details/2023/HYZON-MOTORS-PERFORMANCE-FOOD-GROUP-SIGN-AGREEMENT-FOR-FUEL-CELL-TRUCKS/default.aspx
Ben E.Keith Foods、Orrell’sを買収〜食品卸業界動向〜
全米で5番目の規模を誇る幅広いフードサービス・ディストリビューターであり、現在では全米19州に10部門を展開しているBenE.KeithFoodsは、OrrellʼsFood Serviceを買収することを発表した。OrrellʼsFood Serviceは、グリーンズボロ/ウィンストン・セーラム、ローリー/ダーラム、シャーロットの各市場とバージニア州南部の顧客にサービスを提供している企業である。
Orrellʼsの買収により、BenE.Keith Foodsはノースカロライナ州への進出を継続し、新規および既存の顧客にサービスを提供し、従業員とパートナーにさらなる機会を提供する。
買収の対象となるのは、ノースカロライナ州リンウッドにある106,000平方フィートの物流センターを含むOrrellʼsFood Serviceの全資産と、同じくリンウッドにある食肉加工工場のJEMフーズ社である。
出典: https://www.benekeith.com/food/feed/news/ben-e-keith-foods-announces-acquisition-of-orrells-food-service
2021-2022年 アメリカの食品卸業界
Piggly wiggly midwest、買い物体験の変革へ〜食品卸業界動向〜
食料品事業における100年以上の歴史を基に、中⻄部、南部、北東部に店舗を展開し、その存在感を高め続けているPiggly wigglymidwestが小売オートメーション業界のリーダーであるFocalSystemsと提携し、人工知能と自動化を活用して買い物体験を変革すると発表した。
C&SWholesale Grocers,Inc.は、PigglyWigglyMidwestの直営店を運営し、独立系フランチャイジーにチェーン形式のサービスを提供している。
ウィスコンシン州とイリノイ州の店舗でFocalOperatingSystem(FocalOS)を試験的に導入する。FocalOSは店舗全体をデジタル化し、発注、在庫管理、マーチャンダイジング、店内労働を自動化・最適化することで、顧客により良い体験を提供することを目的としている。
出典:https://www.cswg.com/news/piggly-wiggly-midwest-partners-with-focal-systems-to-leverage-artificial-intelligence-and-automation-to-transform-the-shopper-experience/
Performance Food、CO2排出量の削減へ〜食品卸業界動向〜
取扱商品は多岐にわたり、2021年現在で肉類・魚介類・農産物・ドリンク・調味料など100000種類を超える食品・調理器具などの非食品用品を125000を超えるクライアントに提供するPerformance Foodは、カリフォルニア州ギルロイの物流センターにネット・ゼロ・エミッションの冷凍トレーラー10台を導入したことを発表。
輸送用冷凍ユニット(TRU)は太陽光発電を利用した電気冷蔵ソリューションで、食品サービス流通ニーズをサポートし、華氏マイナス20度までの温度維持が可能。
2021年6月にネット・ゼロ・エミッションTRUを導入して以来、PFGは6,500ガロン以上のディーゼル燃料の使用がなくなり、ギルロイ物流センターの二酸化炭素排出量を73トン削減できたと見積もっている。
出典:https://investors.pfgc.com/press-releases/press-release-details/2022/Performance-Food-Group-Company-Adds-All-Electric-Transportation-Refrigeration-Units-to-Reduce-Greenhouse-Gas-Emissions/default.aspx
Sysco、好調な利益を達成〜食品卸業界動向〜
アメリカの最大食品流通会社であるSyscoは、2022年の会計年度は米国市場シェアの1.3倍超の成⻑と好調な利益を達成し、好調な1年間の業績を締めくくった。
今後に向けては、さらなる利益成⻑、資本配分戦略の実行、事業への多額の投資、四半期中の負債返済、年間5億ドルの自社株買い戻しすることを決定した。
売上高は2021年度同期比17.5%増、比較可能な13週間ベースでは26.5%増の190億ドル。売上高は2019年度同期比で22.5%増加。営業利益は前年同期比34.6%増の7億6,670万ドルを達成。好調な財務実績と同時にRecipe For Growth戦略も順調に進捗しており、さらなる戦略への投資も実行しながら達成された。
出典: https://investors.sysco.com/annual-reports-and-sec-filings/news-releases/2022/08-09-2022-130510832
McLane、サンアントニオに物流センターを新設〜食品卸業界動向〜
2022年10月12日、食料品と食品サービスのソリューションを提供する大手サプライチェーン・サービス企業であるMcLaneCompanyは、3,000万ドルを投じて248,500平方フィートのMcLane SanAntonio物流センターを新設したと発表した。この施設は、全米最大級の人気ブランドにサービスを提供する。
サンアントニオ物流センターは、全米に80以上あるマクレーンの物流センターの中で最も新しく、11万以上の小売店舗にサービスを提供している。
すべての冷蔵トラック・トレーラーを電力網に接続し、積み込み工程での製品温度を維持しながら化石燃料の使用を回避している。同社は環境への影響を軽減するため、ゼロ・エミッションの新しい大型電気トラック・ヤードを配備している。電気自動車を使用するチームメイトやゲストは、電気自動車の充電用に指定されたステーションから電力を供給することができる。
出典:https://www.mclaneco.com/mclane-opens-30-million-distribution-center-in-san-antonio/
US Foods,垂直農法の革新的企業Kaleraと提携〜食品卸業界動向〜
イリノイ州ローズモント市で1989年に創業、食品卸業ではSyscoに次ぐ全米2位のUS Foodsは、世界有数の水耕式室内垂直農法企業であるKalera社との戦略的合意を発表した。
US Foodsにとってこれまでで最大の垂直農法提携となる。この契約は、外食事業者に年間を通じて高品質の農産物を幅広く提供するというUS Foodsのコミットメントを強調するものである。
Kalera社との契約は、垂直農法で生産された製品を、レストランやその他の外食産業に提供する方法を根本的に変える。高品質で持続可能な方法で栽培された通年商品が提供されることになる。今後も⻘果物ポートフォリオを拡大し、新たな商品提供で提携する。
出典:https://ir.usfoods.com/news-events/press-releases/default.aspx
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。