マレーシアでは、現在高齢化が進んできており、米のボルゲンプロジェクトによると、65歳以上の高齢者が2044年には14%に到達するとされています。マレーシアでは、未だ高齢者医療やサービス事業が発展途上であり、制度の充実が急務になっています。
今回は、そんなマレーシアの介護業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022年 マレーシアの介護(医療・介護)業界
ピラーが脳卒中回復プログラムを強化〜介護業界動向〜
2023年2月3日、セランゴール州ペタリンジャを拠点として在宅介護と看護を提供するピラーは、ホームケアパッケージである「アフターストローク」と呼ばれる脳卒中回復プログラムを強化することを発表した。
本プログラムは、ホームケアサービスにて迅速かつ安全に、そして効果的に回復できることを目的としており、専門的サービスやサポートをコーディネートする。同社の介護士チームは、身の回りの世話や服薬管理、移動の介助など、さまざまなニーズに24時間365日で対応するとともに、パーソナライズされたケアプランを作成する。
このプログラムは高齢者や外出が困難な患者にとって有益であり、脳卒中患者とその家族に最高品質のケアとサポートを提供することを約束している。
出典:https://www.pillarcare.com/introducing-afterstroketm-from-pillar/
マレーシアの高齢者貧困の実情〜介護業界動向〜
貧困・飢餓問題に取り組むため、米国ワシントン州を拠点として設立されたボルゲンプロジェクトは、2022年8月20日の発表で、マレーシアの高齢者貧困に関する3つの事実を示した。
まず、国内では高齢化が急速に進んでおり、65歳以上の高齢者人口が、2044年には14%に達すると予測されている。マレーシアの退職年齢は比較的低く、55歳から64歳の45.2%しか仕事を持っておらず、収入源がないことも珍しくない。
次に、女性の収入が不安定であることが挙げられており、50歳から60歳の年齢層では女性の17.9%しか仕事を持っていない。また、従業員積立基金残高でも、女性は男性より低くなっている。
最後に、高齢者医療が欠如しており、国内では高齢者医療インフラ、コミュニティケア、ホームケア、その他のリハビリテーションサービスが不足している。よって、病気に対する脆弱性が高い状況にある。
出典:https://borgenproject.org/tag/the-national-council-of-senior-citizens-organizations-malaysia-nacscom/
セレコムが推奨する高齢者ホームケアサービス〜介護業界動向〜
2022年9月30日、大手通信事業者のセルコムは、2022年の高齢者ホームケアサービスを紹介した。国内の在宅介護サービスに関しては、ホームケアとナーシングケアのどちらかを選択することができる。多くは正看護師や開業医によるサービスを提供しており、診察のための送迎も行っている。こうしたサービスの費用は1時間あたり20~50リンギット程度で、1時間という短い時間で提供されることがほとんどである。
オマージュマレーシアでは、ホームケアとナーシングケア、ホームテラピー、専門的なケアといった3つのサービスを提供している。また、同社では高齢者や成人に対してオンデマンドの在宅介護や、コミュニティベースの介護を運営・提供している。
エルダーラブ・ミスでは、エルダーラブ・リビングケアセンター(老人ホーム)とミッシケア(看護師・介護士によるプライベートサービス)の2つのサービスを提供しており、西マレーシア全土で利用可能となっている。
また、セルコムでは高齢者が大切な人と毎日連絡が取れるよう、ビデオ通話と無制限高速インターネットを最大6回線まで家族で利用出来る「セルコムMEGAファミリープラン」を提供している。
出典:https://www.celcom.com.my/blog/lifestyle-leisure/2022/elderly-home-care-services-family-malaysia-2022
テマンマレーシアのコンパニオンケア利点〜介護業界動向〜
2022年11月14日、国内5ヵ所で高齢者介護サービスなどを提供するテマンマレーシアは、同社の高品質且つ安全でパーソナライズされたケアコンパニオンサービスの高齢者福祉に対する利点を紹介した。
利点として、精神的な刺激を奨励、身体の健康を促進、衛生管理を支援、感情的なサポートを提供、移動支援が挙げられている。
精神的な刺激を奨励する為、同社では介護者が高齢者と一緒にカードゲームやパズル、アートなどに参加して、記憶力を高め、脳を発達させるための取り込みをしている。また、身体の健康を促進の為、診察や理学療法への同行、服薬支援などがある。衛生管理を支援では、高齢者の入浴、着替え、身だしなみを定期的に支援し、高齢者の尊厳を尊重している。また、洗濯や掃除などの家事も行い、高齢者へ快適な生活を提供している。
出典:https://www.temanmalaysia.com/pros-of-companion-care-for-older-adults/
老人ホームの3つの誤解〜介護業界動向〜
2022年7月21日の発表で、マレーシアとシンガポール、中国でケアサービス事業を提供するエコンヘルスケアグループは、老人ホームについての3つの誤解を紹介している。
まず、老人ホームで介護するのは高齢者だけでなく、脳卒中や手術後の人、神経難病者、移動に支障のある人など、家族が自宅で介護することが困難の介護も行っている。同社センターでは、経管栄養の補助から創傷被覆、吸引、リハビリ、酸素療法、緩和ケアなどを提供している。
また、介護だけでなく、リハビリテーションや中医学的介入、医師の診察、創傷ケアなどといったサービス、他にも旧正月や父の日、クリスマスなどのイベントも開催している。
最後に、同社では専門看護師、介護スタッフ、漢方医、一般医師、認定理学療法士、救急車・救急隊、管理スタッフなどのスタッフがサービスを提供することで、入居者とその家族は質の高いケアを享受できている。
出典:https://econhealthcare.my/3-common-misconceptions-about-nursing-home/
2020年 マレーシアの介護(医療・介護)業界
マレーシアのHomageの介護ニーズに対する取り組み〜介護業界動向〜
シンガポールとマレーシアでオンデマンド介護サービスを提供する Homageは、2020年初めにシリーズBの資金調達を利用し、域内で新たに5ヵ国へ進出することを発表した。
アジアの多くの市場で、高齢者ケアのニーズが資格を持った介護士の成長率を急速に上回っている。Homage のようなハイテク企業は、より多くの人をより早く支援することができると同時に、コストを抑えることができる。
また、Homageのマッチングエンジンをはじめとする機能によって、経験や資格に応じて介護者と家族をペアリングし、プラットフォーム上のプロバイダーはパートタイムの生活援助から長期介護やリハビリテーションまでのサービスを提供している。
出典:https://www.homage.com.my/care-connect/pressroom/how-homage-is-tackling-southeast-asias-growing-eldercare-need/
AIを使用したマレーシア初の老人ホーム〜介護業界動向〜
AIヘルステクノロジー企業のスマートピープは、ジョホールバルのリタイアメントビレッジ及びウェルネススペースであるFCCファミリーケアセンター(FCC)との提携を発表した。
スマートピープとFCCは、AIを活用してより良い高齢者ケアを目指しており、マレーシアで初めてスマートピープの技術を用いた施設となる。FCCのケルビン氏は、スマートピープと共に高齢者介護業界に革命を起こすことを願っているとしている。
スマートピープの自動監視システムは、高齢者の転倒や徘徊などの状況を監視し、自動的に介護者にアラートを通知することで、すぐに支援することが可能となる。
出典:https://www.smartpeep.ai/updates/fcc-partners-with-smartpeep-to-launch-the-first-ai-powered-residential-retirement-village-in-malaysia-for-better-senior-care
高齢化に進むマレーシア、統計局発表〜介護業界動向〜
マレーシア統計局の2020年人口推計によると、2020年の人口は3,270万人と推計されており、年率0.4%の増加率であった。人口増加率は低下しているが、これはCOVID-19によって非市民である外国人が帰国したこと、そして国境封鎖されていることに起因している。
年齢別では、0~14歳の若年層の割合は2019年の23.5%から2020年には23.3%へ、そして15~64歳の生産年齢層は同69.8%から69.7%へ減少した。この背景には、外国人労働者が大半を占める非市民人口が減少したことが影響している。
対して、65歳以上の老齢層の割合は、同6.7%から7.0%に増加した。また、60歳以上の人口割合は、2019年の10.3%(340万人)から2020年には10.7%(350万人)へ増加している。
出典:https://www.dosm.gov.my/v1/index.php?r=column/cthemeByCat&cat=155&bul_id=OVByWjg5YkQ3MWFZRTN5bDJiaEVhZz09&menu_id=L0pheU43NWJwRWVSZklWdzQ4TlhUUT09
マレーシア・チェラスに老人ホーム開設〜介護業界動向〜
2010年に設立されたノーブルケアマレーシアは、介護サービス、ケアサービス、リハビリテーション、在宅介護などを提供しており、国内18ヵ所に施設を展開している。
同施設は、セランゴール州のチェラスにタイアメントリゾートを開設、高齢者登録の受け付けを開始した。
施設では、デイケア、老人ホーム、緩和ケア、経鼻胃管交換、高齢者介護コンサルティング、ホスピスケア、終末期看護、脳卒中リハビリテーション、ガン患者ケア、糖尿病フットケア、気管・ストーマケア、アルツハイマー及び認知症、創傷包帯といったサービスを提供する。
出典:https://www.mynoblecare.com/news/retirement-home-cheras/
マレーシアで介護業界大手、ジャスパーロッジの介護サービス
ジャスパーロッジは、ペタリンジャヤ、ペナン、ジョホールバル、クアンタン、クチンなど国内10ヶ所で介護や生活支援を含む高齢者介護サービスを提供している。
同社は入居者へ最高品質のサービスを提供するため、リム・ゲンヤン博士が提唱した「虐待をしない」、「投薬ミスをしない」、「正直である」といった3つのゴールデンルールを実践している。
また、脳卒中やパーキンソン病、認知症などの精神疾患などに対して、同社では医師による診察、認定看護師による24時間ケア、専門セラピストによる治療など万全の体制を整えている。社内の医師は心臓病学、精神科、緩和ケアなどのさまざまな医療分野を専門としている。
出典:https://www.jasperlodge.com.my/post/the-3-essential-services-in-elderly-care-available-at-jasper-lodge-care-centres-malaysia
2019年 マレーシアの介護(医療・介護)業界
マレーシア初!オンデマンド在宅介護〜介護業界動向〜
介護サービスを提供するHomageは、オンデマンド自宅介護を提供する介護サービスプラットフォームを発表した。まずはクアラルンプールとセランゴール州の一部エリアを対象とし、その後他州へ展開する。
同社はスマートテクノロジーを使用した独自のマッチングエンジンにより、病気の治療や言語など特定のニーズに応じてケア専門家と要介護者をリンクさせる。また、同プラットフォームはウェブとモバイルで利用することができ、リアルタイムで在宅ケアデータを24時間365日に渡って可視化させる。
同社はマレーシアでのケア専門家チームを拡大しており、2019年には100名の専門家を迎え入れ、3年間で1,000名体制を目指している。
住友商事、マレーシアのマネージドケア事業へ参入〜介護業界動向〜
2019年4月4日、住友商事は、マレーシアの大手マネージドケア事業者のPM Care社およびHealth Connect Holdings社を子会社化、マレーシアのマネージドケア事業に参入したことを発表した。
同社は、マレーシアが高齢化や生活習慣病の増加など医療需要が高まっていることから、本事業を通じてマレーシアの企業・保険会社と医療機関を繋ぐ存在として、日本の先進的な医療技術・サービスの導入も見据え、より質が高く効率的な医療サービスを推進し、個人の健康管理向上を促進するとしている。
また、同社はマネージドケアの高度化を実現するプラットフォームの構築を視野に入れており、日本医療・介護の国際展開も検討している。
マレーシアのエコワールドが高齢化対応で提携〜介護業界動向〜
不動産開発大手のエコワールドと高齢者介護を事業とするエイジドケアグループ(ACG)は、台湾の高雄医科大学病院(KMHU)と教育、研究、人材開発、人材交換において協力することを合意したと発表した。
マレーシアは2020年までに人口の10%以上が60歳以上となる高齢国家となることから、昨年9月にエコワールドとACGは『健康とウェルネス』に焦点を当てたエコサンクチュアリタウンシップをローンチしている。
今回の提携により、マレーシアの2社は高齢者ケアに関する意識を高め、コミュニティの健康とウェルネスの基準を高めることを目指す。エコワールドは健康とウェルネスの面でKMHUの専門知識を、ACGは介護の知識を獲得する。
シニア向けのリゾート開発とは?マレーシアのオーレリアン・ランド〜介護業界動向〜
シニア向けリゾート開発を手掛けるオーレリアン・ランドは、2013年よりアクセシビリティ、モビリティ、やりがい発見、ヘルスケア、健康といった高齢者の課題を克服するシニア向けリゾート開発プロジェクトに取り組んでいる。
シニア・アクティブ・インディペンデント・ライフスタイル・リゾートをコンセプトとするオーレルサンクチュアリは、シルバー世代のニーズを満たすことを目的とした革新的な開発であり、50歳以上が入居可能となっている。
施設はパハン州ブキティンギに位置し、2棟が建設されている。各戸は1,006平方フィートと1,175平方フィートの広さで、2022年末の完成時に287世帯が入居できる。また、24時間の診療所や介護コーディネーターが常駐する。
2018年 マレーシアの介護(医療・介護)業界
マレーシアのMIMSグループ、フィリピンの医療系人材派遣会社を買収〜介護業界動向〜
メロリタグループは、マレーシア最大の医療系人材派遣会社であり、在宅介護用の看護士、理学療法士、介護士の派遣を行っている。2018年現在、同社は中東及び東南アジア6ヶ国において30超の医療機関にサービスを提供している。
同社親会社であるMIMSグループは、フィリピンのマカティ市に拠点を持つ医療人材紹介会社であるメディカル・スタッフィング・リソーシーズの99.92%の株式を取得したと発表した。
この買収により、同社はフィリピンの看護師だけでなく、アジアで活動する医療従事者の人材獲得も視野に入れる。今回の事業統合によって、MIMSグループのアジア太平洋地域及び中東全体の医療業界における地位強化を目指す方針。
マレーシアのプラブラン・ハルタナとUEM、日本の介護サービスモデルルームを公開〜介護業界動向〜
マレーシアの不動産投資会社プラブラン・ハルタナ(PHB)と不動産開発大手UEMグループ、さらに日本メディカル・ケア・サービスは、共同プロジェクトとしてマレーシア初となる高級介護施設『レイ・セラヤ』のモデルルームを公開した。ショールームはグレンイーグルス病院に隣接しており、日本で開発された最先端介護サービスを紹介している。
レイ・セラヤはオーストラリア人の建築家によって設計され、運営は日本の大手介護業者であるメディカル・ケア・サービスが担う。
要介護者向けの介護棟と、自立して生活が営める高齢者向けの自立棟が提供される。要介護者向けでは、認知症、緩和ケア、デイケアサービスなど幅広いサービスが提供される。
介護業界牽引のACGとエコワールド、マレーシアの高齢者向け住宅をメディアに公開
エイジドケアグループ(ACG)は、マレーシア国内でデイケアセンター、老人ホーム、介護施設を含む高齢者向け製品・サービスを提供している。
同社は、マレーシアの不動産開発大手のエコワールドと、高齢者に優しい住宅『クラフトホーム』事業で提携しており、メディアによる視察を行った。『クラフトホーム』はエコサンクチュアリのパルケレジデンス内に位置し、12エーカーの広々とした緑豊かな環境の中に、プレミアムライフスタイルのための様々な施設を有している。
本事業において、ACGは年中無休のナースステーションを備えたケアハブ、毎月の医師による診察、高齢者と家族向けのウェルネスとケア・エコシステムを提供する。
日本貿易振興協会、マレーシアの介護ビジネスを分析〜介護業界動向〜
日本貿易振興機構は、徐々に高齢化が加速するマレーシアにおける介護ビジネスの将来性について分析を行った。
2015年時点でマレーシアの高齢者(65歳以上)人口の比率は5.9%であるが、2030年までに9.7%へ上昇することが予想されている。マレーシアにおける介護ビジネスは市場拡大が見込まれているものの、施設運営にかかわるライセンス取得や介護士資格に関して制度が十分に整っているとはいえない。
また、マレーシア人の高齢者介護に対する考え方は依然として保守的であり、特にマレー系やインド系コミュニティの間では介護士の賃上げ運動などに対する根強い抵抗感が存在する。
まとめ:マレーシアの介護業界
マレーシアの介護サービス産業は将来的な成長の可能性を多いに秘めたセクターとなっています。高齢化の影響を受け、今後も需要が見込まれる同国の介護サービス業界は、大きなビジネスチャンスが眠っているのではないでしょうか?
クアラルンプール在住4年目の日本人。大学卒業後、東京で飲料メーカーの営業を担当。その後、マレーシアのクアラルンプールへ移住し食品商社の営業及び購買のサポートを担当。