最近のアメリカの携帯電話事業者業界では、サムスンは新しいAI技術を搭載したGalaxy S24シリーズの成功により、業界をリードしています。市場全体では、世界的なスマートフォン出荷台数が前年同期比で10%以上の成長を遂げています。
今回は、そんなアメリカの携帯電話事業者業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2022-2023年 アメリカの携帯電話事業者(エンタメ・IT・個人サービス)業界
Verizon、オンデマンドプランをアメリカで初めて開始〜携帯電話事業者業界動向〜
アメリカ携帯電話キャリア最大手のVerizonは、ユーザー自身が選択したプランを組み合わせる「オン・デマンド」式の新しいプランを5月から開始した。多くのキャリアでは、いくつかのプレミアムがバンドルされて提供されている。その中にはユーザーが全く興味のないサービスも含まれていることがある。一度も使わないサービスに毎月高額の使用料を払わなければならない状況を、Verizonは打破したことになる。
バンドルサービスは一切不要という場合はシンプルなmyPlanだけを利用する。無制限の5Gネットワークで快適な通話・データサービスを利用できる。その後、例えばApple Musicのサービスだけを使いたければ、Apple Musicだけを選択する。これには余計なサービスが含まれず、月額10ドルでApple Musicだけを楽しむことができる。
基本料金は手ごろだが、使いたいサービスはプレミアムサービスに含まれ、結局は高額なサービスになってしまうという、これまでのケーブルテレビや携帯電話サービスに、大きな転換期がきたのではないか、と同社CEOのサンパス氏が語った。
出典:https://www.verizon.com/about/news/myplan
Comcast、 Mobile Made Freeイベントを開始〜携帯電話事業者業界動向〜
大手携帯電話キャリアを猛追しているComcastは、特に中小企業が抱えるモバイル機器の信頼性不足に対して、自社のネットワークの良さ・対費用効果などを体験してもらう「Mobile Made Free」というイベントを2か月間開催すると発表した。
Comcast社では企業向けサービスに、柔軟なデータオプション・高速5Gネットワーク・全米数百万か所の安全なWi-Fiホットスポットなどを用意しているが、これらを実際に企業に体験してもらい、Comcastの良さを理解してもらおうというキャンペーンである。
多くの中小企業で、社内外でモバイル機器の利用度が高まっている。同社の上級副社長兼最高マーケッティング責任者のディスキン氏は「中小企業のみなさんの生産性を向上させ、コスト削減ができるようなサービスを提供します」と語っている。
出典:https://corporate.comcast.com/press/releases/comcast-business-kicks-off-mobile-made-free-event
Boost、デバイス保護の新しい選択肢を提供〜携帯電話事業者業界動向〜
Dishネットワーク傘下の格安携帯電話キャリアboostmobile社は、月額8ドルからスタートする、新しい携帯電話保護サービスを発表した。この新しいBoost Protectは、様々な修理オプション・WEB経由の技術サポート・AppleCareなどが含まれている。
「高価なデバイスになった近年のスマホに見合う、質の高い保護レベルの提供」「利便性と可用性が向上したAppleCareの提供」を、今回の新サービスの根幹としていると、Dishワイヤレス担当社長であるマイケル・ケリー氏が語った。
サービスは「フィッシング検出」「不良WI-FIの検出」「デバイスロックで個人上流出を防止」「最後に確認されたデバイスの位置と正面写真をメールで送信」など、盗難や個人情報を守る様々な工夫と、物理的に壊れてしまった場合の可能な限り迅速な対応策の提供を考慮して作られている。
出典:https://about.dish.com/2023-08-10-Boost-Delivers-New-Option-for-Device-Protection
US Mobile、Youtubeチャンネル開設〜携帯電話事業者業界動向〜
企業がインスタやツイッターなどを利用することが一般的になってきた。携帯電話キャリアのUS MobileもYoutubeチャンネルを開設した。多くの企業Youtubeチャンネルは、ホームページなどと同じく、イメージ広告として一度作って終了というケースが多いのだが、同社のチャンネルは完全に広告なしで、高画質の作品に仕上げ、投稿が続いている。
チャンネルは4つに分かれており、イベント告知や舞台裏・製品概要などを扱う「Team USM」、製品の使い方を紹介するチュートリアルに特化した「US MobileEssentials」、そして製品レビューの「Reviews channel」と、様々な話題を提供する「ポッドキャスト」にわかれる。
ユニークなのは、これらが外注で作られているのではなく、ニューヨークのマーケッティングチームによって、完全に社内で製作されている点である。今後もさらに素晴らしいものを紹介していくので、期待してほしいと番組制作スタッフが語っている。
出典: https://www.usmobile.com/blog/announcing-us-mobile-videos/
AT&T、 電気自動車Lucidの接続プロバイダーに〜携帯電話事業者業界動向〜
様々な物がインターネットによってつながり、新たな利用価値を生み出している。それが「IoT」と言われるものであり、自動車にモバイル機能を搭載し、インターネットを使って様々なサービスを利用できるシステムは自動車メーカー各社ですでに利用されている。そうした環境下、AT&Tが、アメリカ電気自動車(EV)メーカーのLucidの全製品の独占的接続プロバイダーとして契約した。
「ネットワークの強さ、IoTのリーダーシップであることが、LucidがAT&Tと手を結んだ理由です」と、Lucid Motorsデジタル担当上級社長マイケル・ベル氏が答えている。インターネット接続により、地図やストリーミングなどだけではなく、エンジンの診断や緊急事態対応など、様々な面で利用価値があるという。
AT&Tは、60を超す自動車ブランドの接続プロバイダーである。2030年までに自動車の95%がインターネットで接続されるだろうと予測されている。Lucid Motorsは、この進化を楽しみにしているという。
出典:https://about.att.com/story/2023/lucid-motors-electric-vehicles.html
2021-2022年 アメリカの携帯電話事業者(エンタメ・IT・個人サービス)業界
AT&T、 史上初の位置ベースのルーティング開始〜携帯電話事業者業界動向〜
アメリカの緊急事態電話番号は「911」であり、これまでのシステムでは携帯電話から911された場合、電波は携帯電話電波塔の位置に基づいて位置確認がされていた。この場合、半径16㎞以内の緊急電話が混線する危険性があり、対応に遅れが生じることがままあった。
AT&Tは、携帯電機器自体の位置情報を使うことで、50m以内の精度で位置特定が可能なサービスを新たに開発。911が発信された携帯電話に最も近い警察署・消防署に連絡が可能となり、迅速な対応がとれる。
成人の68%は自宅に固定電話を持っていない。固定電話であれば位置特定は簡単ではあるが、現在の緊急電話の80%が携帯電話から発信されており、このため発信位置特定が困難であった。アラスカやハワイなどを含め、一部の州から始めたサービスはすでに全米を網羅している。
出典:https://about.att.com/story/2022/nationwide-location-based-routing.html
Dish、AT&Tと戦略的ネットワークサービス契約を締結〜携帯電話事業者業界動向〜
携帯電話キャリア全米4位のDishが、全米1位のAT&Tと戦略的ネットワークサービスとして提携した。これにより、Dish傘下のBoost Mobile、Ting Mobile、Republic Wireless などの格安携帯電話ブランドで自社の5G ネットワークに加え、AT&T のネットワーク接続・ローミングサービスが可能となった。
「この長期的な提携により、携帯電話市場での競争力が向上し、進化するお客様のニーズの変化に迅速に対応できるようになります」と、Dish社長のジョン・スェアリンガ氏が語った。
AT&Tの5Gネットワークは全米38都市と国際空港や野球場などの20以上の施設で利用が可能となっている。AT&Tの計画によると、2023年末までに全米を現在よりさらに高速接続といわれる、ミッドバンド5Gでカバーする計画がある。今回の提携は、AT&T側としては投資の一部と考えており、自社の顧客への還元が十分可能と判断している。
出典:https://about.dish.com/2021-07-19-DISH-and-AT-T-Sign-Strategic-Network-Services-Agreement
Cricket Wireless、 貯蓄・投資アプリAcornsが提携を発表〜携帯電話事業者業界動向〜
格安携帯電話会社のCricket Wireless社は、貯蓄・投資アプリのAcornsとの提携を発表した。それによると、現在販売されている一部のスマホにプリインストールされているAcornsのアプリを使って、簡単にアカウントにアクセスができる。投資金額に対してボーナスが得られたり、携帯使用料支払い時に、自動的に1ドル投資ができるという。
AcornsのCEOノア・カーナー氏によると、アメリカ成人の39%が将来へのための投資をしていないという。人々が投資に興味がないように見えるのは、簡単に投資にアクセスができないためだ、と氏は説明する。
Cricket Wireless社長のジョン・ドワイヤー氏は「依然として家計をやりくりするのに苦労している。コロナによって貯蓄能力が深刻な影響を受けた。今回の提携が、お客様が将来に向けて再び貯蓄を始める手助けとなることを切に願っています」と締めくくった。
出典:https://www.cricketwireless.com/the-cricket-connection/acorns-collaboration.html
T-Mobile、T‑Mobile 5G を活用した自動運転車サービスを開始〜携帯電話事業者業界動向〜
ネバダ州ラスベガス市を中心とした電気自動車(EV)のレンタカー会社であるHaloは、アメリカ国内初の商用自動運転車サービスのひとつを開始した。このシステムには、T-Mobile 5Gが使用されている。
新しいHalo社のシステムは、顧客がスマホアプリを使って車を予約し、配車予定場所で待つだけ。無人のEVが顧客の待つ場所へと配車される。顧客はEVに乗り込み目的地まで運転するというもの。目的地に到着すると、EVは無人で次の配車場所まで移動する。
このシステムが軌道に乗れば、交通渋滞とCO2問題に対処できる。個人所有の車の必要性もなくなり、都市部の環境改善に大きく役立つという。まだまだ安全面などで課題は残されてはいるが、時間をかけてこれらの課題に順次取り組んでいく、Halo創設者兼CEOのアナンド・ナンダクマール氏が熱く語った。
出典:https://www.t-mobile.com/news/business/driverless-car-service-powered-by-t-mobile-5g
AT&T、子供のメディア使用習慣を身に着けるのに役立つ無料ツールを開始〜携帯電話事業者業界動向〜
全米小児科学会とAT&Tは、子供たちのが健康的なデジタル習慣を身に着けられるように「PhoneReady」「FamilyMediaPlan」を保護者向けに無料で公開した。
PhoneReadyは保護者が10の質問に答えると「Not Yet Ready Zone」 「Almost Ready Zone」「Ready Zone」の3段階で評価される。その結果を受けて、次のステップでペアレンタルコントロール設定などの具体的なリソースが提供される。 FamilyMediaPlanは、子供たちが携帯を使う時間・適切なコンテンツであるかの判断・ネットいじめへの対処法などを明示し、年齢に応じたデジタルリテラシーを奨励することに役立つツールとなっている。
これらの無料ツールはAT&T ScreenReadyやHealthyChildren.orgなどから入手できる。企画自体は2016年に全米小児科学会によってはじめられ、今回、AT&Tのサポートにより新機能が追加されて強化された。
出典: https://about.att.com/story/2022/aap-digital-tools.html
まとめ:アメリカの携帯電話事業者業界
アメリカの携帯電話事業者業界は、5Gの普及が進み、各社がネットワーク拡張や新サービスの導入に注力しています。VerizonやAT&T、T-Mobileはそれぞれの強みを活かして、通信速度の向上や多様な料金プランを提供しています。ComcastのイベントやBoostのデバイス保護サービス、AT&Tの電気自動車との提携など、競争が激化しつつも、業界の革新が消費者に新たな価値を提供しています。
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。