【中国の5G】5G技術の現状と、政府・企業の動向を解説

中国では2025年末までに2Gと3Gが完全に消滅する見込みで、5Gの必須特許の件数は世界1位、さらには6Gへの研究も進んでいます。また、5G技術の自動運転や遠隔医療への応用も推進されています。今回は、中国の5Gについて詳しく解説します。

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目次

中国の5Gの現状

中国の5Gの市場規模

世界的な通信事業者協会によると、2025年末までに中国での5G接続数は8億2800万、次いで欧州で2億3600万、米国とカナダで2億1900万となる見込み。これは、中国が2025年末までに世界の5G接続の約半分を占めることを示している。

中国では2025年末までに2Gと3Gが完全に消滅する見込みである(現在の利用率は僅か6%)。2019年11月、科学技術部は6Gの研究開発の開始を発表するとともに、研究開発を担う組織を立ち上げた。また、同月にはファーウェイの会長が社内で6Gの研究チームを任命した旨を表明し、官民ともに6Gの研究開発に乗り出した。

中国の5G産業の収益では、2020年からの2年間はインフラ建設への投入が最も大きな割合を占めるが、その後の数年間は徐々に減少すると予測される。一方、モバイル通信料と5Gスマートフォンの収益は、インフラ建設が完了した3年目から大きく増加する見込み。5G関連企業が提供するトラフィックベースのサービスから発生するインターネット情報サービス料は、5G産業の開始と発展に伴い、主要な収益源になると考えられる。

また、中国の5G基地局は2020年2月末現在で16.4万カ所に達している。5Gネットワークの累計投資額は、2025年までに1.2兆元となり、その波及効果は3.5兆元超になる見込みである。

中国の通信大手の5Gに関する動向

2019年11月1日、3大キャリアの中国移動、中国電信、中国聯通は、5G商用サービスを一斉に開始した。一方、新規参入のCATV事業を手掛ける中国広電は、5G免許の取得により移動体通信市場への新規参入を叶えた格好となる。同社は、5GとCATVを融合させたスマート放送サービスの展開に注力すると表明しているが、他社との差別化ができるかは現時点で未知数である。

既存通信事業者3社によって進められてきた商用試験には、5Gの大容量という特徴を生かした4K/8Kの超高精細映像配信、低遅延性を生かした自動運転や遠隔診療、多数同時接続の特徴を生かしたスマートホーム等が含まれる。また、既に実施されたサービス例には、2019年7月から試験運用が開始された5G無人スマート書店がある。1Gbpsに達する5G環境下で、顔認証による入店、IoTの識別技術による本の所在確認、ビッグデータ・プラットフォームを用いた読書傾向分析によるマーケティングの展開などが行われている。

中国移動は、2020年5月に「5Gの業界プライベート網研究報告」を発表した。ここでは法人顧客のニーズに合わせた、混合型・仮想型・専用型の3種類の5G網構築案が示された。混合型は、高性能で高い独立性を持ち、港、工場、鉱山、医療などのローカルシーンでの利用に向いている。仮想型は、低コストであることが強みで、工業拠点やビルといった利用シーンのほか、IoV(車のインターネット)、ライブ配信、電力網、ドローンなどに適している。専用型は、専門性の高い工場や鉱山、民用航空通信のATG(Air-to-Ground)システムに適している。一方、中国電信は、2019年6月にメディア、医療、教育、金融、IoT、動画という六つの業界におけるプライベート5G網の開発を進めると表明した。

中国移動、中国電信、中国聯通に、CATV事業者の中国広電4社に割り当てられた5G周波数は、①中国電信及び中国聯通がそれぞれ3.5GHz帯の100MHz幅、②中国移動が2.6GHz帯の160MHz幅、③中国広電が4.9GHz帯の50MHz幅である。2020年4月1日、工業・情報化部が、中国広電が保有していた放送用周波数の700MHz帯の96MHz幅を移動通信用途に変更すると正式発表した。また、これらと別に、2020年2月、工業・情報化部は中国電信、中国聯通、中国広電に対して、全国規模における屋内カバーとして、3300-3400MHz帯の共同使用を許可した。

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中国政府の5G技術に関する政策

中国政府の5G技術の推進状況

5Gの推進プラットフォームとして、2013年4月に工業・情報化部、国家発展・改革委員会、科学技術部が共同でIMT-2020(5G)推進グループを発足した。IMT-2020推進グループでは5Gの研究開発を支援する一方、中国国内の関係機構と共同で国際的な協力を展開し、5Gの国際標準化を推進することを目標としている。

参加メンバーには、国内通信事業者、華為技術(ファーウェイ)などのインフラベンダー、インテルやクアルコムなど外資系チップメーカー、測定機器メーカー、国内主要研究機関なども含まれている。当初から、多くの企業の参画による技術検証・標準策定及び業界のニーズに合った製品・サービスの開発を推進し、5Gの主導権を獲得することを目指した。中でも通信機器最大手の華為技術は5Gの主導権獲得に大きく貢献しており、同社をはじめとする中国企業が有する5Gの必須特許の件数は2020年に世界1位となっている。

2020年3月、工業・情報化部は5Gの発展スピードのさらなる加速を図る施策として「5Gの発展加速の推進に関する通知」を発表し、5Gの建設ペースを加速する方針を打ち出した。その中では、5Gネットワークの構築の加速化はもちろん、「5G+医療健康」や「5G+工業インターネット(Industrial Internet)」、「5G+自動運転」の促進なども明記されている。

中央政府の方針に呼応する形で、各地の地方政府も相次いで各種5G関連政策を公表し、2020年9月までに計460件に達した。政策の数を見ると、省レベルでは62件、市レベルでは228件、区・県レベルでは170件に及ぶ。これら政策の多くは基地局の構築、消費電力に対する補助金の拠出、ユースケースの利用促進に関するものであった。

また、2020年5月に開催された全国人民代表大会で提出された「政府活動報告」では、「内需拡大戦略の実施による経済発展パターンの転換加速の推進」が打ち出された。この政策の一環として「有効投資の拡大」が掲げられ、5G基地局やデータセンターの建設を通じて次世代情報ネットワークの拡充を一気に推進しようとしている。

5G応用『揚帆』行動計画(2021−23年)

5G応用『揚帆』行動計画(2021-23年)は、中国工業・情報化部(省)、国家インターネット情報弁公室、国家発展改革委員会など10当局が共同で発表した5Gに関する行動計画である。中国の5G応用発展水準を2023年を目途に大幅に高め、重点分野での5G応用のブレイクスルーを実現する。

同行動計画では、5G端末の個人ユーザー数を合計5億6000万人超に引き上げるという目標が示されている。また、携帯端末ユーザーに占める5G比率を40%超に拡大していくとのこと。5G対応のIoT(モノのインターネット)ユーザー数は年率平均200%超のピッチで引き上げるよう求められており、人口1万人当たりの5G基地局は18カ所以上を目指している。個人消費分野で一連の「5G+」新型消費の新業務、新スタイル、新業態を構築することも示された。垂直業界分野、大型工業企業の5G応用普及率が35%以上とされ、一連の5G応用革新センターも建設される。

また、5G技術の利活用に関しても明記されている。例えば、5G医療用ロボット、5G救急車、5G医療アクセスゲートウェイ、スマート医療機器等の製品の研究開発を実施する旨が記載されている。中国全土の三級甲等医院、疾病予防管理センター、公共医療サービスセンター、病院老人ホーム複合機関等を主な対象とし、 5G医療健康ネットワークインフラのデプロイメントを強化する。院内医療と遠隔医療に対する5Gネットワーク、5G医療エッジクラウドを構築する。

5G関連の投資計画に関しても記載されている。ベースバンドチップ、高周波集積回路、重要高周波フロントエンド回路等への投資を拡大し、技術と産業化のボトルネックを打破する。5Gチップモジュール及びミリ波回路の軽量化に関する研究開発と産業化を推進し、ターミネーションモジュールのコストパフォーマンスを向上させる。また、実用化と差別化に関する需要を満たし、産業の基礎体力を向上させる。

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中国の5G技術の活用事例

江蘇雲華~画像認証技術~xx

2017年に設立された江蘇雲華は、人工知能に基づく画像認識技術の研究に注力しており「車両顔認証」の応用価値を交通、セキュリティ、旅行などの分野で探っている。例えば「AIセンサーレス給油」技術をしている。これはガソリンスタンドのデジタル変革のために5G、AI、クラウド、ビッグデータを組み合わせたイノベーションソリューションで、給油時の「車内決済」を実現している。現在市内12地区の80以上のガソリンスタンドが「オンライン化」され、登録ユーザーは120万人以上に達している。

ユーザーは「AIセンサーレス給油」のWeChatアプリを開き、携帯電話番号でログインして車両情報を追加し、ワンクリックでパスワードなしの決済を承認する。300元、400元、満タンオプションなど給油習慣に合わせて異なる金額を設定できる。同サービスによって「AI無感覚給油」が1台あたりの給油時間を平均6~8分から2~3分に短縮し、給油の待ち時間を大幅に短縮する。

思谋科技会社~遠隔管理~

思谋科技会社は、5G伝送とクラウド解析技術を活用したシステムを開発している。「5G+AI」チップ実装・はんだライン画像検査システムソリューションは、ディープラーニングAI検査技術をベースに、チップ実装・はんだラインの画像情報の自動収集や欠陥の特定ができる。同時に、5Gネットワークの高速・低遅延・ユビキタス化により、ワイヤー画像データをリアルタイムでクラウドに送信し、ビッグデータ解析、画像認識、原因分析などのAI分析を行うことができる。

これにより検査速度やチップ外観の検出率が大幅に向上するだけでなく、全工程の遠隔監視や過去情報のクラウドトレーサビリティも実現した。

顧客はデータキオスクやWeChatアプリで生産ラインをリアルタイムに遠隔監視し、検査や生産ラインの工程を遠隔管理することもできる。工場の「マニュアル作業」から「マニュアル管理」への知的変革を加速し、機器調達コストや労務管理コストを効果的に削減させることができる。 現在、このプロジェクトシステムは、500%以上の欠陥検出速度と90%の欠陥検出率の向上に成功し、企業の人手不足のプレッシャーを軽減している。

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中国の5G技術の今後の動向

5G技術へのさらなる投資

中国は2025年まで5Gネットワークに1500億ドル以上を投資する見込みである。このうち5G無線システムへの投資が4分の3を占める。2022年には新たに60万カ所以上の基地局を整備する目標が明らかにされた。同年末の累計設置数は200万カ所に達すると見込まれている。

特に企業の工場集積地、工業園区、高速鉄道、交通ハブ、ショッピングセンターなどでの整備を強化する。インダストリアルインターネット、医療・ヘルスケア、スマート教育、農業、観光などの分野で5Gのさらなる活用も図るとしている。

5G、人工知能(AI)、クラウドコンピューティング、スマート交通施設といった新世代の情報技術(IT)のイノベーションにより、自動運転とスマートカーに対する各方面の期待がますます高まりを見せるようになっている。しかし、中国の消費者の自動運転に対する姿勢は前向きであるものの、自動運転機能のある自動車はコストが高く、浸透はしていない。中国のデジタルインフラ建設は先端レベルにあり、交通インフラのスマート化という新たな段階に入りつつあるが、大量の資金と計画を進める時間が必要だとの見方がある。

5G技術の応用と6Gの発展

工業・情報化部(省)は5G技術の応用に注力している。10の垂直業界を選び、各業界で100のベンチマークモデルを打ち立て、1000の5G業界仮想プライベートネットワークを新設し「5G+インダストリアルインターネット」のアップグレード版を構築する予定だ。

5Gの建設応用を加速すると同時に、6Gをめぐるイノベーション発展と国際協力も加速的に進められている。中国情報通信研究院によると、中国IMT-2030(6G)推進チームは欧州の6Gスマートネットワーク・サービスインダストリーアソシエーション(6G-IA)との間で6G協力覚書に調印した。

双方は今後、6G通信ネットワーク・システムの構想とニーズ、システムの概念とスペクトルなどの分野で協力を展開し、世界統一の6G標準と6G産業生態圏の構築を推進するとしている。

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